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第17章 海と大地の狭間に
第667話 許されざる行為について
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とりあえずエレリアとガレリアが少し後ろに下がったところで、オレは暴力的活動を抑止する『調和』をかけて騎兵と向き直る。
あちらの兄妹も双子だと分かると面倒なのは察して距離を置いてくれているのは、少しばかりありがたい。
そして前に止まった騎兵からいぶかしむ声が聞こえてくる。
「ふうむ。そなたは女か?」
近くで見ると相手もまた若い女性だ。
軽そうな革鎧をまとい、頭部だけは金属製の兜をつけている。
それに加えて装備している槍の穂先は金色に輝いているのだが、どうやら金メッキしているらしい。
動きやすい軽装ではあるけど、それでも実用と見栄えの両方を重視した装備品からして結構な地位にありそうだな。
女戦士は過去に出会った事はあるけど、それでもこの世界では結構珍しい存在だ。
「はい。あちらの二人は連れですが、この辺りの言葉をよく知りませんので話はこちらにさせていただけますか?」
「よかろう。我が名はヴェガ。アンティリウスに仕えし武装司法官だ」
アンティリウスの名はかなり前に聞いた事があるな。
確かオレが幼女化していたときに出会った『地界の太陽神シャガーシュ』の信徒だったエウスブスが口にしていた『太陽の光のごとく真実を照らし公明正大さを司る神』のはずだ。
それで司法官と言う事は、地域を回って犯罪を取り締まり、場合によってはもめ事に対し神の名の元に即決裁判を行う役目を有しているのだな。
この世界では三権分立どころか、場合によっては成文法すらなく慣習法で物事が決まる地域も多い。
そのようなところでも『法』を執行するのが司法官なので、当然ながら実力行使もあり得るから武装しているのだろう。
ただし面倒なのは成文法で決まっていない事は当人の判断で決められてしまうので、司法官毎に判断基準が違うのは当たり前だし、事前にその基準を知る事も出来ないのだ。
ひょっとすると『よそ者』と言うだけで敵視するようなタイプもいるかもしれないので、警戒を怠るわけにはいかないな。
「わたしの事はアルと呼んで下さい。それでいかなるご用でしょうか?」
「お前達は旅の者らしいな」
「そうです。だからこの地域の事はよく知りませんので、なぜわたし達が呼び止められたのか教えて下さい」
この質問に対し、ヴェガが口にした事はオレの背筋を寒くするものだった。
「汚らわしい干拓地の者どもがこの地を侵していると聞き、警戒をして回っているのだ」
うげえ。いきなり干拓地の人々を『汚らわしい』かよ。
あからさまに嫌悪しているのだな。
ガレリア達を下がらせていて本当によかったと、胸をなで下ろさずにはいられない。
しかしここはその理由を問うておくべきだろう。
「わたしもあちらの干拓地を通過して来たのですけど、そこに住んでいた人たちは殆どがごく普通の農民でした。なぜそのように仰るのでしょうか?」
「確かに一般の農民が普段、邪悪な行為に手を染めているとまでは言わん。しかし奴らの崇拝する神はおぞましき邪神なのだ!」
う~ん。確かに敵対している相手をそのように蔑む事は珍しい事では無いけど、この人の嫌悪感は尋常では無いな。
「あのう。すみません。干拓地の神様は邪神なのですか?」
「その通りだ。もしもかなうならば司祭供はアンティリウス神の光を象徴するこの槍で一人残らず突き殺してやりたい気分だぞ!」
そういってヴェガは切っ先が黄金に輝く槍を固く握りしめる。
その高ぶりは明らかに尋常ではない。
相当な怒りと敵意を抱いているらしい。
この場合、家族を殺されたとか本当に恨みを抱いて当然という場合もあれば、ただ『連中は邪悪な奴らだ』と聞かされ続けてきたので、そう思い込んでいる場合の両方がある。
残念ながらこの世界では『相手も同じような人間』だという事を理解し、和解するという都合のいい事は滅多にない。
「しかし先ほども言いましたけど、わたしが見てきた限りではそんなに邪悪な様子は感じられませんでしたけど……」
邪悪に見える要素があるとすれば、かつて火山の噴火で命を落とした人々の亡霊を『地の底に呼ぶもの』として使役しているという事ぐらいか。
「確かにただ通過してきただけならば、気がつかない事は仕方あるまい……だが奴らが行っている身の毛のよだつ行為は唾棄すべきものなのだ」
「よろしければその中身について教えてくれませんか?」
ひょっとするととんでもない誤解をしているかもしれないし、些細な行き違いがとてつもなく増幅されているかもしれない。
もしかしたら双子神の教団は『人間を生け贄に捧げる』など本当に邪悪な行いに裏で手を染めている可能性もゼロでは無い。
もちろんそのいずれであっても、この場でオレが否定したところでヴェガが考えを変える筈が無いのでただ話を聞くしか無いのだが。
そしてここでヴェガは我慢ならないと言わんばかりに叫ぶ。
「奴らの司祭階級は……近親婚を、それも双子の兄妹同士の婚姻を推奨しているのだ! ああ……何とおぞましい……」
ヴェガは口にしただけで胸が悪くなったかのようにその身をぶるりと震わせる。
一番の問題はそっちかよ!
確かに近親婚は死でもって罰せられるところもあると聞いた事があるが、そんな文化を有している相手と双子の近親婚を行っている双子神の支配地域が接していたら、いろいろ面倒になるのは当たり前か。
自分達の支配地域にそんな事を行っている教団の聖地があれば、そりゃ破壊・隠蔽しようともするだろう。
しかしガレリア・エレリアの兄妹はそんな体制を嫌って逃げ出してきたのだが、いまヴェガがあの二人を見たら誤解しない筈が無い。
本当に相変わらず、オレが直面するのはややこしい事ばかりだな。
あちらの兄妹も双子だと分かると面倒なのは察して距離を置いてくれているのは、少しばかりありがたい。
そして前に止まった騎兵からいぶかしむ声が聞こえてくる。
「ふうむ。そなたは女か?」
近くで見ると相手もまた若い女性だ。
軽そうな革鎧をまとい、頭部だけは金属製の兜をつけている。
それに加えて装備している槍の穂先は金色に輝いているのだが、どうやら金メッキしているらしい。
動きやすい軽装ではあるけど、それでも実用と見栄えの両方を重視した装備品からして結構な地位にありそうだな。
女戦士は過去に出会った事はあるけど、それでもこの世界では結構珍しい存在だ。
「はい。あちらの二人は連れですが、この辺りの言葉をよく知りませんので話はこちらにさせていただけますか?」
「よかろう。我が名はヴェガ。アンティリウスに仕えし武装司法官だ」
アンティリウスの名はかなり前に聞いた事があるな。
確かオレが幼女化していたときに出会った『地界の太陽神シャガーシュ』の信徒だったエウスブスが口にしていた『太陽の光のごとく真実を照らし公明正大さを司る神』のはずだ。
それで司法官と言う事は、地域を回って犯罪を取り締まり、場合によってはもめ事に対し神の名の元に即決裁判を行う役目を有しているのだな。
この世界では三権分立どころか、場合によっては成文法すらなく慣習法で物事が決まる地域も多い。
そのようなところでも『法』を執行するのが司法官なので、当然ながら実力行使もあり得るから武装しているのだろう。
ただし面倒なのは成文法で決まっていない事は当人の判断で決められてしまうので、司法官毎に判断基準が違うのは当たり前だし、事前にその基準を知る事も出来ないのだ。
ひょっとすると『よそ者』と言うだけで敵視するようなタイプもいるかもしれないので、警戒を怠るわけにはいかないな。
「わたしの事はアルと呼んで下さい。それでいかなるご用でしょうか?」
「お前達は旅の者らしいな」
「そうです。だからこの地域の事はよく知りませんので、なぜわたし達が呼び止められたのか教えて下さい」
この質問に対し、ヴェガが口にした事はオレの背筋を寒くするものだった。
「汚らわしい干拓地の者どもがこの地を侵していると聞き、警戒をして回っているのだ」
うげえ。いきなり干拓地の人々を『汚らわしい』かよ。
あからさまに嫌悪しているのだな。
ガレリア達を下がらせていて本当によかったと、胸をなで下ろさずにはいられない。
しかしここはその理由を問うておくべきだろう。
「わたしもあちらの干拓地を通過して来たのですけど、そこに住んでいた人たちは殆どがごく普通の農民でした。なぜそのように仰るのでしょうか?」
「確かに一般の農民が普段、邪悪な行為に手を染めているとまでは言わん。しかし奴らの崇拝する神はおぞましき邪神なのだ!」
う~ん。確かに敵対している相手をそのように蔑む事は珍しい事では無いけど、この人の嫌悪感は尋常では無いな。
「あのう。すみません。干拓地の神様は邪神なのですか?」
「その通りだ。もしもかなうならば司祭供はアンティリウス神の光を象徴するこの槍で一人残らず突き殺してやりたい気分だぞ!」
そういってヴェガは切っ先が黄金に輝く槍を固く握りしめる。
その高ぶりは明らかに尋常ではない。
相当な怒りと敵意を抱いているらしい。
この場合、家族を殺されたとか本当に恨みを抱いて当然という場合もあれば、ただ『連中は邪悪な奴らだ』と聞かされ続けてきたので、そう思い込んでいる場合の両方がある。
残念ながらこの世界では『相手も同じような人間』だという事を理解し、和解するという都合のいい事は滅多にない。
「しかし先ほども言いましたけど、わたしが見てきた限りではそんなに邪悪な様子は感じられませんでしたけど……」
邪悪に見える要素があるとすれば、かつて火山の噴火で命を落とした人々の亡霊を『地の底に呼ぶもの』として使役しているという事ぐらいか。
「確かにただ通過してきただけならば、気がつかない事は仕方あるまい……だが奴らが行っている身の毛のよだつ行為は唾棄すべきものなのだ」
「よろしければその中身について教えてくれませんか?」
ひょっとするととんでもない誤解をしているかもしれないし、些細な行き違いがとてつもなく増幅されているかもしれない。
もしかしたら双子神の教団は『人間を生け贄に捧げる』など本当に邪悪な行いに裏で手を染めている可能性もゼロでは無い。
もちろんそのいずれであっても、この場でオレが否定したところでヴェガが考えを変える筈が無いのでただ話を聞くしか無いのだが。
そしてここでヴェガは我慢ならないと言わんばかりに叫ぶ。
「奴らの司祭階級は……近親婚を、それも双子の兄妹同士の婚姻を推奨しているのだ! ああ……何とおぞましい……」
ヴェガは口にしただけで胸が悪くなったかのようにその身をぶるりと震わせる。
一番の問題はそっちかよ!
確かに近親婚は死でもって罰せられるところもあると聞いた事があるが、そんな文化を有している相手と双子の近親婚を行っている双子神の支配地域が接していたら、いろいろ面倒になるのは当たり前か。
自分達の支配地域にそんな事を行っている教団の聖地があれば、そりゃ破壊・隠蔽しようともするだろう。
しかしガレリア・エレリアの兄妹はそんな体制を嫌って逃げ出してきたのだが、いまヴェガがあの二人を見たら誤解しない筈が無い。
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