異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
667 / 1,316
第17章 海と大地の狭間に

第667話 許されざる行為について

しおりを挟む
 とりあえずエレリアとガレリアが少し後ろに下がったところで、オレは暴力的活動を抑止する『調和』をかけて騎兵と向き直る。
 あちらの兄妹も双子だと分かると面倒なのは察して距離を置いてくれているのは、少しばかりありがたい。
 そして前に止まった騎兵からいぶかしむ声が聞こえてくる。

「ふうむ。そなたは女か?」

 近くで見ると相手もまた若い女性だ。
 軽そうな革鎧をまとい、頭部だけは金属製の兜をつけている。
 それに加えて装備している槍の穂先は金色に輝いているのだが、どうやら金メッキしているらしい。
 動きやすい軽装ではあるけど、それでも実用と見栄えの両方を重視した装備品からして結構な地位にありそうだな。
 女戦士は過去に出会った事はあるけど、それでもこの世界では結構珍しい存在だ。

「はい。あちらの二人は連れですが、この辺りの言葉をよく知りませんので話はこちらにさせていただけますか?」
「よかろう。我が名はヴェガ。アンティリウスに仕えし武装司法官だ」

 アンティリウスの名はかなり前に聞いた事があるな。
 確かオレが幼女化していたときに出会った『地界の太陽神シャガーシュ』の信徒だったエウスブスが口にしていた『太陽の光のごとく真実を照らし公明正大さを司る神』のはずだ。
 それで司法官と言う事は、地域を回って犯罪を取り締まり、場合によってはもめ事に対し神の名の元に即決裁判を行う役目を有しているのだな。
 この世界では三権分立どころか、場合によっては成文法すらなく慣習法で物事が決まる地域も多い。
 そのようなところでも『法』を執行するのが司法官なので、当然ながら実力行使もあり得るから武装しているのだろう。
 ただし面倒なのは成文法で決まっていない事は当人の判断で決められてしまうので、司法官毎に判断基準が違うのは当たり前だし、事前にその基準を知る事も出来ないのだ。
 ひょっとすると『よそ者』と言うだけで敵視するようなタイプもいるかもしれないので、警戒を怠るわけにはいかないな。

「わたしの事はアルと呼んで下さい。それでいかなるご用でしょうか?」
「お前達は旅の者らしいな」
「そうです。だからこの地域の事はよく知りませんので、なぜわたし達が呼び止められたのか教えて下さい」

 この質問に対し、ヴェガが口にした事はオレの背筋を寒くするものだった。

「汚らわしい干拓地の者どもがこの地を侵していると聞き、警戒をして回っているのだ」

 うげえ。いきなり干拓地の人々を『汚らわしい』かよ。
 あからさまに嫌悪しているのだな。
 ガレリア達を下がらせていて本当によかったと、胸をなで下ろさずにはいられない。
 しかしここはその理由を問うておくべきだろう。

「わたしもあちらの干拓地を通過して来たのですけど、そこに住んでいた人たちは殆どがごく普通の農民でした。なぜそのように仰るのでしょうか?」
「確かに一般の農民が普段、邪悪な行為に手を染めているとまでは言わん。しかし奴らの崇拝する神はおぞましき邪神なのだ!」

 う~ん。確かに敵対している相手をそのように蔑む事は珍しい事では無いけど、この人の嫌悪感は尋常では無いな。

「あのう。すみません。干拓地の神様は邪神なのですか?」
「その通りだ。もしもかなうならば司祭供はアンティリウス神の光を象徴するこの槍で一人残らず突き殺してやりたい気分だぞ!」

 そういってヴェガは切っ先が黄金に輝く槍を固く握りしめる。
 その高ぶりは明らかに尋常ではない。
 相当な怒りと敵意を抱いているらしい。
 この場合、家族を殺されたとか本当に恨みを抱いて当然という場合もあれば、ただ『連中は邪悪な奴らだ』と聞かされ続けてきたので、そう思い込んでいる場合の両方がある。
 残念ながらこの世界では『相手も同じような人間』だという事を理解し、和解するという都合のいい事は滅多にない。

「しかし先ほども言いましたけど、わたしが見てきた限りではそんなに邪悪な様子は感じられませんでしたけど……」

 邪悪に見える要素があるとすれば、かつて火山の噴火で命を落とした人々の亡霊を『地の底に呼ぶもの』コーラー・イン・デプスとして使役しているという事ぐらいか。

「確かにただ通過してきただけならば、気がつかない事は仕方あるまい……だが奴らが行っている身の毛のよだつ行為は唾棄すべきものなのだ」
「よろしければその中身について教えてくれませんか?」

 ひょっとするととんでもない誤解をしているかもしれないし、些細な行き違いがとてつもなく増幅されているかもしれない。
 もしかしたら双子神の教団は『人間を生け贄に捧げる』など本当に邪悪な行いに裏で手を染めている可能性もゼロでは無い。
 もちろんそのいずれであっても、この場でオレが否定したところでヴェガが考えを変える筈が無いのでただ話を聞くしか無いのだが。
 そしてここでヴェガは我慢ならないと言わんばかりに叫ぶ。

「奴らの司祭階級は……近親婚を、それも双子の兄妹同士の婚姻を推奨しているのだ! ああ……何とおぞましい……」

 ヴェガは口にしただけで胸が悪くなったかのようにその身をぶるりと震わせる。
 一番の問題はそっちかよ!
 確かに近親婚は死でもって罰せられるところもあると聞いた事があるが、そんな文化を有している相手と双子の近親婚を行っている双子神の支配地域が接していたら、いろいろ面倒になるのは当たり前か。
 自分達の支配地域にそんな事を行っている教団の聖地があれば、そりゃ破壊・隠蔽しようともするだろう。
 しかしガレリア・エレリアの兄妹はそんな体制を嫌って逃げ出してきたのだが、いまヴェガがあの二人を見たら誤解しない筈が無い。
 本当に相変わらず、オレが直面するのはややこしい事ばかりだな。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...