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第17章 海と大地の狭間に
第671話 純粋培養な司法官様が
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何とも面倒な事に四人となってしまったオレ達一行は、それでも一応はこれまで通りに旅を続けていた。
「ところでお前達の目的地はどこなのだ?」
普通は最初にそこを確認してから同行するもんでしょうが。
向こう見ずにも程がある――と言いたいが、オレが人の事を言えた義理では全く無いのも分かっている。
そして当然、この質問があると思っていたオレはちょっとばかり考えていた理由を唱える。
珍しく事前の準備が図に当たったと考えるべきだろうか。
「実はそちらのエレリアさんは身体が丈夫では無いので、湯治を考えているのです」
この先にかつて大噴火が引き起こした火山があるなら、温泉もあって不思議では無い。
この世界では入浴は一般的では無く、風呂と言えば普通は蒸し風呂だけど、それでも湯にゆっくりとつかる例もあるからな。
「ふうむ……そのような事は聞いたことはあるが……」
ヴェガは頭から否定しているわけでもないようだが、釈然としない様子でもある。
まあこっちでは観光旅行はもちろん、病気の治療で温泉に入るという意識が無くても不思議では無いが、ここでオレは更にたたみかける。
「もしもヴェガさんがお詳しいのならば、よいところを紹介してもらえないでしょうか?」
この問いかけに対しヴェガは眉をひそめる。
「確かに幾つか聞き及んではいるが……そのようなところは往々にしてふしだらな行為がまかり通っているのだ」
ひょっとすると混浴の露天風呂とかあるのか?
いや。風呂で一汗流した後で、今度は異性と一汗流す場所があってもおかしくはない。
性的な禁忌が厳しくて抑圧の強そうなヴェガにとって、そういうところは不快感を抱く場所なんだろうなあ。
「しかし……まだマシなところは知っているからそこに案内してやろう」
「ありがとうございます」
オレが礼を述べたところで、ガレリアは耳打ちしてくる。
「おい。大丈夫なのか?」
「そこで聖地探しの手がかりが得られるかもしれません。ここはひとまず従いましょう」
温泉が湧くようなところは元の世界でもしばしば聖地として崇拝を集めるところでもあったからな。
少なくとも双子神の父神である火山の神の聖地であれば、何らかの手がかりが得られるかもしれない。
しかし幾ら偽装恋人とは言え、ガレリアはいちいちくっつきすぎだ。
そう思った時に、ヴェガがまた不快そうに声を挙げる。
「おい。いくら恋人同士でも往来でそんなに身を寄せ合うな」
「これはすみません!」
オレは格好の口実を得て距離を置くと、ガレリアはやっぱり残念そうな顔をする。
「本当に兄妹同士では何も無いとしても、公然とふしだらな行いをするのは問題だぞ」
ヴェガがオレとガレリアがボソボトと話をしているのを『恋人同士の甘い語らい』と勘違いしてくれているのは、少しだけでもありがたい要素かな。
「あと改めて聞くが、お前達は恋人同士であっても結婚しているわけではないのだな?」
「もちろんですよ」
「ああ。今のところはな――」
ガレリアの発言にはかなり含みがありそうに聞こえるが、敢えて無視しよう。
「それでは一つ聞くが……その……」
またしてもヴェガの言葉はどこか歯切れが悪くなってきたな。
ひょっとすると『駆け落ち』だとでも思っているのだろうか。
普通に考えて、兄が恋人と駆け落ちしたとして、双子の妹が同行する事は無いだろう。
そこでヴェガはやたらとぎこちなく問いかけてくる。
「お前達だが……まさか『こんぜんこうしょう』はしていないだろうな?」
「はあ? いま何と言われました?」
いまいち意味が理解出来ず、オレが改めて問いかけるとヴェガは半ばやけっぱちな様子で叫び出す。
「だ、だから『婚前交渉』をしているのかどうか聞いているんだ!」
そうか。要するにオレとガレリアがチョメチョメしているのかどうかを聞いているのか。
しかもそれを口にするだけで『ひとりセクハラ』をしているのかのごとく、恥ずかしがっているのは何とも言いがたい。
「おい。『こんぜんこうしょう』とは一体何の事だ?」
ガレリアはもちろんエレリアも意味が分からずにキョトンとしている。双子神の教団でそんな言葉を聞いた事が無いのだろう。
「それはだな……」
ヴェガは説明を始めようとして、やっぱり赤面する。
本当にこの人は潔癖なんだな。
いままで性的な面では開放的というかあけすけな相手が多かったから、そういう意味ではむしろ新鮮にすら感じられるな。
仕方ないのでここはオレの方から助け船を出すとしよう。
「それなら大丈夫です。わたしたちはそんな関係ではありませんから」
「しかし……お前達は人前でせ、せっぷんをするのも恥じない関係なのだろう……」
「違います!」
これは本当に嘘では無いので敢えて力説する。
「あれはガレリアさんが『恋人だと証明する』ために必要だと思って口にしただけで、普段なら決してそんなことはしませんよ」
「それならばいいのだが……」
最初に出会った時の凜々しいイメージも殆ど台なしの『純粋培養乙女ぶり』だな。
しかしこんなことで大丈夫なのか?
他人事ながら心配になってくるぞ。
たぶんヴェガはこの若さで司法官になるために脇目もふらずに努力してきたので、そちらの面にはてんで免疫が無いのだろう。
いままであの手この手で迫ってきた男達には何度も手を焼かされてきたが、面倒という点ではヴェガも大して変わらないのだ。
「ところでお前達の目的地はどこなのだ?」
普通は最初にそこを確認してから同行するもんでしょうが。
向こう見ずにも程がある――と言いたいが、オレが人の事を言えた義理では全く無いのも分かっている。
そして当然、この質問があると思っていたオレはちょっとばかり考えていた理由を唱える。
珍しく事前の準備が図に当たったと考えるべきだろうか。
「実はそちらのエレリアさんは身体が丈夫では無いので、湯治を考えているのです」
この先にかつて大噴火が引き起こした火山があるなら、温泉もあって不思議では無い。
この世界では入浴は一般的では無く、風呂と言えば普通は蒸し風呂だけど、それでも湯にゆっくりとつかる例もあるからな。
「ふうむ……そのような事は聞いたことはあるが……」
ヴェガは頭から否定しているわけでもないようだが、釈然としない様子でもある。
まあこっちでは観光旅行はもちろん、病気の治療で温泉に入るという意識が無くても不思議では無いが、ここでオレは更にたたみかける。
「もしもヴェガさんがお詳しいのならば、よいところを紹介してもらえないでしょうか?」
この問いかけに対しヴェガは眉をひそめる。
「確かに幾つか聞き及んではいるが……そのようなところは往々にしてふしだらな行為がまかり通っているのだ」
ひょっとすると混浴の露天風呂とかあるのか?
いや。風呂で一汗流した後で、今度は異性と一汗流す場所があってもおかしくはない。
性的な禁忌が厳しくて抑圧の強そうなヴェガにとって、そういうところは不快感を抱く場所なんだろうなあ。
「しかし……まだマシなところは知っているからそこに案内してやろう」
「ありがとうございます」
オレが礼を述べたところで、ガレリアは耳打ちしてくる。
「おい。大丈夫なのか?」
「そこで聖地探しの手がかりが得られるかもしれません。ここはひとまず従いましょう」
温泉が湧くようなところは元の世界でもしばしば聖地として崇拝を集めるところでもあったからな。
少なくとも双子神の父神である火山の神の聖地であれば、何らかの手がかりが得られるかもしれない。
しかし幾ら偽装恋人とは言え、ガレリアはいちいちくっつきすぎだ。
そう思った時に、ヴェガがまた不快そうに声を挙げる。
「おい。いくら恋人同士でも往来でそんなに身を寄せ合うな」
「これはすみません!」
オレは格好の口実を得て距離を置くと、ガレリアはやっぱり残念そうな顔をする。
「本当に兄妹同士では何も無いとしても、公然とふしだらな行いをするのは問題だぞ」
ヴェガがオレとガレリアがボソボトと話をしているのを『恋人同士の甘い語らい』と勘違いしてくれているのは、少しだけでもありがたい要素かな。
「あと改めて聞くが、お前達は恋人同士であっても結婚しているわけではないのだな?」
「もちろんですよ」
「ああ。今のところはな――」
ガレリアの発言にはかなり含みがありそうに聞こえるが、敢えて無視しよう。
「それでは一つ聞くが……その……」
またしてもヴェガの言葉はどこか歯切れが悪くなってきたな。
ひょっとすると『駆け落ち』だとでも思っているのだろうか。
普通に考えて、兄が恋人と駆け落ちしたとして、双子の妹が同行する事は無いだろう。
そこでヴェガはやたらとぎこちなく問いかけてくる。
「お前達だが……まさか『こんぜんこうしょう』はしていないだろうな?」
「はあ? いま何と言われました?」
いまいち意味が理解出来ず、オレが改めて問いかけるとヴェガは半ばやけっぱちな様子で叫び出す。
「だ、だから『婚前交渉』をしているのかどうか聞いているんだ!」
そうか。要するにオレとガレリアがチョメチョメしているのかどうかを聞いているのか。
しかもそれを口にするだけで『ひとりセクハラ』をしているのかのごとく、恥ずかしがっているのは何とも言いがたい。
「おい。『こんぜんこうしょう』とは一体何の事だ?」
ガレリアはもちろんエレリアも意味が分からずにキョトンとしている。双子神の教団でそんな言葉を聞いた事が無いのだろう。
「それはだな……」
ヴェガは説明を始めようとして、やっぱり赤面する。
本当にこの人は潔癖なんだな。
いままで性的な面では開放的というかあけすけな相手が多かったから、そういう意味ではむしろ新鮮にすら感じられるな。
仕方ないのでここはオレの方から助け船を出すとしよう。
「それなら大丈夫です。わたしたちはそんな関係ではありませんから」
「しかし……お前達は人前でせ、せっぷんをするのも恥じない関係なのだろう……」
「違います!」
これは本当に嘘では無いので敢えて力説する。
「あれはガレリアさんが『恋人だと証明する』ために必要だと思って口にしただけで、普段なら決してそんなことはしませんよ」
「それならばいいのだが……」
最初に出会った時の凜々しいイメージも殆ど台なしの『純粋培養乙女ぶり』だな。
しかしこんなことで大丈夫なのか?
他人事ながら心配になってくるぞ。
たぶんヴェガはこの若さで司法官になるために脇目もふらずに努力してきたので、そちらの面にはてんで免疫が無いのだろう。
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