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第17章 海と大地の狭間に
第716話 ひとまず落ち着いたところで考えると
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スキリオスの霊体が立ち去ったあと――この寺院から出られない筈だから消滅したわけではない――憑かれていたガレリアは目を瞬かせる。
そしてしばしの間、感触を確かめるように自分の手足を動かし、それでようやく安堵の息を吐く。
「ふう。ようやく身体が動かせるようになった」
ついさっきまで亡霊に身体を奪われていたのに、かなり落ち着いた様子なのは、たぶんテレパシーでエレリアと連絡していたからだろう。
これを便利というべきかどうかは分からないけど、細かい説明が不要なのはありがたい。
そしてガレリアはオレやヴェガに対して頭を下げる。
「お前達にもいろいろと心配させてすまなかったな」
「いえ。お気になさらず」
「まあガレリアが無事でよかった」
とりあえずガレリアの相手はエレリアとヴェガに任せて、オレは周囲の様子を探ろう。
たぶん凄い価値のあるお宝も周囲に埋もれてはいるだろうが、オレはそんなモノに興味は無い。
もっとも重要なのは間違い無く大祭壇だろう。
さきほどのスキリオスの言葉からすれば、この魔力と過去の契約を使えば大精霊を動かして地盤沈下もどうにか出来るらしい。
ただ問題なのはそれがどこまで人間の思惑通りになるかだ。
たぶんその大精霊に対し『人間に危害を加えないように』などと頼んでも、その通りに行動してくれるとは思えない。
別にその大精霊に悪意があるという意味では無く、大地を揺るがすほどの強大な存在にとって人間に危害を加えずに行動するのは、たとえるなら『巨象にピアノを弾かせる』ぐらい無理のあることだからだ。
もちろんスキリオスが大げさな事を口にしていただけで、せいぜい地中に埋もれたこの寺院を破壊して囚われた魂を解放するぐらいの力しか無いかもしれないけど、それをわざわざ試す勇気はオレには無い。
「ところでこの祭壇を使えば、大精霊に頼み事が出来るのだよな?」
ガレリアも当然ながら、祭壇に注視しているが、そこでチラとエレリアを見る。
確かに大司祭から黄金の杖を受け継いだエレリアならば、スキリオスと同じようにこの大祭壇も使用出来るかもしれない。
しかしオレにはそれがいい事だとはとても思えない。
「待って下さい。それに触るのは危険です」
「そうだな。確かにこんな祭壇を使うとなると慎重にいかねばならんな。一歩間違えば『神罰』が下るかもしれん」
オレの感覚とはちょっと違うけど、ガレリアもそう簡単にいくとは思っていないのか。
「もしもオレが出来るのなら、喜んでやらせてもらうのだがな」
そういってガレリアはさりげなくエレリアと祭壇の間に入る。
たぶんエレリアが下手に接触するのを避けたいのだろう。
ここで『エレリアひとりの犠牲で済むなら安いものだ』などと言い出さず、妹の方を案じてくれているのはホッとするところだ――もしもガレリア自身の手で可能だったら、喜んでやるかもしれないけど。
「そうだ。いずれにしてもこの祭壇もここにあるものも、扱いをどうするかはお前達が決める事では無いぞ」
ここでヴェガも口を挟んでくる。
「なら俺達はどうすればいいんだ? まさかヴェガが決めるのか?」
「それは……アンティリウス神に神託し、法に則って調べるだけだ。ただ恐らくは……」
ここでヴェガはチラとエレリアやオレを見る。
推測だが数百年前とは言えどここの正式な代表者である大司祭から譲られたとなれば、エレリアが権利を受け継いだという結論になる可能性が高いのかな。
この場合、もっとも賢明な方法はやっぱりこんなのには関わらない事だと思うけど、そうすると干拓地の地盤沈下はどうする事も出来ないという結論になってしまう。
結局のところ大堤防の向こうに更に堤防を作るような、何年どころか何十年かかるか見当もつかない遠大な方法を地道にやっていくしかないと思う。
しかしそんな悠長で遠大な結論を受け入れてくれないから、双子神の教団が『神の祝福を受けた双子の兄妹を結婚させて神の力を増す』という結論に達してしまったのだろう。
困った事に今すぐこの祭壇を使わないにしても、ガレリア達が双子神の教団に戻って報告すれば、いつかはこれを使おうと考える人間が出るのは確実だ。
そうするとこの寺院の亡霊達をどうにか解放して、後は埋め戻すのが一番賢明だろうか。
知り合いに頼んでこの地を発掘してもらうとは言ったけど、手段はどうあれ火砕流に埋もれた亡霊達を解放すればスキリオスも文句は無いだろう。
火砕流に埋もれているとは言えど、地の底深く沈んでいるわけではないから、オレが接触出来る地の精霊に頼めばどうにかなるはずだ。
いや。人手を集めてこの都市を発掘しても、亡霊が吹き出したら犠牲が出かねない。
ちょっと前の廃虚でも、吹き出してきた亡霊を恐れて皆逃げ出して廃虚になったという話だったから、タダでは済まないのは確かだろう。
そうするとオレが精霊でどうにか亡霊を解放する方を優先させた方がまだマシかもしれないぞ。
まあこの地を守ってきた不死の大司祭はもういないから、どちらにしても将来的にはここが誰かの手で掘り返されるのは間違い無い。
結局のところ、今までもよくあったようにオレに出来る事なんて、せいぜいその場しのぎで一時的なものにしかならないのだ。
そしてしばしの間、感触を確かめるように自分の手足を動かし、それでようやく安堵の息を吐く。
「ふう。ようやく身体が動かせるようになった」
ついさっきまで亡霊に身体を奪われていたのに、かなり落ち着いた様子なのは、たぶんテレパシーでエレリアと連絡していたからだろう。
これを便利というべきかどうかは分からないけど、細かい説明が不要なのはありがたい。
そしてガレリアはオレやヴェガに対して頭を下げる。
「お前達にもいろいろと心配させてすまなかったな」
「いえ。お気になさらず」
「まあガレリアが無事でよかった」
とりあえずガレリアの相手はエレリアとヴェガに任せて、オレは周囲の様子を探ろう。
たぶん凄い価値のあるお宝も周囲に埋もれてはいるだろうが、オレはそんなモノに興味は無い。
もっとも重要なのは間違い無く大祭壇だろう。
さきほどのスキリオスの言葉からすれば、この魔力と過去の契約を使えば大精霊を動かして地盤沈下もどうにか出来るらしい。
ただ問題なのはそれがどこまで人間の思惑通りになるかだ。
たぶんその大精霊に対し『人間に危害を加えないように』などと頼んでも、その通りに行動してくれるとは思えない。
別にその大精霊に悪意があるという意味では無く、大地を揺るがすほどの強大な存在にとって人間に危害を加えずに行動するのは、たとえるなら『巨象にピアノを弾かせる』ぐらい無理のあることだからだ。
もちろんスキリオスが大げさな事を口にしていただけで、せいぜい地中に埋もれたこの寺院を破壊して囚われた魂を解放するぐらいの力しか無いかもしれないけど、それをわざわざ試す勇気はオレには無い。
「ところでこの祭壇を使えば、大精霊に頼み事が出来るのだよな?」
ガレリアも当然ながら、祭壇に注視しているが、そこでチラとエレリアを見る。
確かに大司祭から黄金の杖を受け継いだエレリアならば、スキリオスと同じようにこの大祭壇も使用出来るかもしれない。
しかしオレにはそれがいい事だとはとても思えない。
「待って下さい。それに触るのは危険です」
「そうだな。確かにこんな祭壇を使うとなると慎重にいかねばならんな。一歩間違えば『神罰』が下るかもしれん」
オレの感覚とはちょっと違うけど、ガレリアもそう簡単にいくとは思っていないのか。
「もしもオレが出来るのなら、喜んでやらせてもらうのだがな」
そういってガレリアはさりげなくエレリアと祭壇の間に入る。
たぶんエレリアが下手に接触するのを避けたいのだろう。
ここで『エレリアひとりの犠牲で済むなら安いものだ』などと言い出さず、妹の方を案じてくれているのはホッとするところだ――もしもガレリア自身の手で可能だったら、喜んでやるかもしれないけど。
「そうだ。いずれにしてもこの祭壇もここにあるものも、扱いをどうするかはお前達が決める事では無いぞ」
ここでヴェガも口を挟んでくる。
「なら俺達はどうすればいいんだ? まさかヴェガが決めるのか?」
「それは……アンティリウス神に神託し、法に則って調べるだけだ。ただ恐らくは……」
ここでヴェガはチラとエレリアやオレを見る。
推測だが数百年前とは言えどここの正式な代表者である大司祭から譲られたとなれば、エレリアが権利を受け継いだという結論になる可能性が高いのかな。
この場合、もっとも賢明な方法はやっぱりこんなのには関わらない事だと思うけど、そうすると干拓地の地盤沈下はどうする事も出来ないという結論になってしまう。
結局のところ大堤防の向こうに更に堤防を作るような、何年どころか何十年かかるか見当もつかない遠大な方法を地道にやっていくしかないと思う。
しかしそんな悠長で遠大な結論を受け入れてくれないから、双子神の教団が『神の祝福を受けた双子の兄妹を結婚させて神の力を増す』という結論に達してしまったのだろう。
困った事に今すぐこの祭壇を使わないにしても、ガレリア達が双子神の教団に戻って報告すれば、いつかはこれを使おうと考える人間が出るのは確実だ。
そうするとこの寺院の亡霊達をどうにか解放して、後は埋め戻すのが一番賢明だろうか。
知り合いに頼んでこの地を発掘してもらうとは言ったけど、手段はどうあれ火砕流に埋もれた亡霊達を解放すればスキリオスも文句は無いだろう。
火砕流に埋もれているとは言えど、地の底深く沈んでいるわけではないから、オレが接触出来る地の精霊に頼めばどうにかなるはずだ。
いや。人手を集めてこの都市を発掘しても、亡霊が吹き出したら犠牲が出かねない。
ちょっと前の廃虚でも、吹き出してきた亡霊を恐れて皆逃げ出して廃虚になったという話だったから、タダでは済まないのは確かだろう。
そうするとオレが精霊でどうにか亡霊を解放する方を優先させた方がまだマシかもしれないぞ。
まあこの地を守ってきた不死の大司祭はもういないから、どちらにしても将来的にはここが誰かの手で掘り返されるのは間違い無い。
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