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第18章 奇怪なる殺戮者?
第723話 夜闇の中にいたものは
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「た、助けてぇ!」
オレはつい先ほど立ち去ったばかりの方角から響く悲鳴を耳にし、反射的に飛び出した。
とりあえず『筋力強化』『自己再生強化』その他、思いつく限りの魔法を自分にかけつつ走り出す。
さほど離れてはいなかったから、すぐに視界には先ほどの小柄な外套の相手が腰を抜かして地面を這い回っている姿が入り、その前にはもう別の人影が立っていた。
もう一人の相手の見た目はやや大柄な男性ぐらいのサイズで、やはり外套をかぶっているので顔は分からないが、少なくとも霊体ではなく肉体のある相手なのは間違い無い。
そして小柄な方は先ほどと比較して、その外套が大きく破れている。
明らかに何らかの攻撃を受けて引き裂かれているらしい。
一瞬、ヒヤッとしたが腰を抜かしつつ結構、元気に這い回っているその動きからして、負傷はしている様子だが少なくとも致命傷ではないようだ。
たぶん体よりだいぶ大きいぶかぶかの外套をまとっていたので、たまたま相手の攻撃がかすめる程度でどうにかかわせたのだろう。
くう! あれが殺人鬼なのか?
いや。考えている場合じゃ無い。先ほどの悲鳴を聞きつけて、警邏隊も気付いたらしく、あちこちで警報と思しき笛が鳴っているが、正確な場所までは分かっていないからこのままでは間に合うはずも無い。
そんなわけでオレは暴力的活動を抑止する『調和』をかけつつ、二人の間に飛び込む。
「大丈夫ですか?!」
「あ……あなたは?」
「説明は後です!」
近くで見たところ、先ほどの外套の相手は十代前半の少年だ。
赤い髪に優しげで整った顔立ち、こんな深夜に外出禁止令に逆らって出歩いているとは思えない、育ちの良さそうな外見をしている。
そんな少年がなぜこんなところにいるのか、何とも不可解だが今はそんな事を尋ねている場合では無い。
負傷はしているもののさほど深い傷ではないが、恐怖のあまり腰を抜かして動く事が出来ないらしい。
ひとまず『応急手当』で少年の傷を癒やす。
「こ、これはもしや?」
この少年にもオレが使ったのは回復魔法だと分かったようだ。
こうなるといつものように誤解されるのは間違い無いけど、とっくに慣れっこだよ。
そして振り向くとこの少年を攻撃した相手は、いきなり割り込んできたこちらの様子を伺っているらしい。
少年と同様に外套でその身を隠しているが、その手には突き出た鋭い爪が見えており、肉体の異様さはフード越しでも明らかだ。
だがこんな相手がいくら変装していたとしても、町中で行動出来るとは思えない。
これまでにも『二本足の狼』のテルモーとか、魔法で自分の身を変異させる相手に出会った事はあるが、こいつも同じような魔法で変身しているのか?
確かにそれならばこっそりと変身して連続殺人を行い、普段は何食わぬ顔で普通に生活する事も可能だろう。
だがオレの『調和』が効いているならこちらを攻撃は出来ないはずだし、このままなら遠からず警邏隊の人間も来るだろう。
そんなわけでどうにか話をしようとオレは問いかける。
「あなたはいったいなにもの――」
「むうう!」
だがいきなり相手はこちらに向けて飛び込んできて、その爪を閃かせる。
なんだって?
まさか『調和』が効いていないのか?
「くう! 逃げて!」
オレは少年を突き飛ばしつつ、地面を転がって攻撃を避ける。
そしてフードの外れた相手の姿は、毛むくじゃらで筋肉に覆われた屈強そうな半人半獣の姿だった。
やはり何らかの魔法で自分の身を変異させているのだろうか?
だがそれにしては妙だ。オレの『魔法眼』でその身からは放つはずの魔力が感知出来ない。
残念ながら『魔法眼』ではかかっている魔法の中身までは分からないが、魔力の強弱はその放つオーラでだいたいの見当はつく。
もしもこの身体が魔法で変化させたものならば、全身がボンヤリと光って見えるはず。そうすると魔法を使っていないのか?
いったい何がどうなっているんだ?
いや。今は相手が何者かは後回しだ。
オレの『調和』が効かないなら『平静』で相手の精神をロックさせて行動を封じるとしよう。
そんなわけでオレは最大魔力で『平静』をかける。これで肉体的な打撃を受けない限り、外界には反応できなくなるはず――だった。
「ぬがあ!」
どういうわけか相手はまるで止まる事無く、またしてもその毛むくじゃらの腕を振るってくるので、オレは大きく跳躍してかわす――筋力強化系の魔法をかけていなかったら、下手をすると内臓をぶちまけていたかもしれない。
コイツには『調和』も『平静』も効かないとすると、精神系魔法は受け付けないのかもしれないぞ。
まったく厄介な相手だ。少なくとも今のオレには止める手段が無い。
それならばもうオレに出来るのは一つだけ。もちろん逃げるのだ!
再度、振るわれた爪をどうにかかわしつつ、オレはどうにか立ち上がりつつある少年のところに駆けつける。
「とりあえず逃げますよ!」
「あ……はい……」
もちろん怪物はこちらの都合に付き合ってくれるはずもなく、勢いよく迫ってくるが、それならそれで打つ手はある。
すぐ近くまでその爪が迫ってきたところで、オレは手で少年の目を覆いつつ『陽光』を相手の顔面に向けて放つ。
「があああ!」
さすがにこれは効いたらしい。もちろん眩しいだけなので、いっとき視界を奪うのがせいぜいだが、今はこれで十分だ。
そして遠くからは警邏隊の声も聞こえてくる。
「いったい何が起きているんだ!」
「あちらで光ったぞ!」
今の『陽光』は目つぶしだけでなく、警邏隊にこちらの正確な場所を教えるためでもある。
すぐにここまで駆けつけてくるだろうし、後の事は任せるとしよう。
そんなわけでオレは少年の手を引きつつ、急いで怪物から逃げ出した。
オレはつい先ほど立ち去ったばかりの方角から響く悲鳴を耳にし、反射的に飛び出した。
とりあえず『筋力強化』『自己再生強化』その他、思いつく限りの魔法を自分にかけつつ走り出す。
さほど離れてはいなかったから、すぐに視界には先ほどの小柄な外套の相手が腰を抜かして地面を這い回っている姿が入り、その前にはもう別の人影が立っていた。
もう一人の相手の見た目はやや大柄な男性ぐらいのサイズで、やはり外套をかぶっているので顔は分からないが、少なくとも霊体ではなく肉体のある相手なのは間違い無い。
そして小柄な方は先ほどと比較して、その外套が大きく破れている。
明らかに何らかの攻撃を受けて引き裂かれているらしい。
一瞬、ヒヤッとしたが腰を抜かしつつ結構、元気に這い回っているその動きからして、負傷はしている様子だが少なくとも致命傷ではないようだ。
たぶん体よりだいぶ大きいぶかぶかの外套をまとっていたので、たまたま相手の攻撃がかすめる程度でどうにかかわせたのだろう。
くう! あれが殺人鬼なのか?
いや。考えている場合じゃ無い。先ほどの悲鳴を聞きつけて、警邏隊も気付いたらしく、あちこちで警報と思しき笛が鳴っているが、正確な場所までは分かっていないからこのままでは間に合うはずも無い。
そんなわけでオレは暴力的活動を抑止する『調和』をかけつつ、二人の間に飛び込む。
「大丈夫ですか?!」
「あ……あなたは?」
「説明は後です!」
近くで見たところ、先ほどの外套の相手は十代前半の少年だ。
赤い髪に優しげで整った顔立ち、こんな深夜に外出禁止令に逆らって出歩いているとは思えない、育ちの良さそうな外見をしている。
そんな少年がなぜこんなところにいるのか、何とも不可解だが今はそんな事を尋ねている場合では無い。
負傷はしているもののさほど深い傷ではないが、恐怖のあまり腰を抜かして動く事が出来ないらしい。
ひとまず『応急手当』で少年の傷を癒やす。
「こ、これはもしや?」
この少年にもオレが使ったのは回復魔法だと分かったようだ。
こうなるといつものように誤解されるのは間違い無いけど、とっくに慣れっこだよ。
そして振り向くとこの少年を攻撃した相手は、いきなり割り込んできたこちらの様子を伺っているらしい。
少年と同様に外套でその身を隠しているが、その手には突き出た鋭い爪が見えており、肉体の異様さはフード越しでも明らかだ。
だがこんな相手がいくら変装していたとしても、町中で行動出来るとは思えない。
これまでにも『二本足の狼』のテルモーとか、魔法で自分の身を変異させる相手に出会った事はあるが、こいつも同じような魔法で変身しているのか?
確かにそれならばこっそりと変身して連続殺人を行い、普段は何食わぬ顔で普通に生活する事も可能だろう。
だがオレの『調和』が効いているならこちらを攻撃は出来ないはずだし、このままなら遠からず警邏隊の人間も来るだろう。
そんなわけでどうにか話をしようとオレは問いかける。
「あなたはいったいなにもの――」
「むうう!」
だがいきなり相手はこちらに向けて飛び込んできて、その爪を閃かせる。
なんだって?
まさか『調和』が効いていないのか?
「くう! 逃げて!」
オレは少年を突き飛ばしつつ、地面を転がって攻撃を避ける。
そしてフードの外れた相手の姿は、毛むくじゃらで筋肉に覆われた屈強そうな半人半獣の姿だった。
やはり何らかの魔法で自分の身を変異させているのだろうか?
だがそれにしては妙だ。オレの『魔法眼』でその身からは放つはずの魔力が感知出来ない。
残念ながら『魔法眼』ではかかっている魔法の中身までは分からないが、魔力の強弱はその放つオーラでだいたいの見当はつく。
もしもこの身体が魔法で変化させたものならば、全身がボンヤリと光って見えるはず。そうすると魔法を使っていないのか?
いったい何がどうなっているんだ?
いや。今は相手が何者かは後回しだ。
オレの『調和』が効かないなら『平静』で相手の精神をロックさせて行動を封じるとしよう。
そんなわけでオレは最大魔力で『平静』をかける。これで肉体的な打撃を受けない限り、外界には反応できなくなるはず――だった。
「ぬがあ!」
どういうわけか相手はまるで止まる事無く、またしてもその毛むくじゃらの腕を振るってくるので、オレは大きく跳躍してかわす――筋力強化系の魔法をかけていなかったら、下手をすると内臓をぶちまけていたかもしれない。
コイツには『調和』も『平静』も効かないとすると、精神系魔法は受け付けないのかもしれないぞ。
まったく厄介な相手だ。少なくとも今のオレには止める手段が無い。
それならばもうオレに出来るのは一つだけ。もちろん逃げるのだ!
再度、振るわれた爪をどうにかかわしつつ、オレはどうにか立ち上がりつつある少年のところに駆けつける。
「とりあえず逃げますよ!」
「あ……はい……」
もちろん怪物はこちらの都合に付き合ってくれるはずもなく、勢いよく迫ってくるが、それならそれで打つ手はある。
すぐ近くまでその爪が迫ってきたところで、オレは手で少年の目を覆いつつ『陽光』を相手の顔面に向けて放つ。
「があああ!」
さすがにこれは効いたらしい。もちろん眩しいだけなので、いっとき視界を奪うのがせいぜいだが、今はこれで十分だ。
そして遠くからは警邏隊の声も聞こえてくる。
「いったい何が起きているんだ!」
「あちらで光ったぞ!」
今の『陽光』は目つぶしだけでなく、警邏隊にこちらの正確な場所を教えるためでもある。
すぐにここまで駆けつけてくるだろうし、後の事は任せるとしよう。
そんなわけでオレは少年の手を引きつつ、急いで怪物から逃げ出した。
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