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第18章 奇怪なる殺戮者?
第735話 思わぬサレナの告白は
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それから少ししてシドンが離れたところで、サレナがオレの前に姿を見せる。
「さっきはあたしの事をシドンから聞いたんでしょ」
これはごまかしても仕方ないな。
「断っておきますけど、わたしが無理を言って強引に聞き出したのです。だから彼の事は責めないで下さい」
「別にいいわよ。シドンの知っている事ぐらいなら、少し調べたらすぐに分かるのだから」
サレナはどこか捨て鉢な様子が見える。
「ただそれでも嗅ぎ回られるのは不快だわ。だからここで一つ言っておくわ」
「何ですか?」
「アンタは本当にあちこちでいろいろなモノを見てきたみたいね。それは雰囲気からなんとなく分かるわよ」
自分で言うのも何だけど、確かにこの世界を旅するようになってから、一つの出来事だけで常人の一生分の経験を繰り返してきたとは思う。
いくら何でもそこまで分かっているとは思わないけど、それでもサレナもいろいろと感じるものがあるのだろうな。
「あとアンタも一応は善人で、世の中の善意とか正義とかを信じて、これまで生きてきた事も見当はつくわよ。だから誰に対しても優しくて、誠実であろうと振る舞っているのね」
「そんなに大したものではありませんよ」
一応は彼女なりにオレを褒めているらしい。
「だけどね……あたしにはあんたが絶対に体験していないと言い切れるものがたった一つだけあるわ」
「いったい何ですか」
それはひょっとして『父親の自殺を目の当たりにした』事だろうか。
確かにそれは体験していないというか、想像したくも無いな。
「このことはシドンには黙っていると約束してよ。あの子にも伝えていない話だからね」
「それは構いませんけど……」
一緒に暮らしている義弟のシドンにすら教えていない事をオレに教えるとしたらその理由は、先ほど言ったようにオレが尋常な相手でない事を悟ったからか。
確かに彼女の過去にはとてつもない重いモノがあるらしい。
しかしサレナが次に発した言葉は、そんなオレの想像を遥かに超えていた。
「あたしはね……死んだ『魔術師協会の会長』からこう言われたのよ」
え? 幾ら幼い頃に死別したと言っても、父親をまるで赤の他人のような表現だ。
「全身全霊の憎しみを込めた『お前さえいなければ』……それがあたしの覚えている最初の言葉よ」
「な?!」
この言葉にはさすがのオレも絶句した。
それはいったいどういうことだ?
その理由を想像するとしたら、シドンが先ほど口にしていたところからすると、サレナの母が彼女を産み落としてすぐに命を落とした事と関係があるのだろうか。
サレナの父は亡き妻をあまりに深く愛していたので、娘にその死の責任があると思い込んで、精神の均衡を欠いていた可能性がある。
生まれた直後は我慢出来ていても、次第に妻への思慕と反比例した娘への憎しみが募ってきて、サレナが物心ついたときにそれが爆発してしまったかもしれない。
いや。魔法の研究で成果を挙げたという噂があったそうだが、何らかの影響を受けて精神が壊れていたかもしれない。
自殺するところまで追い詰められていたのなら、そのような事があっても不思議では無いが、サレナにとっては完全にトラウマものだろう。
「だからあたしは『先代会長のお嬢さん』なんて言われるのが真っ平なのよ。そんな事を口にするヤツは絶対に信じない」
だからサレナはあんなにガザックを嫌っていたのだな。
いや。むしろシドンの前だからあれで我慢していたと見るべきだ。
だがガザックは嫌われているのを知らずに『お嬢さん』と繰り返しているのか。それとも知っていて敢えて口にしているのか。
それはちょっと分からないな。
「断っておくけど、あたしはそんな過去の事は気にしていないわよ。そんなのいまさらどうしようも無い事でしょ。だから同情なんて真っ平だわ」
確かにこれまでのサレナの振る舞いから、そんなとんでもない過去があったとはオレにも想像すら出来なかった。
シドンも全く知らなかったのなら、いっさい尾を引いていないワケではないにしろ、生活に影を落とす程のものではないということだろう。
「ただもう過去の事を掘り返されるのがうんざりなだけなのよ」
「それなら大丈夫です。わたしはあなたの過去には興味ありませんから。もちろん今の話もシドン君に伝える気はありませんから」
「そうなの。それならいいわ」
このやり取りはたぶんサレナなりにオレの事を分析して、今後はあれこれと嗅ぎ回らないように釘を刺すためなのは見当がつく。
まあこれだけの話を聞かされたら、オレもドン引きしてとっととここから立ち去りたいと思うだろうな――それが普通の状況だったら。
オレだって体験してきた中身に関しては――女にされてしまった事を除いても――ちょっとやそっとの相手には負けない自信はあるぞ。
サレナの過去はともかく『今』については、やはりシドンと約束した通り、調べさせてもらうとしよう。
しかしこれまでにも何度か虐殺とかいろいろ酷い話は聞いてきたけど、知り合いから父親が娘に対して憎悪をむき出しにしたという話の方が心に堪えるものなんだな。
「さっきはあたしの事をシドンから聞いたんでしょ」
これはごまかしても仕方ないな。
「断っておきますけど、わたしが無理を言って強引に聞き出したのです。だから彼の事は責めないで下さい」
「別にいいわよ。シドンの知っている事ぐらいなら、少し調べたらすぐに分かるのだから」
サレナはどこか捨て鉢な様子が見える。
「ただそれでも嗅ぎ回られるのは不快だわ。だからここで一つ言っておくわ」
「何ですか?」
「アンタは本当にあちこちでいろいろなモノを見てきたみたいね。それは雰囲気からなんとなく分かるわよ」
自分で言うのも何だけど、確かにこの世界を旅するようになってから、一つの出来事だけで常人の一生分の経験を繰り返してきたとは思う。
いくら何でもそこまで分かっているとは思わないけど、それでもサレナもいろいろと感じるものがあるのだろうな。
「あとアンタも一応は善人で、世の中の善意とか正義とかを信じて、これまで生きてきた事も見当はつくわよ。だから誰に対しても優しくて、誠実であろうと振る舞っているのね」
「そんなに大したものではありませんよ」
一応は彼女なりにオレを褒めているらしい。
「だけどね……あたしにはあんたが絶対に体験していないと言い切れるものがたった一つだけあるわ」
「いったい何ですか」
それはひょっとして『父親の自殺を目の当たりにした』事だろうか。
確かにそれは体験していないというか、想像したくも無いな。
「このことはシドンには黙っていると約束してよ。あの子にも伝えていない話だからね」
「それは構いませんけど……」
一緒に暮らしている義弟のシドンにすら教えていない事をオレに教えるとしたらその理由は、先ほど言ったようにオレが尋常な相手でない事を悟ったからか。
確かに彼女の過去にはとてつもない重いモノがあるらしい。
しかしサレナが次に発した言葉は、そんなオレの想像を遥かに超えていた。
「あたしはね……死んだ『魔術師協会の会長』からこう言われたのよ」
え? 幾ら幼い頃に死別したと言っても、父親をまるで赤の他人のような表現だ。
「全身全霊の憎しみを込めた『お前さえいなければ』……それがあたしの覚えている最初の言葉よ」
「な?!」
この言葉にはさすがのオレも絶句した。
それはいったいどういうことだ?
その理由を想像するとしたら、シドンが先ほど口にしていたところからすると、サレナの母が彼女を産み落としてすぐに命を落とした事と関係があるのだろうか。
サレナの父は亡き妻をあまりに深く愛していたので、娘にその死の責任があると思い込んで、精神の均衡を欠いていた可能性がある。
生まれた直後は我慢出来ていても、次第に妻への思慕と反比例した娘への憎しみが募ってきて、サレナが物心ついたときにそれが爆発してしまったかもしれない。
いや。魔法の研究で成果を挙げたという噂があったそうだが、何らかの影響を受けて精神が壊れていたかもしれない。
自殺するところまで追い詰められていたのなら、そのような事があっても不思議では無いが、サレナにとっては完全にトラウマものだろう。
「だからあたしは『先代会長のお嬢さん』なんて言われるのが真っ平なのよ。そんな事を口にするヤツは絶対に信じない」
だからサレナはあんなにガザックを嫌っていたのだな。
いや。むしろシドンの前だからあれで我慢していたと見るべきだ。
だがガザックは嫌われているのを知らずに『お嬢さん』と繰り返しているのか。それとも知っていて敢えて口にしているのか。
それはちょっと分からないな。
「断っておくけど、あたしはそんな過去の事は気にしていないわよ。そんなのいまさらどうしようも無い事でしょ。だから同情なんて真っ平だわ」
確かにこれまでのサレナの振る舞いから、そんなとんでもない過去があったとはオレにも想像すら出来なかった。
シドンも全く知らなかったのなら、いっさい尾を引いていないワケではないにしろ、生活に影を落とす程のものではないということだろう。
「ただもう過去の事を掘り返されるのがうんざりなだけなのよ」
「それなら大丈夫です。わたしはあなたの過去には興味ありませんから。もちろん今の話もシドン君に伝える気はありませんから」
「そうなの。それならいいわ」
このやり取りはたぶんサレナなりにオレの事を分析して、今後はあれこれと嗅ぎ回らないように釘を刺すためなのは見当がつく。
まあこれだけの話を聞かされたら、オレもドン引きしてとっととここから立ち去りたいと思うだろうな――それが普通の状況だったら。
オレだって体験してきた中身に関しては――女にされてしまった事を除いても――ちょっとやそっとの相手には負けない自信はあるぞ。
サレナの過去はともかく『今』については、やはりシドンと約束した通り、調べさせてもらうとしよう。
しかしこれまでにも何度か虐殺とかいろいろ酷い話は聞いてきたけど、知り合いから父親が娘に対して憎悪をむき出しにしたという話の方が心に堪えるものなんだな。
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