異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第18章 奇怪なる殺戮者?

第736話 屋敷を見張ると

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 その日の夕刻、オレは古ぼけた屋敷を後にした。

「アルさん。もしも都合がつけばいつでも来てくださいね」
「どうぞお元気で、どこか知らないけど目的の場所にすぐ着く事を祈っているわ」

 サリナは言外に『もう二度と来るな』という意味を匂わせつつ、一応は笑顔でオレを送り出す。
 そして少し離れたところで、オレは改めて屋敷の様子をうかがう。
 もちろんサレナが夜に出歩くのを見張るためだ。
 サレナが自分の行動を隠そうとしているなら、オレが屋敷にいたら当然、その間は何もしない可能性が高い。
 そんなわけで一旦、屋敷を出た事にして、隠れて見張る事にしたのだ。

 もちろんオレが立ち去ったフリをして、サレナの出入りを調べる事についてはシドンにも伝えてあるが、詳しい事は教えていないから、万が一サレナに問い詰められても答えようがない。
 シドンの態度からサレナに何かを察知され、そこで問い詰められたら、シラを切り通す事など出来ないと思ったからの事だ。

 そしてオレは庭の草木にはドルイド魔法の『植物の見張り』プラント・スパイをかけておいたので、サレナがこっそりと出ていけばすぐに分かる。
 これは野宿時には警戒用として周囲の植物にかけている魔法であり、侵入者があったり、異変が起きたりしたらオレに警報が入るのだ。
 もちろん植物には個人を識別することは出来ないから、警報を発する以上の事は出来ないがただの見張りならそれで十分である。
 そう考えてひとまず準備を整えつつ、隠れて屋敷を見張る場所を探していると、思わぬものが目に入った。
 それはオレと同じように、シドン達の屋敷を探っているらしい複数の人影だった。

 こいつらいったい何者だ?
 まさかとは思うけど、オレの事を探っている聖女教会の関係者かもしれない。
 ここはちょっとばかり近づいて、連中の様子を伺うとしよう。そんなわけでまずは『隠身』コンシールの魔法をかける。
 これは周囲の景色に溶け込む事で、こちらから積極的な行動をしない限り、殆ど見つかる事の無くなる魔法だ。
 相手が魔術師ならば、使った魔法そのものを感知される可能性があるけど連中は見たところちょっとしたごろつき程度の相手なので、その心配はないだろう。
 近づいて確認したところ、相手は三人組だ。
 もっとも大して警戒しているわけではなく、さほど緊張は感じられない。

「おい。さっき出ていったヤツはどうする?」

 これは恐らくはオレの事だな。どうやらこちらを見張っていたワケではないらしく、そこはちょっとばかり安堵する。
 だがそうすると本当に何者なんだ?

「放っておけよ。オレ達は言われたとおりあそこを見張っていて、何があったか報告すればいいだけだ」

 ううむ。さして真剣みを感じないが、誰かに雇われてシドン達を見張っているらしい。
 しかしシドンが夜に出歩いても特に何かしたわけでもないとすると、夜中まで見張っているのではないのだろう。
 まあ夜間外出禁止令が出ている上に、殺人鬼もいるとなるとそこまでして探る程の事でもないということか。

「そろそろ日も暮れてきたな。帰ろうぜ」
「いいのかよ。夜中も見張れと言われていて、その分の金も受け取っているんだろ」
「いいんだよ。例の殺人鬼はどこに現れるか分からないんだぜ。命を賭ける金まではもらってねえよ」
「そういうこった。どうせあんなガキ二人、何かあるわけでもないしな」

 ああ。本当にやる気無いなこいつら。
 雇い主が誰かは知らないが、適当なごろつき連中に金をつかませてやらせているだけか。
 そうすると背後にいるのは聖女教会とか魔術師協会のような、大きな機関ではない。
 また殺人鬼との関連を疑っている警邏隊でもないようだ。
 ここは去って行く連中の後をつける誘惑にも駆られるが、それでサレナの方を見落としてしまっては元も子もない。
 連中の事は後回しにするしかないな。
 そんなわけでオレは夕日に照らされている、シドンとサレナの屋敷を改めて監視することにした。


 少しして日が暮れ、あたりが完全に闇に覆われたところで、オレが屋敷を出る前にかけていた『植物の見張り』からの警報が入る。
 オレが緊張に身を固めていると、いつの間にかサレナが街路に姿を現したかと思うと、あっという間に駆けていった。
 それは普段から魔法で脚力を強化しているオレでも、驚く程のものだった。サレナも何らかの魔法で自分の身体能力を上げている可能性もあるな。
 とにかく後を追わねばならないと思い、足を踏み出そうとしたのだがそこでどういうわけか次の警報が入る。
 何事かと思ったら、シドンもまた姿を見せたのだ。
 おい。まさかまたサレナを追うつもりかよ。
 こうなったら放っておくわけにもいかないし。オレはひとまずシドンの方に近寄って声をかける。

「シドン。どうするつもりですか」
「うわっ?! アルさん?」

 おっと『隠身』をかけたままだったから、シドンにしたらいきなりオレが姿を現したかのように思ったのだな。

「サレナさんはわたしが追いますから、シドンはここで待っていて下さい」
「そ、そんなわけにはいきませんよ。姉さんは心配ですし、アルさんにも無理を言って頼んでおきながら一人だけ寝床にいるわけにはいきません」

 ううむ。サレナに態度がおかしいことを問い詰められるのでは無いかと思って、どうするのか黙っていたけど、やぶ蛇だったかと少しばかり後悔する。
 このまま置き去りにしたらまた一人で勝手な行動に出かねないし、ここで口論している時間も無い。
 ええい。やむを得ん。
 まずは『筋力強化』を自分にかけ、そしてシドンに対して背を向ける。

「わたしの背中につかまりなさい」
「え? いいんですか?」
「急いで! 時間がありませんから!」
「わ、分かりました」

 そんなわけでオレはしがみついてくるシドンを背中に担ぎつつ、サレナを追って駆け出した。
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