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第18章 奇怪なる殺戮者?
第760話 城壁外の攻防にて
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取りあえず殴ってみたところ、確かに元ガザックの病的な肉はえぐれ、血が飛び散り、一応はダメージを与えたようには感じられる。
だがさして応えた様子は見られない。
相手はぶるぶるとその身を振るわせつつ、こちらに迫ってくるのだ。
ええい。汚らしい。ドロドロした体液が飛沫となって『全裸』のこちらにかかり、身体のあちこちにネットリした感覚が生じている。
いきなり粘液プレイとは難易度高すぎるぞ。
そんなわけでオレはひとまずバックして距離をとる。
どんなに毒々しい色をしていても、見るからに痛そうなトゲトゲが生えていても、遠慮無く殴りつけるヒーローのすごさがよく分かる気がするな。
とりあえずここは改めて『同族』のサレナに問いかけるしかない。
「どこか弱点になるところはないんですか?」
《疑似生命体でも中核部分に打撃を与えれば、しばらく行動不能になるはずよ。そこで肉体から抉り出せば休眠状態になると思うわ》
確証はないのか。まあサレナも自分の身で試すワケにもいかないのだから、ここはそれを信じるしかないな。
「その中核部はどうやったら分かるんです!」
《なんとなく分かるから、とにかくあの身体を打ち砕きなさいよ。感じたら教えるわ》
何とも大ざっぱな指示だけど、最悪『そんなの分からない』と言われてしまうよりはマシだと思っておこう。
それでは改めて接近し、オレは連続して殴りつける。
一度、経験してしまえばもう何度になろうと構わん!
相手がまるで慈悲を求めるかのように、そのおぞましい血色の悪い肉が伸びてくるが、オレはひたすら殴り続ける。
ええい。とにかく砕け散ってくれ。
そんな事を考えつつ、更なる攻撃のために腕を振り上げた瞬間、オレの身にはこれまでにない苦痛が走る。
なんだ? コイツの攻撃――ではない?
見ると今のオレの有する白銀の表皮に大きなものがぶつかってくる。
いや。周囲に立て続けに降り注いでくるこれは岩なのか?
それと共に周りには次々に爆発が生じる。
見るとヒュールの町の城壁の上から、立て続けに巨大な投石機が岩を放ち、また魔法が撃ち込まれてきているようだ。
うう。確かに普通の人間から見れば、この光景はいきなり現れた巨大な化け物が二体とっくみあいをしているだけでしかない。
それにガザックの方は魔術師協会の建物を破壊し、町中で暴れ回っていたのだから、攻撃するのは当然だろう。
肉体的なダメージは大したものじゃないけど、精神的にはちょっと痛いぞ。
せめて『怪物二体が争っている内は放置する』という選択はして欲しかった。
ええい。とにかく急いで終わらせよう。
そう考えた瞬間、ガザックの肉体の一部がまるで鞭のように変じてオレの腕に巻き付く。
なに? まさか?!
『うう……力を……力を寄こせ……』
僅かながら伝わってくる意識は、ガザックのものか?
人格そのものは崩壊しているが、その片鱗がまだ人間だった時と同様にオレの身を取り込む事を望んでいるのか。
恐らくガザック以外で過去に疑似生命体に取り込まれていた人格は、殆ど意識が凍結されていたような感じだったので、力を求めるあいつの強い欲望が表に出て来たのだろう。
これまでも何度も感じてきた事だが、やっぱり『人間』が一番怖い存在だな。
とにかく。今はコイツを振りほどいて――そう思った瞬間、オレの顔面に岩が直撃し脳裏に火花が散る。
ぐわあ! 守備隊の攻撃が『町を守ろうとする正義の味方』の方にダメージを与えるなんて、初登場時でも即座に『正義の味方』がどちらなのか見抜いて助ける、特撮世界の防衛隊を見習いやがれ!
そしてこちらが動きを止めた瞬間、ガザックはその全身でこちらを取り込むべく張り付いてきたのだ。
《ちょっと! あんた何をぼけっとしているのよ! こんなヤツにまとわりつかれるなんてあたしは真っ平よ!》
「こっちだって分かってますよ!」
『おお。我と一つになるのだ……』
頭の中でサレナの文句が轟くが、同時にガザックの唸りも強くなってくる。
しかもガザックに絡みつかれて、こちらが一緒になったのを『二体まとめて倒す好機』と考えたのか、城壁からの攻撃は更に熾烈さを増してくる。
オマケに立っているオレの方が露出している面積が大きいためか、大半はこっちに命中しているぞ。
くそう。これではガザックと守備隊の両方から攻撃されているに等しいじゃないか。
守備隊の攻撃そのものは例によって深刻なダメージを耐えるほどのものではないのだけど、ガザックの攻撃に対するサポートになってしまっているぞ。
ええい。時間制限はあるわ、相手は気持ち悪いわ、それでいて守っている筈の相手から攻撃されるとは本当にたまったもんじゃない。
《とにかく急いで振りほどいてよ!》
「精一杯やってます!」
オレが必死になっていると、少しばかり妙な事が起きる。
立て続けに情け容赦なく撃ち込まれていた城壁からの攻撃が、少なくなっていくのだ。
うん? もう石や魔力が尽きたのか?
いや。違うぞ。よくよく目をこらすと、城壁の上で叫んでいる見慣れた人影があった。
こちらに対する攻撃を辞めるよう守備隊に呼びかけているらしいのはミツリーンと――そしてシドン?!
だがさして応えた様子は見られない。
相手はぶるぶるとその身を振るわせつつ、こちらに迫ってくるのだ。
ええい。汚らしい。ドロドロした体液が飛沫となって『全裸』のこちらにかかり、身体のあちこちにネットリした感覚が生じている。
いきなり粘液プレイとは難易度高すぎるぞ。
そんなわけでオレはひとまずバックして距離をとる。
どんなに毒々しい色をしていても、見るからに痛そうなトゲトゲが生えていても、遠慮無く殴りつけるヒーローのすごさがよく分かる気がするな。
とりあえずここは改めて『同族』のサレナに問いかけるしかない。
「どこか弱点になるところはないんですか?」
《疑似生命体でも中核部分に打撃を与えれば、しばらく行動不能になるはずよ。そこで肉体から抉り出せば休眠状態になると思うわ》
確証はないのか。まあサレナも自分の身で試すワケにもいかないのだから、ここはそれを信じるしかないな。
「その中核部はどうやったら分かるんです!」
《なんとなく分かるから、とにかくあの身体を打ち砕きなさいよ。感じたら教えるわ》
何とも大ざっぱな指示だけど、最悪『そんなの分からない』と言われてしまうよりはマシだと思っておこう。
それでは改めて接近し、オレは連続して殴りつける。
一度、経験してしまえばもう何度になろうと構わん!
相手がまるで慈悲を求めるかのように、そのおぞましい血色の悪い肉が伸びてくるが、オレはひたすら殴り続ける。
ええい。とにかく砕け散ってくれ。
そんな事を考えつつ、更なる攻撃のために腕を振り上げた瞬間、オレの身にはこれまでにない苦痛が走る。
なんだ? コイツの攻撃――ではない?
見ると今のオレの有する白銀の表皮に大きなものがぶつかってくる。
いや。周囲に立て続けに降り注いでくるこれは岩なのか?
それと共に周りには次々に爆発が生じる。
見るとヒュールの町の城壁の上から、立て続けに巨大な投石機が岩を放ち、また魔法が撃ち込まれてきているようだ。
うう。確かに普通の人間から見れば、この光景はいきなり現れた巨大な化け物が二体とっくみあいをしているだけでしかない。
それにガザックの方は魔術師協会の建物を破壊し、町中で暴れ回っていたのだから、攻撃するのは当然だろう。
肉体的なダメージは大したものじゃないけど、精神的にはちょっと痛いぞ。
せめて『怪物二体が争っている内は放置する』という選択はして欲しかった。
ええい。とにかく急いで終わらせよう。
そう考えた瞬間、ガザックの肉体の一部がまるで鞭のように変じてオレの腕に巻き付く。
なに? まさか?!
『うう……力を……力を寄こせ……』
僅かながら伝わってくる意識は、ガザックのものか?
人格そのものは崩壊しているが、その片鱗がまだ人間だった時と同様にオレの身を取り込む事を望んでいるのか。
恐らくガザック以外で過去に疑似生命体に取り込まれていた人格は、殆ど意識が凍結されていたような感じだったので、力を求めるあいつの強い欲望が表に出て来たのだろう。
これまでも何度も感じてきた事だが、やっぱり『人間』が一番怖い存在だな。
とにかく。今はコイツを振りほどいて――そう思った瞬間、オレの顔面に岩が直撃し脳裏に火花が散る。
ぐわあ! 守備隊の攻撃が『町を守ろうとする正義の味方』の方にダメージを与えるなんて、初登場時でも即座に『正義の味方』がどちらなのか見抜いて助ける、特撮世界の防衛隊を見習いやがれ!
そしてこちらが動きを止めた瞬間、ガザックはその全身でこちらを取り込むべく張り付いてきたのだ。
《ちょっと! あんた何をぼけっとしているのよ! こんなヤツにまとわりつかれるなんてあたしは真っ平よ!》
「こっちだって分かってますよ!」
『おお。我と一つになるのだ……』
頭の中でサレナの文句が轟くが、同時にガザックの唸りも強くなってくる。
しかもガザックに絡みつかれて、こちらが一緒になったのを『二体まとめて倒す好機』と考えたのか、城壁からの攻撃は更に熾烈さを増してくる。
オマケに立っているオレの方が露出している面積が大きいためか、大半はこっちに命中しているぞ。
くそう。これではガザックと守備隊の両方から攻撃されているに等しいじゃないか。
守備隊の攻撃そのものは例によって深刻なダメージを耐えるほどのものではないのだけど、ガザックの攻撃に対するサポートになってしまっているぞ。
ええい。時間制限はあるわ、相手は気持ち悪いわ、それでいて守っている筈の相手から攻撃されるとは本当にたまったもんじゃない。
《とにかく急いで振りほどいてよ!》
「精一杯やってます!」
オレが必死になっていると、少しばかり妙な事が起きる。
立て続けに情け容赦なく撃ち込まれていた城壁からの攻撃が、少なくなっていくのだ。
うん? もう石や魔力が尽きたのか?
いや。違うぞ。よくよく目をこらすと、城壁の上で叫んでいる見慣れた人影があった。
こちらに対する攻撃を辞めるよう守備隊に呼びかけているらしいのはミツリーンと――そしてシドン?!
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