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第18章 奇怪なる殺戮者?
第759話 そして始まる巨大化戦闘
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白銀色のサレナと一心同体となって巨大化とは、本当に懐かしの昭和特撮ヒーローを彷彿とさせるところだが、時間制限まであるとはそんなところまで一緒にならなくていいんだよ。
それだったら光線技の一つぐらいはあってもいいのではないのか?
《ところで腕を動かしてくれるかしら?》
「はあ……」
オレは水銀色の腕をヒョイと上げてみる。
たぶんオレ自身――正確には『アルタシャ』――の腕をそのまま巨大化したのに近いのだろうな。
この巨大化した身体を構成しているのが大部分、オレの魔力なのでそれが外見に反映されているに違いない。
《やっぱり身体の主導権はあんたにあるようね……不本意だけど任せるわ》
この巨大化した身体で何が出来るのか、いろいろと試運転したいところだが、もちろんそんな事をしている場合では無い。
残念ながら巨大ヒーローだの、合体ロボだのの初戦は殆どがぶっつけ本番なのだ。
《とにかく時間が無いから急いで戦うわよ》
「その前に遠隔攻撃出来る魔法か何かないのですか?」
《そんなもんあったら最初に使っているでしょうが》
ごもっともです。
特撮ヒーローが殴る蹴るの後で必殺光線を放つのは、ただの話の都合であってオレだってヤバい相手とやり合うとなれば、可能な限り遠隔攻撃で終わらせるよ。
恐らく使用出来る魔法はこの形態でも普段と変わらないはず――巨大化したからいきなり攻撃魔法が使えるようになるなんて、そんな甘い展開になった事は一度も無い。
《だいたい大陸に名声轟く英雄の癖にそんな攻撃魔法の一つも無いの? アンタの方がよっぽど問題よ》
「その話は後にして下さい。相手が来ますよ」
オレにとってもそこはいろいろと悩ましいのだ。
『ぶがあああ!』
オレがサレナと一体化しガン○ム並のサイズの巨大女になったのを見て、ガザックの方は幸か不幸かこちらに向かってくる。
疑似生命体は相手の魔力を察知する能力はあるらしいから、これでオレが『比類の無いエサ』だと認識してくれたようだ。
《ちょっと! どうすんのよ!》
「ここはいったん逃げて、人のいない町外れに誘導しましょう」
巨大ヒーローが市街地で戦うと、いつの間にか都合のよい空き地になっていてくれる特撮世界はこんな時は本当にうらやましい。
見下ろすとあちこちでパニックになっていて逃げ惑う人々の姿が目に入るが、とにかく人の少ないところ、避難が出来ていると思える箇所を移動しよう。
そんなところでチラと、イロールの聖印を大きく掲げた聖女教会の建物が目に入る。
踏んづけていってやろうか、などと少しばかり意地悪な気持ちが生まれるけど、もちろんその建物の内部には病人がいるので出来るはずも無い。
《時間も無いのに、本当に絵に描いたようなお人好しね》
「あなただって口が悪いだけで、本当なこの町が好きで守りたいのでしょう?」
《守ったところで、あたしの場合は感謝どころか……》
ここでサレナは口ごもり、オレもそれ以上の事を言うのは辞めた。
どう考えたって、この町の住民――と言うよりはどこであろうとも――彼女の存在を許容してもらえるとは思えないからだ。
そうか。疑似生命体で永遠の命が得られると言う話があっても、存在が殆ど隠蔽されて腫れ物扱いされ、実質的に『禁忌』扱いになっている理由がなんとなく分かってきた。
本当に疑似生命体で永遠の命を得ている、つまりずっと自分の人格を維持している相手がいてもそれを周囲に隠して、ひっそりと生活しているに違いない――ついさっきまでのサレナのように。
オレも『神の世界に身をおけるのに、ずっと生身で過ごしている』ことについて、ずっと変わり者扱いされてきたけど、そうしないと『異質な存在』として排除される危険性があるのだろう。
あちこち放浪して、一箇所に長く留まらないから歓迎はされているけど、ずっと居座っていたらやっぱり排除されるかもしれないのかな。
そんなとりとめのない事を考えているうちに、オレが城壁を飛び越えて外に出ると、ガザックの方は打ち砕いて後に続く。
ヒュールの町の人たちには申し訳ないけど、町中で取っ組み合いをするよりはマシだと思って下さい。
《ようやく戦えるのね。時間も無いのに全く……》
「今までもずっとこういうことをやってきたのです。付き合わせてしまってすみませんね」
《いいわよ……だって失敗したら、今後ずっと付き合う羽目になるわけだからね》
それは激しく遠慮したい。
そしてここで改めてオレはガザックに向き直る。
その身から生気も正気も無い目を幾つもギョロつかせ、血色の悪いむき出しの筋肉に覆われた不格好な姿ながら、それでも強烈な感情を抱いてオレに迫ってくる。
とにかくこうなればいつものように『やれることをやるだけ』だ。
オレは全力で拳を握りしめ、迫り来るガザックの恐らくは顔面にあたる部分に叩きつける。
鈍い感触と共に、周囲にはどす黒い液体が飛び散る。
うげえ。何とも気色悪い。
巨大ヒーローには結構憧れていたけど、実際にやるとなるととてもいい気分にはなれないな。
いや。何よりも気をつけるべきは、このおぞましい怪物の中身が『人間』だという点だ。
以前にゾンビの相手をしたとき、その中に生きていた時の人格の片鱗が残っていて助けを求められ、攻撃を躊躇したために殺されかけた事もあった。
ここは中にどんな人格が含まれていようが、オレはためらうことなく倒さねばならないのだ。
悲しいけどこれが現実なんだよね!
それだったら光線技の一つぐらいはあってもいいのではないのか?
《ところで腕を動かしてくれるかしら?》
「はあ……」
オレは水銀色の腕をヒョイと上げてみる。
たぶんオレ自身――正確には『アルタシャ』――の腕をそのまま巨大化したのに近いのだろうな。
この巨大化した身体を構成しているのが大部分、オレの魔力なのでそれが外見に反映されているに違いない。
《やっぱり身体の主導権はあんたにあるようね……不本意だけど任せるわ》
この巨大化した身体で何が出来るのか、いろいろと試運転したいところだが、もちろんそんな事をしている場合では無い。
残念ながら巨大ヒーローだの、合体ロボだのの初戦は殆どがぶっつけ本番なのだ。
《とにかく時間が無いから急いで戦うわよ》
「その前に遠隔攻撃出来る魔法か何かないのですか?」
《そんなもんあったら最初に使っているでしょうが》
ごもっともです。
特撮ヒーローが殴る蹴るの後で必殺光線を放つのは、ただの話の都合であってオレだってヤバい相手とやり合うとなれば、可能な限り遠隔攻撃で終わらせるよ。
恐らく使用出来る魔法はこの形態でも普段と変わらないはず――巨大化したからいきなり攻撃魔法が使えるようになるなんて、そんな甘い展開になった事は一度も無い。
《だいたい大陸に名声轟く英雄の癖にそんな攻撃魔法の一つも無いの? アンタの方がよっぽど問題よ》
「その話は後にして下さい。相手が来ますよ」
オレにとってもそこはいろいろと悩ましいのだ。
『ぶがあああ!』
オレがサレナと一体化しガン○ム並のサイズの巨大女になったのを見て、ガザックの方は幸か不幸かこちらに向かってくる。
疑似生命体は相手の魔力を察知する能力はあるらしいから、これでオレが『比類の無いエサ』だと認識してくれたようだ。
《ちょっと! どうすんのよ!》
「ここはいったん逃げて、人のいない町外れに誘導しましょう」
巨大ヒーローが市街地で戦うと、いつの間にか都合のよい空き地になっていてくれる特撮世界はこんな時は本当にうらやましい。
見下ろすとあちこちでパニックになっていて逃げ惑う人々の姿が目に入るが、とにかく人の少ないところ、避難が出来ていると思える箇所を移動しよう。
そんなところでチラと、イロールの聖印を大きく掲げた聖女教会の建物が目に入る。
踏んづけていってやろうか、などと少しばかり意地悪な気持ちが生まれるけど、もちろんその建物の内部には病人がいるので出来るはずも無い。
《時間も無いのに、本当に絵に描いたようなお人好しね》
「あなただって口が悪いだけで、本当なこの町が好きで守りたいのでしょう?」
《守ったところで、あたしの場合は感謝どころか……》
ここでサレナは口ごもり、オレもそれ以上の事を言うのは辞めた。
どう考えたって、この町の住民――と言うよりはどこであろうとも――彼女の存在を許容してもらえるとは思えないからだ。
そうか。疑似生命体で永遠の命が得られると言う話があっても、存在が殆ど隠蔽されて腫れ物扱いされ、実質的に『禁忌』扱いになっている理由がなんとなく分かってきた。
本当に疑似生命体で永遠の命を得ている、つまりずっと自分の人格を維持している相手がいてもそれを周囲に隠して、ひっそりと生活しているに違いない――ついさっきまでのサレナのように。
オレも『神の世界に身をおけるのに、ずっと生身で過ごしている』ことについて、ずっと変わり者扱いされてきたけど、そうしないと『異質な存在』として排除される危険性があるのだろう。
あちこち放浪して、一箇所に長く留まらないから歓迎はされているけど、ずっと居座っていたらやっぱり排除されるかもしれないのかな。
そんなとりとめのない事を考えているうちに、オレが城壁を飛び越えて外に出ると、ガザックの方は打ち砕いて後に続く。
ヒュールの町の人たちには申し訳ないけど、町中で取っ組み合いをするよりはマシだと思って下さい。
《ようやく戦えるのね。時間も無いのに全く……》
「今までもずっとこういうことをやってきたのです。付き合わせてしまってすみませんね」
《いいわよ……だって失敗したら、今後ずっと付き合う羽目になるわけだからね》
それは激しく遠慮したい。
そしてここで改めてオレはガザックに向き直る。
その身から生気も正気も無い目を幾つもギョロつかせ、血色の悪いむき出しの筋肉に覆われた不格好な姿ながら、それでも強烈な感情を抱いてオレに迫ってくる。
とにかくこうなればいつものように『やれることをやるだけ』だ。
オレは全力で拳を握りしめ、迫り来るガザックの恐らくは顔面にあたる部分に叩きつける。
鈍い感触と共に、周囲にはどす黒い液体が飛び散る。
うげえ。何とも気色悪い。
巨大ヒーローには結構憧れていたけど、実際にやるとなるととてもいい気分にはなれないな。
いや。何よりも気をつけるべきは、このおぞましい怪物の中身が『人間』だという点だ。
以前にゾンビの相手をしたとき、その中に生きていた時の人格の片鱗が残っていて助けを求められ、攻撃を躊躇したために殺されかけた事もあった。
ここは中にどんな人格が含まれていようが、オレはためらうことなく倒さねばならないのだ。
悲しいけどこれが現実なんだよね!
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