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第18章 奇怪なる殺戮者?
第768話 サレナの後でまた旅立つ
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とりあえずシドンとサレナが方向は違えども、共に同じ目的に向かって進むことは確認できたのでオレとしてはホッとしたところだ。
「それで次にサレナさんはどうするつもりなのですか?」
「とりあえず先生の資料にあった古い遺跡でも探るわよ。いきなり正解が見つかるとは思っていないけど、何らかの糸口があればそれでいいわ」
オレの場合もこれまで遺跡を漁って、金銀財宝ざっくざくという事はなかったけど、そこにかつて生きていた人間の亡霊だの精霊だのに出会って、昔の話を聞かせてもらう事ぐらいはしょっちゅうあったからな。
サレナもそうやって過去の情報を得る事は出来るだろう。
本当にサレナが人間に戻る方法を見つけられるかどうかは、まったく分からないけど。たぶんサレナもシドンもそんな事は承知の上での行動ではないか。
たとえ二人が力を合わせてもサレナが人間に戻る術は見つからないかもしれないが、それでもきっとこの二人の絆は変わる事はないだろう。
もちろんそれは時には喧嘩して、また仲直りしてというそんな『よくある姉弟』関係ということだ。
その関係が今後、どんな風になっていくのはちょっとばかり興味はあるが、残念ながらオレの目で確認するほどこのヒュールにとどまってもいられない。
「それであんたもこの町を出て行くわけなのね」
「まあそういうことになりますね。あなた方の事は忘れませんよ」
「そう……それはよかったわ。ずっとこの町に留まるつもりだなどと言われたら、意地でも追い出してやろうかと思っていたところだから」
サレナはひょっとしてオレがシドンを口説くとでも考えていたのだろうか。
そんなつもりは最初から微塵もありません。
そしてサレナは一区切りついたと様子を見せる。
「あたしは行くわよ。先生には『しばしのお別れ』を伝えたから」
サレナがこの屋敷に戻ってきたのは、育ての親というべきノーズ翁に別れを告げに来たということらしい。
しかしシドンの方にはいいのだろうか。
「あれ? シドンにはそれを伝えないのですか?」
「いいのよ……顔を合わせたら、別れるのがつらくなるでしょ。それに抱きしめたりしていたら他の連中に見つかってまた面倒な事にもなりかねないし。だからシドンにはあんたの方から伝えておいて」
ああ。やっぱりサレナはブラコンだな。
自覚して抑えようとしているだけでもマシと考えるべきだろうか。
「それじゃあさようなら」
それだけ言うとサレナはあっという間に姿を消した。
神出鬼没なところは相変わらずだな。今後、シドンに対してもずっとそんな風に接するような気がするよ。
そして翌日、オレはヒュールの町を出るべく門の外に出た。
見送りはレオナとミツリーン、そしてシドンの三人だ。
「アルタシャ様がこの町でお見せになった奇跡については、我らが余すことなく伝えておきますので、ご安心下さい」
レオナはいかにも誇らしげにしている。
今回の一件は、このヒュールの町における聖女教会の立場を高めるのに利用されるのだろうなあ。
そしてミツリーンも同様に嬉しげだな。
「あなた様の偉大な業績についてはまとめて報告しておきます」
「聖女教会に来るようには言わないのですか?」
ミツリーンはこれまで、オレをずっと追いかけてきて、顔を見る度にそれを要求してきたのだが、それがなくなるとまたちょっと不気味な気もしてくる。
「アルタシャ様の行動が全て神命によるものであれば、私ごときが口を挟むものではありません。そしてあなた様の足跡を残せるのは、この身に余る光栄でございます」
どうやらオレを連れ戻す事は諦めたが、付きまとう事は辞める気は無いらしい。下手をするとむしろ『これこそ天職』と思っているかもしれない。
「アルさん。あなたの事は決して忘れません。あと――」
シドンにはサレナが旅立った事は伝えているが、別れ際に少しばかり口ごもったところで、オレはちょっとばかり抱擁する。
もちろん他人に話を聞かれないためだけど、サレナが見ていたらやっぱり変に誤解するかもしれないなあ。
「あ……あの……」
「サレナさんの事なら大丈夫です。必ず戻ってきますから、あなたは彼女を人間に戻すための勉強を続けて下さい」
「は、はい! 分かりました!」
シドンは真っ赤に顔を染めつつ力を込めて叫ぶ。
やっぱりちょっとばかり可愛く思えるな。
そんなわけでオレは交易路を通って最初の目的通り『龍の背山脈』へと足を踏みいれた。
それからヒュールの町では『巨大な怪物から町を救った白銀の女神』についての崇拝が興り、その社が聖女教会の中に建立され信仰を集める事となる。
そして魔法研究の盛んだったその町では新しい魔法研究の動きが生まれ、それを生み出したのが『魔法が使えない研究者』だったとされる。
彼はどういうわけか遠い国や失われた遺跡の魔法について、奇妙に詳しくそれ故に魔法が使えないにもかかわらず、周囲からは常に一目置かれていた。
そのやや毛色の変わった研究者の傍らには、正体の分からない黒髪の女性の姿があるとも、白銀の女神の化身が寄り添っているとも言われていたのだった。
【後書き】
これでこの章は完結です。
お付き合い下さってありがとうございます。
「それで次にサレナさんはどうするつもりなのですか?」
「とりあえず先生の資料にあった古い遺跡でも探るわよ。いきなり正解が見つかるとは思っていないけど、何らかの糸口があればそれでいいわ」
オレの場合もこれまで遺跡を漁って、金銀財宝ざっくざくという事はなかったけど、そこにかつて生きていた人間の亡霊だの精霊だのに出会って、昔の話を聞かせてもらう事ぐらいはしょっちゅうあったからな。
サレナもそうやって過去の情報を得る事は出来るだろう。
本当にサレナが人間に戻る方法を見つけられるかどうかは、まったく分からないけど。たぶんサレナもシドンもそんな事は承知の上での行動ではないか。
たとえ二人が力を合わせてもサレナが人間に戻る術は見つからないかもしれないが、それでもきっとこの二人の絆は変わる事はないだろう。
もちろんそれは時には喧嘩して、また仲直りしてというそんな『よくある姉弟』関係ということだ。
その関係が今後、どんな風になっていくのはちょっとばかり興味はあるが、残念ながらオレの目で確認するほどこのヒュールにとどまってもいられない。
「それであんたもこの町を出て行くわけなのね」
「まあそういうことになりますね。あなた方の事は忘れませんよ」
「そう……それはよかったわ。ずっとこの町に留まるつもりだなどと言われたら、意地でも追い出してやろうかと思っていたところだから」
サレナはひょっとしてオレがシドンを口説くとでも考えていたのだろうか。
そんなつもりは最初から微塵もありません。
そしてサレナは一区切りついたと様子を見せる。
「あたしは行くわよ。先生には『しばしのお別れ』を伝えたから」
サレナがこの屋敷に戻ってきたのは、育ての親というべきノーズ翁に別れを告げに来たということらしい。
しかしシドンの方にはいいのだろうか。
「あれ? シドンにはそれを伝えないのですか?」
「いいのよ……顔を合わせたら、別れるのがつらくなるでしょ。それに抱きしめたりしていたら他の連中に見つかってまた面倒な事にもなりかねないし。だからシドンにはあんたの方から伝えておいて」
ああ。やっぱりサレナはブラコンだな。
自覚して抑えようとしているだけでもマシと考えるべきだろうか。
「それじゃあさようなら」
それだけ言うとサレナはあっという間に姿を消した。
神出鬼没なところは相変わらずだな。今後、シドンに対してもずっとそんな風に接するような気がするよ。
そして翌日、オレはヒュールの町を出るべく門の外に出た。
見送りはレオナとミツリーン、そしてシドンの三人だ。
「アルタシャ様がこの町でお見せになった奇跡については、我らが余すことなく伝えておきますので、ご安心下さい」
レオナはいかにも誇らしげにしている。
今回の一件は、このヒュールの町における聖女教会の立場を高めるのに利用されるのだろうなあ。
そしてミツリーンも同様に嬉しげだな。
「あなた様の偉大な業績についてはまとめて報告しておきます」
「聖女教会に来るようには言わないのですか?」
ミツリーンはこれまで、オレをずっと追いかけてきて、顔を見る度にそれを要求してきたのだが、それがなくなるとまたちょっと不気味な気もしてくる。
「アルタシャ様の行動が全て神命によるものであれば、私ごときが口を挟むものではありません。そしてあなた様の足跡を残せるのは、この身に余る光栄でございます」
どうやらオレを連れ戻す事は諦めたが、付きまとう事は辞める気は無いらしい。下手をするとむしろ『これこそ天職』と思っているかもしれない。
「アルさん。あなたの事は決して忘れません。あと――」
シドンにはサレナが旅立った事は伝えているが、別れ際に少しばかり口ごもったところで、オレはちょっとばかり抱擁する。
もちろん他人に話を聞かれないためだけど、サレナが見ていたらやっぱり変に誤解するかもしれないなあ。
「あ……あの……」
「サレナさんの事なら大丈夫です。必ず戻ってきますから、あなたは彼女を人間に戻すための勉強を続けて下さい」
「は、はい! 分かりました!」
シドンは真っ赤に顔を染めつつ力を込めて叫ぶ。
やっぱりちょっとばかり可愛く思えるな。
そんなわけでオレは交易路を通って最初の目的通り『龍の背山脈』へと足を踏みいれた。
それからヒュールの町では『巨大な怪物から町を救った白銀の女神』についての崇拝が興り、その社が聖女教会の中に建立され信仰を集める事となる。
そして魔法研究の盛んだったその町では新しい魔法研究の動きが生まれ、それを生み出したのが『魔法が使えない研究者』だったとされる。
彼はどういうわけか遠い国や失われた遺跡の魔法について、奇妙に詳しくそれ故に魔法が使えないにもかかわらず、周囲からは常に一目置かれていた。
そのやや毛色の変わった研究者の傍らには、正体の分からない黒髪の女性の姿があるとも、白銀の女神の化身が寄り添っているとも言われていたのだった。
【後書き】
これでこの章は完結です。
お付き合い下さってありがとうございます。
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