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第20章 とある国と聖なる乙女
第864話 今度は『囮』として
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イオドの部屋を出たところでオレは改めて現状を考える。
これもいつもの事ではあるが、オレの周囲ではいろいろな思惑と誤解が複雑怪奇に錯綜しているのは間違いない。
王妃に対面して話をすれば、水戸○門が印籠を出したかのごとくいきなり解決するとは思わないが、それでも真相に続く手がかりが得られるのだろうか。
しかし王妃の正体も、この国が各種の教団を移転させている意図も、全てがあいまいにぼかされているのでそう簡単にケリがつくとは思えない。
少なくとも王妃は実のところモンスターが化けた全ての黒幕、諸悪の根源だったので、彼女を倒せば全てが解決し、朝日が昇って大団円などという安っぽい英雄譚のような展開だけは絶対に無いと言い切れるけどな。
もっとも『何を考えているのかよく分からない、謎に満ちているけどとてつもない背景がありそうな存在』というのは、傍目にはオレ自身がその通りだ。
そうするとひょっとしてとんでもない勘違いをしている可能性もあるな。
やれやれ。アイウーズが命を狙われていて、一歩間違うと戦争になりかねない状況というのも厄介だが、他にも難題があり過ぎて頭が痛いよ。
一国の運命がかかっているかもしれないにも関わらず『頭が痛い』で済ませるオレも、感覚が麻痺しつつあるけどな。
もっと言えば、やむを得ない事とは言え、アイウーズから粉かけられる要因をオレが増やしまくっているのも悩ましい。
オレがプロポーズを拒絶したところで、あちらにしても『求婚は今のところ断られているが、それでも命を助けてくれているのだから脈はある』ぐらいには思っているはず。
正直なところもしもオレがアイウーズの立場だったら、同じように都合よく考えてしまったろう。
もういいや。とにかく今までの男同様に断るだけだ。
アイウーズも蒼穹女学院に侵入したところで捕まったのだから、数日は停学をいいつけられるはず。
いくらアイウーズでも命を狙われている身で、停学中に外をほっつき歩くほど非常識でもないだろう。
そんなわけで翌朝、オレとネアラが登校に出ようとすると、前の道路には大きな馬車が止まっていた。
なんとなく想像はついていたが、馬車の扉が開くとそこからアイウーズが笑顔で挨拶する。
「やあ。おはよう。待っていたよ」
ほっつき歩かずに馬車で来たのか。なるほど――と納得するわけがないだろうが。
「おはようございます。これから登校しますので時間がありませんから失礼します」
「そんなことを言わず、二人とも学校に送るよ」
この言葉を聞いてネアラは少しばかり嬉しげに、だがちょっと複雑そうな表情を浮かべる。
ネアラもアイウーズには憧れてはいたけど、どう考えてもこの誘いはオレだけに対するものだからな。
「停学では無かったのですか?」
「いやいや。その処分が下るのは今日の登校後だよ」
そんなことを嬉しそうに言うな。
そもそもあんたは自分が狙われている身である事を分かっていて、それを承知の上で、オレを誘っているのだよな?
もちろん危険だからこそ、オレが同行してくれると踏んでいるのは確かだろう。
それならネアラも一緒にと言うのはあまりにも非常識ではないのか――いや。違うな。そんな危険なところにネアラを同行させるわけにはいかないと言わせたいのか。
最初からアイウーズがネアラは来なくていいと言ったらトゲが立つので、こっちの方から言い出すように仕向けているんだ。
まったく貴族らしいしたたかな奴だ。
それだけじゃない。オレの『魔法眼』にはこの馬車に魔法がかかっている事がうかがえるし、周囲には複数の監視している目が存在しているようだ。
どうやらまたしても裏に何かありそうだな。
そしてネアラの方もそんな空気を読んだのか、深々と一礼するとオレを置いて歩き出す。
「私は歩いて行くから、あなたはアイウーズ様とどうぞ」
「これはすみません。あなたは私の馬車がお気に召さなかったようですね。次は是非とも乗っていただけるような馬車で来ることにいたしましょう」
心にもない世辞を去って行くネアラにかけたところで、アイウーズは満足げに手をさしのべてくる。
「さあどうぞ」
仕方ない。また何者かの襲撃があるかもしれないし、ここはつきあうとするか。
しばしの後、馬車に揺られつつアイウーズは頭を下げる。
「申し訳ないね。今日の登校はある筋から『どうしても』と言われているんだ」
「そういうことですか」
要するに『囮』というわけだ。
フラネス王国にすれば、首都で魔法を使ってテロを行う連中を放置するわけにはいかないが、隠れている相手を探すのは手間がかかるので、ターゲットになっていたアイウーズをもう一度引っ張り出して、エサにしているのだな。
「この馬車は魔法で防備されているし、周囲には隠れて警護している者が幾人もいるんだよ」
それも気づいていたよ。しかし安心は出来ない。
なぜならフラネス王国の方の強硬派が、アイウーズを殺害するためにこの機会を利用している可能性も否定できないからだ。
もっとも一番この状況を利用しているのは、オレを口説こうとしているアイウーズなのは間違いないけどな。
これもいつもの事ではあるが、オレの周囲ではいろいろな思惑と誤解が複雑怪奇に錯綜しているのは間違いない。
王妃に対面して話をすれば、水戸○門が印籠を出したかのごとくいきなり解決するとは思わないが、それでも真相に続く手がかりが得られるのだろうか。
しかし王妃の正体も、この国が各種の教団を移転させている意図も、全てがあいまいにぼかされているのでそう簡単にケリがつくとは思えない。
少なくとも王妃は実のところモンスターが化けた全ての黒幕、諸悪の根源だったので、彼女を倒せば全てが解決し、朝日が昇って大団円などという安っぽい英雄譚のような展開だけは絶対に無いと言い切れるけどな。
もっとも『何を考えているのかよく分からない、謎に満ちているけどとてつもない背景がありそうな存在』というのは、傍目にはオレ自身がその通りだ。
そうするとひょっとしてとんでもない勘違いをしている可能性もあるな。
やれやれ。アイウーズが命を狙われていて、一歩間違うと戦争になりかねない状況というのも厄介だが、他にも難題があり過ぎて頭が痛いよ。
一国の運命がかかっているかもしれないにも関わらず『頭が痛い』で済ませるオレも、感覚が麻痺しつつあるけどな。
もっと言えば、やむを得ない事とは言え、アイウーズから粉かけられる要因をオレが増やしまくっているのも悩ましい。
オレがプロポーズを拒絶したところで、あちらにしても『求婚は今のところ断られているが、それでも命を助けてくれているのだから脈はある』ぐらいには思っているはず。
正直なところもしもオレがアイウーズの立場だったら、同じように都合よく考えてしまったろう。
もういいや。とにかく今までの男同様に断るだけだ。
アイウーズも蒼穹女学院に侵入したところで捕まったのだから、数日は停学をいいつけられるはず。
いくらアイウーズでも命を狙われている身で、停学中に外をほっつき歩くほど非常識でもないだろう。
そんなわけで翌朝、オレとネアラが登校に出ようとすると、前の道路には大きな馬車が止まっていた。
なんとなく想像はついていたが、馬車の扉が開くとそこからアイウーズが笑顔で挨拶する。
「やあ。おはよう。待っていたよ」
ほっつき歩かずに馬車で来たのか。なるほど――と納得するわけがないだろうが。
「おはようございます。これから登校しますので時間がありませんから失礼します」
「そんなことを言わず、二人とも学校に送るよ」
この言葉を聞いてネアラは少しばかり嬉しげに、だがちょっと複雑そうな表情を浮かべる。
ネアラもアイウーズには憧れてはいたけど、どう考えてもこの誘いはオレだけに対するものだからな。
「停学では無かったのですか?」
「いやいや。その処分が下るのは今日の登校後だよ」
そんなことを嬉しそうに言うな。
そもそもあんたは自分が狙われている身である事を分かっていて、それを承知の上で、オレを誘っているのだよな?
もちろん危険だからこそ、オレが同行してくれると踏んでいるのは確かだろう。
それならネアラも一緒にと言うのはあまりにも非常識ではないのか――いや。違うな。そんな危険なところにネアラを同行させるわけにはいかないと言わせたいのか。
最初からアイウーズがネアラは来なくていいと言ったらトゲが立つので、こっちの方から言い出すように仕向けているんだ。
まったく貴族らしいしたたかな奴だ。
それだけじゃない。オレの『魔法眼』にはこの馬車に魔法がかかっている事がうかがえるし、周囲には複数の監視している目が存在しているようだ。
どうやらまたしても裏に何かありそうだな。
そしてネアラの方もそんな空気を読んだのか、深々と一礼するとオレを置いて歩き出す。
「私は歩いて行くから、あなたはアイウーズ様とどうぞ」
「これはすみません。あなたは私の馬車がお気に召さなかったようですね。次は是非とも乗っていただけるような馬車で来ることにいたしましょう」
心にもない世辞を去って行くネアラにかけたところで、アイウーズは満足げに手をさしのべてくる。
「さあどうぞ」
仕方ない。また何者かの襲撃があるかもしれないし、ここはつきあうとするか。
しばしの後、馬車に揺られつつアイウーズは頭を下げる。
「申し訳ないね。今日の登校はある筋から『どうしても』と言われているんだ」
「そういうことですか」
要するに『囮』というわけだ。
フラネス王国にすれば、首都で魔法を使ってテロを行う連中を放置するわけにはいかないが、隠れている相手を探すのは手間がかかるので、ターゲットになっていたアイウーズをもう一度引っ張り出して、エサにしているのだな。
「この馬車は魔法で防備されているし、周囲には隠れて警護している者が幾人もいるんだよ」
それも気づいていたよ。しかし安心は出来ない。
なぜならフラネス王国の方の強硬派が、アイウーズを殺害するためにこの機会を利用している可能性も否定できないからだ。
もっとも一番この状況を利用しているのは、オレを口説こうとしているアイウーズなのは間違いないけどな。
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