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第20章 とある国と聖なる乙女
第876話 厄介な公子の真意とは
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アイウーズ本人に何らかの意図があったとして、幾ら何でも自分の実力でこの国をどうにか出来るとまでは思っていないはず。
そうするとこれまでの行動は――
「もしかすると……あなたは自分が命を落とせば、このフラネス王国が混乱するだろうと考え、敢えて危険に身を晒しているのですか?」
「明確な見込みがあったわけではないさ。それに僕だって別に自殺したい訳では無いよ」
そうだよな。だから魔法の護符で自分の身を守っていたのは間違いない。
それでも随分と行動が大胆だと思ったが、あれも『出来れば死にたくないけど、別に死んでもいいさ』という意識の表れだったのだろう。
「ただ僕としては死んでも構わないと思っていたのは否定しないよ」
「それがあなたなりの『復讐』だったのですか」
アイウーズにすれば生まれてからずっと『王を僭称する反逆者』と教えられてきたフラネス王国に膝を屈し、その国王に対して地位を承認され、人質として差し出されたわけだ。
しかも本人の置かれた立場とは関係なく、祖国では『裏切り者』という心無い批判がぶつけられているというなら、やけになっても不思議ではない。
「そうかもしれないね……正直に言えば自分でも何がしたいのかよく分からないのさ」
まるで他人事で『ちょっと困った』かのように、アイウーズはその肩をすくめる。
困っているのはこっちの方だけどな!
「利口に振る舞うなら『留学生』としてこのフラネスで貴族たちと人脈を築き、将来はグラフトに戻って国を継ぐというしかない事ぐらい理解しているよ」
人間は時として利口に振る舞う事が出来ずに、厄介な事態を引き起こしてしまう――と言うのは、オレにとっても身につまされる話ではあるな。
要するに『坊やだからさ』という奴である。
それでもアイウーズの態度はやっぱりどこかおかしいが、今はツッコミよりも正道に返す事が優先だ。
「これからでも遅くありません。あなたもそう振る舞うべきでしょう」
「君もフラネス貴族だから、それが当然だと考えるのは承知しているつもりさ」
「立場なんて関係ありません!」
オレはフラネス王国の事よりも、知り合いが命を落とすような事を可能な限り避けたいだけなのだ。
「僕の立場など関係ないと言ってくれるのは嬉しいね」
やっぱりコイツは意図的に都合よく受け止めているな。
「もしも君が国に戻る時、いっしょに来てくれる事を了承してくれていたのなら、僕ももっと自分の身を大切にしていたよ」
「それはわたしに責任転嫁しているという事でしょうか」
「まさか。今からでも君が僕と来てくれるのならば、喜んで何でも望む通りに振る舞うさ」
「故意に話をずらしていませんか?」
もちろんこちらには誰だろうと妻になる気などさらさら無いが、平然と笑顔で自分の命を標的にするような壊れた性格をどうにかしてから女を誘え。
しかしアイウーズが殺されても別に構わないと考えて振る舞っている理由は、命を狙っている相手にも原因があるらしい。
しかしそれも分からない話だ。
イオドに聞いた話からオレはアイウーズの命を狙っているのはフラネス王国の属国となったグラフト公国との戦争を再開させる事を望む、両国の強硬派のどちらかだろうと推測していた。
しかしそいつらの思惑通りになることをアイウーズが望んでいるようにも見えない。
そうするとアイウーズが先ほど口にした、自前の情報網で得た『何か』がこのような行為に駆り立てる原因になっているようだ。
だがそれはいったい何だろうか?
「断っておくけど、僕は別に破滅願望があるわけでは無いよ。愛国心もあるつもりだ。だからグラフト公国が滅びるのを望んでなどいないさ」
「つまりあなたは自分の命が失われるのが、フラネス王国に打撃を与えるものだと考えていると言うことですか?」
オレの問いかけに対し、我が意を得たりと言わんばかりにアイウーズは頷く。
「そうすると、君としては全力で僕を守ってくれるよね」
「こういう場合、全力で引っぱたく方が普通だと思いますけど」
少々どころでない剣呑な視線を注いだつもりだが、アイウーズはむしろ嬉しげな様子だ。
「君にだったらいつでも構わないよ。何だったらトドメを刺してくれてもいいぐらいだ」
「あなたの知っている情報を聞き出したら、そうしてもいいかもしれません」
ここでオレは改めてアイウーズをにらむ。
「教えて下さい。あなたはいったい何を知っているのですか? あなたが死んだらこの国に何が起きるのです?」
「君ほどの相手でも、分からない事はあるんだね」
「あなたの事を筆頭に、世の中には分からない事だらけですよ!」
そう叫んだ瞬間、オレとアイウーズの周囲に幾つもの影が立ち上った。
「え? まさか!」
思わずあたりを見回すと、どうやら霊体らしい。
しかも明らかにオレ達、と言うよりもアイウーズへの敵意を示しているぞ。
「やっぱり来たようだね」
アイウーズは覚悟したような、それでいてどこか嬉しげにつぶやく。どうやらここで殺されても、オレが守ってもどっちでも本人の目的は果たせるらしい。
ええい。こんな奴は見殺しにしてやろうかという考えが、心の片隅に浮かび上がるが重要な情報を得るまでは生きておいてくれなければ困る。
決してアイウーズの事を心配したわけではないからな!
そうするとこれまでの行動は――
「もしかすると……あなたは自分が命を落とせば、このフラネス王国が混乱するだろうと考え、敢えて危険に身を晒しているのですか?」
「明確な見込みがあったわけではないさ。それに僕だって別に自殺したい訳では無いよ」
そうだよな。だから魔法の護符で自分の身を守っていたのは間違いない。
それでも随分と行動が大胆だと思ったが、あれも『出来れば死にたくないけど、別に死んでもいいさ』という意識の表れだったのだろう。
「ただ僕としては死んでも構わないと思っていたのは否定しないよ」
「それがあなたなりの『復讐』だったのですか」
アイウーズにすれば生まれてからずっと『王を僭称する反逆者』と教えられてきたフラネス王国に膝を屈し、その国王に対して地位を承認され、人質として差し出されたわけだ。
しかも本人の置かれた立場とは関係なく、祖国では『裏切り者』という心無い批判がぶつけられているというなら、やけになっても不思議ではない。
「そうかもしれないね……正直に言えば自分でも何がしたいのかよく分からないのさ」
まるで他人事で『ちょっと困った』かのように、アイウーズはその肩をすくめる。
困っているのはこっちの方だけどな!
「利口に振る舞うなら『留学生』としてこのフラネスで貴族たちと人脈を築き、将来はグラフトに戻って国を継ぐというしかない事ぐらい理解しているよ」
人間は時として利口に振る舞う事が出来ずに、厄介な事態を引き起こしてしまう――と言うのは、オレにとっても身につまされる話ではあるな。
要するに『坊やだからさ』という奴である。
それでもアイウーズの態度はやっぱりどこかおかしいが、今はツッコミよりも正道に返す事が優先だ。
「これからでも遅くありません。あなたもそう振る舞うべきでしょう」
「君もフラネス貴族だから、それが当然だと考えるのは承知しているつもりさ」
「立場なんて関係ありません!」
オレはフラネス王国の事よりも、知り合いが命を落とすような事を可能な限り避けたいだけなのだ。
「僕の立場など関係ないと言ってくれるのは嬉しいね」
やっぱりコイツは意図的に都合よく受け止めているな。
「もしも君が国に戻る時、いっしょに来てくれる事を了承してくれていたのなら、僕ももっと自分の身を大切にしていたよ」
「それはわたしに責任転嫁しているという事でしょうか」
「まさか。今からでも君が僕と来てくれるのならば、喜んで何でも望む通りに振る舞うさ」
「故意に話をずらしていませんか?」
もちろんこちらには誰だろうと妻になる気などさらさら無いが、平然と笑顔で自分の命を標的にするような壊れた性格をどうにかしてから女を誘え。
しかしアイウーズが殺されても別に構わないと考えて振る舞っている理由は、命を狙っている相手にも原因があるらしい。
しかしそれも分からない話だ。
イオドに聞いた話からオレはアイウーズの命を狙っているのはフラネス王国の属国となったグラフト公国との戦争を再開させる事を望む、両国の強硬派のどちらかだろうと推測していた。
しかしそいつらの思惑通りになることをアイウーズが望んでいるようにも見えない。
そうするとアイウーズが先ほど口にした、自前の情報網で得た『何か』がこのような行為に駆り立てる原因になっているようだ。
だがそれはいったい何だろうか?
「断っておくけど、僕は別に破滅願望があるわけでは無いよ。愛国心もあるつもりだ。だからグラフト公国が滅びるのを望んでなどいないさ」
「つまりあなたは自分の命が失われるのが、フラネス王国に打撃を与えるものだと考えていると言うことですか?」
オレの問いかけに対し、我が意を得たりと言わんばかりにアイウーズは頷く。
「そうすると、君としては全力で僕を守ってくれるよね」
「こういう場合、全力で引っぱたく方が普通だと思いますけど」
少々どころでない剣呑な視線を注いだつもりだが、アイウーズはむしろ嬉しげな様子だ。
「君にだったらいつでも構わないよ。何だったらトドメを刺してくれてもいいぐらいだ」
「あなたの知っている情報を聞き出したら、そうしてもいいかもしれません」
ここでオレは改めてアイウーズをにらむ。
「教えて下さい。あなたはいったい何を知っているのですか? あなたが死んだらこの国に何が起きるのです?」
「君ほどの相手でも、分からない事はあるんだね」
「あなたの事を筆頭に、世の中には分からない事だらけですよ!」
そう叫んだ瞬間、オレとアイウーズの周囲に幾つもの影が立ち上った。
「え? まさか!」
思わずあたりを見回すと、どうやら霊体らしい。
しかも明らかにオレ達、と言うよりもアイウーズへの敵意を示しているぞ。
「やっぱり来たようだね」
アイウーズは覚悟したような、それでいてどこか嬉しげにつぶやく。どうやらここで殺されても、オレが守ってもどっちでも本人の目的は果たせるらしい。
ええい。こんな奴は見殺しにしてやろうかという考えが、心の片隅に浮かび上がるが重要な情報を得るまでは生きておいてくれなければ困る。
決してアイウーズの事を心配したわけではないからな!
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