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第20章 とある国と聖なる乙女
第883話 噂の真相は……
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学長はオレの前に来ると、深々と頭を下げる。
「最初に申し上げておきますが、これからお伝えする事は、私の独断で行った事であり、その責任は全て私にあります」
どうやら初っ端から『王妃は無関係』だと釘を刺しておきたいらしい。
いずれにしても学長は、金髪を晒しているオレの姿を見ても驚いた様子は見せていない。
もうサーシェルから先ほどの襲撃についての連絡が入っていたのか。いや。守護精霊のサバシーナから事のあらましを聞いている可能性もあるな。
「学長先生はわたしの事に気付いておられたのですか?」
「可能性はあるとは思っていました。その美貌に加えて登校初日からサバシーナ先生が顕現するなど、どこから見ても並外れたお方でしたからね」
やっぱり初っぱなから、見抜かれていたか。
だからこそいきなり王妃に対面させるような事にもなったのだろう。
「最近ではヒュールの町や龍背山脈で、あなた様のご活躍は耳にしておりましたからね。我らは是非ともご助力を願いたかったのです」
その話を聞いていれば、オレが大陸を東に向かっていて、その方向にこの国があることは容易に想像がつくだろうし、助力を願う事も理解できる。
だがそこから『王妃がアルタシャ』だという噂を流す意味が分からない。
「しかしアルタシャ様は富や権力、地位にはまるで興味が無いお方と聞き及んでおりました。また普段は身をやつして表舞台に姿を見せる事もなく、しかもこの国でもその御名を騙る者は後を断ちませんでした」
そういえば『アルタシャ』を騙った相手が、何人も処刑されさらしものにされていたな。
もしもオレの助力を望んでいるなんて話が広まったら、失敗すれば命が無いと分かっていても偽者が幾人も名乗り出て来る可能性は否定できない。
それでいて本物が来る保証も無いとなれば、ただ混乱を招いただけに終わってしまう危険もあるだろう。
「聖女教会ですら全く連絡が取れないとなると、あなた様にこの国に目を止めていただく方法はどうしても限られてきます」
「それではあの噂を流したのは……」
「はい。それがあなた様の耳に入れば、その真相を確かめようとして行動を起こして下さるのではではないかと思っておりました」
そういう事か。
確かに偽者であれば、そんな話を聞いてもわざわざ真偽を確かめようとはしないだろう。
本物のオレだから、興味を持って王妃に接近しようとしたのだ。
「もちろんいかなる理由であろうとも、あなた様の気分を害する真似をした事は事実です。その責めはこの私が負いましょう」
そんな事を言われたってオレは元から報復など目的でないし、もちろん学長を暴行するような真似をするわけにもいかない。
「その噂の事はいいでしょう。別に怒っていたわけではありませんから」
「ありがとうございます。ただ正直な事を言わせていただければ、アルタシャ様が王妃殿下に面会を求めてくる事は想定しておりましたが、まさかいち生徒としてこの学院に通われるとは思っておりませんでした」
入学したのは『ちょっとばかり普通の学生気分を味わいたかった』だけだったのだが、ほとんどそんな機会は無かったな。
オレにはとっては『普通』こそ最も至難な事なのかもしれん。
「そのような事をされたのは、王妃殿下の真意を事前に確かめようとお考えになったからでしょうか?」
「あくまでも偶然の結果です。もちろん二グリ家の人たちはわたしの事は知りません」
少なくともイオドやネアラに迷惑をかけるわけにはいかないからな。
「分かりました。本題に入らせていただきますが、アルタシャ様は我らにご協力はいただけるのでしょうか?」
「それは構いません。ただし権力闘争に手を出す気はないですよ。あくまでもこの国の現状を穏便に解決したいだけです」
ここはオレとしても絶対に譲れない線である。
「おお! 感謝します! 殿下もお喜びになるでしょう」
「ありがとうございます」
学長とサーシェルはそろって感謝の言葉を述べる。
もっともこの二人に加えて王妃もやっぱり腹に一物あるタヌキだろうから、こっちは手放しでは喜べない。
あの噂を流してオレが本当に顔を出せば、どうやって利用しようかとあれこれ考えていた可能性はある。
「アルタシャ様がご協力下さるというなら、それでは私は失礼させていただきます」
サーシェルは一礼してドアに向かう。
もしかしてこれからオレの情報を誰かに伝えるのか?
「先ほどあなた様が示されたお力を見れば、疑うものなどおりますまい。必ずや皆がアルタシャ様のお言葉に従いますよ」
もうさっきの襲撃を手引きした事を隠す気もないのか。
オレは噂の件では怒っていないが、襲撃の事は大目に見るとまでは言っていないのだがな。
もっともオレの言葉を誰もが都合よく、勝手に解釈するのはいつもの事だ。
そして学長は改めてオレに迫ってくる。
「今までも強引に事を進める者達の専横に苦々しく思っている者は大勢おりました。しかしアルタシャ様がお越しとあらば誰もが勇気づけられる事でしょう」
やっぱりイヤだと言っても、現国王派と前国王派の権力闘争に否応なく利用されそうな空気だな。
ええい。こうなってしまっては仕方ない。
オレにとって最優先は流血の事態の回避だ。犠牲を避けるためには現国王派による宗教勢力の抑圧を止めることがもっとも確実だろう。
そうすればアイウーズを暗殺して、国内に混乱を引き起こすような動きも収まるはず。
そんなに上手くいってくれるかどうかは分からないが、そこまでオレにもどうすることも出来ないのもいつもの事だ。
「最初に申し上げておきますが、これからお伝えする事は、私の独断で行った事であり、その責任は全て私にあります」
どうやら初っ端から『王妃は無関係』だと釘を刺しておきたいらしい。
いずれにしても学長は、金髪を晒しているオレの姿を見ても驚いた様子は見せていない。
もうサーシェルから先ほどの襲撃についての連絡が入っていたのか。いや。守護精霊のサバシーナから事のあらましを聞いている可能性もあるな。
「学長先生はわたしの事に気付いておられたのですか?」
「可能性はあるとは思っていました。その美貌に加えて登校初日からサバシーナ先生が顕現するなど、どこから見ても並外れたお方でしたからね」
やっぱり初っぱなから、見抜かれていたか。
だからこそいきなり王妃に対面させるような事にもなったのだろう。
「最近ではヒュールの町や龍背山脈で、あなた様のご活躍は耳にしておりましたからね。我らは是非ともご助力を願いたかったのです」
その話を聞いていれば、オレが大陸を東に向かっていて、その方向にこの国があることは容易に想像がつくだろうし、助力を願う事も理解できる。
だがそこから『王妃がアルタシャ』だという噂を流す意味が分からない。
「しかしアルタシャ様は富や権力、地位にはまるで興味が無いお方と聞き及んでおりました。また普段は身をやつして表舞台に姿を見せる事もなく、しかもこの国でもその御名を騙る者は後を断ちませんでした」
そういえば『アルタシャ』を騙った相手が、何人も処刑されさらしものにされていたな。
もしもオレの助力を望んでいるなんて話が広まったら、失敗すれば命が無いと分かっていても偽者が幾人も名乗り出て来る可能性は否定できない。
それでいて本物が来る保証も無いとなれば、ただ混乱を招いただけに終わってしまう危険もあるだろう。
「聖女教会ですら全く連絡が取れないとなると、あなた様にこの国に目を止めていただく方法はどうしても限られてきます」
「それではあの噂を流したのは……」
「はい。それがあなた様の耳に入れば、その真相を確かめようとして行動を起こして下さるのではではないかと思っておりました」
そういう事か。
確かに偽者であれば、そんな話を聞いてもわざわざ真偽を確かめようとはしないだろう。
本物のオレだから、興味を持って王妃に接近しようとしたのだ。
「もちろんいかなる理由であろうとも、あなた様の気分を害する真似をした事は事実です。その責めはこの私が負いましょう」
そんな事を言われたってオレは元から報復など目的でないし、もちろん学長を暴行するような真似をするわけにもいかない。
「その噂の事はいいでしょう。別に怒っていたわけではありませんから」
「ありがとうございます。ただ正直な事を言わせていただければ、アルタシャ様が王妃殿下に面会を求めてくる事は想定しておりましたが、まさかいち生徒としてこの学院に通われるとは思っておりませんでした」
入学したのは『ちょっとばかり普通の学生気分を味わいたかった』だけだったのだが、ほとんどそんな機会は無かったな。
オレにはとっては『普通』こそ最も至難な事なのかもしれん。
「そのような事をされたのは、王妃殿下の真意を事前に確かめようとお考えになったからでしょうか?」
「あくまでも偶然の結果です。もちろん二グリ家の人たちはわたしの事は知りません」
少なくともイオドやネアラに迷惑をかけるわけにはいかないからな。
「分かりました。本題に入らせていただきますが、アルタシャ様は我らにご協力はいただけるのでしょうか?」
「それは構いません。ただし権力闘争に手を出す気はないですよ。あくまでもこの国の現状を穏便に解決したいだけです」
ここはオレとしても絶対に譲れない線である。
「おお! 感謝します! 殿下もお喜びになるでしょう」
「ありがとうございます」
学長とサーシェルはそろって感謝の言葉を述べる。
もっともこの二人に加えて王妃もやっぱり腹に一物あるタヌキだろうから、こっちは手放しでは喜べない。
あの噂を流してオレが本当に顔を出せば、どうやって利用しようかとあれこれ考えていた可能性はある。
「アルタシャ様がご協力下さるというなら、それでは私は失礼させていただきます」
サーシェルは一礼してドアに向かう。
もしかしてこれからオレの情報を誰かに伝えるのか?
「先ほどあなた様が示されたお力を見れば、疑うものなどおりますまい。必ずや皆がアルタシャ様のお言葉に従いますよ」
もうさっきの襲撃を手引きした事を隠す気もないのか。
オレは噂の件では怒っていないが、襲撃の事は大目に見るとまでは言っていないのだがな。
もっともオレの言葉を誰もが都合よく、勝手に解釈するのはいつもの事だ。
そして学長は改めてオレに迫ってくる。
「今までも強引に事を進める者達の専横に苦々しく思っている者は大勢おりました。しかしアルタシャ様がお越しとあらば誰もが勇気づけられる事でしょう」
やっぱりイヤだと言っても、現国王派と前国王派の権力闘争に否応なく利用されそうな空気だな。
ええい。こうなってしまっては仕方ない。
オレにとって最優先は流血の事態の回避だ。犠牲を避けるためには現国王派による宗教勢力の抑圧を止めることがもっとも確実だろう。
そうすればアイウーズを暗殺して、国内に混乱を引き起こすような動きも収まるはず。
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