異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第21章 神の試練と預言者

第965話 預言者暴走を止めるため

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 周囲を見回すと、シャンサを支持して集まっているイル=フェロ信徒の多くも何かがおかしい事に気づいて、かなり動揺しているようだ。
 まあ預言者が蒸気となって、多数現れるのは彼らにも理解不能なのは間違いない。
 そして蒸気のシャンサの群れはオレを包囲してジリジリと迫ってくる。
 連中の叫びからして、オレが有している信仰の力を奪おうとしているのだろう。
 しかし本来の神造者の手口はあくまでも、都合の良いオレに関する神話や伝説を作ってそれまでの神話を塗り替えてしまうもののはずだ。
 こうやってただ襲いかかるのは、正気を失っているからに違いない。
 取りあえず有効なのかどうかは不明だが『霊体遮断』スピリット・スクリーンの魔法を使って、シャンサの群れを食い止めるとしよう。
 そうすると蒸気のシャンサは魔法の壁にぶつかったところで形が崩れる。
 それを見てホッとしかけたところで、熱気は止まることなく突っ込んでくる。
 しまった。やはり蒸気に宿っていた霊体を食い止める事は出来ても、熱気そのものは魔法で止められないか。
 こんなのをまともに喰らったら間違いなく全身やけどだろう。
 魔法で自己回復力や耐久力を高めてはいるから、即死はしないはずだが、幾らオレでもそんなことになれば全身が激痛で覆われる羽目になるのは確実だ。
 まったくもって『乙女の柔肌』に優しくない出来事ばかりだな。
 そう思った瞬間、オレを避けるように蒸気が切れる。

『この程度の熱気ならば、操る事は造作も無いぞ』

 オレの脳裏にフェスマールの言葉が響く。そういえば殆ど存在を忘れていたが、コイツもいたのだったな。
 今は助けてくれたことに感謝するとしよう。

「ところで先ほどのやしろにいるシャンサをどうにかすることは出来ませんか?」

 見たところ石造りの社からは途切れる事無く、熱気が吹き出している。
 これはどう考えても尋常な状況ではない。

『無理を言うな。我は炎や熱を操る事は出来ても、人の心はどうすることも出来ぬ』

 だろうなあ。この世界ではたとえ神様でも人間の心はどうすることも出来ないのだ。
 しかしこのままでは神の力が暴走してとんでもない事になってしまいかねない。
 こうなっては仕方が無い。
 オレは周囲にいるテセルとサロールに声をかける。

「今は二人とも逃げて下さい」
「お前はどうするのだ?」
「アルタシャは『また』自分の新しい伝説でも作るつもりか?」

 対応の違いはテセルとサロールとの付き合いの違いではあるのだろうけど、この危機的状況で自分の評判なんか気にしていられるかよ。

「テセルはわたしがそんな事を考えて行動していると思っているのですか?」
「まさか」

 オレの問いかけにテセルは小さく肩をすくめる。

「僕のアルタシャに下心なんて無い事は分かっているさ。そしてそれだからこそお前の行動は人を撃つのだろう」
「それが分かっているなら、早く逃げて下さい。あちらの社はわたしがどうにかしますから」

 オレとフェスマールが力を合わせれば、蒸気を避けて社にいるシャンサのところまでたどり着く事は出来るはずだ。
 その後の事はどうすればいいのか、自分でもよく分からない毎度毎度の出たとこ勝負だけどいつも通りだと思うしかない。

「待ってくれ。そもそもシャンサはこの俺が倒すべき相手だ」
「今はそんなことをいっている場合では――」

 ここで足下から振動が伝わってくる。
 これはもしかして先ほど出会った『溶岩人形』ラヴァ・ゴーレムが出てくるのか?
 いや。これは下手をすると一つや二つではないぞ!
 周囲に立ちこめる熱気が高まると共に、むしろオレの背筋には寒気が走る。
 地面があちこち割れて、そこから溶岩が吹き出しては人の形を取り始める。
 ええい。こうなってはサロールを説得している時間は無い。

「とにかく行きます!」

 オレが駆け出すとサロールとあとテセルまでついてくる。

「なんでテセルまで来るんですか!」
「何を言っているんだ。アルタシャの公式神話を作るのはこの僕だぞ。ならば可能な限りお前のやることはこの目で見なければならないだろう」
「その代償が自分の命になってもいいのですか」
「アルタシャと一緒ならばそれもいいだろう」
「そんなのこっちがお断りです!」
「婚約者として、あんなポッと出の男と一緒にさせるわけにはいかない僕の気持ちが分からないのか」

 コイツはまだそれを言うか。
 もうグダグダ言っていても仕方ないので、やむなく社に戻るがその漏れ出す蒸気だけで、すさまじい熱に覆われているのは一目瞭然だ。
 普通だったらこの灼熱地獄の中で生きている人間などいるはずがない。
 しかしシャンサはイル=フェロ神から得た力で、熱には強い耐性を有しているはずだから、この状態でも命はあるかもしれないな。

「本当にこの中に入るつもりなのか?」

 半ば呆れた様子でテセルは問いかけてくる。

「仕方ないでしょう。あれを見ればそのまま逃げるワケにはいきませんよ」

 先ほど出てきた『溶岩人形』だが、どれもこれもその姿は安定せず半ば人型をとっては崩れ落ち、半ば溶け崩れた無残な姿でうごめいている。
 それはまるで苦しみに咆哮をあげているかのようだった。
 もう一刻の猶予も無い。そう思って社の中に足を踏みいれたとき、そこに展開していて光景はまたしてもオレの想像を超えるものだったのだ。
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