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第21章 神の試練と預言者
第968話 死んだ預言者はよい預言者に?
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オレ達が火口から逃げだした直後に噴火が始まった。
間違いなく先ほどの社は、シャンサの骸ごともうのみ込まれているだろう。
火山の噴火についてオレもそれほど詳しいわけではないが、火砕流は高温のものは千度近くなり、早いものなら時速百キロぐらいの猛烈なスピードで山腹を下るらしい。
この『イル=フェロの怒り』がどれだけの規模の噴火で、どこまでの被害をもたらすかなど想像もできないが、直撃されたら一たまりもない事だけは間違いない。
いずれにせよこの様子では今すぐにでも火口の縁を超えて、山腹にいるオレ達を火砕流が押し流しかねないぞ。
これは相当にまずい。
普通の火事ぐらいだったら精霊に呼びかけてどうにかなるけど、火山が相手ではどうしようもない。
こうなったら『鷹の目』で上空から見てどこか逃げるところはないか探るか。
そう思って視界をあげてはみたが、すでに周囲は火山性のガスや水蒸気で視界は遮られており、とても安全な場所を探すどころではない。
しかたない。こうなったらとにかく急いで逃げ出すしかない。
そんなわけでオレは『馳せ足』の魔法をテセルやサロールにかける。
「これで今よりずっと早く走れるはずです」
「そうか……すまんな」
「アルタシャだったら空は飛べないのか?」
「そんなに都合良くはいきませんよ」
テセルはこの状況でもかなり図々しいな。
まあ慌ててパニックに陥られるよりはマシか。
後は疲れが来れば『疲労回復』の魔法を使えば、相当な期間を全力疾走し続けられるはず。
そんなわけで移動力が上がったオレ達一行は、山道を疾走する。
来る途中は『溶岩人形』の攻撃を受けたところだが、まさか帰り道の方が遥かに重大な脅威に直面するとは想像だに出来なかったよ。
これがコメディだったら、迫り来る火砕流と競るように山腹を駆け下る事になるのだろうけど、もちろん現実はそんなに甘くない。
移動力が上がったと言っても、せいぜい二倍程度だ。
本当に火砕流が押し寄せてきたらどうなるか――いまは考えないようにしよう。
そしてオレ達はそれなりに早く降りている筈なのだが、巨大な山と比較すればじれったいほどゆっくりと動いている最中、ついに火口の縁を越えていろいろなものが押し寄せる。
命中すれば人間の頭など軽く吹き飛ぶであろう火山弾があちこちに降り注ぐ。
これがシリアスというかパニックものだったら、主人公の近くに落ちて吹っ飛ばされたところで、大丈夫かと心配する仲間を見て少し安堵した瞬間、その仲間の頭に命中するとか目を覆うような光景が展開するわけか。
いや。そんな現実逃避していても仕方ない。
「二人とも頭は守って下さいよ!」
オレの場合、即死さえしなければ回復魔法でどうにか出来るのだ。頭が吹き飛ばなければ火山弾でも何とかしよう。
しかし火砕流にのみ込まれたりしたら、手のうちようが無い。
そんなことを考えつつ駆けていると、オレの『霊視』に引っかかるものがあった。
もちろんここは神の聖地だし、火山の神の眷族だと溶岩でも何でも精霊は存在するので、霊体がいることそのものは当たり前であり、そんなことでは今さらオレは驚きはしない。
いや。下手をすれば火山の神が姿を見せて、いろいろとロクでもない要求をしてくるかもしれないとも思っていた。
だがそんなオレの予想をいつも通り裏切って現れたその姿は、先ほど命を落としたシャンサのものだったのだ。
いくら何でもここでシャンサの霊体が火砕流からオレ達を守ってくれるとは思えないが、どういうつもりだ?
だがそこでシャンサの霊体は、その手を挙げて何かを指差す。
どうやらオレ達に対して今の道ではなく、別のルートを通るように指示しているらしい。
いったい何のつもりだ?
シャンサはイル=フェロ神から力を盗んでいたから、これからどのように噴火するのか見当がつき、火砕流がどこを流れるのかも分かっているのかもしれない。
だが。シャンサがオレを助けてくれるのか?
確かに先ほどオレに感謝していたようには見えたけど、そもそもオレがこなければシャンサは『預言者』として称えられていたのだ。
その恨みを晴らすためこの噴火で『地獄の道連れ』にしてやろうと目論んでいても不思議では無いぞ。
いったいどうする?
ええい。もともと見返りを期待して行動したわけではないけれど、今は『恩返し』してくれると思って賭けるしかない!
「二人ともこっちです!」
オレはそれまでの道を外れ、シャンサの指差した方に駆け出す。
「どういう事だ……いや。お前がそういうならそれでいいのだろう」
「何か天啓でも聞いたのか」
ここでシャンサの指示を聞いたから、などとオレが言ったら二人ともどんな顔をするだろうか?
そもそもオレとサロールがここまで来たのは『偽りの預言者』についての真相をあきらかにするためだったのに、最後の最後でそいつの『予言(預言ではない)』を聞くとはいつもの事ではあるが本当にややこしいな。
間違いなく先ほどの社は、シャンサの骸ごともうのみ込まれているだろう。
火山の噴火についてオレもそれほど詳しいわけではないが、火砕流は高温のものは千度近くなり、早いものなら時速百キロぐらいの猛烈なスピードで山腹を下るらしい。
この『イル=フェロの怒り』がどれだけの規模の噴火で、どこまでの被害をもたらすかなど想像もできないが、直撃されたら一たまりもない事だけは間違いない。
いずれにせよこの様子では今すぐにでも火口の縁を超えて、山腹にいるオレ達を火砕流が押し流しかねないぞ。
これは相当にまずい。
普通の火事ぐらいだったら精霊に呼びかけてどうにかなるけど、火山が相手ではどうしようもない。
こうなったら『鷹の目』で上空から見てどこか逃げるところはないか探るか。
そう思って視界をあげてはみたが、すでに周囲は火山性のガスや水蒸気で視界は遮られており、とても安全な場所を探すどころではない。
しかたない。こうなったらとにかく急いで逃げ出すしかない。
そんなわけでオレは『馳せ足』の魔法をテセルやサロールにかける。
「これで今よりずっと早く走れるはずです」
「そうか……すまんな」
「アルタシャだったら空は飛べないのか?」
「そんなに都合良くはいきませんよ」
テセルはこの状況でもかなり図々しいな。
まあ慌ててパニックに陥られるよりはマシか。
後は疲れが来れば『疲労回復』の魔法を使えば、相当な期間を全力疾走し続けられるはず。
そんなわけで移動力が上がったオレ達一行は、山道を疾走する。
来る途中は『溶岩人形』の攻撃を受けたところだが、まさか帰り道の方が遥かに重大な脅威に直面するとは想像だに出来なかったよ。
これがコメディだったら、迫り来る火砕流と競るように山腹を駆け下る事になるのだろうけど、もちろん現実はそんなに甘くない。
移動力が上がったと言っても、せいぜい二倍程度だ。
本当に火砕流が押し寄せてきたらどうなるか――いまは考えないようにしよう。
そしてオレ達はそれなりに早く降りている筈なのだが、巨大な山と比較すればじれったいほどゆっくりと動いている最中、ついに火口の縁を越えていろいろなものが押し寄せる。
命中すれば人間の頭など軽く吹き飛ぶであろう火山弾があちこちに降り注ぐ。
これがシリアスというかパニックものだったら、主人公の近くに落ちて吹っ飛ばされたところで、大丈夫かと心配する仲間を見て少し安堵した瞬間、その仲間の頭に命中するとか目を覆うような光景が展開するわけか。
いや。そんな現実逃避していても仕方ない。
「二人とも頭は守って下さいよ!」
オレの場合、即死さえしなければ回復魔法でどうにか出来るのだ。頭が吹き飛ばなければ火山弾でも何とかしよう。
しかし火砕流にのみ込まれたりしたら、手のうちようが無い。
そんなことを考えつつ駆けていると、オレの『霊視』に引っかかるものがあった。
もちろんここは神の聖地だし、火山の神の眷族だと溶岩でも何でも精霊は存在するので、霊体がいることそのものは当たり前であり、そんなことでは今さらオレは驚きはしない。
いや。下手をすれば火山の神が姿を見せて、いろいろとロクでもない要求をしてくるかもしれないとも思っていた。
だがそんなオレの予想をいつも通り裏切って現れたその姿は、先ほど命を落としたシャンサのものだったのだ。
いくら何でもここでシャンサの霊体が火砕流からオレ達を守ってくれるとは思えないが、どういうつもりだ?
だがそこでシャンサの霊体は、その手を挙げて何かを指差す。
どうやらオレ達に対して今の道ではなく、別のルートを通るように指示しているらしい。
いったい何のつもりだ?
シャンサはイル=フェロ神から力を盗んでいたから、これからどのように噴火するのか見当がつき、火砕流がどこを流れるのかも分かっているのかもしれない。
だが。シャンサがオレを助けてくれるのか?
確かに先ほどオレに感謝していたようには見えたけど、そもそもオレがこなければシャンサは『預言者』として称えられていたのだ。
その恨みを晴らすためこの噴火で『地獄の道連れ』にしてやろうと目論んでいても不思議では無いぞ。
いったいどうする?
ええい。もともと見返りを期待して行動したわけではないけれど、今は『恩返し』してくれると思って賭けるしかない!
「二人ともこっちです!」
オレはそれまでの道を外れ、シャンサの指差した方に駆け出す。
「どういう事だ……いや。お前がそういうならそれでいいのだろう」
「何か天啓でも聞いたのか」
ここでシャンサの指示を聞いたから、などとオレが言ったら二人ともどんな顔をするだろうか?
そもそもオレとサロールがここまで来たのは『偽りの預言者』についての真相をあきらかにするためだったのに、最後の最後でそいつの『予言(預言ではない)』を聞くとはいつもの事ではあるが本当にややこしいな。
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