異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第22章 軍神の治める地では

第983話 火を噴くゴーレムと対戦し

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 村の中で暴れ回っているゴーレムの身長はだいたい常人の三倍程度。
 恐らく五メートルはあるだろう。
 ウルト○マンあたりの基準なら、ごくごく小物だろうけど実際に目の当たりにしてみればとんでもない巨体だ。
 人型ではあるが胸から火を噴く能力があってそれで村を焼き払っている。
 全身が金属に覆われていて、ちょっとやそっとの攻撃では受け付けないのは明白だ。
 エシュミール王国がどれほどの大国だろうと、このようなゴーレムが高価な代物なのは間違いない。
 しかしたった一体でこの地域を恐怖のどん底に叩き込み、反抗的な民衆を黙らせることが出来るとなれば、十分にその価値に見合った働きと言えるはずだ。
 村の様子を見ると土塀の一部が大きく壊れているが、そこから入り込んだらしい。
 周囲に粗末な槍や弓が散乱しているのは、攻撃しても無駄だと悟った村人が武器を放り捨てて家族を避難させ、家財や食料を必死で持ち出したからだろうな。
 今のところ人間には興味は無いらしく、あくまでも村の建物を破壊するのが目的のようだ。
 つまりオレが近づいてもそれだけで攻撃はしてこないはず。
 慎重に接近するも、やはりオレのことなど無視して村の建物を破壊している。もとは数十軒はあったようだが、その半分以上が打ち砕かれ、炎に包まれているようだ。
 見ている限り、胸から火を噴くのは一軒の建物をその腕で打ち砕いた後のようだ。
 恐らくエネルギーを充填する必要があるのだろう。
 そうすると火を噴くタイミングがだいたい分かってくる。

 この場合、お約束のパターンなら火を噴く瞬間、胸の装甲が開いたときが、あのゴーレムの弱点の筈だからそこをつけるか?
 しかし位置的には胸と言っても、高さは軽く三メートルはある。
 普通に攻撃してどうにかなる位置ではないし、だいたい火を噴く寸前を攻撃するなど口で言うのは簡単だが、それで致命傷にならなければこっちが黒焦げだ。
 幾ら弱点と言っても、矢を放ったぐらいで壊れてくれるとも思えない。

 いったいどうすればいいのか?
 そう思った瞬間、どういうわけかゴーレムはオレの方に振り向き、その目が妙に光ったかと思うと、ゆっくりとだが着実に歩みを向けてきた。
 まさかオレを狙ってきたのか?

 もちろんこのゴーレムは単独で行動しているのだから、ある程度は自立行動能力があるのだろうけど、それでどうしてオレに向かってくるのだ。
 いや。恐らくコイツの視角は通常のものではなく、魔力だとかそういうものを見る事も出来るのだろう。
 だから破壊活動の傍ら、マジックアイテムでもあれば回収するように命令を受けていても不思議ではない。
 つまりこのゴーレムはオレの身から発する魔力を見て『回収』しようとしているのではないだろうか。
 それならコイツを村から引き離し、どうにか出来るかもしれない!

「そら! こっちに来なさい!」

 そんな言葉をかけても、どうせ聞く耳など無い事は分かっているけど、それは雰囲気作りというものである。
 相手の動きはさして早くはないので、逃げ回るだけなら難しくはない。
 しかしあの怪力で捕まれたら、こっちの身などひとたまりも無いし、火に包まれたらたぶん黒焦げだ。
 いや。フェスマールは熱気に対する防御があったが、どれほど頼りになるものだろうか。
 尋ねようとしたところで、フェスマールの苦言が脳裏に響く。

『まったくそなたは、なぜそこまで向こう見ずなのだ?』

 その質問には答える事無く、オレの方の質問をぶつける。

「あの火炎を受けたらどうなりますか?」
『試さない方が賢明だとは言っておこう』

 まあ元からフェスマールの力など当てにする気は無かったが、火炎がかすめた時にどうにかなるというぐらいだろうか。
 とにかく村から遠く離れようか、と思ったが考えて見ると周囲は森だ。
 山火事になってしまったらそれも困る。
 そう考えた瞬間、ゴーレムの胸元が開く。その中には『魔法眼』ウィザード・アイでハッキリ視認出来る魔力の塊が輝いていた。

 これはやばい!
 オレはとにかく急いで駆けると、地面のへこみに飛び込んで伏せる。
 それとほぼ同時に先ほどオレが立っていた空間を灼熱が飛び越えていく。
 フェスマールが熱への防御を提供してくれていなかったら、これだけでも火傷を負っていただろう。
 よくあるパターンだとなぜか服だけ燃えて『乙女の柔肌』は無事なので、サービスシーン突入となるわけだが、現実にそんな事があるわけない。
 つい先日、火山の神のところでイヤというほど熱気と付き合わされたのに、また炎で攻撃されるとはつくづく縁があるな。

『いったいどうするつもりだ? そなたにあれを破壊する手段はあるまい』
「あのゴーレムの魔力も別に無限ではないのでしょう」
『それは当然だが、魔力が尽きるまでずっとかわし続ける気か? 無謀にも程があるぞ』

 相手は一発当てればいいのに、こちらは全て回避するとなれば圧倒的不利なのは自明の理というものだ。
 だがもちろんそんな馬鹿な事は考えていない。
 オレがへこみを出て少し逃げ回ると、またしてもゴーレムの胸元が開いて魔力の炎が見えてくる。
 だがその瞬間、オレは『魔力消散』ディスミス・マジックの魔法でその魔力を消し去った。
 通常の火炎ならば消せないが、魔力で形成されているものであればどうにかなるのだ。
 これであのゴーレムの魔力を無駄撃ちさせていれば、魔力切れで行動不能にさせる事が出来るだろう。
 何とも熾烈な消耗戦だが、これぐらいしかオレには打つ手はない。
 しかしその時、オレの身は思わず硬直する。
 村の方から血相を変えて、クロンがこちらに駆けつけて来たからだ。
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