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第22章 軍神の治める地では
第1024話 『永遠の炎』から逃げたところで
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まさかこの『永遠の炎』はオレに救いを求めているのか?
見ると炎が人の形をとって、手を伸ばし、必死で叫びつつこちらにすがってくる。
もちろんこんなのにつかまれたら、こっちの身もひとたまりもなく黒焦げだ。
いや下手をしたら『永遠の炎』に取り込まれて、オレまで生きたまま焼かれる燃料にされてしまいかねない。
もちろんこっちも身を翻して炎をかわすが、相手はやはりオレを狙っている様子でどんどんと迫ってくる。
しかも気がつくといつの間にか周囲が殆ど炎に覆われているぞ。
恐らく『永遠の炎』の一部と化している魂は普通の視角があるのではなく、近づいてきた相手の霊力を感知して行動しているのだろう。
そうすると彼らにはオレはまばゆく輝いて見えている筈だから、必死になって助けを求めていると言う事か。
しかし今のオレには彼らをどうすればいいのか、見当もつかない。助ける事が不可能だとは思わないが、何をするのかはこれから考えるしかないな。
そんなわけでひとまずこの場から撤退するため『霊体遮断』の魔法を展開する。
本当に炎だったら全く無意味だが、これは魂を燃やしているものなのでこの魔法で食い止められる筈だ。
『!!!!』
思った通り、人型をした炎は魔法の障壁のところで食い止められる。
この間にオレはひとまず逃げ出す。
さすがに吹き出している穴から遠く離れる事は出来ないようで、オレに向かってきた炎も薄らいで消えていく。
ううむ。苦痛のあまりのたうっている永遠の炎にすれば、少しでも助けになりそうな相手にはまとわりつくのだな。
しかしそれは彼らと同じく『永遠の炎』の一部として引き込まれてしまうだけだ。
これでは確かにわざわざ防御する必要はないな。
これはあくまでも推測だがゴーレムが暴れているのも、燃料にされた魂が誰彼構わず助けを求めようとしている一方で、ゴーレム自身はその行動を戦闘向けに設定されてしまっているので、結果的に相手を攻撃してミンチに変えてしまうのではないだろうか。
暴れ回る怪物が実は苦しんでいて助けを求めているのだった、というのもしばしば見かけるパターンだったな。
だがここでオレの耳に思わぬ言葉が飛び込んでくる。
『おや。城の外が随分と騒がしいと思ったら、そなただったのか』
え? まさか?
見るとそこにはオレの傍らにいるカルマノスに似た豪奢な衣服をまとった――だがその身が放つ力は桁違いの――男が立っていた。
紛れもなく以前に遭遇した『神なる皇帝ウルバヌス』の姿だ。
もっとも神そのものがわざわざ城から出てきたのではなく、力の一部を化身として送り出してきただけらしいが。
『こうやって予の元に来たという事は――』
「断っておきますが、あなたの妻になる気はありませんよ」
もうこの手のやりとりにはすっかり慣れてしまったな。
『ふふふ。そうやって焦らすつもりか? まあよい。そのような女も大勢いたからな。そなたも知っているだろうが、予は敵には容赦はせぬ。しかし女子には寛大なのだぞ』
「それは美人限定なのではありませんか?」
『その何が悪いのだ。予は我が名の元に戦って勝利するものの守護神ではあるが、同時に美しきものを喜び尊ぶのは当然ではないか』
ヌケヌケと言ってくれるものだ。
しかしこうして会話をしていると、コイツが罪人や捕虜の魂を燃料として焼き尽くすのを当然としていて、目の前で苦痛にあえぐ『永遠の炎』の元凶となっている神でもある事をついつい忘れてしまいそうだ。
困った事にウルバヌス自身は本当にその行為を悪いなどとは微塵も思っていないから、悪意そのものがまるで無いのだ。
もちろんオレが辞めろと言っても聞き入れる筈がない。
それはともかくウルバヌスはいまオレに憑いているカルマノスについても気づいていない筈がないのだが、完全に無視していて視線を向けもしない。
そんなウルバヌスに対しカルマノスは怒りを叩きつける。
『ウルバヌス! よくもヌケヌケと予の前に姿を見せたものだな! この卑劣な簒奪者めが! お前のために予がどれだけ――』
カルマノスは罵声を受けても、ウルバヌスは眉一つ動かさない。
徹底的に知らん顔をする気なのか?
いや違う。
ひょっとするとウルバヌスは本当にカルマノスの存在に気づいておらず、罵声も感知していないのかもしれないぞ。
神や精霊は相手を通常、自分の霊力との比較で感知する。
ウルバヌスからすると、ほんの僅かな力しか持たない今のカルマノスは殆ど蚊のような存在だ。
だから今のカルマノスは目に入っていないし、声も風の音と変わらぬ雑音でしかないのだ。
『おのれ……貴様……』
カルマノスも相手が意図的に無視しているのではなく、本当に自分が感知すらされていない事に気づいたらしく、口惜しそうに唇を噛んでいる。
皇帝の座を追われ、滅ぼされ、亡霊になってずっと恨んでいた相手が目の前に現れたのに、手も足も出ないどころか、存在自体を無視されてしまうとは『正統なる皇帝』にとっては屈辱という言葉では表せない事だろうな。
見ると炎が人の形をとって、手を伸ばし、必死で叫びつつこちらにすがってくる。
もちろんこんなのにつかまれたら、こっちの身もひとたまりもなく黒焦げだ。
いや下手をしたら『永遠の炎』に取り込まれて、オレまで生きたまま焼かれる燃料にされてしまいかねない。
もちろんこっちも身を翻して炎をかわすが、相手はやはりオレを狙っている様子でどんどんと迫ってくる。
しかも気がつくといつの間にか周囲が殆ど炎に覆われているぞ。
恐らく『永遠の炎』の一部と化している魂は普通の視角があるのではなく、近づいてきた相手の霊力を感知して行動しているのだろう。
そうすると彼らにはオレはまばゆく輝いて見えている筈だから、必死になって助けを求めていると言う事か。
しかし今のオレには彼らをどうすればいいのか、見当もつかない。助ける事が不可能だとは思わないが、何をするのかはこれから考えるしかないな。
そんなわけでひとまずこの場から撤退するため『霊体遮断』の魔法を展開する。
本当に炎だったら全く無意味だが、これは魂を燃やしているものなのでこの魔法で食い止められる筈だ。
『!!!!』
思った通り、人型をした炎は魔法の障壁のところで食い止められる。
この間にオレはひとまず逃げ出す。
さすがに吹き出している穴から遠く離れる事は出来ないようで、オレに向かってきた炎も薄らいで消えていく。
ううむ。苦痛のあまりのたうっている永遠の炎にすれば、少しでも助けになりそうな相手にはまとわりつくのだな。
しかしそれは彼らと同じく『永遠の炎』の一部として引き込まれてしまうだけだ。
これでは確かにわざわざ防御する必要はないな。
これはあくまでも推測だがゴーレムが暴れているのも、燃料にされた魂が誰彼構わず助けを求めようとしている一方で、ゴーレム自身はその行動を戦闘向けに設定されてしまっているので、結果的に相手を攻撃してミンチに変えてしまうのではないだろうか。
暴れ回る怪物が実は苦しんでいて助けを求めているのだった、というのもしばしば見かけるパターンだったな。
だがここでオレの耳に思わぬ言葉が飛び込んでくる。
『おや。城の外が随分と騒がしいと思ったら、そなただったのか』
え? まさか?
見るとそこにはオレの傍らにいるカルマノスに似た豪奢な衣服をまとった――だがその身が放つ力は桁違いの――男が立っていた。
紛れもなく以前に遭遇した『神なる皇帝ウルバヌス』の姿だ。
もっとも神そのものがわざわざ城から出てきたのではなく、力の一部を化身として送り出してきただけらしいが。
『こうやって予の元に来たという事は――』
「断っておきますが、あなたの妻になる気はありませんよ」
もうこの手のやりとりにはすっかり慣れてしまったな。
『ふふふ。そうやって焦らすつもりか? まあよい。そのような女も大勢いたからな。そなたも知っているだろうが、予は敵には容赦はせぬ。しかし女子には寛大なのだぞ』
「それは美人限定なのではありませんか?」
『その何が悪いのだ。予は我が名の元に戦って勝利するものの守護神ではあるが、同時に美しきものを喜び尊ぶのは当然ではないか』
ヌケヌケと言ってくれるものだ。
しかしこうして会話をしていると、コイツが罪人や捕虜の魂を燃料として焼き尽くすのを当然としていて、目の前で苦痛にあえぐ『永遠の炎』の元凶となっている神でもある事をついつい忘れてしまいそうだ。
困った事にウルバヌス自身は本当にその行為を悪いなどとは微塵も思っていないから、悪意そのものがまるで無いのだ。
もちろんオレが辞めろと言っても聞き入れる筈がない。
それはともかくウルバヌスはいまオレに憑いているカルマノスについても気づいていない筈がないのだが、完全に無視していて視線を向けもしない。
そんなウルバヌスに対しカルマノスは怒りを叩きつける。
『ウルバヌス! よくもヌケヌケと予の前に姿を見せたものだな! この卑劣な簒奪者めが! お前のために予がどれだけ――』
カルマノスは罵声を受けても、ウルバヌスは眉一つ動かさない。
徹底的に知らん顔をする気なのか?
いや違う。
ひょっとするとウルバヌスは本当にカルマノスの存在に気づいておらず、罵声も感知していないのかもしれないぞ。
神や精霊は相手を通常、自分の霊力との比較で感知する。
ウルバヌスからすると、ほんの僅かな力しか持たない今のカルマノスは殆ど蚊のような存在だ。
だから今のカルマノスは目に入っていないし、声も風の音と変わらぬ雑音でしかないのだ。
『おのれ……貴様……』
カルマノスも相手が意図的に無視しているのではなく、本当に自分が感知すらされていない事に気づいたらしく、口惜しそうに唇を噛んでいる。
皇帝の座を追われ、滅ぼされ、亡霊になってずっと恨んでいた相手が目の前に現れたのに、手も足も出ないどころか、存在自体を無視されてしまうとは『正統なる皇帝』にとっては屈辱という言葉では表せない事だろうな。
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