異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
1,037 / 1,316
第23章 女神の聖地にて真相を

第1037話 波止場にて

しおりを挟む
 一晩の宿を取った後、翌朝にオレは港に出向いた。
 ミツリーンも同行を願ってきたが、顔を知られている以上、またトラブルに巻き込まれたら困るので宿に残るように言い聞かせている。
 港は当然ながら大勢の人間でごった返していて、見るからに活気に溢れている。
 そしてよくよく見ると今まさに入港しようとしている、白く塗られた大きな船が目に入る。
 あれが聖女教会の聖地であるギルボック島とこのコーフールーを結ぶ船なのだな。
 それと港にはもう一隻、同じ色の船が泊まっている。どうやら交代でギルボック島に向かうらしく、入港した船と入れ違いで出航する予定なのだろう。
 並んでいる乗船希望者を見ると特に異常はなく、あくまでも聖地巡礼が目的らしいのも結構いるな。
 子連れの聖女らしい組み合わせは、恐らくギルボック島で修行していた聖女が何年かに一度の里帰りというところだろうか。
 もちろん病人も大勢いるがそれも千差万別だ。
 顔にアザがついているなど、日常生活は問題なくともどうしても優れた聖女の治療を望まざるを得ないらしい人も見かけられる。
 当然ながら体調が悪そうなので付き添いがついている例もあるようだし、移動式のベッドにその身を横たえた、寝たきりの病人すらいる――もちろん金持ちらしく付き添は何人もいるし、よく見ると専属医とおぼしき聖女まで同行している。
 恐らくその聖女はこの病人の側室なのだろう。
 そうだ。この世界では病人に長旅は大変だろうと思ってはいたが、そんな事の出来る程の人間なら地元の聖女を側室にしているのは珍しくはないはず。
 その聖女は普段は側室にして専属医でもあって、その彼女では治せない病気は聖地ギルボック島にいる優秀な聖女に治療を頼むけど、旅の途中で病状が悪化しないように魔法をかけ続けるぐらいの事は可能だろう。
 そうでないといくら治療のためであっても、寝たきり状態で長旅が出来るはずがないな。

 あとこれは想像だけど、当然ながら治療の甲斐なく命を落とす病人も少なくないはずだが、幾ら何でも遺体をそのまま郷里まで持ち帰る事は不可能だろう。
 普通に考えると遺体はギルボック島に埋葬し、郷里に持ち帰るのは遺品とあとはせいぜい遺髪か遺骨程度のはず。
 その場合、側室だった聖女は大半がギルボック島に残って夫の冥福を祈る事になるのではないだろうか。
 そうすると聖女教会はしばらくしてほとぼりが収まると、その聖女に再婚先を紹介する可能性が高い。

 しかも治療目的で有力者が集まるという事は、情報が集まるということでもある。
 もしもある有力者が亡くなって、その後継者が聖女を側室にしていないことが分かっていた時、ギルボック島に一年前、夫を亡くして今は独り身の聖女がいればそれをすぐに紹介出来るという寸法だ。
 聖女教会にとって美しく回復魔法に長けた聖女を、有力者の側室に輿入れするのが重要な権力基盤である事は自明の理である。
 ギルボック島は夫を亡くした聖女を、改めて聖女教会にとって最善の相手に輿入れさせるための舞台でもあるのではないか?
 この想像が正しいならこれまた世知辛い話ではあるけど、聖女にとっても決して悪い話では無いはずなので、責める事は出来ないな。
 
 それはともかく今の俺の目的はギルボック島の状況を探る事だ。
 聖女には近づけないので、たまたま見かけたかなり鍛え上げられている体の中年男性に声をかける。

「すみません。少しばかりお話をさせてもらっていいですか?」
「なんだい。お嬢さん」
「ギルボック島に行くにはこの船に乗り込めばよろしいのでしょうか?」
「ああ。もちろんだよ。ひょっとしてお前さんはこれからギルボック島への修行に向かう見習い聖女様かな?」
「まあ……そんなところです」

 確かに周囲には見習い聖女らしい姿もちらほらと見かけられる。
 名高い聖地なら当然、修行に訪れる聖女も多いはず。

「おおそうか。見習いでも聖女様に声をかけられるとは光栄だね」

 オレの言葉を聞いて、男は愛想よく笑いを浮かべる。

「お手間でなければギルボック島がいまどうなっているのか、お教え願えませんか?」

 この問いかけに男は少しばかり怪訝な表情を見せる。

「それだったらあの船に乗れば正式な聖女様方がおられるから、詳しい事はそちらで聞いた方がいいぞ」

 言われてみればその通りだ。
 今さら『見習い聖女ではありません(事実だけど)』とは言えないので、ここは別の人を当たるべきだな。
 オレが立ち去ろうとすると、ここで男が呼び止めてくる。

「待った。もしかしてお前さん、相当遠くから来ているのか?」
「え……ええそうです」

 何しろ大陸を横断してきたんだからね。

「なるほどな。それで田舎者扱いされるのが怖くて、誰でもいいからあちらの事情を知っていそうな人間から話を聞こうと思った。そんなところじゃないのか?」

 男は『どうだ。図星だろう』と言わんばかりだ。
 確かに船旅までして聖地への修行に向かうのは、見習いながら地元の聖女養成機関で優秀な成績を収め、将来を嘱望されたエリート予備群ばかりだろう。
 いま見かける見習い聖女たちも華美な装飾はしていないにしろ、服装は清潔かつ整っていて、かなり裕福な様子がうかがえる。
 聖女は親の身分は関係ないから、身なりの裕福さは出身寺院の差なのだ。
 そんな彼女たちと比較すれば、長旅のために男装しフードをかぶって薄汚れたオレは確かに貧相に見えるな。
 どうやらこの男はオレが田舎の貧しい寺院から修行のためにやってきたが、そこで他の見習いと自分の身なりを比較し恥じているので、別の聖女に話しかけるのを躊躇しているのだと推測したようだ。
 合理的な結論ではあるな――大外れだけど。
 まあこれでオレが『アルタシャ』だと見抜く人間がいたとしたら、むしろそちらの方がどうかしている。
 自分でも合理的な結論だと思っていたら、大外れなのはしょっちゅうだから偉そうな事を言えた義理ではないのだけど。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...