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第23章 女神の聖地にて真相を
第1042話 海賊の襲撃を受けて
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そういえば見習い聖女達は金髪に青紫の瞳ばかりだが、たぶん『女神と同じ色の髪と目』の持ち主が優先的にエリート予備軍として修行に回されているのだろうな。
まず間違い無くオレと同じく性転換させられてしまっている元男の少女もいるだろうけど、それが生まれた直後だったら本人にはそんな自覚などあるはずが無い。
もちろんそんなオレの考えなど気にもせず、見習い聖女はいたぶるように圧力をかけてくるのでちょっとばかり困っていると、周囲が少し騒がしくなってくる。
「おい! 海賊だってよ!」
「みんな気をつけろよ!」
どうやら海賊が出たらしく、船全体に慌ただしい空気が広まるように感じられる。
「いったいどうなるの……」
「大丈夫でしょう……私達が出来る事など無いわ」
少し不安げな表情を浮かべるものの、見習い聖女達も落ち着いてはいる。
まあこの『癒やしの風』号に対しては海賊船でもせいぜい通行料を取りにくるぐらいで、ましてや聖女に危害を加えるなんて滅多にないはず。
このぐらいでパニックに陥るわけがない。
しかし万一という事もあるし、様子を見に行くとしよう。
「お待ちなさい。どこに行くのですか?」
「もしかしたら海賊達との戦いになるかもしれませんから――」
「見物でもしようと? とんでもない野次馬ね」
やっぱり刺々しい台詞が跳んでくるな。
「そんなわけないです。戦いになれば負傷者も出るでしょう。その場合はわたしたちでも出来る事がありますよ」
オレの言葉を受けて周囲には緊張が走る。
「まさか……そんなはずが……」
「あなたたちもいざ戦争や災害となれば、場合によっては危険なところで治療活動をせねばならないのですよ。それぐらいは分かっているでしょう」
「もちろん招集がかかれば、私達だって駆けつけるのは躊躇しないわ。しかし何も言われていないのに見習いの私達が出向く必要など無いでしょう。ただの邪魔になるだけかもしれないのよ」
まあそれも正論ではあるし、まだまだ半人前の見習いが出来る事など限られているからな。
オレもこんなところで時間をつぶしていても仕方ないので、ひとまず部屋を出る。
「ちょっと待って。あたしも行くわ」
ついてきたのはヴィンガだけだ。
「あたしも下らない事で、序列をつけようとするあいつらにはうんざりしていたの」
口の利き方が砕けてきたな。たぶんこっちが本来のヴィンガなんだろう。
甲板にあがって外を見ると、一隻の船がかなり接近してきている。
もちろん水平線に姿を見せた時点で海賊船と分かったわけでは無い。
周囲には群島が幾つもあって、島影に隠れていればそうそう見つからないし、陸上に見張りを置き連絡させて待ち伏せの上、十分に接近したところで海賊船の正体を明かしたというところか。
何しろこの世界では無線も無いから、近づいてきたと言うだけでは確認しようもないし、島が多いという事は下手に避けようとすると、座礁する可能性もあるからな。
当然、海賊達はそれが分かっていて、この『癒やしの風』号を追い詰めているわけだ。
ここでオレに向けて野太い声がかかる。
「おい! アル! 何でここにいるんだ? 危ないから船室に隠れていろ」
見るとドーマルが緊張の面持ちでオレ達を見ている。
「いえ。万が一にも戦いになってけが人が出たら、わたし達でも役に立つかと思ったのです」
「それはありがたいと言いたいが、お前さん達が怪我をしたら俺たちの恥になるんだよ。だいたい他の聖女様も誰ひとり出てこないだろうが」
「その方々はみな守るべき相手がいるからでしょう」
この船に乗っている聖女の多くは病人――その多くは聖女本人の夫――の付き添いで来ている筈だから、最優先すべき対象はその病人だ。
「ところであの海賊はどこの何者なのです?」
この問いかけに対し、ドーマルの表情に怖れの色が混じる。
もしかして?
「あの旗は……『海の牙』のものだ……」
「ええ?!」
それはさっきの話では、生け贄に人間を要求するので恐れられている海賊神だよな?
しかしドーマルに聞いたところでは『癒やしの風』号は奴らの縄張りには近づかないので、襲われる心配は無かったはずなのでは?
いや。その理由をいま考えても仕方ない。
「ひい! その『海の牙』って凶悪な海賊で有名なところですよね!」
ヴィンガの顔が戦慄に歪む。彼女の出身地は聞いていなかったけど、知っているところを見るとやっぱり悪名高い海賊なんだな。
「その『海の牙』を相手にどうされるつもりなのですか?」
「逃げ切れればいいのだが……恐らく向こうの方が船足は速い……正直に言って難しいだろうな」
そりゃまあ獲物の船よりも遅い船で襲撃する間抜けな海賊がいるはずが無いな。
「なあに心配するな。こっちだって襲われた場合の備えぐらいはある。少なくとも聖女様や乗客は守り抜いてみせるさ」
ううむ。オレならば風や水の精霊を呼び出し、この船を加速させられるだろうか?
いや。それは難しい。
この水域はあちこちに浅瀬があるし、精霊には大ざっぱな事しか頼めない。
人間の基準にあわせて細かく船を動かすなど精霊には不可能なのだ。
オレと船員との間に意志疎通が無いのにそんな事をしたら、座礁してしまって余計に動きがとれなくなってしまう危険性がある。
そうするとオレが船乗り達を魔法で支援すべきだろう。
「ヴィンガさんは船室に戻っていて下さい」
「アルはどうするつもりなの?」
「ここで自分に出来る事をしますよ」
オレの返答を聞いてヴィンガは息を呑む。
「あなたはどうしてそんなに落ち着いていられるの? まるでこんなの当たり前であるかのようじゃない」
「まあこんなの慣れっこですから」
「凄いわね……見たところあたしと同年配なのに……分かったわ」
そしてヴィンガが甲板の下に戻ってからしばらくして『海の牙』の船から矢が次々と飛んでくる事になった。
まず間違い無くオレと同じく性転換させられてしまっている元男の少女もいるだろうけど、それが生まれた直後だったら本人にはそんな自覚などあるはずが無い。
もちろんそんなオレの考えなど気にもせず、見習い聖女はいたぶるように圧力をかけてくるのでちょっとばかり困っていると、周囲が少し騒がしくなってくる。
「おい! 海賊だってよ!」
「みんな気をつけろよ!」
どうやら海賊が出たらしく、船全体に慌ただしい空気が広まるように感じられる。
「いったいどうなるの……」
「大丈夫でしょう……私達が出来る事など無いわ」
少し不安げな表情を浮かべるものの、見習い聖女達も落ち着いてはいる。
まあこの『癒やしの風』号に対しては海賊船でもせいぜい通行料を取りにくるぐらいで、ましてや聖女に危害を加えるなんて滅多にないはず。
このぐらいでパニックに陥るわけがない。
しかし万一という事もあるし、様子を見に行くとしよう。
「お待ちなさい。どこに行くのですか?」
「もしかしたら海賊達との戦いになるかもしれませんから――」
「見物でもしようと? とんでもない野次馬ね」
やっぱり刺々しい台詞が跳んでくるな。
「そんなわけないです。戦いになれば負傷者も出るでしょう。その場合はわたしたちでも出来る事がありますよ」
オレの言葉を受けて周囲には緊張が走る。
「まさか……そんなはずが……」
「あなたたちもいざ戦争や災害となれば、場合によっては危険なところで治療活動をせねばならないのですよ。それぐらいは分かっているでしょう」
「もちろん招集がかかれば、私達だって駆けつけるのは躊躇しないわ。しかし何も言われていないのに見習いの私達が出向く必要など無いでしょう。ただの邪魔になるだけかもしれないのよ」
まあそれも正論ではあるし、まだまだ半人前の見習いが出来る事など限られているからな。
オレもこんなところで時間をつぶしていても仕方ないので、ひとまず部屋を出る。
「ちょっと待って。あたしも行くわ」
ついてきたのはヴィンガだけだ。
「あたしも下らない事で、序列をつけようとするあいつらにはうんざりしていたの」
口の利き方が砕けてきたな。たぶんこっちが本来のヴィンガなんだろう。
甲板にあがって外を見ると、一隻の船がかなり接近してきている。
もちろん水平線に姿を見せた時点で海賊船と分かったわけでは無い。
周囲には群島が幾つもあって、島影に隠れていればそうそう見つからないし、陸上に見張りを置き連絡させて待ち伏せの上、十分に接近したところで海賊船の正体を明かしたというところか。
何しろこの世界では無線も無いから、近づいてきたと言うだけでは確認しようもないし、島が多いという事は下手に避けようとすると、座礁する可能性もあるからな。
当然、海賊達はそれが分かっていて、この『癒やしの風』号を追い詰めているわけだ。
ここでオレに向けて野太い声がかかる。
「おい! アル! 何でここにいるんだ? 危ないから船室に隠れていろ」
見るとドーマルが緊張の面持ちでオレ達を見ている。
「いえ。万が一にも戦いになってけが人が出たら、わたし達でも役に立つかと思ったのです」
「それはありがたいと言いたいが、お前さん達が怪我をしたら俺たちの恥になるんだよ。だいたい他の聖女様も誰ひとり出てこないだろうが」
「その方々はみな守るべき相手がいるからでしょう」
この船に乗っている聖女の多くは病人――その多くは聖女本人の夫――の付き添いで来ている筈だから、最優先すべき対象はその病人だ。
「ところであの海賊はどこの何者なのです?」
この問いかけに対し、ドーマルの表情に怖れの色が混じる。
もしかして?
「あの旗は……『海の牙』のものだ……」
「ええ?!」
それはさっきの話では、生け贄に人間を要求するので恐れられている海賊神だよな?
しかしドーマルに聞いたところでは『癒やしの風』号は奴らの縄張りには近づかないので、襲われる心配は無かったはずなのでは?
いや。その理由をいま考えても仕方ない。
「ひい! その『海の牙』って凶悪な海賊で有名なところですよね!」
ヴィンガの顔が戦慄に歪む。彼女の出身地は聞いていなかったけど、知っているところを見るとやっぱり悪名高い海賊なんだな。
「その『海の牙』を相手にどうされるつもりなのですか?」
「逃げ切れればいいのだが……恐らく向こうの方が船足は速い……正直に言って難しいだろうな」
そりゃまあ獲物の船よりも遅い船で襲撃する間抜けな海賊がいるはずが無いな。
「なあに心配するな。こっちだって襲われた場合の備えぐらいはある。少なくとも聖女様や乗客は守り抜いてみせるさ」
ううむ。オレならば風や水の精霊を呼び出し、この船を加速させられるだろうか?
いや。それは難しい。
この水域はあちこちに浅瀬があるし、精霊には大ざっぱな事しか頼めない。
人間の基準にあわせて細かく船を動かすなど精霊には不可能なのだ。
オレと船員との間に意志疎通が無いのにそんな事をしたら、座礁してしまって余計に動きがとれなくなってしまう危険性がある。
そうするとオレが船乗り達を魔法で支援すべきだろう。
「ヴィンガさんは船室に戻っていて下さい」
「アルはどうするつもりなの?」
「ここで自分に出来る事をしますよ」
オレの返答を聞いてヴィンガは息を呑む。
「あなたはどうしてそんなに落ち着いていられるの? まるでこんなの当たり前であるかのようじゃない」
「まあこんなの慣れっこですから」
「凄いわね……見たところあたしと同年配なのに……分かったわ」
そしてヴィンガが甲板の下に戻ってからしばらくして『海の牙』の船から矢が次々と飛んでくる事になった。
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