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第23章 女神の聖地にて真相を
第1048話 海賊団の名前と神様と
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取りあえずオレが自発的にここに来た事は理解してもらわねばならないな。
「この船にはわたしが自分で志願して来たんです。もちろん誰かに命じられて無理強いされたわけではありません」
「確かにあんたが命じられたのでイヤイヤ来たワケでは無いのは様子を見りゃ分かる」
ここでガルーシャは小さくため息をつく。
「何とも大した自己犠牲精神だ。いや。見事な信仰心というべきかね? あたしらも是非、見習わせてもらいたいもんだ」
見たところ感心半分、皮肉半分という感じだな。
「それが聖女様の教育の賜物かい?」
「いいえ。違いますよ」
何しろオレは聖女としての教育なんぞ受けていないからな。信仰心の欠片も無い事だってよ~く自覚しています。
「あなた方が『癒し手』を必要としているなら、わたしがそれに応えればいいだけですから犠牲になる気はありません」
「思い上がるな! この小娘が!」
怒ったのはオレを連れて来た女海賊の方だ。手にしたレイピアをオレの首筋に突きつけて来る。
「ペンタ。あんたは黙ってな」
「しかしオフクロ……」
「船長命令に逆らうってのかい?」
「失礼しました」
ペンタというらしい女海賊は引き下がる。
「アルだったか。その若さで本当に大したタマだよ。いいだろう。あんたに免じて、あたしらもこの場は引いてやる」
「ええ? いいのですか?」
ペンタは納得出来ないと言わんばかりに食い下がる。
「乗り込んだらあちらだって、死にものぐるいで反撃してくるだろ。そうなればこっちだって犠牲は出るんだ。縄張りを大きく離れているから、帰る途中で何があるか分かったもんじゃない。今は引いた方が賢明というもんだよ」
「だけど肝心の『癒やし手』が見習い一人だけなんて……」
「それでダメだったら、次こそ本気でやってやれ。あたしらをなめたらどうなるか、聖女教会のお偉い聖女様に思い知らせてやればいいだけさ」
「分かりました……」
これでどうやら一安心というところだ。もちろん『癒やしの風』号が無事というだけで、オレの方はこれからなんだけどな。
「それではあんたの『癒やし手』の腕を少しばかり見せてもらうよ」
「どうすればいいんですか?」
「病室に行ってきて、そこにいるのを手当てしてくれ。ペンタ。案内してやりな」
そんなわけでペンタの案内で船内に入る。
やっぱり船内でも見かけるのは全員が女性だ。本当に男は乗っていないらしい。
「あのうペンタさん。質問いいですか?」
「なんだ?」
「本当にこの船には男性は乗っていないのですか?」
オレの質問に対し、ペンタは一瞬、驚いた様子を見せる。
「はあ? アンタはあたし達が何者なのか知らないのかい?」
「ヴァルゼインの海賊団だって事は知っていますけど、それ以上の事は聞いていません」
「なるほど。あたしらの事を何も知らないから、そんなに平然としていられるわけか」
ペンタはどこか納得した様子で頷く。
「一つ言っておくが『ヴァルゼイン』というのはあたしらの住んでいる島の事であって、海賊団の事じゃ無い。だから呼び名に気をつけな」
「それではどう呼べばいいのですか?」
「あたしらは『ソルフの娘』だ。だからそう呼びな」
「その名前は皆さんの崇める神様の事を指しているのですよね?」
聖女教会の聖女が時として『イロールの娘』として扱われるように――オレなんか堂々と女神から『娘』宣言された事もある――彼女達はソルフと言う名を持つ海賊神の娘として扱われるという事らしい。
だけど海賊団とすれば、あんまり怖くはなさそうだけど、だからこそ恐れている船乗りからは『ヴァルゼインの海賊』と呼ばれているのだろう。
「ああそうさ。ソルフ様は偉大なるあたしら全員の神様さ。あんたには分からないだろうけどね」
何か含みがありそうな言い方だな。
どうもオレが何も知らないことを少しばかりからかうような、そんな様子がうかがえる。
「そうだ。もしもあんたが望むなら『娘』の一人に加えてやってもいいんだぜ。オフクロも妙に気に入っているようだしね」
「いえ。お断りしておきます」
「そうかい。まあいい。気が変わったらいつでも言ってきな」
ううむ。ペンタは最初はかなり刺々しい態度だったけど、大分ゆるんできた気がするな。
「それと最初の質問だが、あたいらの船には身代金取るための人質にする以外に、男を乗せる事は無い。それ以外で乗り込んでくる奴がいたら、ぶち殺し汚らわしいものを切り取ってさらしてやるのはあんたが見たとおりだ」
ペンタの見た目は日焼けした健康美あふれる女性だけど、やっていることは本当にえげつないな。
「そらここが病室だ」
ペンタが扉を開けると中には数人の女性がベッドに横たえられていた。
長い船旅では体調を崩す人間が出るのは避けられないからな。
そんなわけでオレはベッドにいる女性ひとりひとりを触って回る。
「お前が『癒やし手』だというなら、まずはここの連中を元気に――」
「終わりましたよ」
「は? お前は何を言っているんだ?」
「だから皆さん、元気になったはずです」
「ふざけるな――」
ペンタが声を荒げようとしたところで、ベッドにいた女性はみんなむくりと起き上がる。
「おや。気分が随分とよくなったよ」
「これならまた働けるわ」
その光景を見てペンタは目を丸くしている。
「な、なんだと? いくら何でもそんな……」
「これで合格ですかね?」
どうやらペンタはオレの問いかけが耳に入っていないらしく、絶句した様子だった。
「この船にはわたしが自分で志願して来たんです。もちろん誰かに命じられて無理強いされたわけではありません」
「確かにあんたが命じられたのでイヤイヤ来たワケでは無いのは様子を見りゃ分かる」
ここでガルーシャは小さくため息をつく。
「何とも大した自己犠牲精神だ。いや。見事な信仰心というべきかね? あたしらも是非、見習わせてもらいたいもんだ」
見たところ感心半分、皮肉半分という感じだな。
「それが聖女様の教育の賜物かい?」
「いいえ。違いますよ」
何しろオレは聖女としての教育なんぞ受けていないからな。信仰心の欠片も無い事だってよ~く自覚しています。
「あなた方が『癒し手』を必要としているなら、わたしがそれに応えればいいだけですから犠牲になる気はありません」
「思い上がるな! この小娘が!」
怒ったのはオレを連れて来た女海賊の方だ。手にしたレイピアをオレの首筋に突きつけて来る。
「ペンタ。あんたは黙ってな」
「しかしオフクロ……」
「船長命令に逆らうってのかい?」
「失礼しました」
ペンタというらしい女海賊は引き下がる。
「アルだったか。その若さで本当に大したタマだよ。いいだろう。あんたに免じて、あたしらもこの場は引いてやる」
「ええ? いいのですか?」
ペンタは納得出来ないと言わんばかりに食い下がる。
「乗り込んだらあちらだって、死にものぐるいで反撃してくるだろ。そうなればこっちだって犠牲は出るんだ。縄張りを大きく離れているから、帰る途中で何があるか分かったもんじゃない。今は引いた方が賢明というもんだよ」
「だけど肝心の『癒やし手』が見習い一人だけなんて……」
「それでダメだったら、次こそ本気でやってやれ。あたしらをなめたらどうなるか、聖女教会のお偉い聖女様に思い知らせてやればいいだけさ」
「分かりました……」
これでどうやら一安心というところだ。もちろん『癒やしの風』号が無事というだけで、オレの方はこれからなんだけどな。
「それではあんたの『癒やし手』の腕を少しばかり見せてもらうよ」
「どうすればいいんですか?」
「病室に行ってきて、そこにいるのを手当てしてくれ。ペンタ。案内してやりな」
そんなわけでペンタの案内で船内に入る。
やっぱり船内でも見かけるのは全員が女性だ。本当に男は乗っていないらしい。
「あのうペンタさん。質問いいですか?」
「なんだ?」
「本当にこの船には男性は乗っていないのですか?」
オレの質問に対し、ペンタは一瞬、驚いた様子を見せる。
「はあ? アンタはあたし達が何者なのか知らないのかい?」
「ヴァルゼインの海賊団だって事は知っていますけど、それ以上の事は聞いていません」
「なるほど。あたしらの事を何も知らないから、そんなに平然としていられるわけか」
ペンタはどこか納得した様子で頷く。
「一つ言っておくが『ヴァルゼイン』というのはあたしらの住んでいる島の事であって、海賊団の事じゃ無い。だから呼び名に気をつけな」
「それではどう呼べばいいのですか?」
「あたしらは『ソルフの娘』だ。だからそう呼びな」
「その名前は皆さんの崇める神様の事を指しているのですよね?」
聖女教会の聖女が時として『イロールの娘』として扱われるように――オレなんか堂々と女神から『娘』宣言された事もある――彼女達はソルフと言う名を持つ海賊神の娘として扱われるという事らしい。
だけど海賊団とすれば、あんまり怖くはなさそうだけど、だからこそ恐れている船乗りからは『ヴァルゼインの海賊』と呼ばれているのだろう。
「ああそうさ。ソルフ様は偉大なるあたしら全員の神様さ。あんたには分からないだろうけどね」
何か含みがありそうな言い方だな。
どうもオレが何も知らないことを少しばかりからかうような、そんな様子がうかがえる。
「そうだ。もしもあんたが望むなら『娘』の一人に加えてやってもいいんだぜ。オフクロも妙に気に入っているようだしね」
「いえ。お断りしておきます」
「そうかい。まあいい。気が変わったらいつでも言ってきな」
ううむ。ペンタは最初はかなり刺々しい態度だったけど、大分ゆるんできた気がするな。
「それと最初の質問だが、あたいらの船には身代金取るための人質にする以外に、男を乗せる事は無い。それ以外で乗り込んでくる奴がいたら、ぶち殺し汚らわしいものを切り取ってさらしてやるのはあんたが見たとおりだ」
ペンタの見た目は日焼けした健康美あふれる女性だけど、やっていることは本当にえげつないな。
「そらここが病室だ」
ペンタが扉を開けると中には数人の女性がベッドに横たえられていた。
長い船旅では体調を崩す人間が出るのは避けられないからな。
そんなわけでオレはベッドにいる女性ひとりひとりを触って回る。
「お前が『癒やし手』だというなら、まずはここの連中を元気に――」
「終わりましたよ」
「は? お前は何を言っているんだ?」
「だから皆さん、元気になったはずです」
「ふざけるな――」
ペンタが声を荒げようとしたところで、ベッドにいた女性はみんなむくりと起き上がる。
「おや。気分が随分とよくなったよ」
「これならまた働けるわ」
その光景を見てペンタは目を丸くしている。
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どうやらペンタはオレの問いかけが耳に入っていないらしく、絶句した様子だった。
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