異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
1,059 / 1,316
第23章 女神の聖地にて真相を

第1059話 またも面倒な出会いが

しおりを挟む
 声をかけてきたのはいろいろな装飾品を身につけ、かなりカラフルな姿をした若い女性というよりは少女だ。おそらくはオレよりも年下、だいたい十三歳ぐらいだろう。
 聖女は派手な装いはしないから、少なくとも聖女教会の人間ではないらしい。
 それではいったい何者だ? どうしてオレがアルタシャだと見当をつけた?
 幸いにも周囲の喧騒から、彼女を言葉が聞こえていた者はいないようだが、誰かの耳に入ればどう考えてもロクなことにならないな。

「人違いですよ。失礼します」
「待ってください! アル――」

 そっちが待てよ! こんなところで何を考えていやがる!
 オレは大声で叫びかけた相手の口を思わず抑える。

「と、とにかく静かにしてくれますか?」
「それではやっぱりあなたがアルタシャ様なのですね?」

 こいつ確証も無かったのに、ひとまず声をかけて確かめようとしたのか。
 だが今のオレはフードをかぶっていて、遠目では男女の区別もはっきりつかないはず。
 近くでよく見れば女の身である事は見当がつくだろうけど、それでもアルタシャだとわかるはずがない。
 この港は確かに女性は少ないが全くいないわけではないし、ましてやオレがここを訪れると事前に知っていたとも思えない。
 いや。この少女にはごく弱いものだが、霊体がついている。
 オレの『霊視』ソウルサイトではぼんやりと中空に浮かぶカモメの形をした霊体が見えるのだ。
 そうするともしかしたらこの相手は?

「あたしの名はモルッカと言います」
「あなたはもしかしてシャーマンですか」
「ええ。そうですとも!」

 モルッカについているのは極めて貧弱なものだけどシャーマンの守護霊ワイターだ。
 この世界のシャーマンは自分の霊魂の一部を分離して守護霊とし、霊体との交渉などいろいろな手助けをさせる事ができる。
 そしてシャーマンは相手の霊力を見る能力がある――もちろんシャーマンもいろいろだから全てのシャーマンにその力があるとは限らないが、少なくともモルッカにはそれが出来るのだろう。
 だからモルッカはオレが桁違いの霊力を有しているのを見て、噂になっているアルタシャだろうと見当をつけたというわけか。
 これがむくつけき男のシャーマンでオレの身を狙ってくるような事がないだけ、マシと思うしかないな。

「こう見えてもあたしは守護霊を覚醒させている、一人前のシャーマンですよ。だからアルタシャ様のことも一目で分かりました!」

 モルッカはいかにも誇らしげに、ささやかに膨らんだその胸をそらす。
 確かに年齢を考えれば、守護霊がいるだけでも相当なものだろうけど、彼女の守護霊はほんのかすかな存在でしかなく、とても『一人前のシャーマン』とは言いがたい。
 かろうじて『シャーマンの端くれに引っかかっている』というレベルだろう。

「それで女英雄と名高いアルタシャ様にお願いがあるのですが」
「申し訳ないのだけど、わたしは急いでいるので――」

 もしもオレの目の前でモルッカが荒くれ連中に襲われて、今すぐにでもその身を蹂躙されかねない状況だったら危険を承知で助けることもやぶさかではないが、どう見ても今の彼女はそんな状況ではない。

「本当にダメなのですか? アルタシャ様は困っている人間を決して見捨てないと聞いていたのに……」
「わたしも全ての人を助ける事は出来ませんから」
「そうですか……仕方ありません」

 意外にあっさりとあきらめたな。
 オレを頼るぐらいだからてっきりしつこくつきまとってくるかと思っていたのだが、これでひと安心、ではもちろんなかった――

「ここに大陸に名を馳せる偉大な――」
「ちょっと待った!」

 いきなり叫びだそうとしたモルッカの口を改めてオレは押さえる。

「それではあたしの話を聞いてくれますか?」

 モルッカはまたしても誇らしげに笑みを浮かべる。
 どうやらオレが正体を隠して行動している――そうせざるを得ない――事にモルッカは気付いていて、脅していると言うワケか。
 今までオレに助けを求める相手は大勢いたし、中にはロクでもない悪党もいたけど、こんな困った相手は初めてだ。

「とりあえずいったんこの場を離れましょう……」
「どうぞこちらにいらして下さい」

 オレはやむなくモルッカに同行する事となった。
 もしかしたらオレを待ち伏せている何者かのところに連れて行くのではないかと、少しばかり警戒していたが、モルッカは港から少し離れた小高い丘にもうけられた小さな庵に案内する。
 港やその周囲が見下ろせるなかなかの絶景だな。
 そんな事を考えていると、モルッカは恭しく頭を下げる。

「よくぞいらしてくれました。アルタシャ様を招く事が出来たのは、あたしにとっては実に光栄な事ですよ」

 何とも図々しい言いぐさだが、オレよりも年下の筈なのに既にそういうやり方を身につけているとは末恐ろしいと言うべきか。
 しかしモルッカと同居している人間の姿が見えない。
 彼女がシャーマンだとしても、その守護霊の能力からしてとても独り立ち出来るような実力では無いはずだし、年齢からすればシャーマンの師もいないとおかしい。
 どうやらいつものように面倒な事がいろいろとあるらしいな。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...