異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第23章 女神の聖地にて真相を

第1060話 シャーマン少女の頼みとは

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 取りあえずモルッカから話を聞くとしよう。

「それでわたしへの用件とは何ですか――」
「……」

 このときどういうわけかモルッカは厳しい表情で港を凝視していた。それはどうやら今、港に入った船に注がれているらしい。
 だがその船が掲げている旗はオレにとっても見覚えのあるものだった。あれは間違い無く神造者の象徴である『八角形の紋章』オクタゴンだ。
 まさかモルッカは神造者と何かトラブルを抱えているのか。
 神造者は神を自分たちの定めた『カミツクリ』という理論によって定義し、崇拝の中身を都合よく統一する事で効率的な崇拝を求めている勢力だ。
 これにより彼らの支配地域では、神話は矛盾しないように定義されて、大地や天空などの主神を中心として、個々の出来事についてはその配下というピラミッド状の神話体系が作られる。
 たとえば大地母神がいて、地域ごとにその娘達がおり、更にその下にはそれぞれの農地を司る大地の精霊がいるという具合だ。
 ただしこれまで見た限りでは、彼らが自分たちを『世界一素晴らしい』と思い込んでいる点はこの世界では当たり前なのでいいとしても、かなり強引なやり方で無理矢理に神話を統一したり、過去には非道な実験で多大な犠牲を出したりしているので、あんまり近づきたくない相手ではある。

「どうしたのですか? モルッカ?」
「あ……すみません!」

 モルッカは慌てた様子で頭を下げる。

「あなたは神造者と因縁があるのですか?」

 オレの問いかけにモルッカは驚きを浮かべる。

「なぜ分かったのです?! もしやアルタシャ様はあたしの心が読めるのですか?!」

 いや。バレバレだけどな。しかしオレの事で騒ごうとして、無理矢理にここまで引き込むようなしたたかな面があるけど、やはり年相応の子供っぽい面もあるのだな。
 少しばかり安心したよ。

「実はここ二、三年の間に、あちらの八角形を掲げた人たちが大勢、この島を訪れてサリリゴール神の神殿や有力な海賊たちに贈り物をして、取り入っているのです」

 なるほど。なんとも神造者らしいやり方だな。
 そうやって有力者に取り入った上で、彼らの信仰を自分たち神造者の定めた公式神話へと変えていくというわけだ。
 これは決して既存の信仰を捨てるわけではなく、あくまでも解釈を変えるだけなので、反発も少なく、しかもそれでいて確実に相手の信仰を神造者の勢力に取り込むことが出来る。
 一神教徒のように、多神教そのものを否定するわけではないから、抵抗は少ないのだろう。
 そしてこの海賊島に彼らが目をつけた理由も見当がつく。

 サリリゴール神はこの海域における海賊の始祖として崇拝されているということは、その神を神造者の公式神話に組み込むことで、海賊たちを全て神造者の影響下に置こうと考えているに違いない。
 もちろんそれだけでいきなり海賊たちが全て神造者に従うことはないだろうけど、このサリリゴール島は海賊たちの交易所であり、そこを掌握すれば多くの海賊が従わざるを得なくなるはずだ。
 その上で神造者を支持する海賊達に支援を与え、反発する海賊は海賊市場から締め出した上で、攻め滅ぼすか膝を屈するか選ばせる。
 場合によってはその海賊団の中の不平分子を援助して乗っ取らせる事もあるだろう。
 そうやって海賊達を掌握する事で、神造者はこの近辺の海上交通や漁業を自分達の影響下に置こうとしていると考えるのが自然だな。
 ただ神造者は強欲な面はあるが、決して邪悪というワケでも無いからややこしい。

 仮に神造者が海賊達を掌握すれば、彼らによる残虐行為や略奪などは次第に押さえ込まれていくはずだ。
 そして時間をかけて『海賊の始祖』を『海上警備の始祖』にすり替えていき、最終的には海賊を海上警備に近い形で組織化していくのではないだろうか。
 これは海賊達にとっても、この海域に住む人間にとっても悪い事では無いはずだ。
 しかしそれでもオレが神造者を支持する気にはなれない。
 彼らはしばしば性急に事を進めすぎて状況を悪化させるし、自分達の神話に組み込むために強引な牽強付会を行ったりもする。
 強欲であるが故に、信仰にまつわる神秘の力を乱用したりする事もあった。
 そんなわけで神造者はオレにとってもその関わりについて、いろいろと頭の痛い相手なのは間違い無いのだ。

「それであの人たちがやってくるようになってから、あたしが小さい時からお話の相手になってくれていた精霊達がどんどん減っていくように思えるんです」

 なるほどな。恐らくはその精霊達は神造者の手によって『公式神話』に取り込まれ、定義された結果としてシャーマンとは接触できなくなっていったのだな。

「あたしの師匠はいなくなった精霊達を探しに出て行って……それで……」

 モルッカは悲しげにうつむく。
 ううむ。そんな話を聞かされると知らん顔が出来なくなるのがオレの性分なのだ。

「それでわたしに何をしろというのですか?」

 だいたいの事情は分かったけど、いくら何でもオレに神造者を追い払うなど出来る筈が無いし、やろうとも思わない。
 そしてモルッカはここで力を込めて叫ぶ。

「お願いです! あたしをアルタシャ様の弟子にして下さい!」
「はい?」

 今まで数多くの相手からいろいろな事を頼まれてきたけど、まさかそんな事を切り出されるとは、オレは全く想像もしていなかったよ。
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