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第23章 女神の聖地にて真相を
第1067話 改めて聖女協会の聖地へと
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元気になったロロダは改めてオレに対して一礼する。
「それではお約束の船へと案内しましょう」
「アルタシャ様は行ってしまわれるのですか?」
モルッカは悲しげな表情を浮かべている。元からここに留まる気など無いことは言っているけど、こんなところは年相応だな。
だがここでモルッカが何かを大切そうに袋にしまっている事に気がついた。
「それは何ですか?」
「あ……いや! これは気にしないで下さい」
そう言われて気にならない人間は普通いない。
「こら。アルタシャ様に隠し事をする気か?」
ロロダがじろりとにらむとモルッカは、諦めた様子で袋の中を見せる。
そこには一筋の金色の髪が入っていたのだ。
「おい! それはアルタシャ様の御髪だろう!」
ううむ。髪は黒く染めていたのだが、オレ自身から離れたから魔力が消えたのだろうか?
それはともかくオレがやっぱり金髪である事は、モルッカもロロダも知っているらしい。
そんなところまでいろいろ有名になってしまったのだな。
「すみません……アルタシャ様がこの庵にお越しになった証拠が欲しかったもので……」
「勝手にそのような真似をするなど――」
ロロダがまた叫ぼうとしたところで、オレが口を挟む。
「まあいいですよ。髪ぐらいなら」
「本当ですか! ありがとうございます!」
昨晩、オレの寝床にモルッカが入り込んでいたのは、そのためだったのか。
いかにも『一晩の恋人』を期待していたように振る舞っていたのは、髪を拝借した事から目をそらすのが目的だったに違いない。
たぶんこの娘は『アルタシャがここで一晩過ごした』とか、この髪をネタにするなど、既にいろいろとオレの利用方法を考えているはずだ。
何ともしたたかな娘だ。これならオレがいなくとも、この庵を守るぐらいは出来るだろう。
少なくともこれ以上、心配する必要は無いな。
「それでは失礼します。モルッカもお元気で」
「何年後でも構いませんが、アルタシャ様もまた来て下さい。その時にはきっとここはあなた様の聖地になっているはずですから」
モルッカは勝手にオレの名を使ってここに人を呼び込む気まんまんだな!
いや。推測だがモルッカが特別なのではなく、今までオレが訪れたところでも同じように観光名所扱いされているところがたくさんあるのだろう。
元の世界にいた頃にも『数百年前に偉い人が腰掛けた岩』の横に、誇らしげに立て看板があったりしたけど、どこでも似たようなものなんだなあ。
しかし釘は刺しておかねばなるまい。
「分かっているとは思いますけど、決してわたしの弟子だとか恋人だとか名乗ったりはしないようにして下さいよ」
ただオレが一晩の宿を得たというだけなら、オレを憎んでいる相手でもムキになって攻撃はしないだろうが、下手に弟子だとか恋人だとか口にしたらどんな事をやらかしてくるのか分からないのだ。
これまでオレの『恋人』を名乗った連中ほとんど幸か不幸か、社会的な地位があったし、それ以外はシャーマンのアカスタ(第六、十二章)のようにオレと同様に放浪しているから、狙われる心配は少ない相手だった。
しかし荒くれ者の多いこのサリリゴール島では、モルッカに対して暴力的な行動に出る相手がいる危険性が否定できないからな。
「もちろんでございますとも。今後もこの半端者にはよく言い聞かせておきますので、大恩あるアルタシャ様にこれ以上、ご迷惑は決しておかけしません」
モルッカに代わりロロダが請け負うが、モルッカもズイとその顔を寄せてくる。
「アルタシャ様の事は決して忘れませんよ」
「それでは港に参りましょう」
「分かりました」
オレはたった一日だがいろいろあった『港を見下ろす岡に立つ庵』を後にした。
港に入ると例によって活気があるな。もちろん荒々しい海賊が集っているので、一歩間違うと活気どころか殺気が飛び交う事にもなりかねない。
「近々、ギルボック島に向かう船はあちらです」
ロロダが指差した方向を見ると、外装をそれなりに装った船が見えてきた。
恐らく聖女教会の聖地に向かう船ともなれば、外装にもそれなりに気を使う必要があるのだろうな。
聖女教会も表向きは海賊とは関わっていない事になっているだろうけど、実際には海賊に捕まった聖女を取り戻すとか、海路に居座る海賊を話し合いで退けるとか、いろいろあって海賊達とのつながりを間接的にでも維持しているはずだ。
「あの船の名は『親不孝』号です」
何というか聞くだけでも不安になってくるような名前だな。
「なんでそんな名前になっているんですか?」
「船長を始め乗組員のほとんどが故郷を遠く離れて活動しているので、親に心配ばかりかけているからだそうですよ」
船の外見は飾り立てているけど、名前を飾る気は無いと言う事か。
「あの船の船長は若い頃から知っていますので、私が頼めば細かいことはを調べられること無くギルボック島まで乗せてもらえるはずです」
確かにそれはありがたいな。
しかし聖女教会の聖地、ギルボック島に行くまでの簡単な旅行だったはずなのに何だってこんな面倒な事になっているのか。
だがオレには薄々だが分かっていた。
たぶんこんなことはまだまだほんの序の口であって、ギルボック島に着いてからが本当に難題のスタートなのに違いないのだ。
「それではお約束の船へと案内しましょう」
「アルタシャ様は行ってしまわれるのですか?」
モルッカは悲しげな表情を浮かべている。元からここに留まる気など無いことは言っているけど、こんなところは年相応だな。
だがここでモルッカが何かを大切そうに袋にしまっている事に気がついた。
「それは何ですか?」
「あ……いや! これは気にしないで下さい」
そう言われて気にならない人間は普通いない。
「こら。アルタシャ様に隠し事をする気か?」
ロロダがじろりとにらむとモルッカは、諦めた様子で袋の中を見せる。
そこには一筋の金色の髪が入っていたのだ。
「おい! それはアルタシャ様の御髪だろう!」
ううむ。髪は黒く染めていたのだが、オレ自身から離れたから魔力が消えたのだろうか?
それはともかくオレがやっぱり金髪である事は、モルッカもロロダも知っているらしい。
そんなところまでいろいろ有名になってしまったのだな。
「すみません……アルタシャ様がこの庵にお越しになった証拠が欲しかったもので……」
「勝手にそのような真似をするなど――」
ロロダがまた叫ぼうとしたところで、オレが口を挟む。
「まあいいですよ。髪ぐらいなら」
「本当ですか! ありがとうございます!」
昨晩、オレの寝床にモルッカが入り込んでいたのは、そのためだったのか。
いかにも『一晩の恋人』を期待していたように振る舞っていたのは、髪を拝借した事から目をそらすのが目的だったに違いない。
たぶんこの娘は『アルタシャがここで一晩過ごした』とか、この髪をネタにするなど、既にいろいろとオレの利用方法を考えているはずだ。
何ともしたたかな娘だ。これならオレがいなくとも、この庵を守るぐらいは出来るだろう。
少なくともこれ以上、心配する必要は無いな。
「それでは失礼します。モルッカもお元気で」
「何年後でも構いませんが、アルタシャ様もまた来て下さい。その時にはきっとここはあなた様の聖地になっているはずですから」
モルッカは勝手にオレの名を使ってここに人を呼び込む気まんまんだな!
いや。推測だがモルッカが特別なのではなく、今までオレが訪れたところでも同じように観光名所扱いされているところがたくさんあるのだろう。
元の世界にいた頃にも『数百年前に偉い人が腰掛けた岩』の横に、誇らしげに立て看板があったりしたけど、どこでも似たようなものなんだなあ。
しかし釘は刺しておかねばなるまい。
「分かっているとは思いますけど、決してわたしの弟子だとか恋人だとか名乗ったりはしないようにして下さいよ」
ただオレが一晩の宿を得たというだけなら、オレを憎んでいる相手でもムキになって攻撃はしないだろうが、下手に弟子だとか恋人だとか口にしたらどんな事をやらかしてくるのか分からないのだ。
これまでオレの『恋人』を名乗った連中ほとんど幸か不幸か、社会的な地位があったし、それ以外はシャーマンのアカスタ(第六、十二章)のようにオレと同様に放浪しているから、狙われる心配は少ない相手だった。
しかし荒くれ者の多いこのサリリゴール島では、モルッカに対して暴力的な行動に出る相手がいる危険性が否定できないからな。
「もちろんでございますとも。今後もこの半端者にはよく言い聞かせておきますので、大恩あるアルタシャ様にこれ以上、ご迷惑は決しておかけしません」
モルッカに代わりロロダが請け負うが、モルッカもズイとその顔を寄せてくる。
「アルタシャ様の事は決して忘れませんよ」
「それでは港に参りましょう」
「分かりました」
オレはたった一日だがいろいろあった『港を見下ろす岡に立つ庵』を後にした。
港に入ると例によって活気があるな。もちろん荒々しい海賊が集っているので、一歩間違うと活気どころか殺気が飛び交う事にもなりかねない。
「近々、ギルボック島に向かう船はあちらです」
ロロダが指差した方向を見ると、外装をそれなりに装った船が見えてきた。
恐らく聖女教会の聖地に向かう船ともなれば、外装にもそれなりに気を使う必要があるのだろうな。
聖女教会も表向きは海賊とは関わっていない事になっているだろうけど、実際には海賊に捕まった聖女を取り戻すとか、海路に居座る海賊を話し合いで退けるとか、いろいろあって海賊達とのつながりを間接的にでも維持しているはずだ。
「あの船の名は『親不孝』号です」
何というか聞くだけでも不安になってくるような名前だな。
「なんでそんな名前になっているんですか?」
「船長を始め乗組員のほとんどが故郷を遠く離れて活動しているので、親に心配ばかりかけているからだそうですよ」
船の外見は飾り立てているけど、名前を飾る気は無いと言う事か。
「あの船の船長は若い頃から知っていますので、私が頼めば細かいことはを調べられること無くギルボック島まで乗せてもらえるはずです」
確かにそれはありがたいな。
しかし聖女教会の聖地、ギルボック島に行くまでの簡単な旅行だったはずなのに何だってこんな面倒な事になっているのか。
だがオレには薄々だが分かっていた。
たぶんこんなことはまだまだほんの序の口であって、ギルボック島に着いてからが本当に難題のスタートなのに違いないのだ。
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