1,076 / 1,316
第23章 女神の聖地にて真相を
第1076話 初めてつかんだ手がかり?
しおりを挟む
とりあえずオレはここの孤児院にも、ちょっとばかり興味がある。
幾ら何でも現在、この寺院で聖女教会が性転換魔法を使っているとは考えられない。
もちろん回復魔法の素質を見せた男子を大きな寺院へと送り出して性転換させてしまっている可能性はあるけど、この世界では訓練も受けずに魔法の素養を示すのは稀な例だからそれはまずないだろう。
しかしまだ温泉があってここが栄えていた時期には、この規模の寺院ならばここで生まれた男子に回復魔法の素質があった場合、性転換魔法を使っていた可能性がある。
もちろんあの抜け目の無い聖女教会が証拠を残しているはずがないが、それでも手がかりぐらいはつかめるかもしれない。
そんなわけでオレは子供達がクレアとヴィンガを注目しているところで、聖堂を離れる。
この寺院の建物は大きいが、さほど複雑な構造では無いから奥にある離れの建物に向かう。
かつてオレが性転換されてしまったのも、あのような離れの建物だった。
見たところ離れの周囲は壁面に覆われていて、侵入が困難になっている。
もしも性転換魔法を使っていたのなら、隠れて行うにはぴったりな場所だろう。
見たところ遥か昔に放棄された様子だが、何か残っている事を期待しよう。
そう思って近づいて隙間から中を覗く。
見たところ既に物置と化しており、しかも何年も使われていないらしい様子だが、念のために足を踏みいれる。
積もり積もった埃が舞って、お世辞にも気分は良くないしオレの『魔法眼』に反応するものもの無いので、やはり外れか。
やはり重要なものは残らず持ち去られているようだ。
そう思って引き上げようとしたところ、ガラクタの中から何かが立ち上がる。
もしやこの寺院に関わる霊体か?
オレの『霊視』でかろうじて見えるだけの微弱な存在であり、その姿もぼんやりとしてはっきりしない。
恐らくはこの部屋というよりは、寺院に宿っている霊体だろう。
ただここがほとんど人が来ないので、安住の地にしているという感じだな。
しかし何かオレに呼びかけてくるように感じられるのだ。
「あなたはどなたですか?」
『私は……もう名前など忘れてしまった……』
どうやらあまりに古く、あまりに長い間、放置されていたので記憶もかなり欠落しているらしい。
これではやっぱり頼りにならないか。
そう思った時、霊体はオレに向けて一気に近寄ってくる。
『おお……あなた様は我らがあるじ……かようなところまで来てくださるとは……この地に留まり続けた甲斐がありました……』
どうやらオレをイロールと間違えているらしい。霊体は相手の外見よりも、霊力で感知するので誤解しているのだろうな。
そして先ほどまでは半ばもうろうとした意識だったはずの霊体が、急にハッキリした様子で言葉を発し始める。
ううむ。人間でも惚けていたところ、何かのきっかけでいきなりハキハキし出す事はあるから、こういうところは霊体でも同じなのだな。
『あなた様があの泉を生み出し、聖地を開闢し、この島を『我らが女神』に代わって守護するようになられて以来でございます』
え? この言い方からするとオレの事を女神イロールではなくこのギルボック島を聖地とした『最初の選ばれし者』だと思っているのか?
しかもこの霊体の言葉を信じるならば、温泉を作ったのは女神ではなく、最初の選ばれし者の方らしい。
それが事実ならば恐らくは後世に伝えられた神話がだんだんと歪んでいって、女神自身が奇跡で温泉を吹き出させた事になっていったのだろう。
皮肉にもその温泉が枯れてしまった後は、むしろ女神の汚点になりかねないので顧みられなくなっていってしまったのではないだろうか。
だが歴史学者にはともかく、オレにとって役立つ情報でも無いな。残念ながら外れだったか。
だが少しばかり落胆した時に思わぬ言葉が霊体から発せられた。
『前にも増して神々しいお姿でございます。あなた様が『女性になったとき』以上にお美しくなっておられますよ』
「え? ええ?!」
何だって? この言葉からすると『最初の選ばれし者』も元は男だったのが、性転換して女性になっていたというのか?
先日聞いたソルフ神の言葉ではかつて聖女教会では男性が女性に変身してしまう事があったそうだが、もしかしたら最初に性転換したのもその『最初の選ばれし者』だったのかもしれないぞ。
「あるじはもともと男だったのですか?」
『もちろんですとも』
霊体はあっさりと請け負う。
やはり千年前から聖女教会には性転換魔法があったのか。
ならばその中身を分かっている限り聞き出さねばなるまい。
「いったいどのようにして『女性になった』のかをあなたは覚えていますか?」
『はい。私はその場におりましたから、今でもはっきりと思い出せます』
自分の名前も覚えていないのに、どこまで頼りになるかは分からないが、考えてみればこれはオレが初めてつかんだ聖女教会の性転換魔法に関する手がかりなのだ。
オレは息を呑んで、この年古りた霊体の言葉を待った。
幾ら何でも現在、この寺院で聖女教会が性転換魔法を使っているとは考えられない。
もちろん回復魔法の素質を見せた男子を大きな寺院へと送り出して性転換させてしまっている可能性はあるけど、この世界では訓練も受けずに魔法の素養を示すのは稀な例だからそれはまずないだろう。
しかしまだ温泉があってここが栄えていた時期には、この規模の寺院ならばここで生まれた男子に回復魔法の素質があった場合、性転換魔法を使っていた可能性がある。
もちろんあの抜け目の無い聖女教会が証拠を残しているはずがないが、それでも手がかりぐらいはつかめるかもしれない。
そんなわけでオレは子供達がクレアとヴィンガを注目しているところで、聖堂を離れる。
この寺院の建物は大きいが、さほど複雑な構造では無いから奥にある離れの建物に向かう。
かつてオレが性転換されてしまったのも、あのような離れの建物だった。
見たところ離れの周囲は壁面に覆われていて、侵入が困難になっている。
もしも性転換魔法を使っていたのなら、隠れて行うにはぴったりな場所だろう。
見たところ遥か昔に放棄された様子だが、何か残っている事を期待しよう。
そう思って近づいて隙間から中を覗く。
見たところ既に物置と化しており、しかも何年も使われていないらしい様子だが、念のために足を踏みいれる。
積もり積もった埃が舞って、お世辞にも気分は良くないしオレの『魔法眼』に反応するものもの無いので、やはり外れか。
やはり重要なものは残らず持ち去られているようだ。
そう思って引き上げようとしたところ、ガラクタの中から何かが立ち上がる。
もしやこの寺院に関わる霊体か?
オレの『霊視』でかろうじて見えるだけの微弱な存在であり、その姿もぼんやりとしてはっきりしない。
恐らくはこの部屋というよりは、寺院に宿っている霊体だろう。
ただここがほとんど人が来ないので、安住の地にしているという感じだな。
しかし何かオレに呼びかけてくるように感じられるのだ。
「あなたはどなたですか?」
『私は……もう名前など忘れてしまった……』
どうやらあまりに古く、あまりに長い間、放置されていたので記憶もかなり欠落しているらしい。
これではやっぱり頼りにならないか。
そう思った時、霊体はオレに向けて一気に近寄ってくる。
『おお……あなた様は我らがあるじ……かようなところまで来てくださるとは……この地に留まり続けた甲斐がありました……』
どうやらオレをイロールと間違えているらしい。霊体は相手の外見よりも、霊力で感知するので誤解しているのだろうな。
そして先ほどまでは半ばもうろうとした意識だったはずの霊体が、急にハッキリした様子で言葉を発し始める。
ううむ。人間でも惚けていたところ、何かのきっかけでいきなりハキハキし出す事はあるから、こういうところは霊体でも同じなのだな。
『あなた様があの泉を生み出し、聖地を開闢し、この島を『我らが女神』に代わって守護するようになられて以来でございます』
え? この言い方からするとオレの事を女神イロールではなくこのギルボック島を聖地とした『最初の選ばれし者』だと思っているのか?
しかもこの霊体の言葉を信じるならば、温泉を作ったのは女神ではなく、最初の選ばれし者の方らしい。
それが事実ならば恐らくは後世に伝えられた神話がだんだんと歪んでいって、女神自身が奇跡で温泉を吹き出させた事になっていったのだろう。
皮肉にもその温泉が枯れてしまった後は、むしろ女神の汚点になりかねないので顧みられなくなっていってしまったのではないだろうか。
だが歴史学者にはともかく、オレにとって役立つ情報でも無いな。残念ながら外れだったか。
だが少しばかり落胆した時に思わぬ言葉が霊体から発せられた。
『前にも増して神々しいお姿でございます。あなた様が『女性になったとき』以上にお美しくなっておられますよ』
「え? ええ?!」
何だって? この言葉からすると『最初の選ばれし者』も元は男だったのが、性転換して女性になっていたというのか?
先日聞いたソルフ神の言葉ではかつて聖女教会では男性が女性に変身してしまう事があったそうだが、もしかしたら最初に性転換したのもその『最初の選ばれし者』だったのかもしれないぞ。
「あるじはもともと男だったのですか?」
『もちろんですとも』
霊体はあっさりと請け負う。
やはり千年前から聖女教会には性転換魔法があったのか。
ならばその中身を分かっている限り聞き出さねばなるまい。
「いったいどのようにして『女性になった』のかをあなたは覚えていますか?」
『はい。私はその場におりましたから、今でもはっきりと思い出せます』
自分の名前も覚えていないのに、どこまで頼りになるかは分からないが、考えてみればこれはオレが初めてつかんだ聖女教会の性転換魔法に関する手がかりなのだ。
オレは息を呑んで、この年古りた霊体の言葉を待った。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる