異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第23章 女神の聖地にて真相を

第1077話 千年前の真相は?

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 霊体は少しばかり揺らぎつつ、何かを思いかえそうとしているようだ。

『あるじ様はこの島を我らが女神の聖地とすべく全力を尽くしておいででしたが、元からいた他の神々の信徒が反発していたのです』

 そりゃまあ聖女教会が勃興していた時期は、当然ながら他の宗教勢力との争いがあっただろうな。
 このギルボック島にも元からいた勢力からすれば、いくら『女神生誕の地』だと言っても聖女教会に牛耳られる事に反発するのは当然である。
 もちろん武力を持たない聖女教会は自分達の治癒の力で人々の支持を獲得した上で、聖女達を有職者に輿入れさせて影響力を拡大し、時間をかけてゆっくりとこの島を掌握したのは間違い無い。

『そのためにあるじ様は、何年に渡り探索を続け、より優れた回復魔法を、強い治癒の力を必死になって求められました』
「そこで女になったというのですか?」
『おっしゃる通りです』

 どういうことだ?
 もちろん聖女教会は『女しか回復魔法は使えない』と言っているが、本来は性別など関係無いはずだ――それは男の身で回復魔法が使えたオレ自身が証人だ。
 オレもこの女の身になってから、魔力は格段に増大しているが、これはあくまでもオレを女神として崇拝する連中がいたからだ。

 まあそれでもこの美少女の姿でないと、自分の言う事など相手にされなかっただろうと思う場面は幾度もある。
 身も蓋もない言い方をすれば、むさい男よりも、美少女の姿の方が世間には圧倒的に受けがいいのは男にとっては悲しい現実である。
 だがいくら何でもそれだけのために性転換魔法を作りだそうと考える筈が無い。

「回復魔法を極めた結果、女の身になったのですか?」
『その通りです。ただそれが目的だったワケではありませんが』

 何だって? それでは女の身になったのはあくまでも副作用であって、あくまでも回復魔法を追求した結果だというのか?
 いったいどういうことだだろうか。
 本当に女の身の方がより強い回復魔法が使えるのか?
 いや。仮にそうだとしても、信仰する女神であるイロールに性転換の力など無いのに、そんな魔法など得られるないはずだ。
 それともオレが何か重大な思い違いをしているのか?

「いったいどういうこと――」
『……』

 ここで霊体は急におし黙る。どうもオレの様子を伺っているらしい。

『もしや……あなたはわがあるじではありませんね』
「あ……それは……」

 しまった。霊体が勘違いしているのについつい付き合っていたが、これでは相手を騙しているのと同じ事だ。

「待ってください――」

 制止の言葉も虚しく、霊体の姿はかき消えてそのまま沈黙の帳が降りる。
 どうやらもうオレと話をする気は無いらしい。
 これは迂闊だったが悔やんでも仕方ない。
 ここにいる霊体でもあれだけの事を知っていたのだから、調べればもっといろいろな手がかりを得る希望が出て来たのだ。
 分かったのは『最初の選ばれしもの』が元は男であり、それが回復魔法を極めようとする過程で女性になってしまったということだ。
 しかしそれが事実だとしても、分からない事は幾らもある。
 回復魔法に男性を女性に変える効果など無いことは、オレが当の女神イロール自身に確認済みだ。
 もちろんあの女神が嘘をついている可能性は否定できないが、何度も化身にまでなったオレにはそのようには感じられない。
 それではいったい何が原因なのだろうか。
 少なくとも現在の聖女教会がそれを使って、男子を性転換させて『回復魔法は女しか使えない』という虚構を広めていることだけは間違いない。
 このギルボック島の大聖堂ならば、もっと重要な情報が得られるだろうけど、そんなところには強力な守護精霊がいるのは間違いなく、近づけば確実に察知される。
 当然、オレがこっそりと潜入することは不可能だ。
 そうするといっそのことアルタシャだと明かし、大勢の人間を引き連れて正面から乗り込むべきだろうか?
 話によれば『最初の選ばれし者』も崇拝の対象になっているわけだから、オレが面会を求めれば話をする事は可能だろう――何しろオレも『選ばれし者』だし、ついでに言えば『元男』同士でもある。
 少なくとも今のオレは『聖女教会最大の英雄』となっているのだし、神託でも確実にオレが本人だと証明されるのも疑う余地はない。
 普通に考えれば直接の手出しなどできないはずだが、それでも聖女教会がどう出てくるのは読めない。
 オレ自身が聖女教会にとってはいろいろと問題のある存在だって事は理解しているからな。どこかの一室に軟禁して、言う事を聞かせようとする場合だってありうる。
 下手すると教会の決めた相手と結婚するまで、部屋から出さないとかそんな事を要求される可能性だって否定は出来ない――まあそうなったら最悪、結婚の約束だけして式場からでも逃げ出すかな。
 最終的に正体を明かす事があるとしても、今はもっと情報を収集してからにするべきだな。
 そんなわけでいろいろと重要な情報と、難題を抱えてオレはいったんクレアやヴィンガのところに戻る事にした。
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