異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1122話 ウァリウス皇帝の治世は……

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 ひとまず適当な宿を選んだところで、そこの主人に話しかける。

「この国の天子様について何かご存じの事はありますか?」
「何ともありがたいお方だよ。最近は商売もすっかり楽になったよ」

 どうやらこのマニリア帝国は『今のところ』は落ち着いているようだ。
 皇位を巡って内戦になり、その内戦で勝利して皇帝を傀儡にしていた大公もまた命を落とした事で実質的にこの国はウァリウス皇帝が牛耳る事となった。
 オレもそれに関わったと言うか、その時の出来事がこの国で『アルタシャ』が女神として崇拝されるきっかけになったのだ。

「天子様は女神様と一緒に、この国を導いて下さっているんだぜ。それがわしらの自慢だ」

 その女神様というのがオレの事なんだから、何ともこそばゆい。
 オレの場合は、その信者達が捧げた魔力で助かった事もあるのだから文句を言うわけにもいかないが。

「それではあなたも女神様を崇めているのですか?」
「わしはしがない平信者だけどな」

 今のところ多額のお布施を要求しているとか、圧政で民衆を虐げているとかそういうワケではないらしい。

「その天子様ですけど、今は女神様と一緒に暮らしているという噂を聞いたのですけど、本当でしょうか?」

 もしもウァリウスが神造者の作ったオレのコピーと毎晩、寝床を共にしていたら、いくら何でも話題になっているはず。
 そもそも『アルタシャを女神と崇拝する教団』を作ったのはウァリウス本人であり、なおかつ自分を『女神の恋人』として権威付けしているのだから、その関係を隠すとは思えない。
 だが――

「はあ? 何を言ってんだお前?」

 宿屋の主人は呆れたと言わんばかりだ。

「女神様は女神様だ。世俗と違うのは当たり前だろ」

 確かにそれは正論というか、建前では『神の配偶者』となっていても、それはあくまでも儀式で役割を演じるだけというのはこの世界でもよくある事だ。
 その話が本当ならば、ウァリウスのところに神造者はオレのコピーを送り込んでいないということだろうか?
 それともただの思い過ごしなのか。
 もしかしたらウァリウスはあくまでも『本物のアルタシャ』だけを求めていて『コピー』を見抜き拒絶したと言う事は――それはフィクションなら定番の展開だけど、現実がそんなに甘い筈がない。
 少なくとも男のオレがその立場にあったら、簡単に転んでいると思うからな。
 まあこの宿屋の主人が皇帝のプライベートまで詳しく知っているはずがないから、あくまでも世間一般の評判に過ぎない。
 とにかく今はこの宿屋で可能な限りの情報収集を行うべきしかないか。

 それから聞いた範囲で分かった事は――

・ウァリウス皇帝の治世についての評判はおおむね良好である。
 ただしカリスマ的な支持というよりは『マニリア帝国の政治混乱を収拾し、治安を回復し、住民が安心して暮らせるようにしてくれた』というもの。
 
・女神アルタシャの教団は創設者のウァリウス皇帝が教祖となっている。
 政教分離などという概念のないこの世界では『国家の創始者』を神として崇拝するのはごく普通の事であり、その後も国家の功労者が神や英雄として祭り上げられるのも珍しくはない。
 ここではかなり大きな寺院が建てられ、民衆からも敬意を払われているのは間違いない。
 
 これまでの情報から、ウァリウスの統治は強権的で反抗する人間を抑圧するような恐怖政治とは程遠いし、信仰も自分の権威付けに利用しているとは言え、首都の住民に信仰を強制するような真似はしていない。
 悪徳商人や汚職役人への取り締まりも厳しく行っているようで、なかなかの名君といってもいいかもしれない。
 もちろんウァリウス以前の皇帝が国を乱れさせていたので『混乱を招いた過去の皇帝よりもずっとマシ』という面はあるだろう。
 だが少なくとも国民を苦しめる暗君でないことだけは確かなようだ。
 これだけならばオレもとっととこのマニリア帝国を出て、目的地である大陸西部のフォンリット帝国まで急いで行きたいところだ。
 しかしウァリウスが神造者の手に落ちていないという保証はない。
 もともと神造者も『自分たちを支持すれば利益が得られる』という損得勘定で支持を獲得しようとしていても、彼らの支配地域ではいろいろと問題はあるにせよ、権力で弱者を虐げる恐怖政治をしくようなことはなかった。
 むしろそれだからこそ彼らの唱える『神話や伝説を合理的に利用しやすく修正するカミツクリ理論』が反発を受けつつも急速に勢力を拡大しているのだともいえる。
 現時点でこのノチェットにおける神造者の影は支部の存在があるぐらいだが、裏では有力者に取り入って勢力拡大を目論んでいるのは疑う余地もない。
 その材料として既にこの国でも崇拝されていて皇帝を中心とした勢力を有する『アルタシャ』を使えるのなら、これほどの材料はないはずだ。
 いや。神造者ならばむしろ自分たちの『実験材料』として目をつけないはずがない。
 あの連中は単純な悪ではないが『カミツクリ理論に基づく実験』では、過去に数多くの失敗を繰り返し、その結果として無数の人間の人生を踏みにじったこともあるのだ。
 それをいまこの国でやらかしていないという保証はない。
 これが全部、ただの思い過ごしであってくれと祈りたいところだが、オレのこういう悪い予想はたいてい当たるのだ。
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