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第24章 全てはアルタシャのために?
第1150話 現れたのは自称「ライバル」
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この少女はオレがテセルをたぶらかして道を踏み外させたと思い込んでいるらしい。
それはあまりに理不尽な言いがかり――だと言いたいけど、客観的にもテセルがエリート神造者から脱落し、大陸の反対側にまで左遷されたのは、オレにも一因がある事は否定出来ない。
本人はまるで気にしていないが、オレとしても少しばかり心に引っかかってはいたのだ。
だが。そもそもこの少女は何者だ?
「あのう。あなたはどなたですか?」
「私の名はミシェル。テセルのライバルよ!」
そういえばテセルは自分で『神造者学院を主席で卒業したエリート中のエリート』だと繰り返し口にしていたな。
それでは『テセルのライバル』を自称するミシェルはもしかすると。
「あなたは神造者学院でテセルと競い合っていたのですか?」
「そうよ。だから私もエリート神造者と言う事よ」
そう言ってミシェルは自分の胸にある銅で作られた『中央からそれぞれの角に矢印が伸びた八角形』の装身具を指し示す。
神造者の象徴たる八角形の装身具だ。
テセルから聞いたところでは彼が持っていた銀製のものは第六階梯で支部長クラスの地位を示す。
そして神造者はその八角形にそれぞれ対応する形で八つの階級がある。
更に上には別格の最高幹部がいて、逆に神造者ではなくただの協力者に与えられる最下級の地位があり、それを含めて全部で十階級ということだった――オレも一時期、テセルの秘書という事で最下級の地位を与えられていた。
彼女が持っている銅製のものは、テセルより二階梯低い第四階梯だが元の世界だと会社における課長クラスの地位にあるはず。
テセルには劣るにしろ、年齢を考えれば間違い無くエリートだな。
「アルとか言ったわね……その容姿でテセルを誘惑したのね!」
「ねえ。コイツは何を言っているのだい?」
「まあ……あたしも一度は勘違いしたからね……」
イオはミシェルの言う事が理解出来ず、サレナは初対面でオレが義弟のシドンをたぶらかしたと誤解して騒いだのを思い出しているのだな。
「ところでここはどこよ」
「ミシェルさんがいた宿の中ですよ」
「だったらテセルは……どこにいるのよ?」
ここでミシェルは周囲を見回す。
もちろんテセルは先ほどオレが言った通り、裏口から出て行ったのだが、表にいたミシェルはまだこの宿にテセルがいると思い込んでいるらしい。
「それならば見つけた時、即座に声をかけるなり、すぐに宿の中に入って確かめるなりすればよかったでしょう」
神造者はこの国の支配者であり特権階級だ。そのミシェルが八角形の装身具を示せば、こんな宿の中に押し入って中を調べるなど造作も無いはずだ。
もしもミシェルが最初からテセルを出せと言って来たら、こちらもこんな面倒な事をしなくとも済んだのだ。
「それは……こっちにもいろいろ事情があるのよ。もともと私は今日は非番だったから、ここで異国の宗教について観察していただけなのにこんな事になって……」
テセルも言っていたが神造者は今までに彼らが知らなかった宗教や神話についての情報収集は貪欲なのだった。
ミシェルも間違いなく『その一人』だという事が伝わってくる発言だが、これで彼女がテセルを見つけたのがたまたまだと分かったのは収穫だ。
「だいたい今は大陸の東の果てにいるはずのテセルがこんなところをほっつき歩いていたら、驚くのが当たり前でしょう。最初はまさかと思って自分の目を疑ったわ」
まあそれが一般人の反応というものだな。
「余計な事を言ってないでテセルはどこなのか聞いているのよ」
「さっき出て行きましたよ。だからここにはいません」
「ええ? 嘘よ! 私はずっと表で見張っていたのよ
「だから裏口から出て行ったんですよ。しばらくは帰りません」
「そ、そうなの……」
ミシェルにはどこか残念そうな、それでいて安心したような複雑な感情が入り混じっていた。
もしかするとこの人は――
「ミシェルさんはテセルが心配だったのですね?」
「な、何を言っているのよ! 私はただ神造者学院で首席を争ったテセルが落ちぶれた姿を見て笑ってやりたかっただけなんだから!」
ああ。なんて分かりやすい反応だろうか。
テセルと同年輩で神造者学院のトップを争ったミシェルは、自分の上を行ったテセルの事が強烈に意識に焼き付けられて、ライバル視から本人の意識しないうち次第にデレつつある、というよくあるパターンとなりつつあるな。
もっともテセルの方は、今まで一言もミシェルの事など口にしていないから、たぶん覚えてもいないのだろう。
「テセルがいないのなら仕方ないわ。待たせてもらうから」
ここにテセルがいる事を確認したにも関わらず、ミシェルは今のところ通報する気は無いらしい。
「それでミシェルさんはテセルをどうするつもりなんですか?」
「いろいろと話をしたい事が山とあるとけど……その前にどうしてテセルがここにいるのか、教えなさい……
あ? まさか?!」
ここでミシェルはオレの顔を凝視して何かに気づいた様子でハッとなる。
「その容貌……もしかしてあなたは?!」
やっぱりミシェルは神造者だけあって、オレの正体を見抜いたのか?
それはあまりに理不尽な言いがかり――だと言いたいけど、客観的にもテセルがエリート神造者から脱落し、大陸の反対側にまで左遷されたのは、オレにも一因がある事は否定出来ない。
本人はまるで気にしていないが、オレとしても少しばかり心に引っかかってはいたのだ。
だが。そもそもこの少女は何者だ?
「あのう。あなたはどなたですか?」
「私の名はミシェル。テセルのライバルよ!」
そういえばテセルは自分で『神造者学院を主席で卒業したエリート中のエリート』だと繰り返し口にしていたな。
それでは『テセルのライバル』を自称するミシェルはもしかすると。
「あなたは神造者学院でテセルと競い合っていたのですか?」
「そうよ。だから私もエリート神造者と言う事よ」
そう言ってミシェルは自分の胸にある銅で作られた『中央からそれぞれの角に矢印が伸びた八角形』の装身具を指し示す。
神造者の象徴たる八角形の装身具だ。
テセルから聞いたところでは彼が持っていた銀製のものは第六階梯で支部長クラスの地位を示す。
そして神造者はその八角形にそれぞれ対応する形で八つの階級がある。
更に上には別格の最高幹部がいて、逆に神造者ではなくただの協力者に与えられる最下級の地位があり、それを含めて全部で十階級ということだった――オレも一時期、テセルの秘書という事で最下級の地位を与えられていた。
彼女が持っている銅製のものは、テセルより二階梯低い第四階梯だが元の世界だと会社における課長クラスの地位にあるはず。
テセルには劣るにしろ、年齢を考えれば間違い無くエリートだな。
「アルとか言ったわね……その容姿でテセルを誘惑したのね!」
「ねえ。コイツは何を言っているのだい?」
「まあ……あたしも一度は勘違いしたからね……」
イオはミシェルの言う事が理解出来ず、サレナは初対面でオレが義弟のシドンをたぶらかしたと誤解して騒いだのを思い出しているのだな。
「ところでここはどこよ」
「ミシェルさんがいた宿の中ですよ」
「だったらテセルは……どこにいるのよ?」
ここでミシェルは周囲を見回す。
もちろんテセルは先ほどオレが言った通り、裏口から出て行ったのだが、表にいたミシェルはまだこの宿にテセルがいると思い込んでいるらしい。
「それならば見つけた時、即座に声をかけるなり、すぐに宿の中に入って確かめるなりすればよかったでしょう」
神造者はこの国の支配者であり特権階級だ。そのミシェルが八角形の装身具を示せば、こんな宿の中に押し入って中を調べるなど造作も無いはずだ。
もしもミシェルが最初からテセルを出せと言って来たら、こちらもこんな面倒な事をしなくとも済んだのだ。
「それは……こっちにもいろいろ事情があるのよ。もともと私は今日は非番だったから、ここで異国の宗教について観察していただけなのにこんな事になって……」
テセルも言っていたが神造者は今までに彼らが知らなかった宗教や神話についての情報収集は貪欲なのだった。
ミシェルも間違いなく『その一人』だという事が伝わってくる発言だが、これで彼女がテセルを見つけたのがたまたまだと分かったのは収穫だ。
「だいたい今は大陸の東の果てにいるはずのテセルがこんなところをほっつき歩いていたら、驚くのが当たり前でしょう。最初はまさかと思って自分の目を疑ったわ」
まあそれが一般人の反応というものだな。
「余計な事を言ってないでテセルはどこなのか聞いているのよ」
「さっき出て行きましたよ。だからここにはいません」
「ええ? 嘘よ! 私はずっと表で見張っていたのよ
「だから裏口から出て行ったんですよ。しばらくは帰りません」
「そ、そうなの……」
ミシェルにはどこか残念そうな、それでいて安心したような複雑な感情が入り混じっていた。
もしかするとこの人は――
「ミシェルさんはテセルが心配だったのですね?」
「な、何を言っているのよ! 私はただ神造者学院で首席を争ったテセルが落ちぶれた姿を見て笑ってやりたかっただけなんだから!」
ああ。なんて分かりやすい反応だろうか。
テセルと同年輩で神造者学院のトップを争ったミシェルは、自分の上を行ったテセルの事が強烈に意識に焼き付けられて、ライバル視から本人の意識しないうち次第にデレつつある、というよくあるパターンとなりつつあるな。
もっともテセルの方は、今まで一言もミシェルの事など口にしていないから、たぶん覚えてもいないのだろう。
「テセルがいないのなら仕方ないわ。待たせてもらうから」
ここにテセルがいる事を確認したにも関わらず、ミシェルは今のところ通報する気は無いらしい。
「それでミシェルさんはテセルをどうするつもりなんですか?」
「いろいろと話をしたい事が山とあるとけど……その前にどうしてテセルがここにいるのか、教えなさい……
あ? まさか?!」
ここでミシェルはオレの顔を凝視して何かに気づいた様子でハッとなる。
「その容貌……もしかしてあなたは?!」
やっぱりミシェルは神造者だけあって、オレの正体を見抜いたのか?
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