異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1181話 いつの間にか「母」にもなっていた

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 周囲に集まってきた廃神達は、ドラゴンのイオを見て一瞬ひるんだ様子だが、そこで諦めはしなかった。

『そいつをよこせ!』
『吾が再び神になるためだ!』

 彼らにとってはもう一度、神として崇拝されるかどうかの瀬戸際となれば、ドラゴンぐらいで引き下がる筈が無いか。

「うるさい! アルタシャには手を出させないぞ!」

 イオが怒りと共にその尻尾を振って駆け寄ってきた廃神達を吹き飛ばす。
 彼らが元は神と言えども、今は力の殆どを失っているから、ドラゴンであるイオの敵では無い状態だな。

「うわあああ!」

 イオが身体を大きく動かしたので、背中に乗っていたテセルやミツリーン、ミシェルが振り落とされてしまった。

「ちょっと! 危ないでしょ!」

 落ちた三人をサレナが受け止めたのでオレも少しはホッとする。

「お前たちをアルタシャには近づけさせないぞ!」

 イオが叫ぶと、廃神達も一斉に叫ぶ。

『おのれ……その力を独り占めしようというのか……』
『なんと欲深い奴だ』
「勝手な事を言うな! アルタシャは僕のものだ」

 テセルが一方的に叫んだが、真面目に聞いているものは誰もいなかった。
 ただしミシェルだけは、その拳を握りしめている事はオレにも見えた。
 そしてイオはその身をいからせ、翼を大きく広げて宣言する。

「アルタシャは我が母も同じだ! その母に手を出すからには覚悟しろよ!」

 これまで自称、恋人や夫も大勢いたし、最近では母親や父親も出てきたが、今度はイオが息子になったわけか。
 なんだってこんなに親族が増えていくのだろうか?
 確かに世間一般の基準でオレは非常に高名な存在になってしまったから、そんな話もあるかもしれないが、物事には限度というものがある。
 そしてイオはオレの返答など確認もせず、迫り来る廃神をバッタバッタとなぎ払う。
 これだけを見ると実に頼りがいのある『息子』ではあるな。だが――

『うぉぉぉ!』

 さすがに全ての廃神を倒す事は出来ず、一体が突っ込んでくる。

「アルタシャには手を出させないわよ!」

 サレナは瞬時に本来の姿である『水銀の女性』に変異し、その腕を刃に変えて廃神をぶった切る。

「な、なんだその姿は?!」

 これまでサレナの正体を知らなかったミツリーンは驚愕している。

「だから言ったはずだ。そいつは人間ではなく魔法生物だと」

 テセルとミシェルは彼女が人間ではない、魔法生物だと知っていたので特に驚いてはいないようだ。

「うるさいわね! ごちゃごちゃ言うとあんたは助けないわよ!」
「なんで怒るんだよ。事実をそのまま伝えただけじゃないか」
「それでもイヤなものはイヤなのよ!」

 サレナは自分を取り込んで一体化してしまった疑似生命体メルティナから分離して人間に戻る事が目的だからな。
 人間では無いと言われる事が不愉快なのだ。

「ふうむ。複雑な乙女心という奴だな。僕にはよく分かるぞ」
「そんなものがテセルに分かるわけがないでしょうが!」

 横合いからミシェルが不毛なツッコミを行っている。
 本当にテセルの『乙女心』が分かるなら、真っ先にミシェルの向ける思いが理解出来るだろうからなあ。
 いずれにしてもこのまま廃神達の相手を続けるわけにはいかない。
 なぜなら神界の周囲がどんどんひび割れ、崩れていくからだ。
 このままではこの領域の崩壊にのみ込まれてしまいかねないぞ。

「すいません。今はみんなイオの背中に乗って逃げましょう!」
「そうは言うけど、いったいどこに逃げるんだ?」
「この事態を引き起こしてしまったのは、創造神エルウリンです! だからもう一度、あの神の領域に向かいましょう」

 ハッキリ言えばこれは証拠があるわけではなく、オレの想像に過ぎない。
 しかしここまで急速に事態を悪化させているのは、あの神が『創造のため』に無理にでも神界から力を汲み上げているからではないだろうか。
 これ以上の事態の悪化を防ぐために、もう一度エルウリン神にあって止めるしかない。

「分かった。だったら僕が道を開こう」
「わたしとテセルの二人で力を合わせればもっと早く出来るわよ」
「とにかく早くやってよ! このままではこっちも危ないから!」

 世界の崩壊が加速する中で、集まってくる廃神の数は増える一方だ。
 本当に神造者はどれだけの先達を使い捨てして、廃神にしたのか、想像するだに恐ろしい話だな。
 これは単なる推測だけど、神造者の身勝手により廃神がどんどん増えて、彼らを荒廃した領域に次々と送り込んでいった事で、その荒廃した領域もまた拡大していったのではないだろうか。
 そしていつしかあの荒れ果てた領域が、本来の神界すら圧迫するようになり、同時にその神界は無理に力を汲み上げすぎて、空洞化が進んでいったように思えてくる。
 その両者の均衡が一気に崩れ去り、正常な神界の方が圧倒される事態を招いてしまったのは、今まで高い棚に詰め込んできたものが一気に崩れ落ちて、何もかもを下敷きにするかのような状況になってしまっているに違いない。
 いつもながら逃げた方が楽なのは分かっているが、こうなってしまった以上、犠牲を可能な限り少なくする事がオレの行動原理なのだ。
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