異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1193話 すべての『開祖』の末路が

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 神造者の作った化身は見た目こそ『アルタシャ』の忠実なコピーであっても、あくまでも彼らの意のままに動く人形同然の存在でしかなかったはずだ。
 当然、オレの意志など聞き入れもしなかったのに、それがどうして今になってこちらの手助けをしているのだろうか?
 おそらくは最高神学会が崩壊した結果、埋め込まれた命令がリセットされた一方、先ほどオレが化身の口を通じて呼びかけた事で、こちらの意志が通じてくれたんだ。
 そのお陰で大陸中にばらまかれた『アルタシャの分身』が周囲の人間達を巻き込んで、神造者支部にできた亀裂を封じ、オレに力を貸してくれているらしい。
 そもそも神造者がオレの化身を量産するなど好き放題しまくった事が、この大災害のきっかけになったわけだが、 もちろんいま神界の亀裂を目の当たりにし、廃神に恐れおののいている人間達はそんなことを知らない。
 しかも以前のマニリア帝国宰相のように化身を愛人にしていた有力者は、ほとんどがその存在を隠蔽していたらしい。
 恐らく一つの地域で複数の有力者にそれぞれ送り込むことを考えて、神造者が化身には大っぴらに活動しないよう仕向けていたに違いない。
 だから初めて化身を目の当たりにした多くの人間は、文字通り『女神の降臨』と思い込み、この異常事態を乗り切るため『アルタシャ』に対して必死で祈りを捧げている様子だ。

『このような事を考えてあなたは広く大陸中に自らの化身を送り込んでいたのですね。さすがは我が娘です』

 イロールは感心している様子だが買いかぶりにも程があるって。いや。『我が娘』なんて言っているから、自分の功績という事にもするつもりなのかもしれん。
 何ともちゃっかりしているな。
 とにかく今は化身達のお陰で、各地の亀裂も封じられつつある。
 幸か不幸かオレのコピーが送られた地域は、当然ながら神造者の勢力が強いところか、これから勢力拡大を目論んだ場所だから、神界が荒廃して現実世界につながり亀裂が生じたばしょのほとんどにオレの化身がいてくれるようだ。
 しかし神造者は『アルタシャのコピー』をどれだけ作ったんだよ!
 一体、作るだけで莫大な霊力が必要になるはずだから、まちがいなくこれが神造者の作ったんだよ神界を荒廃させる大きな原因になったはずだ。
 将来、このことを調べた人間がいたら、オレと神造者がグルになってマッチポンプやったのではないかとか、いちゃもんをつけられてしまいそうな気がするな。
 何しろオレの自称『母』であるイロールですら、その疑惑を持っているぐらいだから、縁もゆかりもない相手がそうやって想像をたくましくすることは何の不思議もないか。
 そんな事を考えるのは、我ながら少しは余裕が出てきたか?

 幾ら何でも甘く考えすぎか。気を抜いてはいけないな。
 しかし廃神達の勢いもだいぶ落ち着いてきた様子だし、このままならばどうにかギリギリで切り抜けられるかもしれないぞ。
 だがそう思った瞬間、思わぬ光景がオレの目に飛び込んでくる。
 どういうわけか廃神達が潮が引くように下がっていったのだ。
 それだけならば安堵できるところだが、どういうわけか彼らは一箇所に集まりつつあるようだ。もしかしてこのパターンは?

 よくよく見ると集まっているのはほとんどが元神造者だった神のようだ。それ以外で神造者の定めた公式神話からこぼれ落ちただけの廃神はほとんどがもういなくなっている。
 どうやっているのかは見当もつかないが、元神造者の神を何者かが一つにあつめている様子なのだ。
 そして大きな塊となった『神』から重々しい声が響いてくる。

『我は神造者の開祖ジストルなり』
「ええ?! まさか?!」

 その名はテセルから聞いた事があるが、全ての神造者が崇拝している偉大な存在のはずだ。
 それがどうして廃神の中にいる? それどころか率いているようにすら見えるぞ。

「あなたが本当に神造者の開祖なのですか?! しかしそれならなぜ廃神になっているのです? それに今、神造者が崇拝しているジストル神は何なのです?」

 必死で問いかけると、廃神の塊の中から大きな顔がせり上がってくる。

『我は神を公式神話に基づき定義し、統一した崇拝により効率的な信仰をもたらすカミツクリ理論を提唱し、神造者の開祖となった』

 その話はテセルから聞いた通りだ。こいつが嘘をついているのでなければ、その開祖がどうして廃神に落ちぶれているんだ?

『だが神造者が勢力を拡大すると共に、この我の唱えた理論は次第に古くさくなり、時代遅れとなっていった』
「そういうことですか……」

 学問、芸術、そのたもろもろにおいて、殆どは過去に業績を残した人間の成果の上に成り立つものだけど、時代の流れと共にその業績は古臭いものとなり、場合によってはかえって後世の発展を阻害する事もある。
 恐らく神造者の開祖ジストルも同じだったのだろう。そして後世の神造者達はその目障りになった開祖の教えを捨て去るために、別の『開祖ジストル』を作り出し、それを崇拝する事で問題をなかった事にしてしまったのだ!
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