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第24章 全てはアルタシャのために?
第1216話 破滅を回避した後で
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しばらくの間、過去に幾度か体験した神界から移動する感覚が続いて、気がつくと周囲はかなり荒廃した様子の建物だった。
もともとは議会か何かだったのだろう。
大きくすり鉢状になった扇状に広がり、中央には演壇が備えてある。
演壇に彫り込まれている「八角形」は神造者に関わりがある証明だ。
かつては美しかったであろう大理石の壁や柱には亀裂が走り、いつ崩壊してもおかしくはない状態だ。
人間の姿は無いどころかここを守護する精霊の類いは見当たらず、とっくに放棄されているのだろうか。
ただ周囲の状況は落ち着いているようで、信仰の力が荒れ狂うような事もなく、どうやら世界を覆った破滅は避けられたらしいな。
「はあ……よかった」
大陸中で多大な犠牲が出ているかもしれないので、普通だったらとても喜ぶ状況には無いけれど最初に出たのは安堵の息だった。
アニメや漫画ではかろうじて危機を乗り越えたラストシーンを笑顔で迎える場面は多いけど、そのために仲間を含めて大勢の犠牲が出ていても、そんなことはなかった扱いも珍しくはない。
そんな話を見て内心では薄情だな、なんて思っていたけどやっぱり自分が直面するとまずは安堵が先に出るものだとよく分かった。
もちろんこの惨事にはオレだけでなく多くの知り合いが関わって、彼らには命の危険もあっただろう。
そんなわけで安堵が落ち着くと、不安も出てくるものだ。
まずはテセルやイオ、ミツリーンたち知り合いがどうなったのか確認しよう。あいつらが簡単に命を落とすとは思っていないが、万が一という事もある。
もしも怪我をしていたらオレの魔法で回復させてやるからさ。
そんな事を考えつつ、崩れかけた議事堂を出ると空は晴れやかに広がっていた。
まるで先ほどまでの世界の危機など本当に無かったかのようだ。
これで全部夢だったらどれほどよかったか。
しかし周囲を見回しても、全く何も感じられないな。オレのでしゃばり守護女神のイロールの気配すら影も形も無い。
まさか? オレが留守の間に、神像者共に喰われて消え去ってしまったとか?
いや。そんな筈は無い。
さっきまでオレと同行して「イロール」は、あくまでも神の力の一部が形を取って顕現した化身に過ぎない。
仮にあれが消滅したとしても、神そのものからすればせいぜい「ツメの先が欠けた」ぐらいのものだ。
いくら大陸を揺るがす災害でも、イロールを崇拝している聖女教会が完全に崩壊して信仰が無くなってしまうとは考えられない。
もしかして――オレはまた別の世界に来たとでもいうのか?
あの神造者の天国から、別の世界に吹っ飛ばされてしまったと言う事は考えられるが、ジストルがそんな事をしても意味が無いだろう。
それ以外によくあるパターンだと、時間を移動してしまって以前とは何百年も時代が違ってしまっているとかありうるからな。
ちょっとばかり悩んでいたが、その時間は短かった。
少し離れた空に浮かび上がった物体が、あっという間に大きくなるとオレの眼前に一気に着地したからだ。
「イオ! よかった」
この「よかった」はイオが無事だった事の安堵と、取りあえず下手に世界や時代を移動してしまっていたわけではないのが確認出来たの両方の意味があった。
「アルタシャ! 嬉しいよ! 無事だったんだね!」
イオは甘えるように猛烈な勢いでその鼻をオレの体に押しつけてくる。
「あのまま居なくなってしまったらどうしようかと思っていたよ!」
確かにイオからすれば『オレの方が居なくなった』わけだから心配させてしまったな。
「僕は必死で探したんだけど、なかなかアルタシャの気配が見つからないから、本当に困っていたんだよ」
「ありがとう。あと他の人はどうなったんですか?」
ドラゴンのイオが無事でもテセル達が無事とは限らないからな。
最悪の場合、イオだけが無事で他は全滅だってあり得るなどと、ロクでもない事ばかり続いたからあえて悪い方に思考を誘導する癖がついてしまったみたいだ。
「え~と。アルタシャを探して飛び回っていたから他はよく知らないけど――」
そうだ。イオはオレ以外の人間についてよく分からないし、そもそも殆ど興味が無いのだった。
たぶん世界の危機についても、大して認識していないだろう。
神様なんて認識していても「そんな事は千年の間には何度もあった」なんてレベルで放置するぐらいだから、ドラゴンにとっても似たような感覚ということか。
「アルタシャと一緒にいたのならばみんな無事だと思うよ。だけどよく言えないけど……」
ドラゴンの表情はよく分からないが、少しばかり表現に苦慮しているらしい。
ここで詳しい事をイオと議論しても仕方ないし、さっさと連中のところに戻った方が賢明というものだろうな。
「とにかく急いで、みんなのところにつれて行ってくれますか?」
「うん! 分かったよ!」
そんなわけでオレはイオの背に乗って、宙に舞った。
世界の危機を救ったのに、有耶無耶の内に仲間がみんな笑顔で出迎えてくれるような都合のいい展開にならなかったのは何とも残念な事だ。
もともとは議会か何かだったのだろう。
大きくすり鉢状になった扇状に広がり、中央には演壇が備えてある。
演壇に彫り込まれている「八角形」は神造者に関わりがある証明だ。
かつては美しかったであろう大理石の壁や柱には亀裂が走り、いつ崩壊してもおかしくはない状態だ。
人間の姿は無いどころかここを守護する精霊の類いは見当たらず、とっくに放棄されているのだろうか。
ただ周囲の状況は落ち着いているようで、信仰の力が荒れ狂うような事もなく、どうやら世界を覆った破滅は避けられたらしいな。
「はあ……よかった」
大陸中で多大な犠牲が出ているかもしれないので、普通だったらとても喜ぶ状況には無いけれど最初に出たのは安堵の息だった。
アニメや漫画ではかろうじて危機を乗り越えたラストシーンを笑顔で迎える場面は多いけど、そのために仲間を含めて大勢の犠牲が出ていても、そんなことはなかった扱いも珍しくはない。
そんな話を見て内心では薄情だな、なんて思っていたけどやっぱり自分が直面するとまずは安堵が先に出るものだとよく分かった。
もちろんこの惨事にはオレだけでなく多くの知り合いが関わって、彼らには命の危険もあっただろう。
そんなわけで安堵が落ち着くと、不安も出てくるものだ。
まずはテセルやイオ、ミツリーンたち知り合いがどうなったのか確認しよう。あいつらが簡単に命を落とすとは思っていないが、万が一という事もある。
もしも怪我をしていたらオレの魔法で回復させてやるからさ。
そんな事を考えつつ、崩れかけた議事堂を出ると空は晴れやかに広がっていた。
まるで先ほどまでの世界の危機など本当に無かったかのようだ。
これで全部夢だったらどれほどよかったか。
しかし周囲を見回しても、全く何も感じられないな。オレのでしゃばり守護女神のイロールの気配すら影も形も無い。
まさか? オレが留守の間に、神像者共に喰われて消え去ってしまったとか?
いや。そんな筈は無い。
さっきまでオレと同行して「イロール」は、あくまでも神の力の一部が形を取って顕現した化身に過ぎない。
仮にあれが消滅したとしても、神そのものからすればせいぜい「ツメの先が欠けた」ぐらいのものだ。
いくら大陸を揺るがす災害でも、イロールを崇拝している聖女教会が完全に崩壊して信仰が無くなってしまうとは考えられない。
もしかして――オレはまた別の世界に来たとでもいうのか?
あの神造者の天国から、別の世界に吹っ飛ばされてしまったと言う事は考えられるが、ジストルがそんな事をしても意味が無いだろう。
それ以外によくあるパターンだと、時間を移動してしまって以前とは何百年も時代が違ってしまっているとかありうるからな。
ちょっとばかり悩んでいたが、その時間は短かった。
少し離れた空に浮かび上がった物体が、あっという間に大きくなるとオレの眼前に一気に着地したからだ。
「イオ! よかった」
この「よかった」はイオが無事だった事の安堵と、取りあえず下手に世界や時代を移動してしまっていたわけではないのが確認出来たの両方の意味があった。
「アルタシャ! 嬉しいよ! 無事だったんだね!」
イオは甘えるように猛烈な勢いでその鼻をオレの体に押しつけてくる。
「あのまま居なくなってしまったらどうしようかと思っていたよ!」
確かにイオからすれば『オレの方が居なくなった』わけだから心配させてしまったな。
「僕は必死で探したんだけど、なかなかアルタシャの気配が見つからないから、本当に困っていたんだよ」
「ありがとう。あと他の人はどうなったんですか?」
ドラゴンのイオが無事でもテセル達が無事とは限らないからな。
最悪の場合、イオだけが無事で他は全滅だってあり得るなどと、ロクでもない事ばかり続いたからあえて悪い方に思考を誘導する癖がついてしまったみたいだ。
「え~と。アルタシャを探して飛び回っていたから他はよく知らないけど――」
そうだ。イオはオレ以外の人間についてよく分からないし、そもそも殆ど興味が無いのだった。
たぶん世界の危機についても、大して認識していないだろう。
神様なんて認識していても「そんな事は千年の間には何度もあった」なんてレベルで放置するぐらいだから、ドラゴンにとっても似たような感覚ということか。
「アルタシャと一緒にいたのならばみんな無事だと思うよ。だけどよく言えないけど……」
ドラゴンの表情はよく分からないが、少しばかり表現に苦慮しているらしい。
ここで詳しい事をイオと議論しても仕方ないし、さっさと連中のところに戻った方が賢明というものだろうな。
「とにかく急いで、みんなのところにつれて行ってくれますか?」
「うん! 分かったよ!」
そんなわけでオレはイオの背に乗って、宙に舞った。
世界の危機を救ったのに、有耶無耶の内に仲間がみんな笑顔で出迎えてくれるような都合のいい展開にならなかったのは何とも残念な事だ。
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