異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1229話 土壇場にまた腐れ縁が

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 しばらく精神を集中させていると、あたりの景色が切り替わった。
 どうやら目的の場所に着いたようだ。
 新たに広がった光景は、虚空に白亜の巨大な橋がかかっているが、それが途中でぶった斬られたかのように忽然と先が消えているのだ。
 もっとも例によってこれはオレの認識の上での話であって、別の相手が見たら異なるものに見えるのだろうが。

「とりあえず近づいて確認しないと」

 オレが橋を渡りかけると、その周囲にはいろいろな光景が渦巻いている。
 必死で呼びかけるもの、顔色を変えて叫んでいるもの、絶望の表情でうしひしがれているもの、など様々だ。
 これは今世界で行われている「神への呼びかけ」で間違いない。
 いきなり神が答えてくれなくなったので、大勢がパニックに陥っている様子だ。
 一つ一つ確認するわけにはいかないが、中には神に生贄を捧げようとしている連中も少なくないだろう。
 そんな事をしても無駄だ、などと言ったところで聞こえるはずもない。
 これは急がねばならないだろうな。
 そんなわけで先に進むと、橋の消えた部分にまで到着した。
 見た限りでは破壊されているのではなく「霧にのみ込まれて先の部分が消えてしまっている」というところだな。
こうなると更に進むしかないか。
 ホラー映画だったら、霧の中に怪物が潜んでいて、という展開が定番だな。だがここで思わぬ声がオレの耳朶を打つ。

「ちょっと待ちなよ」
「え?」

 呼びかけられた声に反射的に振り向くと、そこには金髪の美しい少年が立っていた。

「あなたは……ウルハンガ?」
「久しぶりだね」

 笑顔で話しかけてきたのは「相対思想の神」であるウルハンガだった(第9章)。

「何であなたがここにいるんですか?!」
「忘れたのかい? 僕は思想の神だよ。だから僕は思想を知るもののであれば、いつでもその前に姿を見せる事が出来るよ」

 別にお前を呼んだ覚えはないが、呼んでもいないのに押しかけてくる知り合いには事欠かないから驚きはしないな。

「どうしてここに?」
「僕にとっては神界と人間の繋がりが断ち切られても別に困らないからね」
「それでわたしの邪魔をして、他の神がみんな信徒と繋がりがなくなって困るのを望んでいるのですか?」

 元の世界のブラックなギャグで悪魔に対して「世界一の美形にして下さい」と頼んだら本人以外の全人類を消滅させてしまうと言ったオチがあったな。
 ウルハンガにすれば自分以外の神が全部没落したら、相対的に自分が一番の神になれるとかそんな感覚だろうか?

「まさか。僕にとってはそんなのどうでもいいことだよ。ただ神から信徒に力が与えられなくなれば、物事を相対的に考える思想がより広まるのではないかと期待しているだけさ」

 確かにそういう考え方もあるか。
 神が存在し、実際に力を与えている状況では「自分の神こそが正しい」という考えを抱く方がむしろ当たり前だからな。
 しかし「神が信徒に力を与えたりはしない」世界の出身者であるオレとしては、そんなに単純に事が進まないのをよく知っている。

「残念ですが、今回もあなたの誘いには従えません」
「そうかい。恐らく君の方が正しいのだろう」

 あれ?随分とあっさり引き下がるんだな。ちょっと予想外だった。
 そしてウルハンガはそんなオレの表情にも気付いたらしい。

「どうせ僕には君を止める力なんてないよ。そもそも僕は影でしかない事はよく知っているだろう」
「それならここについて知っている事があれば教えてくれませんか?」

 自分でも図々しい頼みだと思うが、もしもウルハンガがここについて何らかの知識を有しているならば、是非とも尋ねておきたい。

「君もまた厚かましいね」
「ダメですか?」
「いいよ。だって僕の存在を少しでも広めるためには、アルタシャにより僕を意識してもらった方がいいからね」

 ダメ元でも言ってみるものだな。

「分かっていると思うけど、この先には確かに神界がある。君も過去には何度もあっという間にここを乗り越えていったし、僕はただそれを指をくわえて見ていただけさ」

 それが確認出来ただけでもありがたいけど、もっと役に立つ情報は無いのだろうか?

「その上でつい先ほど、神界の領域を貪り喰う存在が顕れ、それによって破壊されてしまった。そこまではアルタシャも気付いているだろう」

 ウルハンガは神造者に対しては興味が無いらしい。
 いかなる神話も利用しようと考える神造者の中には、当然ウルハンガを研究している勢力はあったはずだが、たぶん大部分は放置していたのだろう。
 なぜなら神造者は「もっとも効率的な正しい崇拝」を定めるのが仕事だから、物事を相対的に見るウルハンガとは対極だからだ。
 しかしそれでいて神造者は「正しい崇拝を定めるために信仰を客観視する」という考えもあったので対極ながら共通点もあるのだな。
 もしも神造者が「正しいウルハンガ」を定め、その教団を作っていたらどうなっていたんだろうか、などという空しい妄想が胸裏にわき上がった。

「そしてアルタシャがその繋がりをもう一度、元に戻そうとするなら当然、相応の代償が必要だよ」

 どうやらここからが本題らしい。オレは身を固めつつ次の言葉を待った。
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