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第24章 全てはアルタシャのために?
第1235話 悲鳴を聞きつつも先に進むと
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恐らくは殆どの相手は今のところつい先ほど荒れ狂っていた天災で、一時的に自分達が神と連絡が取れなくなっている、としか思っていないのだろう。
だから深刻な問題だとは認識しているが、大陸中で同様の事態が起きているとも、このままではずっと神の声が届かず、魔法も使えないままだとも理解していないだろう。
そして困った事にオレの方には悲鳴が殺到しているが、連中は他者の騒ぎを聞いていないので、そのような事情は分からない。
元の世界で言えば「役所の相談窓口に苦情が殺到して苦慮しているが、それぞれの苦情は他者を全く認識していない」という状況だろう。
しかしこっちの「声」は恐らく、いま死にものぐるいで神の声を聞こうとしているほぼ全員に届くはずだ。
迂闊な事を口にしたら、それころ蜂の巣をつついたような騒ぎになるに違いない。
何とも困った一方通行だな。
いや。待てよ。
一方通行だからこそ、こちらにとっても有利な面があるはずだ。
「いま。あなた方には神の意志が届いていないのですね?」
『はい! その通りです!』
『今までこのような事は一度もありませんでした』
『アルタシャ様がお助け下さるのですね!』
精一杯、届けられる意志を確認しても、やはり状況を正確に把握しているわけではないようだ。
そういえばこの世界では司祭は「神託」で神の意志を確認出来るが、それでストレートに神が教えてくれるような場合は殆ど無い。
もちろん美女とみれば化身を送り込んでチョメチョメしようとするアンブラール神のようなヤツもいる。
しかし殆どの場合は、その情報が得られる場所が示されるとか、手掛かりを知っている人物について教えられるとか、そういう曖昧な意志しか示されない。
要するに神様から直接、信徒に対して「真実はこれだ!」「こうすればよい」などと教えられる事は滅多にないのだ。
元の世界の基準で言えば何とも不親切と言えるが、何しろこの世界の神様は自分の関わる領域しか知らないし、それですら実はあんまり詳しいとは言えないのだ。
何しろイロールは自身の「信徒を化身とする力」が性転換に利用されているなどと、何百年も気付いてなかったぐらいだからな。
そんなわけで信徒には曖昧な指示しか下さないのが、この世界の神様なわけでそこを逆手に取れば、この場を切り抜ける事も出来るだろう。
「聞いて下さい。皆さんが神との繋がりが切れてしまったのは、先ほどの惨事によって神界にも悪影響が出たからです」
『何ですと?』
『やはりそうでしたか』
驚きの声と同意の声が半々ぐらいだな。
これでどうにかなるか? と少しは期待があったが、同時に疑念の声もあがっている。
『なぜ我らが神ではなく、無関係のものが応えてくるのだ?』
『これはどこかの悪魔が我らを惑わそうとしているのか?』
確かにこういう疑問は当然だよな。
この世界の住民の殆どは非常に保守的で、長年にわたり先祖代々受け継がれてきた信仰を守ってきたわけだから、神への呼びかけに「部外者」が出てきたら、疑念を抱くのは当然だろうな。
こうなっては無理やりにでも押し切るしかない。
「詳しい説明をしているヒマはありません。あなた方の神々との繋がりをもう一度復活させるためには、私を信じて祈って下さい」
『分かりました! アルタシャ様のお言葉とあれば!』
『大丈夫だろうか……いや。名高い英雄の言葉ならば……』
『本当か? 我らの神への冒涜ではないのか?』
『嘘だ! アルタシャ様ならこちらにおられるぞ!』
ううむ。喜んで支持する声も決して少なくは無いのだが、やはり疑惑の声もあちこちあがっている。
アルタシャの名声が大陸中に轟いているとは言え、この世界では自分の村の外には一生出ない人間は珍しくも何ともないので、オレを知らない人間も当然大勢いる。
もちろんニセモノに騙されてひどい目にあった相手も少なくは無いどころか、今この場でニセモノに貢いでしまっている連中すらいるようだ。
オレ自身はニセモノの事などどうでもよかったから放置していたけど、今さらながらそれに足を引っ張られてしまうとはな。
しかし大陸中を回って苦労しつつ、あちこちで英雄ともてはやされたオレでもこうなるのだから、広汎に「邪神」と見なされているウルハンガが呼びかけても無理だったというのはその通りなんだろう。
反対の声を説得しているワケにもいかないので、今はもう出来る限りの事をするしかないのか。
取りあえずオレの言葉を信じてくれたらしい人々からの力が流れ込んでくる。
また人間だけでなく、接触した精霊達も力を捧げてくれているようだ。彼らも神界との繋がりを絶ちきられると困るのだな。
だがこの程度で「神界と人間界の繋がり」を治すにはとても及ばない。いま疑念を持って躊躇している連中が全てとまではいかずとも、もっと力を預けてくれたらと思わずにはいられない。
時間をかけたらもっと力が集まるだろうか? しかし逆に「力を捧げても何も起きない」となると見切りを付ける連中も出るかもしれない。
だがオレが悩んでいると――あんまり嬉しくない――助けが訪れるのだった。
だから深刻な問題だとは認識しているが、大陸中で同様の事態が起きているとも、このままではずっと神の声が届かず、魔法も使えないままだとも理解していないだろう。
そして困った事にオレの方には悲鳴が殺到しているが、連中は他者の騒ぎを聞いていないので、そのような事情は分からない。
元の世界で言えば「役所の相談窓口に苦情が殺到して苦慮しているが、それぞれの苦情は他者を全く認識していない」という状況だろう。
しかしこっちの「声」は恐らく、いま死にものぐるいで神の声を聞こうとしているほぼ全員に届くはずだ。
迂闊な事を口にしたら、それころ蜂の巣をつついたような騒ぎになるに違いない。
何とも困った一方通行だな。
いや。待てよ。
一方通行だからこそ、こちらにとっても有利な面があるはずだ。
「いま。あなた方には神の意志が届いていないのですね?」
『はい! その通りです!』
『今までこのような事は一度もありませんでした』
『アルタシャ様がお助け下さるのですね!』
精一杯、届けられる意志を確認しても、やはり状況を正確に把握しているわけではないようだ。
そういえばこの世界では司祭は「神託」で神の意志を確認出来るが、それでストレートに神が教えてくれるような場合は殆ど無い。
もちろん美女とみれば化身を送り込んでチョメチョメしようとするアンブラール神のようなヤツもいる。
しかし殆どの場合は、その情報が得られる場所が示されるとか、手掛かりを知っている人物について教えられるとか、そういう曖昧な意志しか示されない。
要するに神様から直接、信徒に対して「真実はこれだ!」「こうすればよい」などと教えられる事は滅多にないのだ。
元の世界の基準で言えば何とも不親切と言えるが、何しろこの世界の神様は自分の関わる領域しか知らないし、それですら実はあんまり詳しいとは言えないのだ。
何しろイロールは自身の「信徒を化身とする力」が性転換に利用されているなどと、何百年も気付いてなかったぐらいだからな。
そんなわけで信徒には曖昧な指示しか下さないのが、この世界の神様なわけでそこを逆手に取れば、この場を切り抜ける事も出来るだろう。
「聞いて下さい。皆さんが神との繋がりが切れてしまったのは、先ほどの惨事によって神界にも悪影響が出たからです」
『何ですと?』
『やはりそうでしたか』
驚きの声と同意の声が半々ぐらいだな。
これでどうにかなるか? と少しは期待があったが、同時に疑念の声もあがっている。
『なぜ我らが神ではなく、無関係のものが応えてくるのだ?』
『これはどこかの悪魔が我らを惑わそうとしているのか?』
確かにこういう疑問は当然だよな。
この世界の住民の殆どは非常に保守的で、長年にわたり先祖代々受け継がれてきた信仰を守ってきたわけだから、神への呼びかけに「部外者」が出てきたら、疑念を抱くのは当然だろうな。
こうなっては無理やりにでも押し切るしかない。
「詳しい説明をしているヒマはありません。あなた方の神々との繋がりをもう一度復活させるためには、私を信じて祈って下さい」
『分かりました! アルタシャ様のお言葉とあれば!』
『大丈夫だろうか……いや。名高い英雄の言葉ならば……』
『本当か? 我らの神への冒涜ではないのか?』
『嘘だ! アルタシャ様ならこちらにおられるぞ!』
ううむ。喜んで支持する声も決して少なくは無いのだが、やはり疑惑の声もあちこちあがっている。
アルタシャの名声が大陸中に轟いているとは言え、この世界では自分の村の外には一生出ない人間は珍しくも何ともないので、オレを知らない人間も当然大勢いる。
もちろんニセモノに騙されてひどい目にあった相手も少なくは無いどころか、今この場でニセモノに貢いでしまっている連中すらいるようだ。
オレ自身はニセモノの事などどうでもよかったから放置していたけど、今さらながらそれに足を引っ張られてしまうとはな。
しかし大陸中を回って苦労しつつ、あちこちで英雄ともてはやされたオレでもこうなるのだから、広汎に「邪神」と見なされているウルハンガが呼びかけても無理だったというのはその通りなんだろう。
反対の声を説得しているワケにもいかないので、今はもう出来る限りの事をするしかないのか。
取りあえずオレの言葉を信じてくれたらしい人々からの力が流れ込んでくる。
また人間だけでなく、接触した精霊達も力を捧げてくれているようだ。彼らも神界との繋がりを絶ちきられると困るのだな。
だがこの程度で「神界と人間界の繋がり」を治すにはとても及ばない。いま疑念を持って躊躇している連中が全てとまではいかずとも、もっと力を預けてくれたらと思わずにはいられない。
時間をかけたらもっと力が集まるだろうか? しかし逆に「力を捧げても何も起きない」となると見切りを付ける連中も出るかもしれない。
だがオレが悩んでいると――あんまり嬉しくない――助けが訪れるのだった。
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