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第24章 全てはアルタシャのために?
第1274話 全てを知るものは
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しかしオレが「世界の意志」になったとして、それが具体的にどのような結果を招くのか想像も出来ないぞ。
『世界が変わらない、などという事は無い。むしろアルタシャならば必ずやよい方向に導いてくれるだろう』
「その理由は先ほど聞きましたけど……何年かけるつもりなんですか?」
オレが「世界の意志」に関わって、ちょびっとでも世界を変えていける、というのは自分なりに出来るとは思う。
しかしオレの考えが一般化するなど、何百年かかるか分かったものではない。
『この世界の有り様を尊重しつつ、よりよい方向へと進ませるのが必要だ。そしてそれが出来るのは世界広しと言えどアルタシャしかいない』
「いえ。そもそも過去、ずっと長い間、世界の意志は人々にその存在自体を意識されてこなかったのですよね? 今さら変える必要など無いと思いますけど」
『確かにそれも一つの考えだ。しかし人間たちが世界の有り様を理解し、それに手を伸ばし、自分達に都合良く利用としようとする事で、多くの問題が生まれている』
それは神造者の仕業だよな! あいつら本当に困った事ばかりだ! などと怒ってはみたが、たぶんそれは早いか遅いかの違いであって、遠からず誰かが手を出しただろう。
元の世界でも「生物の設計図」をいじるような事だってやっていたし、それもまた発展の形として受け入れていたからな。
神造者がこれからも発展するのか、これまでもいろいろな問題から最終的には滅び去るのか、それはオレにも分からない。
しかしいずれであっても、これからもやばい実験を繰り返して、その都度ロクデモナイ事をやらかすのは間違いない。
下手をすると本当に世界を滅ぼしてしまいかねない。さしずめ元の世界の原子力エネルギーみたいな「禁断の扉」を開けてしまいかねない存在だ。
『アルタシャの危惧はこちらにも伝わっている。いや。少なからぬ人間がそれを理解しているが、止められないのだ』
その気持ちはオレにも分かる。全人類が滅びるだけの核兵器を持っていても、それを捨てることは出来なかったのだからな。
こっちの世界でもそういうところにおいて大差はあるまい。
一度、便利さを味わってしまうと、それを捨てる事は至難の業だ。
石油や電気など無くても人間は立派に生活していたが、その便利さを知ってしまうと抜きで生活することは出来なくなった。
こっちの世界では信仰や魔法が該当するが、それまでのものよりもずっと便利で強力な力が得られるなら、多くの人間が支持するだろう。
それが彼らの今までの信仰を否定するものであっても「こっちこそが正しい信仰だ。みろ信仰の力だって増しているぞ」と言われたらなびく人間が多いのは、過去に幾度もこの目で見てきたのだ。
『だがアルタシャは神造者の行いとその結果を知った上で彼らを否定するのでもなく、逆に支持するのでもなく、いかに調和させるのかを求めてきた。そのようなものは他にいなかった』
「そうは言っても、こっちも神造者に利用されて散々な目にあったんですけど」
オレが首を突っ込む発端が、そもそも神造者が「アルタシャのコピー」を量産して、あっちこっちでエッチな事をさせて有力者を籠絡する道具にしていた事だ。
『それを知っても、アルタシャは彼らを滅ぼそうとはしなかった。しかもまがいものを受け入れた者達にとっては、そちらこそが本物だと尊重しようとしたのではないのか?』
「こっちの考えを読んでいるのですか?」
もしかして「世界の意志」はオレの心を読めるのか? そんな力があるなら、他の人間だって心を読んで色々出来るはずだけどな。
さすがに人間的な感情はかなり欠落している様子だが、それでも感情そのものは理解出来ているようだから、結構恥ずかしいぞ。
『いや。見ていればそれぐらいは分かる』
「つまり常時、こっちを見ていたと言う事ですか?」
『もちろんだとも。何しろこの世界に呼び込んだのだから、その行動は常時把握している』
「ついさっき『自分は漠然とした意識の集合体』だから、その時とは別個の存在だと言っていませんでしたか?」
いつもの事であるが神様の言う事はマジで当てにならない。
『もちろん別個の存在だが、それでもいろいろなものは継承される。そうでないと人々の意志にはならないだろう?』
ううむ。上手くはぐらかされた気がするぞ。
『話を戻すが、自らのまがいものですら尊重したからこそ、危機にあってそのまがいもの達も、アルタシャを助けたとは思わないか?』
奴隷だとか人形、道具扱いされているヒロインを一貫して人間扱いしたから、いざという時に身を挺して助けてくれるというのは元の世界のファンタジーでも定番だったけどさ。
そういうのはやっぱり自分が男だった時にやって欲しかった。
『敵になったものはおろか、自分自身を苦しめたまがいもの含めた、あらゆるものを受け入れて尊重し、最善の結果になるように努力する事をためらわない。そんなアルタシャこそがこの世界の意志の象徴になるのはむしろ当然ではないか』
こっちが何ともしょうもない事を考えている間に、世界の運命が決まっていそうな気がするな。
『世界が変わらない、などという事は無い。むしろアルタシャならば必ずやよい方向に導いてくれるだろう』
「その理由は先ほど聞きましたけど……何年かけるつもりなんですか?」
オレが「世界の意志」に関わって、ちょびっとでも世界を変えていける、というのは自分なりに出来るとは思う。
しかしオレの考えが一般化するなど、何百年かかるか分かったものではない。
『この世界の有り様を尊重しつつ、よりよい方向へと進ませるのが必要だ。そしてそれが出来るのは世界広しと言えどアルタシャしかいない』
「いえ。そもそも過去、ずっと長い間、世界の意志は人々にその存在自体を意識されてこなかったのですよね? 今さら変える必要など無いと思いますけど」
『確かにそれも一つの考えだ。しかし人間たちが世界の有り様を理解し、それに手を伸ばし、自分達に都合良く利用としようとする事で、多くの問題が生まれている』
それは神造者の仕業だよな! あいつら本当に困った事ばかりだ! などと怒ってはみたが、たぶんそれは早いか遅いかの違いであって、遠からず誰かが手を出しただろう。
元の世界でも「生物の設計図」をいじるような事だってやっていたし、それもまた発展の形として受け入れていたからな。
神造者がこれからも発展するのか、これまでもいろいろな問題から最終的には滅び去るのか、それはオレにも分からない。
しかしいずれであっても、これからもやばい実験を繰り返して、その都度ロクデモナイ事をやらかすのは間違いない。
下手をすると本当に世界を滅ぼしてしまいかねない。さしずめ元の世界の原子力エネルギーみたいな「禁断の扉」を開けてしまいかねない存在だ。
『アルタシャの危惧はこちらにも伝わっている。いや。少なからぬ人間がそれを理解しているが、止められないのだ』
その気持ちはオレにも分かる。全人類が滅びるだけの核兵器を持っていても、それを捨てることは出来なかったのだからな。
こっちの世界でもそういうところにおいて大差はあるまい。
一度、便利さを味わってしまうと、それを捨てる事は至難の業だ。
石油や電気など無くても人間は立派に生活していたが、その便利さを知ってしまうと抜きで生活することは出来なくなった。
こっちの世界では信仰や魔法が該当するが、それまでのものよりもずっと便利で強力な力が得られるなら、多くの人間が支持するだろう。
それが彼らの今までの信仰を否定するものであっても「こっちこそが正しい信仰だ。みろ信仰の力だって増しているぞ」と言われたらなびく人間が多いのは、過去に幾度もこの目で見てきたのだ。
『だがアルタシャは神造者の行いとその結果を知った上で彼らを否定するのでもなく、逆に支持するのでもなく、いかに調和させるのかを求めてきた。そのようなものは他にいなかった』
「そうは言っても、こっちも神造者に利用されて散々な目にあったんですけど」
オレが首を突っ込む発端が、そもそも神造者が「アルタシャのコピー」を量産して、あっちこっちでエッチな事をさせて有力者を籠絡する道具にしていた事だ。
『それを知っても、アルタシャは彼らを滅ぼそうとはしなかった。しかもまがいものを受け入れた者達にとっては、そちらこそが本物だと尊重しようとしたのではないのか?』
「こっちの考えを読んでいるのですか?」
もしかして「世界の意志」はオレの心を読めるのか? そんな力があるなら、他の人間だって心を読んで色々出来るはずだけどな。
さすがに人間的な感情はかなり欠落している様子だが、それでも感情そのものは理解出来ているようだから、結構恥ずかしいぞ。
『いや。見ていればそれぐらいは分かる』
「つまり常時、こっちを見ていたと言う事ですか?」
『もちろんだとも。何しろこの世界に呼び込んだのだから、その行動は常時把握している』
「ついさっき『自分は漠然とした意識の集合体』だから、その時とは別個の存在だと言っていませんでしたか?」
いつもの事であるが神様の言う事はマジで当てにならない。
『もちろん別個の存在だが、それでもいろいろなものは継承される。そうでないと人々の意志にはならないだろう?』
ううむ。上手くはぐらかされた気がするぞ。
『話を戻すが、自らのまがいものですら尊重したからこそ、危機にあってそのまがいもの達も、アルタシャを助けたとは思わないか?』
奴隷だとか人形、道具扱いされているヒロインを一貫して人間扱いしたから、いざという時に身を挺して助けてくれるというのは元の世界のファンタジーでも定番だったけどさ。
そういうのはやっぱり自分が男だった時にやって欲しかった。
『敵になったものはおろか、自分自身を苦しめたまがいもの含めた、あらゆるものを受け入れて尊重し、最善の結果になるように努力する事をためらわない。そんなアルタシャこそがこの世界の意志の象徴になるのはむしろ当然ではないか』
こっちが何ともしょうもない事を考えている間に、世界の運命が決まっていそうな気がするな。
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