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第24章 全てはアルタシャのために?
第1275話 世界をよりよく導くには
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しかし元の世界ではただの平凡な高校生だったオレごときが、いつの間にやら一つの世界の意志を象徴する存在になるだと?
本当にどこまでオレの立場はエスカレートするんだか。
だが過去に見てきた「意識の象徴」は世界の消滅を望んでいたメトゥサイラでも、それほどスゴイ力があったわけではない――だからオレに子供を産んで、自分を量産してくれなんて無茶苦茶な要求をあっさりとしてきたわけだが。
それを考えると、今のオレが人々の考える象徴になる事そのものは可能なのだろう。単純に言えば求められるのは力ではなく、イメージなのだろうからな。
そんなところは文字通りの「偶像(アイドル)」と言う事らしい。
しかしオレが世界の意志を代弁するとなれば、当然ながら人々から無数の声が飛んでくる事になる。
それも毎日どころか、一瞬たりとも休む間もないのだぞ。
本当にそんな事になったら間違いなく、おかしくなってしまう。
「そんな事になったら、こちらの心身が耐えられるとは思えません」
『それは大丈夫だ』
随分と簡単に断言してくれるものだな。
『人間だって常に五感を通じて色々な情報を受けているだろう。それだけでおかしくなるかね? 世界の意志になったからと言って、全ての声を聞く必要はないし、もちろん聞き流すだけでも構わない』
確かにほとんど全ての情報は取るに足らない小さなものだ。
もっとも元の世界の情報でも、そういう取るに足らない情報だと思って聞き流してしまったら、それが重大な事件の前触れで大惨事を招いてしまったという話しを何度も聞いたな。
しかし惨事を招く前に食い止めても、賛辞はあんまり得られないが、失敗すると歴史に残る罵声を受けるというのは何とも損な役どころだ。
世界史に残る大規模テロで、事前に情報は少なからずあったにも関わらず、各部署の縄張り争いで情報が共有できず防げなかったと、何十年経っても非難されていたっけ。
『もちろん。それで惨事を防ぐ事が出来なくても、別に自分の責任だと思う必要は無い。もともと人間の意志の象徴であるからこそ、その意志によって惨事が生じるのもやむを得ないことだ』
「いや。それだったらそもそも存在価値が無いでしょう」
『そうではない。アルタシャも自分が完璧だったと思った事などあるまい。少なからぬ人間が自分の手からこぼれ落ちて命を落とした自覚はあろう?』
オレは無言で頷いた。自分でもなるだけ考えるのは避けていたが、実際に先ほどの世界を覆った惨事でも無数の犠牲者が出ていただろう。
もちろんオレの責任だとまでは思っていないし、罪の意識まであるわけではないが、心に引っかかるものがあるのも確かだ。
『それでも一人でも多くの命を助けようとしてきたのだろう? そして大きな成果が上がっている事は自分でも自覚しているはずだ』
確かに至らぬところは多々あれど、オレはそれなりの働きをしてきた自負ぐらいはある。
この世界は間違いなく不完全だ。
それはずっと旅してきたオレが幾度も思い知らされてきた。
そして完全にする事など出来ないし、オレもそんなことをしようとは思ってもいない。
元の世界のフィクションだとしばしば二一世紀の価値観を持ち込んで、問題解決出来る話もあったけど、そんなに違う価値観が簡単に根付くなら苦労しない。
実際、そういう価値観の相克で泥沼化してしまったニュースもしょっちゅうだった。
そしてこちらの世界では、オレが出会った幾つかの教団や信徒は「かつて世界は完全だったが、それが敵対する勢力の攻撃によって失われた」と説き、それ故にこそ「世界を完全に戻すために、自分達の神を信仰する」という教えを唱えていた。
一神教徒の主流派は逆に「世界が完全であったからこそ、全能の神は可能性を求めて世界を不完全なものとした」という教えを信じていたが、幾らかの少数派は別の教えを信じ、面倒くさい事になっていたな。
幸か不幸か、この世界では人間の営みに関わる神の力の源が、信仰の精力だから元の世界のファンタジーでよく見かけた「封印された邪神が復活して、世界を危機に陥れる」などということはあり得ない。
そんなわけで「人間の営みが時に世界の危機を招く」という点において、二つの世界に違いなどないのだ。
「やっぱり人間の営みで危機が起きるのならば、それを乗り越えるのも人間やらないといけないと思いますよ」
正直、綺麗事だというのは分かっている。
実際には乗り越えるのですら、簡単なことではないので有る。何十年、何百年ももめ続け、時には流血の惨事を招くのだって珍しい話ではない。
『そうだ。そしてその人間の象徴こそがアルタシャだった。神のごとく崇拝されていても、決して神ではなく、自らの意志で人であり続ける事を選んだのではないか』
「だからこそ人の意志の象徴にふさわしいと言いたいのですか?」
『もちろんだとも。それが完璧ではなくとも、より最善に近い道を常に選び続けるというアルタシャの選択にもっともふさわしい』
世界の意志はそう言い切った。
本当にどこまでオレの立場はエスカレートするんだか。
だが過去に見てきた「意識の象徴」は世界の消滅を望んでいたメトゥサイラでも、それほどスゴイ力があったわけではない――だからオレに子供を産んで、自分を量産してくれなんて無茶苦茶な要求をあっさりとしてきたわけだが。
それを考えると、今のオレが人々の考える象徴になる事そのものは可能なのだろう。単純に言えば求められるのは力ではなく、イメージなのだろうからな。
そんなところは文字通りの「偶像(アイドル)」と言う事らしい。
しかしオレが世界の意志を代弁するとなれば、当然ながら人々から無数の声が飛んでくる事になる。
それも毎日どころか、一瞬たりとも休む間もないのだぞ。
本当にそんな事になったら間違いなく、おかしくなってしまう。
「そんな事になったら、こちらの心身が耐えられるとは思えません」
『それは大丈夫だ』
随分と簡単に断言してくれるものだな。
『人間だって常に五感を通じて色々な情報を受けているだろう。それだけでおかしくなるかね? 世界の意志になったからと言って、全ての声を聞く必要はないし、もちろん聞き流すだけでも構わない』
確かにほとんど全ての情報は取るに足らない小さなものだ。
もっとも元の世界の情報でも、そういう取るに足らない情報だと思って聞き流してしまったら、それが重大な事件の前触れで大惨事を招いてしまったという話しを何度も聞いたな。
しかし惨事を招く前に食い止めても、賛辞はあんまり得られないが、失敗すると歴史に残る罵声を受けるというのは何とも損な役どころだ。
世界史に残る大規模テロで、事前に情報は少なからずあったにも関わらず、各部署の縄張り争いで情報が共有できず防げなかったと、何十年経っても非難されていたっけ。
『もちろん。それで惨事を防ぐ事が出来なくても、別に自分の責任だと思う必要は無い。もともと人間の意志の象徴であるからこそ、その意志によって惨事が生じるのもやむを得ないことだ』
「いや。それだったらそもそも存在価値が無いでしょう」
『そうではない。アルタシャも自分が完璧だったと思った事などあるまい。少なからぬ人間が自分の手からこぼれ落ちて命を落とした自覚はあろう?』
オレは無言で頷いた。自分でもなるだけ考えるのは避けていたが、実際に先ほどの世界を覆った惨事でも無数の犠牲者が出ていただろう。
もちろんオレの責任だとまでは思っていないし、罪の意識まであるわけではないが、心に引っかかるものがあるのも確かだ。
『それでも一人でも多くの命を助けようとしてきたのだろう? そして大きな成果が上がっている事は自分でも自覚しているはずだ』
確かに至らぬところは多々あれど、オレはそれなりの働きをしてきた自負ぐらいはある。
この世界は間違いなく不完全だ。
それはずっと旅してきたオレが幾度も思い知らされてきた。
そして完全にする事など出来ないし、オレもそんなことをしようとは思ってもいない。
元の世界のフィクションだとしばしば二一世紀の価値観を持ち込んで、問題解決出来る話もあったけど、そんなに違う価値観が簡単に根付くなら苦労しない。
実際、そういう価値観の相克で泥沼化してしまったニュースもしょっちゅうだった。
そしてこちらの世界では、オレが出会った幾つかの教団や信徒は「かつて世界は完全だったが、それが敵対する勢力の攻撃によって失われた」と説き、それ故にこそ「世界を完全に戻すために、自分達の神を信仰する」という教えを唱えていた。
一神教徒の主流派は逆に「世界が完全であったからこそ、全能の神は可能性を求めて世界を不完全なものとした」という教えを信じていたが、幾らかの少数派は別の教えを信じ、面倒くさい事になっていたな。
幸か不幸か、この世界では人間の営みに関わる神の力の源が、信仰の精力だから元の世界のファンタジーでよく見かけた「封印された邪神が復活して、世界を危機に陥れる」などということはあり得ない。
そんなわけで「人間の営みが時に世界の危機を招く」という点において、二つの世界に違いなどないのだ。
「やっぱり人間の営みで危機が起きるのならば、それを乗り越えるのも人間やらないといけないと思いますよ」
正直、綺麗事だというのは分かっている。
実際には乗り越えるのですら、簡単なことではないので有る。何十年、何百年ももめ続け、時には流血の惨事を招くのだって珍しい話ではない。
『そうだ。そしてその人間の象徴こそがアルタシャだった。神のごとく崇拝されていても、決して神ではなく、自らの意志で人であり続ける事を選んだのではないか』
「だからこそ人の意志の象徴にふさわしいと言いたいのですか?」
『もちろんだとも。それが完璧ではなくとも、より最善に近い道を常に選び続けるというアルタシャの選択にもっともふさわしい』
世界の意志はそう言い切った。
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