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第24章 全てはアルタシャのために?
第1289話 スッパリとふって見ると
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テセルも少し前に「アルタシャほどの存在を知ってしまったら、他の女性は見劣りしてしまう」などといっていたな。
それでも普通なら「高値の花」と思ってあきらめるもんだが、人並み以上にテセルが有能で、かつオレがちょっと親しく付き合い過ぎた事が原因か。
そう考えるとやっぱりオレにも非はあるかもしれない。
オレにここまで執着しても無駄だと思い知らせるためには、こうなると完全にテセルを振るしかないか。
今までも幾度も、テセルの妻になるのは断り続けてきたが、ちょっと表現がオブラート過ぎたかな。
元男としてスッパリ振られるとショックだろうなと、いう意識が心の中でブレーキをかけていたようだ。
もっともそれでも簡単にあきらめてくれそうにないのだから困ったものだ――そんな知り合いはごまんといる。
「もう過去に何度も言いましたし、今回も改めていいますけど、わたしはテセルの妻になる気は全く無いですよ」
「それでこの僕が改めると思っているのか?」
正直に言えば思っていなかったな。
もっともオレの知るファンタジー世界では「一目見ただけの美女のために国の命運を賭ける王子」なんて珍しくも無い上に、美女の方は一瞬でプロポーズを受けるチョロインばっかりだからな。
考えて見ればテセルは「そういう伝説・神話を作る側」の人間だった。
だけど神造者はあくまでも作る側であって、主人公になる側では無いはずだ。
「神話を作るにしても、神造者は自分が主役になってはならないのでは?」
「大丈夫。主役はアルタシャだ。僕は脇役で構わない」
ああ言えばこういうのだな。
「僕のアルタシャを狙っている連中が大勢いることは分かっている。しかもその中には皇帝や国王クラスの相手も珍しくはない」
テセルなら当然、知っていて当たり前の話だな。
「しかもアルタシャは人外でも気にしないので、ドラゴンまで口説く始末だ」
「イオは口説いたわけじゃありません!」
どうしていつもこういう関係のない話を毎度毎度挟むのか。オレが本当に「神」なら神罰の一つも与えてやりたいところだよ。
「そういう連中に対してもアルタシャは変わらず優しいのだな? もしも困っていれば躊躇なく自分で乗り出すつもりだろう?」
「もちろんですよ。むしろ今までそうしなかったことがありますか?」
実際には欲に駆られて暴走したような連中には、さっさと背を向けて逃げ出したこともあるけどな。
「おそらくそんな地位のある連中はみんな、アルタシャのいる場所に辿り着こうと必死になるだろう」
そうだろうか? 元の世界で聞いた「かぐや姫」の伝説では、不死の薬をもらった帝は不死の薬を焼いてしまったのがエピローグだったけど、同様の展開になるんじゃないのか?
いや。人間が神として崇拝されるのは珍しくもないこの世界だと、自分も神になってオレと添い遂げようと考えそうな連中だって何人もいる。
もちろんテセルもその一人だ。
自分の事を棚に上げている事は分かっているが、そういう神が生まれては信徒に恩恵を与えつつ相争うような事はなるだけ避けたい。
元の世界のゲームだったら「この神だとこんな魔法をくれるから得だ」「この神のこの恩恵はあんまり役にたたないな」なんて事も珍しくはなかったのだが、そもそも殆どの人間はそんな選択なんて出来ないどころか、両親の信じる神をそのまま信じるのが当たり前だ。
もちろん隣の街に行くことすら稀な人間ばかりならば、それが大きな問題になることは少ないだろう。
遊牧民のように動き回る場合でも、生まれてからずっとその生活を続けていれば、そこから離れるのは困難だ。
このあたりは元の世界でもおおむね同じだけど、こちらは神が実際に信徒に力を与えているから、尚のこと縛りが強い。
今までの生き方を変えるということは、崇拝する神を変えることであり必然的に神から受けてきた恩恵を捨てることでもあるからな。
そういう意味では信仰そのものを都合よく変える事を重視した神造者のやり口は実に上手いやり方だったと言えるかもしれない。
それはともかくオレの場合は、信仰は信仰として、世俗とは関係なく存在するようになってもらいたい。
もちろん「アルタシャ」がそれを唱えたところで、はいそうですかと応じる人間の方が少数だろう。
一部とは言え生涯をかけて信仰を捧げ、そこから利益を得ている人間もあちこちにいるのだ。しかも街の神などの場合、司祭はそこで権力を握るに必須の存在であることも普通だ。
純粋に信仰心だけならまだしも、権力や富を目当てに侵攻している人間に今さら全部捨てろといわれて受け入れる方がおかしい。
下手をすればそれがまた別の争いを生むという、本末転倒の事態になりかねない。
過去にも争いをなくすために「相対思想」を広めたら、それが大戦争を産んでしまったという前例がこの世界にあったからな。
「残念ながら、もうあなたを含め、誰にも手の届かないところに行くつもりです。もちろんわたしの方から手を伸ばす事はしますけどね」
男共に言いよられ続けるのがイヤで、逃げるように見えるが、実際にその通りなんだから仕方ないか。
それでも普通なら「高値の花」と思ってあきらめるもんだが、人並み以上にテセルが有能で、かつオレがちょっと親しく付き合い過ぎた事が原因か。
そう考えるとやっぱりオレにも非はあるかもしれない。
オレにここまで執着しても無駄だと思い知らせるためには、こうなると完全にテセルを振るしかないか。
今までも幾度も、テセルの妻になるのは断り続けてきたが、ちょっと表現がオブラート過ぎたかな。
元男としてスッパリ振られるとショックだろうなと、いう意識が心の中でブレーキをかけていたようだ。
もっともそれでも簡単にあきらめてくれそうにないのだから困ったものだ――そんな知り合いはごまんといる。
「もう過去に何度も言いましたし、今回も改めていいますけど、わたしはテセルの妻になる気は全く無いですよ」
「それでこの僕が改めると思っているのか?」
正直に言えば思っていなかったな。
もっともオレの知るファンタジー世界では「一目見ただけの美女のために国の命運を賭ける王子」なんて珍しくも無い上に、美女の方は一瞬でプロポーズを受けるチョロインばっかりだからな。
考えて見ればテセルは「そういう伝説・神話を作る側」の人間だった。
だけど神造者はあくまでも作る側であって、主人公になる側では無いはずだ。
「神話を作るにしても、神造者は自分が主役になってはならないのでは?」
「大丈夫。主役はアルタシャだ。僕は脇役で構わない」
ああ言えばこういうのだな。
「僕のアルタシャを狙っている連中が大勢いることは分かっている。しかもその中には皇帝や国王クラスの相手も珍しくはない」
テセルなら当然、知っていて当たり前の話だな。
「しかもアルタシャは人外でも気にしないので、ドラゴンまで口説く始末だ」
「イオは口説いたわけじゃありません!」
どうしていつもこういう関係のない話を毎度毎度挟むのか。オレが本当に「神」なら神罰の一つも与えてやりたいところだよ。
「そういう連中に対してもアルタシャは変わらず優しいのだな? もしも困っていれば躊躇なく自分で乗り出すつもりだろう?」
「もちろんですよ。むしろ今までそうしなかったことがありますか?」
実際には欲に駆られて暴走したような連中には、さっさと背を向けて逃げ出したこともあるけどな。
「おそらくそんな地位のある連中はみんな、アルタシャのいる場所に辿り着こうと必死になるだろう」
そうだろうか? 元の世界で聞いた「かぐや姫」の伝説では、不死の薬をもらった帝は不死の薬を焼いてしまったのがエピローグだったけど、同様の展開になるんじゃないのか?
いや。人間が神として崇拝されるのは珍しくもないこの世界だと、自分も神になってオレと添い遂げようと考えそうな連中だって何人もいる。
もちろんテセルもその一人だ。
自分の事を棚に上げている事は分かっているが、そういう神が生まれては信徒に恩恵を与えつつ相争うような事はなるだけ避けたい。
元の世界のゲームだったら「この神だとこんな魔法をくれるから得だ」「この神のこの恩恵はあんまり役にたたないな」なんて事も珍しくはなかったのだが、そもそも殆どの人間はそんな選択なんて出来ないどころか、両親の信じる神をそのまま信じるのが当たり前だ。
もちろん隣の街に行くことすら稀な人間ばかりならば、それが大きな問題になることは少ないだろう。
遊牧民のように動き回る場合でも、生まれてからずっとその生活を続けていれば、そこから離れるのは困難だ。
このあたりは元の世界でもおおむね同じだけど、こちらは神が実際に信徒に力を与えているから、尚のこと縛りが強い。
今までの生き方を変えるということは、崇拝する神を変えることであり必然的に神から受けてきた恩恵を捨てることでもあるからな。
そういう意味では信仰そのものを都合よく変える事を重視した神造者のやり口は実に上手いやり方だったと言えるかもしれない。
それはともかくオレの場合は、信仰は信仰として、世俗とは関係なく存在するようになってもらいたい。
もちろん「アルタシャ」がそれを唱えたところで、はいそうですかと応じる人間の方が少数だろう。
一部とは言え生涯をかけて信仰を捧げ、そこから利益を得ている人間もあちこちにいるのだ。しかも街の神などの場合、司祭はそこで権力を握るに必須の存在であることも普通だ。
純粋に信仰心だけならまだしも、権力や富を目当てに侵攻している人間に今さら全部捨てろといわれて受け入れる方がおかしい。
下手をすればそれがまた別の争いを生むという、本末転倒の事態になりかねない。
過去にも争いをなくすために「相対思想」を広めたら、それが大戦争を産んでしまったという前例がこの世界にあったからな。
「残念ながら、もうあなたを含め、誰にも手の届かないところに行くつもりです。もちろんわたしの方から手を伸ばす事はしますけどね」
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