能力者の都市で僕が最強の"覇王"になるまで。

ミースケ

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#12

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「わぁお、デカいなぁ~!」
僕は6区能力者大会が行われるスタジアムを目の前にそう叫ぶ。
恐らく東京ドームより圧倒的に大きいそのスタジアムはこの【ネオ・アトラス第3新東京都市】で最も大きな建物で、何度見てもその大きさには驚かされる。
「・・・・・」
「おい零、静かにするのじゃ!あんまり騒いでおると舐められるぞ!」
呆れた様子でこちらを見ている黒髪でオシャレな丸眼鏡をかけている京夜と、目の前で僕よりも騒いでいる背の低い少女、"委員長"こと環が、今回僕と共に6区能力者大会に第2区能力者高校代表として出場する仲間だ。
「流石に人も多いな」
この都市一大イベントということもあり、周りには多くの人が行き交っている。
大声で騒いでいる僕たちを時々見てくる視線が少し痛いが、直ぐに視線を外してくるためあまり気にしない。
「じゃあ行くぞ~!」
「お~う」
「ああ」
環の掛け声で僕たちはスタジアムの出場選手受付に向かう。
受付で名前を言うと、専用の服とネームカード、ロッカーの鍵や大会説明書等をそれぞれ渡してくれる。
「選手控え席はあちらで、2区高の皆様は102号室でございます」
「ありがとうございま~す」
受付のお姉さんはそう言って最後に部屋の鍵を渡してくれて、それを受け取った僕は笑顔でお礼を言う。
「すげーな、出場チームごとに部屋があるなんてよ」
「そうだな」
2区校高等部の生徒が約500人、そしてその中から校内予選に出場したのが32名で、更にその中の3人だからな。
倍率で言えば約17倍ほどなため、いわゆるVIP扱いというやつなのかも知れない。
「おお、お茶と弁当が置かれてるぞ!」
控え室は8畳ほどの洋室になっており、内装は長机と人数分のイスだけという簡素な物となっている。
机の上に置かれてるお茶とコンビニ弁当を見た環は目を輝かさせる。
確か環はかなりいい家の出なため、コンビニ弁当など食べる機会も無いだろう。
故に物珍しさにテンションも上がっている環を僕は「少しかわいいな」と思いながら眺める。
「で、開会式は9時からだったよな?」
「ああ」
今は8時なので、大体1時間ほど暇な時間がある。
「じゃ、建物内を探検してくるわ!」
「おい待つのじゃ!」
環の声を無視して僕は勢いよく部屋を飛び出していき、探検に出る。

「広いな~」
僕はスタジアム内を見て回って改めてその広さに驚く。
建物内には売店やジム、アリーナなどがあり、それに加えて廊下も広くて控え室も沢山あってかなりの充実具合だ。
「そろそろ戻るか」
30分ほど見て回って満足した僕は、2区校の控え室に戻る。
「・・・ん?」
幾つかの控え室が並んでいる通路の2区校控え室の2個手前の控え室の前に高身長の男が立っているのを見て僕は立ち止まる。
というのもその男のことを見たことがある気がしたからだ。
一瞬男を観察して、僕はその男が誰かを思い出す。
そうだ、前にコンビニ帰りにぶつかってしまった目つきの鋭くて強いらしい2年前に4区の代表だったやつだ。
やはり今年も出場して予選を勝ち抜いて来たらしい。
「お前は・・・」
男は僕に気がついた様子でこちらを見てくる。
「あ、こんにちは」
僕はそう言いながら歩きだして、控え室に戻ろうとする。
「おい、ちょっとまて」
だが、男の横を通り過ぎようとしたところで呼び止められる。
「お前、2区のやつだろ?」
「そうだけど」
僕は少し面倒くさいなと思いつつも正直にそう答える。
「俺は星乃っていう者だ、お前は?」
「・・・創流零だ」
「そうか」
これは驚いたな、苗字からしてこいつ環の兄か。
つまり今声を掛けてきたのは妹のチームメンバーがどんなやつで、変な虫が纏わりついてないのかっていうのを調べるためか?
だとしたらシスコンじゃねぇか!
「それでは」
僕はそう言いつつ星乃兄の横を通り過ぎ、2区校の控え室に向かう。

「じゃ、ルール確認な!」
控え室で、僕たちは大会ルールの最終確認をしていた。
「え~とルールは・・・」
そうして僕はルールブックを読み始める。
最初はスタジアム内をフル活用したバトロワ形式の試合があるらしい。
もちろん普通のバトロワの様に最後まで勝ち残れば良いわけではなく、全6区計18名の選手それぞれに、各校からの情報などを元にポイントが振り分けられ、そのポイントを奪い合うというルールだ。
ポイントは各校3人の合計が150になるように設定されているらしく、僕たち2区校のポイント振り分けは、僕40ポイント、京夜60ポイント、環50ポイントという感じだ。
優勝した僕よりも環の方がポイントが多いのは恐らく日頃の評価によるものだろう。
制限時間は100分で、その間に倒した相手のポイントを奪うことができ、制限時間経過時に自分が倒されていなかった場合は、奪ったポイントに自分のポイントを足した合計が得点となる。
1度奪ったポイントは、そのポイントを持つ者が倒されたとしても奪われることはなく、例えば僕が20ポイントの敵を倒した後に他の敵に倒された場合、奪われるのは僕のポイントである40ポイントだけで、20ポイントはそのまま僕の得点として残るということだ。
ちなみに"倒す"というのは相手を戦闘不能にさせることで、戦闘不能と判断された場合、その選手は運営側の能力者によって医療室に転送されるらしい。
これは止めを刺した者がポイントを奪えるため、ハイエナするのも一つの手だろう。
まあ僕はそれされたらキレるけど。
制限時間経過時にチーム全員の得点を足した合計が多い上位2チームだけが決勝戦に行ける。
決勝戦は3対3の勝ち上がり戦で、先方中堅大将を決め、先に相手の大将を倒したチームの優勝というものだ。
「まあ、大まかなルールはこんな感じかな?」
後は今回は、予選と違って持ち込みは自由らしいため、京夜が能力をフル活用出来たりする。
「そろそろ時間だし、会場に行くか」
「うむ、そうじゃな」
「ああ、そうするか~」
こうして僕たちは試合会場へと向かうのだった。
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