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あの後、駆け付けた救急隊員によって負傷した零と京夜、それと杉野もスタジアム内の医務室へと搬送された。
「零さん、大丈夫ですか!?」
瑠衣は、ドン!という音をたてながらすごい勢いで医務室の扉を開ける。
「ああ・・・」
そこには包帯と点滴を付けられた零が、ベッドの上で天井を見るように仰向けになっていた。
「・・・?誰かと話してました?」
「いや?」
医者は席を外しているのか、医務室の中には零と、同じく包帯と点滴を付けられている京夜以外誰も居ない。
「京夜さんは?」
「寝てるよ」
零は少し申し訳無さそうな顔をしながら頭を動かして京夜の方を見る。
「毎度京夜には迷惑を掛けてる。その度に京夜は大丈夫って言ってくれるが、それでも申し訳なくてな。」
肉体的にも精神的にもいつもより弱っているせいか、今の零の声は少しか細さを感じる。
「・・・零さん、"あれは"なんだったんですか?」
瑠衣は意を決したように一人で頷き、零にそう質問する。
「・・・悪いが、教えてやれない。お前まで巻き込むわけには行かないからな」
「それは、私がアルバイトだからですか?・・・信用されて無いからですか!?」
瑠衣は珍しく、声を荒らげてそう叫ぶ。
瑠衣はこれまで、零や玲奈の能力を教えて貰えなかったりした時や依頼で頼って貰えなかった時、その他にも普段の会話の所々でも、少し疎外感を感じていた。
そしてその小さな積み重ねが、今回爆発してしまった。
「それは・・・」
それでも零は瑠衣まで巻き込もうとは思えない。
ただえさえ京夜や玲奈、優香さんにも迷惑を掛けているのに、瑠衣まで巻き込んでしまうと、零の中で罪悪感が更に多くなってしまう。
「・・・零」
「京夜・・・!?」
瑠衣の声で目を覚ましたのか、京夜が零の方を見ながら口を開く。
「瑠衣は・・・お前に認められるために頑張って来たんだ。だからお前もそれに応えてやれ・・・」
「京夜さん・・・」
そう言うと京夜は再び目を閉じて眠りにつく。
「はぁ・・・」
そんな京夜を見て零はため息を付きながら瑠衣の方に視線を向ける。
「分かったよ、お前は今日からアルバイトを辞めて正社員になるんだ。もうお前に隠し事はしないよ」
「ありがとうございます!改めてよろしくお願いします!」
すると、瑠衣はよほど嬉しかったのか涙を流し始める。
「えっ、あ・・・どうした?」
そんな瑠衣を見て零は慌てだす。
その時、医務室の扉が開かれて、玲奈が入ってくる。
「・・・零、だいじょうぶ?」
玲奈は零たちの方に視線を向けると、そこには涙を流している瑠衣と、慌てている零の姿があった。
「・・・・・」
それを見た玲奈は一つの結論を出したような表情をする。
「・・・零が、瑠衣を泣かせた?」
「そうだけど違うよ!?」
そんな玲奈の言葉に、間髪入れず入れた零のツッコミが医務室に響き渡る。
「どうすればいいのじゃ・・・」
先程の零が何故か暴走するというハプニングで、零と京夜の2人が医務室に送られてしまい1人残されてしまった環は頭を抱えていた。
元々は、零が無双し相手2人を倒してあわよくば星乃碧も多少消耗させて、環が更に消耗させてダメージを負わせて最後に京夜が確実に倒すという作戦だった。
だが今戦えるのは環だけで、京夜もあの怪我で復帰出来るかどうか分からない。
「私がお兄様に勝つしかないのか」
この決勝で勝つには、環が碧に勝つしかない。
環は覚悟を決めてステージの上に立つ。
「お兄様、悪いが勝たせてもらうぞ」
「ほう・・・?」
環はステージの正面に立っている兄である星乃碧に対して挑発的な態度でそう宣言する。
『さ、さて!ハプニングもありましたが、続いては2区の星乃環選手対、星乃碧選手の戦いです!』
ハプニングはハプニングで結構派手な戦いだったため、会場の観客たちのボルテージは最高潮に達している。
『この大会の優勝チームを決める実質的な一戦です!それでは始め!』
その合図で兄妹の対決が始まる。
___環はこれまで両親からの愛情をろくに受けずに成長してきた。
星乃という家系に生まれた環は、常に兄である碧と比べられ、両親はより優秀な碧ばかり気にかけて、環の事など気にもしなかった。
そのため家族との関係は良くはなく、常に一定の距離を保って生活してきた。
そんな環は、佐々木と出会う少し前までは、祖母と仲が良くてよく一緒に話したり、遊んでいたりした。
環の言葉遣いが老人っぽいのは祖母と過ごした時間が長かったためだ。
祖母だけは環を才能で見ずに、優しく接してくれたことによって、環の人格が歪むことはなかった。
だが、そんな祖母が亡くなり、心の支えを失った環は、そのすぐに佐々木と出会わなければ自ら命を絶っていただろう。
佐々木は祖母とは違って少し厳しい面もあったが、"兄以上の環の才能"を見出してくれたり、環の存在価値を教えてくれたりした。
そんな自分を信じてくれている佐々木のためにも、環は絶対に負けるわけにはいけない。
ここで必ず勝って劣等感を完全に振り払うんだ!
「零さん、大丈夫ですか!?」
瑠衣は、ドン!という音をたてながらすごい勢いで医務室の扉を開ける。
「ああ・・・」
そこには包帯と点滴を付けられた零が、ベッドの上で天井を見るように仰向けになっていた。
「・・・?誰かと話してました?」
「いや?」
医者は席を外しているのか、医務室の中には零と、同じく包帯と点滴を付けられている京夜以外誰も居ない。
「京夜さんは?」
「寝てるよ」
零は少し申し訳無さそうな顔をしながら頭を動かして京夜の方を見る。
「毎度京夜には迷惑を掛けてる。その度に京夜は大丈夫って言ってくれるが、それでも申し訳なくてな。」
肉体的にも精神的にもいつもより弱っているせいか、今の零の声は少しか細さを感じる。
「・・・零さん、"あれは"なんだったんですか?」
瑠衣は意を決したように一人で頷き、零にそう質問する。
「・・・悪いが、教えてやれない。お前まで巻き込むわけには行かないからな」
「それは、私がアルバイトだからですか?・・・信用されて無いからですか!?」
瑠衣は珍しく、声を荒らげてそう叫ぶ。
瑠衣はこれまで、零や玲奈の能力を教えて貰えなかったりした時や依頼で頼って貰えなかった時、その他にも普段の会話の所々でも、少し疎外感を感じていた。
そしてその小さな積み重ねが、今回爆発してしまった。
「それは・・・」
それでも零は瑠衣まで巻き込もうとは思えない。
ただえさえ京夜や玲奈、優香さんにも迷惑を掛けているのに、瑠衣まで巻き込んでしまうと、零の中で罪悪感が更に多くなってしまう。
「・・・零」
「京夜・・・!?」
瑠衣の声で目を覚ましたのか、京夜が零の方を見ながら口を開く。
「瑠衣は・・・お前に認められるために頑張って来たんだ。だからお前もそれに応えてやれ・・・」
「京夜さん・・・」
そう言うと京夜は再び目を閉じて眠りにつく。
「はぁ・・・」
そんな京夜を見て零はため息を付きながら瑠衣の方に視線を向ける。
「分かったよ、お前は今日からアルバイトを辞めて正社員になるんだ。もうお前に隠し事はしないよ」
「ありがとうございます!改めてよろしくお願いします!」
すると、瑠衣はよほど嬉しかったのか涙を流し始める。
「えっ、あ・・・どうした?」
そんな瑠衣を見て零は慌てだす。
その時、医務室の扉が開かれて、玲奈が入ってくる。
「・・・零、だいじょうぶ?」
玲奈は零たちの方に視線を向けると、そこには涙を流している瑠衣と、慌てている零の姿があった。
「・・・・・」
それを見た玲奈は一つの結論を出したような表情をする。
「・・・零が、瑠衣を泣かせた?」
「そうだけど違うよ!?」
そんな玲奈の言葉に、間髪入れず入れた零のツッコミが医務室に響き渡る。
「どうすればいいのじゃ・・・」
先程の零が何故か暴走するというハプニングで、零と京夜の2人が医務室に送られてしまい1人残されてしまった環は頭を抱えていた。
元々は、零が無双し相手2人を倒してあわよくば星乃碧も多少消耗させて、環が更に消耗させてダメージを負わせて最後に京夜が確実に倒すという作戦だった。
だが今戦えるのは環だけで、京夜もあの怪我で復帰出来るかどうか分からない。
「私がお兄様に勝つしかないのか」
この決勝で勝つには、環が碧に勝つしかない。
環は覚悟を決めてステージの上に立つ。
「お兄様、悪いが勝たせてもらうぞ」
「ほう・・・?」
環はステージの正面に立っている兄である星乃碧に対して挑発的な態度でそう宣言する。
『さ、さて!ハプニングもありましたが、続いては2区の星乃環選手対、星乃碧選手の戦いです!』
ハプニングはハプニングで結構派手な戦いだったため、会場の観客たちのボルテージは最高潮に達している。
『この大会の優勝チームを決める実質的な一戦です!それでは始め!』
その合図で兄妹の対決が始まる。
___環はこれまで両親からの愛情をろくに受けずに成長してきた。
星乃という家系に生まれた環は、常に兄である碧と比べられ、両親はより優秀な碧ばかり気にかけて、環の事など気にもしなかった。
そのため家族との関係は良くはなく、常に一定の距離を保って生活してきた。
そんな環は、佐々木と出会う少し前までは、祖母と仲が良くてよく一緒に話したり、遊んでいたりした。
環の言葉遣いが老人っぽいのは祖母と過ごした時間が長かったためだ。
祖母だけは環を才能で見ずに、優しく接してくれたことによって、環の人格が歪むことはなかった。
だが、そんな祖母が亡くなり、心の支えを失った環は、そのすぐに佐々木と出会わなければ自ら命を絶っていただろう。
佐々木は祖母とは違って少し厳しい面もあったが、"兄以上の環の才能"を見出してくれたり、環の存在価値を教えてくれたりした。
そんな自分を信じてくれている佐々木のためにも、環は絶対に負けるわけにはいけない。
ここで必ず勝って劣等感を完全に振り払うんだ!
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