能力者の都市で僕が最強の"覇王"になるまで。

ミースケ

文字の大きさ
23 / 34

#23

しおりを挟む
『え~、現在救助活動を行っております・・・』
10分後、流石に異変を感じたのか、大会の運営側の救急隊が2人の救助に向かい出した。
「大丈夫か、これ」
「おいおい、流石に星乃家の兄妹揃って死亡はマズくないか?」
救助隊員がそんな会話をしつつ、環が作った穴を埋めている瓦礫を1つ1つ粉々にしてどんどん掘り進めていく。
「ん?」
「おい、誰かいるじゃないか!」
「ほんとだ!」
救急隊員の1が瓦礫の中に人の姿を発見し、その場にいる全員がそこに注目する。
「これは、星乃碧か・・・?」
それは、星乃碧の背中だった。
それも、どうやら"何か"を守るように覆いかぶさる体制で固まっている。
「・・・んな!?」
どうやら碧は意識を失っているようで、そんな碧を瓦礫の中から引き上げると、そこから出てきたのは・・・
「こいつ、妹を守ってたのか!?」
そこには、同じく意識を失っているらしい環が倒れていた。

『さて、星乃碧VS星乃環の兄妹対決は、まさかの引き分けだぁ!』
碧と環の両者が気を失っていたことから、この試合は引き分けとなった。
『そして、2区校と4区校の両チームに戦える者が居なくなりましたが・・・』
「おい・・・ちょっと待てよ・・・」
実況の人がそう言いかけたことで、そんな声が響き渡る。
「俺はまだやれるぞ・・・」
そこには松葉杖をついてステージに立つ京夜の姿があった。
『なんと!負傷して参加不能かと思われていた東近京夜選手がステージに立っている!』
そして、4区校にはもう戦える選手が残っていない。
つまり・・・
『今大会の優勝校は第2区能力者高校だぁぁぁぁ!』
なんとかして優勝した2区校だった。
それに会場は大きく沸き立ち、とんでもない大きさの歓声が響き渡る。
だが、それを喜べる余裕のある2区校の選手は誰1人としていなかった。

「いや~、色々とありましたけど、なんとか優勝することが出来ましたね!」
「・・・そだね」
その後、表彰や後片付けを終えて、事務所のメンバーは帰路に付いていた。
「あれ?零さんは?」
「知らん」
「・・・知らない」
松葉杖をついている京夜を支えていた瑠衣は、零が居ないことに気がついた様子で京夜と玲奈に尋ねるが、2人とも知らない様子でそう答える。
「あんな体で1人行動して大丈夫ですかね?」
瑠衣は零が最終的に車椅子状態だったことを思い出して、少しだけ心配になるのだった。

「・・・環」
「・・・なんじゃ?」
医務室の中、先程の戦いで負傷した環と碧は互いにベッドで仰向けになり、天井を見ていた。
「お前、なかなかやるな。かなり危なかったぞ」
「・・・・・」
隣のベッドから聞こえてくるそんな言葉に、環は混乱を起こす。
なんせ、ずっと目標にしてきた兄に命を救われたのに突然認められたのだ、頭が混乱するに決まっている。
「お前はもう、俺と同等に強いな・・・」
環はそんな言葉に嬉しさを感じる。
だが、今の自分が兄と同等の強さかと言われればそれは違う。
「・・・そんなことはない!私にはお兄様の様な身体能力や経験が無い!」
だからこそ環は兄のその言葉を否定する。
ずっと目標にしてきた兄だからこそ、自分なんかと同等で良いわけが無いのだ。
しかし碧はそんな妹の言葉に、目を閉じながらこう返す。
「あの時、お前が落ちたのは外部からの干渉があったせいだ。それが無かった場合、お前は圧倒的に有利だったし、後はどちらが先に能力が使えなくなるかだ。身体能力が関係ない状態に持ち込めたってことはお前の作戦通りだろう?」
碧は今度は目を開きながら環の方を向きながら続けて言う。
「お前にはお前の強さがある。俺はお前みたいに頭が良かったり、リーダーシップがあったりするわけじゃない。いいか?戦いは"いかに自分の得意を押し付けるか"だ、そしてお前にはそれが出来る力がある。そういう意味で俺とお前は同等なんだよ、なにも強さだけが全てじゃない。分かったか?」
「・・・分かりました」
「だからお前は俺に劣等感を感じる必要はないんだ。いいか?」
そんな兄の言葉に、環は救われたような気がした。
そしてそれは、これまでの人生で、兄に追いつくためだけに頑張って来た環にとってこれ以上ない喜びだった。
「あれ・・・?」
そこで環は、自分が涙を流していることに気がつく。
「嬉しい・・・」
環はそう呟きながら、その涙を袖で拭き取るのだった。

「あんたらだろ?環を撃ったの」
薄暗い部屋の中、僕は男の首にナイフを当てて、そう問いただす。
目の前では、この男の妻らしき女性が震えている。
どうやら恐怖のあまり声が出ないらしい。
「護衛はどうした!?10数名程有能な奴らがいただろ!?」
「うるさいな~、ぶっ殺すぞ?」
首にナイフを当てられてるにも関わらず騒ぎ出す男に対して、僕は適当な脅し言葉を言っておく。
護衛なんて、僕がここに来れてる時点で全滅してるなんてこと分かりきってるだろうに。
「目的はなんだ!?金か!?」
男は命乞いをするように、そう叫んでいる。流石緑間家と同格の"星野家の頭首"、優香さんとちがって品性はないが金はいくらでもあるらしい。
だが生憎、僕の目的は金なんかじゃない。
「僕がキレてるのはお前らが環を妨害したからだ。僕が求めてるのは"今後一切環の妨害をしない事と、"僕らに直接危害を加えない上、今日の僕らの行いを誰にもバレないようにする事"だ」
「・・・ああ、分かった!だから助けてくれ!」
男はすぐにそれに同意する。
「母親!・・・あんたもだ。いいか?」
「・・・はい」
男の妻は、僕の言葉に震えながらも絞り出した声でそう答える。
「最後に。お前ら、今更環も碧と同じ扱いをしろとは言わないが、少しぐらい関わってやってもいいんじゃないか?」
と、そんな言葉を言いながら僕は男の首からナイフを離し、車椅子を動かして部屋を出ていく。

「これで良かったか?」
「はい」
部屋を出た所にいた佐々木さんに、僕はそんなことを尋ねる。
「わざわざありがとうございます。危険な目に合わせてしまって」
「まあ大丈夫ですよ、僕にも思うところがありましたし」
数十分間前、環と碧の見舞いを終え、先にみんなと事務所に帰ろうとしていた僕は、佐々木さんにある頼み事をされた。
それは、環の親を脅すことだった。
なんでも2区対4区の最終試合、何故か環が突然穴に落ちて行ったのだが、それが星乃碧を勝たせたかった環の親の手によるものだということが分かったらしい。
その時、偶然近くに居合わせた僕に佐々木さんは「自分の作戦に協力してください」と頼んできた。
僕にも思うところはあったし、喜んで協力することにして、現在に至る訳だが。
「あの方々もさぞかし焦った事でしょうね、なんせ優勝チームのメンバーがナイフを持って脅してくるんですから」 
「ハハッ!それもそうだな」
そこで僕は佐々木さんに視線を向けて1つ尋ね事をする。
「ところで、結局環は劣等感を振り払う事ができたんですかね?」
その質問に、佐々木は笑みを浮かべながらこう返す。
「はい・・・大丈夫です!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...