能力者の都市で僕が最強の"覇王"になるまで。

ミースケ

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#24

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色々あったあの大会から数週間。
もうすぐ1学期が終わり、夏休みに入ろうとしている時期だが、僕は相変わらず学校の屋上にあるベンチで昼寝をしていた。
「はぁ、お前はいつもここにいるな・・・」
呆れた様子のそんな声に僕は目を覚まして身体を起こす。
「ここは僕のお気に入りスポットだからな!」
そんな事を言いつつ声のした方向に視線を向けると、そこには手作り弁当らしきものを両手に持った環の姿があった。
「なに、ここで昼飯食うの?」
「そうじゃ、悪いか?」
なるほど、確かに今はちょうど昼休みだし、ここは少し暑いが日当たりもいいため、昼飯を食うのにもいいだろう。
「いや、全然いいよ。屋上はみんなのものだからな」
「そうか、では」
すると環は僕の隣に座ってくる。
・・・なんというか、近いな。
「ほれ、これはおまえのじゃ」
「え?」
環に弁当を手渡され、僕は思わず驚いてしまう。
「なんで?・・・いやありがたいけどね!?」
実際、僕はまだ昼飯を買いに行く前だったので普通に嬉しいのだが、こうも突然渡されてしまうと、驚きや疑問の方が先に来てしまう。
「・・・佐々木のやつがお前へのお礼じゃとよ。お前ら面識あったのか?」
「まあ・・・少し手伝いをしただけだ」
ああ、それなら納得だ。
佐々木さんに頼まれた事は環には言わないほうが良いと思い、僕は少し言葉を濁して答える。
そしてそのまま、僕と環は2人とも黙って弁当を食べだす。
佐々木さんが作った弁当は美味かった、いやもう普通に店で出しても遜色ないくらい美味かった。
そういえば佐々木さんは環の使用人?をしているんだったっけな。
それならこんなに料理が美味いのも納得だ。
「・・・ありがとな、零」
僕がそんな事を考えていると、突然環からそんな感謝の言葉が飛んできたため、再び困惑してしまう。
「何がだ?」
「・・・なんでもない!」
環はそう言って再び黙って弁当を食べだしてしまう。
でもまあ、なんというか・・・「誰かと一緒に昼飯を食うのも悪くないな」と思いつつ、僕も弁当を食べるのだった。

「空がキレイだな~」
「そうじゃな」
数分後、弁当を食べ終わった僕たちは、特にすることも無いのでボーとしながら空を見上げていた。
今の天気は雲一つない晴れ、7月に入り気温が高くなって来ているが今日は風が吹いていていい感じに涼しい。
「そういえば、零はなぜそれほどの力を手に入れようと思ったんだ?強くなるのには何かしら理由があるものだろう?」
「あ~まあ色々とあってな・・・」
僕が質問にそう答えると、環は少し気まずそうな顔をして聞いてくる。
「もしかして、大会で言われてた事に関係あるのか?」
「・・・そうだな」
僕は大会での杉野との会話を思い出しながらそう答える。
「僕の母親さ、あの事件で死んじゃってな・・・その事件が起こったこの地に能力者の都市はできた。杉野は遠くから引っ越して来た人間で、あの"地獄"を直接見たわけじゃない。だからそんなやつに僕の親の事を悪く言われるのは腹が立つんだよな・・・」
「そうだったのか・・・」
「あの事件で僕は母親を守れなかった。だからもうそんなことにならないように鍛えたんだ。まあ結局暴走して仲間を傷つけてるんだけどな」
そう僕が言ったところで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

「零、一緒に帰らないか?」
学校が終わり、僕がいつものように校門を出て事務所に行こうとしていると、環から声を掛けられる。
「いいけど」
特に断る理由も無かったため、僕はそれを承認する。
ていうか環の家は事務所方面にあるんだな。星乃家は事務所と反対側だが、環は事情が事情だから別居しているのだろう。
「なんで一緒に帰ろうと思ったん?」
「いや、お前と少し話したいと思ったからな」
「そうか。ていうかお前と一緒に居るのを見られたらクラスの奴らがキレだすんだよな」
「?無視すればよかろう?」
僕と環がそんな会話をしていると、環が目の前に何かを発見した様子で指をさす。
「せっかくだからクレープでも食べて行かないか?」
どうやら移動型のクレープ屋を見つけたようで、目を輝かせながら僕にそう言ってくる。
「いいぞ、何を食べるんだ?」
「メニューを見て選ぶに決まってるじゃろ!」
そんなやり取りをしながらクレープ屋の方に歩き、僕たちはメニュー一覧を見る。
「決めたか?」
「・・・私はこれにしようと思う」
僕は環が選んだクレープの写真を見て驚く。
「こんなに生クリームが・・・あ、すいません、これとこれください」
絶対胃に悪いだろと思いつつ、僕は店員さんに注文をする。
「代金1600円になります」
「はい」
僕が注文してお金を払っていると環が焦ったように肩を叩いてくる。
「いやいや、自分の分は自分で払うから!」
「いいよこれくらい、お前にはいつも迷惑掛けてるし」
「・・・そうか」
環は渋々納得した様子だったが、少し経ち、出来上がった生クリームたっぷりの最早何クレープなんだよという様なクレープを受け取る。
僕もイチゴのクレープを受け取り、近くのベンチで2人で座ってクレープを食べる。
「美味いな」
「そうじゃな」
こういう店であまり食べたことが無いのでよく分からなかったが、意外とこういうのも悪くないのではと思う。
「ありがとな」
「いえいえとんでもない」
環のお礼に、さっきの会計の事かな?と思いつつ、僕はそう返す。
あれだ、日頃の感謝というやつだ。

「じゃあまたな!」
クレープを食べ終わって、少し歩いたところで環がそう言って分かれ道を右に曲がる。
ちなみに事務所はここを左に曲がったところだ。
「おう、またな」
僕がそう返すと、環は笑顔で走り去っていく。
さて、早く事務所に行って依頼をこなさないとな。確かこのあとは1件依頼が入っているんだったな。
「・・・!」
僕がそんな事を考えつつ事務所に向かって歩いていると、背後から気配を感じる。
「・・・・・」
僕はそれに対して、素直に両手を上げる。
「あの~、もしかして怒ってますか?」
「・・・別に、起こってないし」
僕が振り返ると、そこにはプクーと頬を膨らませている玲奈の姿があった。
頬を膨らませているせいか、いつも通り無表情なのだが、いつもより可愛く見える。
「・・・零が浮気してる事に怒ってるとかじゃ全然ないし」
「浮気してないよ!?」
それは誤解だ!と思いつつも、本当に浮気してるならその時は怒ってくれと思いつつそんなツッコミを入れる。
「じゃ、さっき同級生の女とクレープを食べてたのは、デートじゃなかったって言うの・・・?」
「放課後友達と買い食いするのは別にデートじゃないと思います!」
僕がそう反論すると、玲奈は僕に近づいてきてこう言う。
「零は私と付き合ってるんだからね・・・!?」
「ああ、わかってるよ」
彼女のその表情は最高に可愛いかった。
「事務所行くぞ」
「・・・うん」
僕はそう言って事務所に向けて再び歩き出し、玲奈もそれについてくる。
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