33 / 34
#33
しおりを挟む
「・・・そうか」
部屋の中、突然入った連絡に男は身震いする。
「ようやくか・・・」
10年前あいつに敗北し、仲間に庇われて命からがら生き残った時から、復讐の為だけに生きてきた。あいつを殺して必ず死んでいった仲間の無念を晴らす。
「・・・さて、向かうか」
そんな覚悟を決めて、男は痛む身体を起こし、連絡のあった場所に向かう。
「世話になったな、風間・・・」
「・・・強いな」
京夜は少し苦しい表情を浮かべながら次々と弾丸を放っていく。
やはり問題なのは、こちら側は約30名なのに対して相手の政府軍は300名以上という絶望的戦力差だ。
前線では玲奈やナキが暴れ回っていたり、後方から京夜が狙撃でサポートをしているとはいえ、この戦力差ではかなりキツイ。
ただ政府軍とはいえ、圧倒的に強い能力を持っている者はおらず、見る限りでは戦闘特化のシンプルな能力を持つものしかいないため、相性的には悪くない。その上、地形的にも排水の陣で守る分には出入り出来る道が1つだけとかなり強く、防衛戦がやりやすいため、なんとかギリギリ持ちこたえられている。
とにかく、龍桜と直接戦闘するために向かった零と陽翔が勝ってくれなければどっち道勝ち目は無い。
「頼むぞ、零・・・」
京夜はそんな事を呟きつつ、進行してくる敵に弾丸を放っていく。
「うおぉぉぉぉ!高けぇぇぇ!」
「・・・うるさい」
僕と陽翔は、陽翔の部下である響花と言う名の女性が《鳥化》によって鳥になった姿の足にぶら下がって空を飛んでいた。
確かに地上で玲奈たちが暴れ回っている今、上空からの接近には気づかれにくいだろう。それでもある程度接近すれば気づかれてしまうため、そこからは地面に降りて龍桜を探す。
・・・というのがこの作戦な訳だが。
「ここさ、高さ何mくらい?」
「知らんが、100~200mくらいじゃないか?」
「着地に失敗したら余裕で死ねるな・・・」
響花に聞こうと思ったのだが、流石に僕と陽翔の2人を持って飛んでいるため、そんな余裕は無さそうだ。
「黒田から貰ったこのボックスを着地開始前に、地面に思いっきり投げてこっちのボックスでワープすれば安全に着地出来る」
「便利だな、その能力」
黒田・・・恐らく工場内で僕が倒したやつだろう。多分ボックスを作り出して、そのボックスとボックスの間を繋げることが出来るという能力なのだろう。その上僕を閉じ込めたことから、その中に人も入れるようだ。
かなり便利な能力だなと思うが、恐らく有効距離や人数制限などの問題で全面的に撤退は出来ず、かつこの状況でならここに残って戦う方が龍桜を倒せる確率が高いため、逃げることはしないのだろう。
「降りるぞ」
「おう、死ぬんじゃねぇぞ?」
「誰に言ってんだ。お前には見せて無いが、奥の手もある。簡単には死なねぇよ」
なるほど、僕が取り引きを持ち出す直前に何かしようとしていたのは恐らくその"奥の手"とやらを発動しようとしていたのだろう。それがどんな物かは分からないが、上手く刺さる事を期待しよう。
「そうか、じゃあ大丈夫だな!」
「響花、ここまでありがとな。俺たちがボックスの中に入ったら拠点に戻っていてくれ」
そう言うと、陽翔はボックスを下方に投げて、もう片方のボックスを取り出す。
そしてそのボックスに僕と陽翔が触れると、その中に吸い込まれていき、先程も見た暗い空間の中に移動する。
「さ~て、暴れますかね」
こうして、僕と陽翔は敵陣の中心へと入り込んで行くのだった。
部屋の中、突然入った連絡に男は身震いする。
「ようやくか・・・」
10年前あいつに敗北し、仲間に庇われて命からがら生き残った時から、復讐の為だけに生きてきた。あいつを殺して必ず死んでいった仲間の無念を晴らす。
「・・・さて、向かうか」
そんな覚悟を決めて、男は痛む身体を起こし、連絡のあった場所に向かう。
「世話になったな、風間・・・」
「・・・強いな」
京夜は少し苦しい表情を浮かべながら次々と弾丸を放っていく。
やはり問題なのは、こちら側は約30名なのに対して相手の政府軍は300名以上という絶望的戦力差だ。
前線では玲奈やナキが暴れ回っていたり、後方から京夜が狙撃でサポートをしているとはいえ、この戦力差ではかなりキツイ。
ただ政府軍とはいえ、圧倒的に強い能力を持っている者はおらず、見る限りでは戦闘特化のシンプルな能力を持つものしかいないため、相性的には悪くない。その上、地形的にも排水の陣で守る分には出入り出来る道が1つだけとかなり強く、防衛戦がやりやすいため、なんとかギリギリ持ちこたえられている。
とにかく、龍桜と直接戦闘するために向かった零と陽翔が勝ってくれなければどっち道勝ち目は無い。
「頼むぞ、零・・・」
京夜はそんな事を呟きつつ、進行してくる敵に弾丸を放っていく。
「うおぉぉぉぉ!高けぇぇぇ!」
「・・・うるさい」
僕と陽翔は、陽翔の部下である響花と言う名の女性が《鳥化》によって鳥になった姿の足にぶら下がって空を飛んでいた。
確かに地上で玲奈たちが暴れ回っている今、上空からの接近には気づかれにくいだろう。それでもある程度接近すれば気づかれてしまうため、そこからは地面に降りて龍桜を探す。
・・・というのがこの作戦な訳だが。
「ここさ、高さ何mくらい?」
「知らんが、100~200mくらいじゃないか?」
「着地に失敗したら余裕で死ねるな・・・」
響花に聞こうと思ったのだが、流石に僕と陽翔の2人を持って飛んでいるため、そんな余裕は無さそうだ。
「黒田から貰ったこのボックスを着地開始前に、地面に思いっきり投げてこっちのボックスでワープすれば安全に着地出来る」
「便利だな、その能力」
黒田・・・恐らく工場内で僕が倒したやつだろう。多分ボックスを作り出して、そのボックスとボックスの間を繋げることが出来るという能力なのだろう。その上僕を閉じ込めたことから、その中に人も入れるようだ。
かなり便利な能力だなと思うが、恐らく有効距離や人数制限などの問題で全面的に撤退は出来ず、かつこの状況でならここに残って戦う方が龍桜を倒せる確率が高いため、逃げることはしないのだろう。
「降りるぞ」
「おう、死ぬんじゃねぇぞ?」
「誰に言ってんだ。お前には見せて無いが、奥の手もある。簡単には死なねぇよ」
なるほど、僕が取り引きを持ち出す直前に何かしようとしていたのは恐らくその"奥の手"とやらを発動しようとしていたのだろう。それがどんな物かは分からないが、上手く刺さる事を期待しよう。
「そうか、じゃあ大丈夫だな!」
「響花、ここまでありがとな。俺たちがボックスの中に入ったら拠点に戻っていてくれ」
そう言うと、陽翔はボックスを下方に投げて、もう片方のボックスを取り出す。
そしてそのボックスに僕と陽翔が触れると、その中に吸い込まれていき、先程も見た暗い空間の中に移動する。
「さ~て、暴れますかね」
こうして、僕と陽翔は敵陣の中心へと入り込んで行くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる