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第5話 董卓さん、暴れる

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カオル「こ、ここは?」
なんだか‥嫌な臭いで充満している‥
向こうでは水浴びをしている音と、気味の悪い鼻歌が聞こえる

マザー「かわいい、かわいい、人間さん♡ ギュッとしてチュッとしていただきます♡かわいい、かわいい人間さん、今夜はわたしとランデブゥー♪」

カオル「こ、怖い‥な、何なんだろうか‥」

シャッ

カーテンが開くとそこには、バスタオルを巻いた緑色の大きなゴブリンが立っていた

マザー「あらぁ、起きたのね♪かわいい人間さん!わたしの方は準備オーケー、バッチリよ♡さぁ、あなたも水浴びして綺麗にしましょうね♪」
緑色のゴブリンが僕に向かってくる‥
手足が縛られているせいで逃げようにも逃げられない‥、そうだ、杖は⁉︎
あぁ、杖は厳重に木に縛られてる‥
こうなったら、やけくそで呪文を唱えてみよう‥

カオル「大いなる風の神よ、われに風をまとわせたまえ‥!」
マザー「‥何も起きないわね!単なるはったりだったのかしらね。それもかわいいわ♡ギュッてしてチューしてあげる♡」
やっぱりデタラメな呪文じゃ駄目だ!
つ、捕まる!

バシュ!

マザー「いたぁーい!だれよぉー私の愛の時間じゃまするのぉわぁ!!」

董卓「わしのカオル殿に触るでない‥!」
カオル「董卓さん!」

シュッ

董卓「カオル殿、怪我はないか?」
カオル「だ、大丈夫です!なんともありません!」
董卓「よ、良かった‥」
董卓「ここはわしに任せて、奥にいるエルフという種族の者を守っていて下され。先程、ゴブリンに襲われそうになった所を助けたのじゃ。」
カオル「‥董卓さん、分かりました!この杖さえあればなんとか出来ます!」
董卓「ふむ、頼んだぞ」
カオル殿はエルフの元に走って行った

董卓「さて‥お前はどうするかのぉ」
マザー「ブフフフ、またまた人間が現れた!それも、イケメンじゃないのさ♪私とランデブーしましょう♡♡♡」
マザーが重い巨大で飛び掛かってきた

ズガン!

マザー「なんで逃げるのよぉー!」
董卓「当たり前だろ、潰れるわ!」

董卓「‥カオル殿にした仕打ちは許しがたいが、わしは善良な英雄になるのじゃ。先程、わしの事をイケメンって言ってくれた事も含めてお前に機会を与えてやろう」

マザー「なに、なに、なにー!」
董卓「今後一切、他の種族を襲わずに静かに暮らすと約束するなら助けてやる」

マザー「うーん‥‥そもそもさ、私に勝てるつもりなの?」
マザーは目にも止まらぬ速さで殴りかかってきた!
防御したが抑え切れず、吹き飛ばされた

ドガッ
董卓「がはっ‥」
マザー「所詮、人間ごときがわたし達に逆らうなんて舐めすぎ♪今度はわたしが舐め舐めしちゃうわよ♡♡♡」
マザーは大きく拳を振りあげ、そのまま董卓に打ち下ろした
董卓「‥残念だ‥」

ヒュンヒュンヒュン

バシュ

ゴロゴロ‥

董卓「慈悲を与えても無駄か‥所詮、怪物という事か‥」
マザーは光となって消えていった‥

カオル「だ、大丈夫でしたか!」
董卓「余裕だ‥」
‥この鎧なかったらちょっとやばかったなんて言えない!
カオル「ゴブリンの死骸はないですね?」
董卓「そうなのじゃ、何故か光になって消えていく‥」
エルフ「あ、あの‥」
董卓「おお、おぬし、大丈夫であったか?」
エルフ「は、はい!助けていただきありがとうございます!ほんとにどうなる事かと‥」
董卓「はっはっはっ、弱きを助けるのが董卓様じゃ!」
エルフ「董卓様‥あ、あのこれを!」
董卓「なんじゃ、これは?」
エルフ「エルフの髪飾りです。これがあればエルフの村に入れてくれます。いつか必ず来てくださいませ!」
カオル「とりあえず、妖精の村に帰りましょうか?エルフさんも疲れてるみたいだし」
エルフ「あ、失礼致しました。名前名乗ってませんでしたね、アリアナと申します」
カオル「僕達も名乗ってなかったね、僕はカオル、こちらは改めて董卓さんです。宜しくお願いします」
挨拶を交わし、董卓一行は出口へと向かうのであった

出口付近

ゴブリン「よくもマザーを‥!許さない!」
ゴブリン達がワラワラと洞窟の外から入ってくる
董卓「めんどいがやるしかないのぉ‥アリアナ殿とカオル殿は下がっておれ!」
ヒュン
ヒュン
どんどん押し寄せてくるゴブリン達をまるで、風を切るように鮮やかに切り倒していく‥
その姿は伝承に違わぬ、力の神のようであった‥

あっという間にゴブリン達を葬りながら出口に着いた

董卓「ガッハッハ、肩慣らしにもならんわ!」
肩で風を切りながら董卓は外に出ていった
ゴブリン「ケケッ!油断したな!」
董卓が見上げると多数のゴブリンの弓部隊が矢を構えていた
ゴブリン「マザーのカタキ!」
これが合図だったのか、一斉に矢が放たれた
董卓「!しまった!」
董卓は死を覚悟して目をつぶる‥
何故だか痛みはなく、暖かい空気で包まれている‥
恐る恐る目を開けてみた‥
董卓「な、なんじゃこれは?」
目の前には多数の矢が光の膜に刺さっている
カオル「間に合った!」
董卓「これはカオル殿が?」
カオル「はい!董卓さんを守りたい一心で唱えたら出来ました!」
アリエル「凄いです!これは加護の魔法!そんな簡単には出来ないんですよ!」
わしらは嬉しさのあまり、きゃっきゃっし始めた!
カオル殿に守られた‥天にも昇る気持ちじゃ‥
そう天を仰いだ‥
あっ‥
董卓「すまない、お前ら忘れてたわ。どうするかのぉ?今後、誰も襲わないと誓えば見逃してやってもええぞ」
ゴブリン「‥‥逃げろ!」
カオル「えい!」
カオルが唱えると空から光の輪が降りてゴブリン達を縛り上げた!
カオル「なんだろう‥僕なんでも出来る気がしてきた!」
董卓はゴブリンを睨みつけながら最期の脅しをかける
董卓「‥で、どうする?死ぬか、それとま誰も襲わず、わしに服従するか選べ。」
ゴブリン「あ、あなた様に服従致します!」
董卓「分かった、だがもう一つ条件だ。アリアナ殿にした仕打ち、アリアナ殿が許すかどうかじゃ。」
董卓「いかが致すか?アリアナ殿?」
アリアナ「‥私は董卓様のおかげでまだ何もされておりません。ただ、過去に私達にした事は許しがたい」
董卓「ふむ、であろうな。では、処刑致す!」
董卓は剣を振りかざす!
アリアナ「ま、待ってください!いくらこやつらを消した所で、過去の因縁は消せませぬ‥ならば、董卓様の下でこの世界の為に働かせて下さい!」
董卓「アリアナ殿‥あなたは強いお人じゃ。」

董卓「‥よし、これよりお前らはわしの配下じゃ。わしに逆らえば命はないと思え!」
ゴブリン「へ、へい!」
‥あっ、癖で服従させちゃった!
ま、まぁ、誰も襲わないなら結果オーライかな。あっ、せっかくならさらに付け加えとこう。
董卓「そして、ここにおるカオル殿はわしの最高の友である。カオル殿の命令も絶対じゃ。そして、アリアナ殿はおまえらの命の恩人じゃ、その事ゆめゆめ忘れるでないぞ!」
ゴブリン「は、ははぁ!」
ゴブリン達はとりあえず、カオル殿が魔法で作った砦に住まわせた。
念の為、カオル殿が魔法で作ったロボット?という物を見張りにつけた。
これから、農作業も覚えさせ、他の種族を襲わなくて生きて行けるようにしてやらんと。
‥カオル殿、何でも出来すぎだろう!

カオル「すいません、董卓さん、おぶってもらって‥魔法使いすぎました‥」
董卓「何でも出来るけど、まだカオル殿の力は追いついていないという事じゃの。共に精進しようぞ!」
カオル「は、はい!」
カオル殿の体温が背中に感じられる‥
華奢だと思ったが結構思いのぅ‥
‥なんか胸がソワソワするのぉ‥

こうして董卓一行は妖精の村に帰ってきた

フィル「おぉ、董卓殿、無事お帰りになられて何より!か、カオル殿は大丈夫ですか⁉︎」
董卓「心配いらん、魔法を使い過ぎで
寝ているだけじゃ」

アリアナ「初めまして、村長殿。私はエルフのアリアナと申します。董卓殿、カオル殿に助けていただきました」

フィル「な、なんとエルフ族の方か!エルフ族もわしらが外に出られた時も全滅の危機と聞いておったのでもう出会えないと思っておりました!」

アリアナ「私もゴブリンに捉えられ死ぬ運命にありました。私も私の村以外のエルフに交流が無かったので、私の村が最後のエルフの村かもしれません」

フィル「そうであったか‥」
フィル「‥お疲れであろう、我が家へ向かいましょう」
わし達は村長の村へと向かう事にした
道中、妖精のわしらを見る目は今までとは違った
みな希望に満ちている‥!

村長宅
フィル「まずは御礼を‥よくぞ、よくぞゴブリンどもを成敗してくれました!これで私共も外の世界に出られます!」
董卓「ふむ、喜んでもらえて何よりじゃ。」
董卓「‥だがな、マザーという者がおってそやつがここ周辺を仕切って多種族を襲わせていたみたいだ。ゴブリンはかなりの知能を有していた」
フィル「そ、そんな‥この数十年でそんな進化を‥」
董卓「マザーは倒したからもう安全じゃ。それにゴブリンは多種族をもう襲わん」
フィル「はて、どういう事ですじゃ?」
董卓「‥勢いでわしの配下にしてしもうた、すまぬ!」
フィル「‥‥」
フィル「こ、これは伝承の通りじゃ‥まさか、ほんとに‥疑ってしまって申し訳ございません!」
董卓「ん?どういう事じゃ?」
フィル「伝承は色々ありまして、『力の神知の神はどんな種族をも従え、王になる』と‥」
董卓「いやでも、あれは前世の癖で‥」
フィル「謙遜めされるな。普通は出来ませんよ!」
董卓「‥まぁ、いいか」
と、とりあえず怒られなくてよかったぁ‥

董卓「あっ、それと何故か、わしが斬るとゴブリン共が光になって消えたのじゃが、あれはどういう仕組みじゃ?」
フィル「さ、さらに光の力もお持ちで⁉︎」
董卓「また伝承か‥?」
フィル「さよう。力の神に斬られた者は浄化され、次世は神聖なる生き物としていきるとされています。」
董卓「そうなのか‥?じゃあ、暴れても問題はないな、ガッハッハ!」
フィル「‥あくまで今世で邪悪な者だけです。こういう伝承もあります。『力の神暴虐を尽くす時、知の神が諌め封印する』と‥」
董卓「‥カオル殿に叱られたくないな。肝に命じる」
フィル「董卓殿もお疲れであろう、宿でゆるりとして下され」
フィル「シャミ、キャミ、カオル殿とアリアナ殿も宿へお連れしなさい」
キャミ「はい!」
アリアナ「宿までありがとうございます‥」
フィル「アリアナ殿、いつか私達も自由に行き来できるといいですな」
アリアナ「はい‥村に帰り次第、みなと協力して村交を始めます!」
アリアナ「それではおやすみなさい」
フィル「ごゆるりとお過ごしください」

シャミ・キャミ「連れていったよぉ~」
フィル「ふむ、ご苦労様」
シャミ「ねぇ、村長、最後の伝承って嘘だよね‥?」
キャミ「うん、初めて聞いた!」
フィル「フォッフォッフォ、確かに嘘じゃ。だが、あやつの前世を考えると、嘘をついた方がいいと思ってな」
シャミ「確かにね‥シャハハ!」
キャミ「でも、雰囲気は変わったわね!話しかけやすいわ、キャハ!」
フィル「よもや、ほんとにこの世界を救ってくれるかものぉ‥期待して待ってみよう」

第5話 完
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