【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん

文字の大きさ
6 / 40

アルバス・メイデン侯爵令息はヒョロ長い魔法オタクな24歳(独身)

しおりを挟む
 アルバスは24歳。

 銀色の長い髪を無造作な三つ編みにして後ろに流している。

 身長は187センチほどあってセイデスよりも高いが、とにかく細い男だ。

 瓶底のようなメガネをかけ、猫背が気になるヒョロッとした体に白衣を羽織っている。

 白衣の裾を、えっ? そこに膝があるんですか? と、驚かれるような高い位置から揺らして近付いてくるアルバスは独身だ。

 元々の素材としては悪くないのだが、見た目について無頓着な男であることは一目で分かる。

 貴族らしさの欠片も無い服装に、無造作に束ねた髪は何時も何処かが跳ねていて、アルバスの興味が外見には無いことを如実に現わしていた。

「えっ? えっ? トレーシー君ッてば、王城に住むの? えっ? ずっっっっっと王城に? えっ? ずっっっっっっっと? えっ? なんで? えっ?」

 落ち着きなく早口でまくし立てるアルバスは背中を丸めて顔を二人に近付けた。

 彼には、興味深い話題であればあるほど猫背が酷くなって早口になる癖があった。

 そのため今現在、彼の口調はかなり早回しだ。

「アルバスさま。落ち着いて下さい」

「いや、だってトレーシー君が……えっ? えっ?」

「そうですよ、アルバス先輩。私が家を出たからって……アルバス先輩が慌てる必要なんて無いですよね?」

「……」

(それを聞く? 聞いちゃうの? トレーシー? そーゆー疎いトコが、オレは心配なんだよっ!)

 セイデスは心の中で毒づいた。

「いや、そんなことはないっ。キミが王城に住むなら。いつでも魔法談義が出来ちゃうでしょう? 私もココに住んでるようなものだから。帰りの時間も気にしないで話が出来るよ。えっ? それって、どんな天国?」

「もう、アルバス先輩ってば。大袈裟~」

 アルバス・メイデン侯爵令息がトレーシーに気がある事は、傍から見ていれば明らかだ。

 なのに、アルバス本人も、トレーシーも、鈍くて鈍くて気付いていない。

 だから、セイデスは心配になるのだ。

「えっ? だって、トレーシー君が職場に住むって言うから……て、ことは研究し放題、議論し放題だけど……えっ? なんで? だって、トレーシーは婚約もしてたよね?」

「あはっ。まぁ、そう思いますよね。アルバス先輩。実は家を追い出されちゃいまして。ついでに婚約も破棄されちゃったんで。仕方ないので今日から王城に住みま~す」

「……っ⁈」

(それ言っちゃう? 言っちゃうの? トレーシー? そーゆー危機感が無さ過ぎるトコが、オレは心配なんだよっ!)

「えっ? 婚約破棄? えっ? て、事はトレーシー君はフリー? えっ? 研究し放題な上にフリー? えっ? えっ? いいな、いいな。いや、婚約者が居ないのは私も一緒か? おっ? お揃いだね?」

 セイデスの心配通り、アルバスは興奮状態である。

 チッと心の中で舌打ちするセイデスだがアルバスは危険人物というわけではない。

 挙動が不審な魔法オタクではあるが、侯爵令息であり独身。

 現在は婚約者もいないアルバスは今注目のお買い得物件なのだ。

 しかも社交界では人気が高い。

 職場では魔法オタクな24歳独身の瓶底メガネをかけた猫背な男なのだが、キチンと着飾ったアルバスは冷たい印象を与えるほどの美形で通っている。

 レンズの厚いメガネは研究中の事故に備えて目を保護するために掛けているだけで視力が悪いわけでもない。

 当然、社交の場に出る時にはメガネを取る。

 するとそこに現れるのは、青い目をした銀髪のスラリと背が高い貴族男性。

 興味のない話には口調がゆったりになる為、社交界では美貌と物憂げなゆったり喋りで有名だ。

 侯爵令息だが次男というのもポイントが高い。

 爵位にこだわる令嬢たちではあるが、義両親を煙たがるというのは万国共通の事象である。

 魔法省エリートであるアルバスは高収入であるし地位もある上、メイデン侯爵家が複数の爵位を所持しているのは有名な話だ。

 社交の場に殆ど出ないトレーシーは知らないが、それらの理由によりアルバスはモテる。

 もの凄く、モテる。

 令嬢同士の醜い争いが起きるほど、モテる。

 しかも、その事実に本人全く気付いていない凶悪さ。

 アルバス・メイデン侯爵令息本人は人畜無害であるが、全くもって罪な男なのである。

(アルバスさまは他人の気持ちにも自分の気持ちにも鈍いし。トレーシーは他人からの好意に対して鈍いし。いや、トレーシーに関しては、悪意に対しての過剰防衛の可能性も……ああっ! ホント心配っ!)

 頭を抱えるセイデスの前でトレーシーとアルバスは、無邪気に仲良く盛り上がっていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。 カナリヤ・ハルデリス カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。 そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。 国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。 それからカナリヤはある事により国外追放されることに… しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか… 壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇 平和な国にも裏があることを皆知らない ☆誤字脱字多いです ☆内容はガバガバです ☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません

処理中です...