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結婚式
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アルバスとトレーシーの結婚式が行われたのは、秋の良く晴れた日。
メイデン侯爵家次期当主の結婚とあって、式は大聖堂で厳かに行われた。
トレーシーは胸元にVの字の襟を付けたようなデザインの真っ白なウエディングドレス。
アルバスは金刺繍の美しい真っ白な礼服。
ウエストあたりまではトレーシーのすらっとした細身の体に吸い付くようなデザインになっているドレスは、足元に向かって広がっていくAラインを描いている。
スッと背筋を伸ばし長い後ろ裾をひきながら歩くトレーシーは、日焼けしたような淡い褐色の肌とあいまって凛とした気品を漂わせていた。
高く結い上げた赤毛には、銀色が煌くヘッドドレス。
長いチュールレースのベールが揺れながらついていく。
赤味の強い茶色の瞳は真っすぐ前を見て揺らぎが無い。
アルバスは銀の髪を美しく編み、金刺繍の美しい白いコートの上に垂らしている。
普段はだらしくなく猫背で歩く彼も、結婚式ともなれば話は違う。
シャンとした綺麗な姿勢で凛々しくトレーシーをエスコートして歩いていく。
聖堂の高い天井の下、赤い絨毯の上をゆっくりと進む二人の姿を、両脇に置かれた長椅子に座って参列者は見送っていた。
紺色の礼装に身を包むトレントの隣には、淡い紫のケープドレスを着たエセルの姿があった。
「アルバスは身体強化をかけているわね」
「結婚式で身体強化使ってる人、初めて見たよ」
トレントは呆れたようにつぶやき、通路側に座っているエセルはすぐ近くに来たアルバスをマジマジと見ていた。
トレントを挟んだ反対側には、明るい青の礼装姿のセイデスが座っている。
セイデスがトレントに顔を寄せながらささやく。
「参列者、多いですよね?」
「そうなのよ、セイデス。ただでさえ侯爵家のお式ということで参列者が多いのに、我が研究開発部では職員の結婚式が盛大な実験場になるのがお約束だからね」
「はぁ……」
「あ、ちゃんと空気は読むから、お式ではやらないわよ? この後の披露宴が実験大会になるだけよ?」
それが何か免罪符になるのか? と、不思議に思いながらもセイデスは披露宴が楽しみになった。
ザワザワとうるさい参列者席に気を取られることなく、会場の中央に敷かれて赤い絨毯の上を緊張した面持ちのトレーシーとアルバスは歩いていく。
ステンドグラスを通って降り注ぐ陽の光がキラキラと華やかに二人の行く先を照らす。
辿り着く先にあるのは署名台。
その上に置かれた結婚証明書にサインを済ませれば、晴れてトレーシーとアルバスは夫婦となる。
(私を生んですぐ亡くなったお母さま。私を育ててくれた曾祖母さま。私はひとりでココまでこられたわけじゃない。だけど、私は私の道を行くわ)
柔らかな筆致でサラサラと端正なサインをするアルバスの目は少し潤んでいて少し赤い。
迷いのない眼差しを結婚証明書に向けたトレーシーは、力強いペン使いで美しく自分の名を刻む。
今この時より彼女は、トレーシー・ダウジャンではなくトレーシー・メイデンとなるのだ。
コトリとトレーシーがペンを置く音が響き、見届け人が満足そうに頷きながら結婚証明書を覗き込む。
少し高齢でアルバスとよく似た見届け人は右手を挙げ、朗々たる声で宣言する。
「ふたりを夫婦と認めますっ!」
聖堂は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
さあ、パーティの始まりだ。
メイデン侯爵家次期当主の結婚とあって、式は大聖堂で厳かに行われた。
トレーシーは胸元にVの字の襟を付けたようなデザインの真っ白なウエディングドレス。
アルバスは金刺繍の美しい真っ白な礼服。
ウエストあたりまではトレーシーのすらっとした細身の体に吸い付くようなデザインになっているドレスは、足元に向かって広がっていくAラインを描いている。
スッと背筋を伸ばし長い後ろ裾をひきながら歩くトレーシーは、日焼けしたような淡い褐色の肌とあいまって凛とした気品を漂わせていた。
高く結い上げた赤毛には、銀色が煌くヘッドドレス。
長いチュールレースのベールが揺れながらついていく。
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普段はだらしくなく猫背で歩く彼も、結婚式ともなれば話は違う。
シャンとした綺麗な姿勢で凛々しくトレーシーをエスコートして歩いていく。
聖堂の高い天井の下、赤い絨毯の上をゆっくりと進む二人の姿を、両脇に置かれた長椅子に座って参列者は見送っていた。
紺色の礼装に身を包むトレントの隣には、淡い紫のケープドレスを着たエセルの姿があった。
「アルバスは身体強化をかけているわね」
「結婚式で身体強化使ってる人、初めて見たよ」
トレントは呆れたようにつぶやき、通路側に座っているエセルはすぐ近くに来たアルバスをマジマジと見ていた。
トレントを挟んだ反対側には、明るい青の礼装姿のセイデスが座っている。
セイデスがトレントに顔を寄せながらささやく。
「参列者、多いですよね?」
「そうなのよ、セイデス。ただでさえ侯爵家のお式ということで参列者が多いのに、我が研究開発部では職員の結婚式が盛大な実験場になるのがお約束だからね」
「はぁ……」
「あ、ちゃんと空気は読むから、お式ではやらないわよ? この後の披露宴が実験大会になるだけよ?」
それが何か免罪符になるのか? と、不思議に思いながらもセイデスは披露宴が楽しみになった。
ザワザワとうるさい参列者席に気を取られることなく、会場の中央に敷かれて赤い絨毯の上を緊張した面持ちのトレーシーとアルバスは歩いていく。
ステンドグラスを通って降り注ぐ陽の光がキラキラと華やかに二人の行く先を照らす。
辿り着く先にあるのは署名台。
その上に置かれた結婚証明書にサインを済ませれば、晴れてトレーシーとアルバスは夫婦となる。
(私を生んですぐ亡くなったお母さま。私を育ててくれた曾祖母さま。私はひとりでココまでこられたわけじゃない。だけど、私は私の道を行くわ)
柔らかな筆致でサラサラと端正なサインをするアルバスの目は少し潤んでいて少し赤い。
迷いのない眼差しを結婚証明書に向けたトレーシーは、力強いペン使いで美しく自分の名を刻む。
今この時より彼女は、トレーシー・ダウジャンではなくトレーシー・メイデンとなるのだ。
コトリとトレーシーがペンを置く音が響き、見届け人が満足そうに頷きながら結婚証明書を覗き込む。
少し高齢でアルバスとよく似た見届け人は右手を挙げ、朗々たる声で宣言する。
「ふたりを夫婦と認めますっ!」
聖堂は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
さあ、パーティの始まりだ。
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