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お転婆姫は怒られちゃったけど美人宰相とお会いできて満足です

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 挨拶を終えた護衛騎士団長と入れ替わるようにシェリアはサリオスの側に馬を進めた。
 馬上で視線を交わす兄と妹。
 妹はぷぅと頬を膨らた。

「遅かったじゃないですか、お兄さま」
「お前が早すぎるのだ、シェリア。我々を待てと常々言っているだろう?」
「うふん。だって、マリリン一号とのお散歩中に偶然、通りがかっちゃったんだものぉ~」
「ホントに偶然か? 宰相殿一向が通りがかると事前に情報を得ていたのでは?」
「うふぅ~ん」
「うふぅ~ん、ではないっ。大事な情報を得たら先に教えなさい」
「だってぇ~。教えちゃったら、お散歩に行くのを止められちゃうじゃない」
「それでいいのっ! 一応、キミは我が家の姫なんだから。危ないことはしちゃダメ!」
「んんぅ~ん」
「次はダメだよ」
「怒らなくてもいいのに。ねぇ~、マリリン一号」

 シェリアは馬を撫でた。
 栗色の毛並みはツヤツヤで、見た目は美味しそうだし、触れば気持ちが良い。
 撫でられた馬も気持ちよさそうに目を細めた。

「助けていただいてありがとうございます」
 
 涼やかな声に振り返れば。

 アイスシルバーの髪を緩く三つ編みにした美人宰相閣下が、スッと姿勢よく背を伸ばして立っていた。シェリアの金の瞳と紺色に銀が散る瞳の視線が交わる。アルフォードは美しく優雅にその体を折ってシェリアに向かって礼をした。

(あぁぁぁぁぁぁ。アルフォードさま。美しすぎます……気を失っていいですか?)

 シェリアは馬上でクラリと眩暈を覚えた。

(ダメよシェリア。踏ん張るのよ。気を失ってる場合じゃないわ。ココで気を失ったりしたら、次のチャンスなんてあるかどうか分からないもの。今のうちに宰相の美しいお姿を、しっかりと目に刻み付けるのよっ!)

 シェリアは腹筋を使ってガッと姿勢を正すと、目をしっかりと見開いて美人宰相をガン見した。

 サリオスは馬上からひらりと降りるとアルフォードの前に立ち一礼した。

「宰相閣下。ご無事でなによりです。私は辺境伯ダリウス・イエリオの息子、次男のサリオス・イエリオと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。私はアルフォード・ファイス。宰相を務めさせていただいています。このたびは助けて頂いてありがとうございました」
「いえいえ。役目を果たしただけです。大変な目に遭いましたね」
「噂には聞いていたので、しっかり護衛をつけてきたのですが。危ない所でした」
「んー。確かに。盗賊にしては強すぎるかな、とは思いますがね……」
「物騒ですね」
「ええ、物騒な世の中です。どうでしょう。お疲れでしょうから、よろしければ我が家にお招きしたいのですが」
「よろしいのですか?」
「はい。そちらがよろしければ、ぜひ」
「では、お邪魔させていただきます」

(あぁぁぁぁぁぁ。アルフォードさまが、家に来るぅぅぅ~⁉)

 シェリアは再びクラリと眩暈を覚えて気を失いそうになった。
 が、マリリン一号は平然と我が家へと歩を進めたので全く問題はない。

 これがシェリアの暮らすイエリオ辺境領の、わりとよくある日常の風景なのであった。
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