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第1話 ダメ男の覚醒
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オレは森兼人。
25歳の無職、子ども部屋オジサンに片足突っ込んだダメ男だ。
今も自室のベッドに転がって天井を眺めている。
ちなみにこの部屋のなかに自分の稼ぎで買った物は何1つない。
今着ているグレーのスウェットの上下だって、母さんが買ってきてくれたものだ。
優しい両親と、生意気な高校二年生の妹と一緒に、ローンが35年ほど残った家に住んでいる。
既に子ども部屋オジサンだって?
そう思われても仕方ないが、まぁオレの言い訳を聞いてくれ。
この世界は、中二になると異能が花開くと言われる世界だ。
なぜ人間が異能を花開かせちゃったかというと、宇宙人の襲撃があったり、パラレルワールドからの侵略者が出たりして戦わざるをえなくなったからである。
異能はパンパン花開き、まー大体の人間は持っているんだよね。
14歳くらいで異能は花開くので『中二病』と言われている。
で、オレの異能は開花しなかったってワケ。
はっはははー。
別にね。異能はなくても生きていけるよ?
なにせ『中二病』って言われているくらいだからね。
必須ではないわけさ。
でもさ。あった方が人生イージーモードなわけなのだよ。
挫折の始まりは大学受験に失敗したことだ。
高校は大丈夫だった。
学力に見合った近所の高校にするぅ~っと入れたんだ。
だがしかし。
大学受験は失敗しちゃったんだよねぇ~。
アレって1回失敗したら癖になるのかなぁ。
2年目も、3年目も綺麗に滑って落ちて。
さしものオレも凹んで引きこもったってワケ。
で、引きこもってたら体によくないなぁ、筋トレとかもしないとなぁ、と思い始めたのは25歳の誕生日。
家からは出るようになったものの、仕事が見つからない。
高卒、職歴ナシ、引きこもり歴アリだけどバイトくらい見つかると思うだろう?
何もないからな。
なんで求人票に異能を書く欄があるんだよっ。
あんなの差別だろ、差別。
ちなみに大人世代は異能が開花しなかった。
だからうちの両親に異能はない。
でも人生は順調だ。
……解せぬ。
「ちょっとおにーちゃん、聞こえないの⁉ 晩御飯だって!」
バンッと部屋のドアが開けられて妹が飛び込んできた。
妹の紅波だ。
ちなみに妹は異能をしっかり開花させている。
紅波の異能は炎を出せることだ。
異能の発現以降、オレと同じで真っ黒だった髪と瞳の色が赤味を帯びた以外は変わらない。
紅波は紅波だ。
オレはベッドの上で上半身だけ起こしてドアの方を見た。
無駄に発育のいい体には、モッコモコの素材で出来たパーカーとショートパンツを着ていた。
同じ素材のニーハイソックスを履いているから寒そうには見えない。
ピンクと白の横じまのモコモコホームウエアを着ても太って見えないのは若さゆえだろうか。
「もういちいち手間かけさせないでよねっ!」
紅波は、すぐにブチ切れてプンプンしてしまうピチピチギャルである。
あ、ピチピチギャルって、もう死語?
オレ、引きこもってたから分かんねーや。
「紅波ぁ~。お前、いきなり部屋に入ってくんなって言ってるだろ? オレも一応男なんだからさー」
現在、紅波は高校二年生。
難しいお年頃である。
ヤバイところを見せるわけにはいかない。
オレも男だからな。
ドア開けた途端、何やらゴソゴソいたしているかもしれないだろう?
そんな気分の夜もあるはずだ。
多分。
……アレ? 前回アレしたの、何時だっけか?
「おにーちゃんの癖に、男アピールしないでよ。キモッ!」
オレは兄として心配しているわけだが、紅波の受け取り方は違ったようだ。
「いや、お前にどうこういうのはないけど、オレだってエッチな本くらい……」
「なによ、おにーちゃんのヘンタイッ!」
罵倒するのはいい。
罵倒するのはいいが、家で異能を使うのはやめろぉぉぉぉぉぉ!
しかもその異能をオレにぶつけるのは止めろーーー!
この家は、35年ほどローンが残っているんだぞぉぉぉぉぉぉ!
紅波は右手のひらに炎の玉を作るとオレに投げつけてきた。
「えいっ!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ! 炎を投げるんじゃありませんっ!」
オレは自分に飛んできた炎を思わず受け止めた。
……ん? 受け止めた?
オレは自分の右手を見た。
手のひらの上で小さな炎のボールがゆらゆらと揺らめいている。
炎越しに紅波が、ただでさえデカい目を真ん丸に見開き、右腕ごと持ち上げて右手の人差し指で指さしながら、半開きの口を金魚みたいにパクパクさせている。
なんも聞くなよ?
オレにだって何が何だかわかんねーからな?
オレは右手のひらの上で生き物みたいにゆらゆら揺れている炎を、ポカンとして見つめていた。
25歳の無職、子ども部屋オジサンに片足突っ込んだダメ男だ。
今も自室のベッドに転がって天井を眺めている。
ちなみにこの部屋のなかに自分の稼ぎで買った物は何1つない。
今着ているグレーのスウェットの上下だって、母さんが買ってきてくれたものだ。
優しい両親と、生意気な高校二年生の妹と一緒に、ローンが35年ほど残った家に住んでいる。
既に子ども部屋オジサンだって?
そう思われても仕方ないが、まぁオレの言い訳を聞いてくれ。
この世界は、中二になると異能が花開くと言われる世界だ。
なぜ人間が異能を花開かせちゃったかというと、宇宙人の襲撃があったり、パラレルワールドからの侵略者が出たりして戦わざるをえなくなったからである。
異能はパンパン花開き、まー大体の人間は持っているんだよね。
14歳くらいで異能は花開くので『中二病』と言われている。
で、オレの異能は開花しなかったってワケ。
はっはははー。
別にね。異能はなくても生きていけるよ?
なにせ『中二病』って言われているくらいだからね。
必須ではないわけさ。
でもさ。あった方が人生イージーモードなわけなのだよ。
挫折の始まりは大学受験に失敗したことだ。
高校は大丈夫だった。
学力に見合った近所の高校にするぅ~っと入れたんだ。
だがしかし。
大学受験は失敗しちゃったんだよねぇ~。
アレって1回失敗したら癖になるのかなぁ。
2年目も、3年目も綺麗に滑って落ちて。
さしものオレも凹んで引きこもったってワケ。
で、引きこもってたら体によくないなぁ、筋トレとかもしないとなぁ、と思い始めたのは25歳の誕生日。
家からは出るようになったものの、仕事が見つからない。
高卒、職歴ナシ、引きこもり歴アリだけどバイトくらい見つかると思うだろう?
何もないからな。
なんで求人票に異能を書く欄があるんだよっ。
あんなの差別だろ、差別。
ちなみに大人世代は異能が開花しなかった。
だからうちの両親に異能はない。
でも人生は順調だ。
……解せぬ。
「ちょっとおにーちゃん、聞こえないの⁉ 晩御飯だって!」
バンッと部屋のドアが開けられて妹が飛び込んできた。
妹の紅波だ。
ちなみに妹は異能をしっかり開花させている。
紅波の異能は炎を出せることだ。
異能の発現以降、オレと同じで真っ黒だった髪と瞳の色が赤味を帯びた以外は変わらない。
紅波は紅波だ。
オレはベッドの上で上半身だけ起こしてドアの方を見た。
無駄に発育のいい体には、モッコモコの素材で出来たパーカーとショートパンツを着ていた。
同じ素材のニーハイソックスを履いているから寒そうには見えない。
ピンクと白の横じまのモコモコホームウエアを着ても太って見えないのは若さゆえだろうか。
「もういちいち手間かけさせないでよねっ!」
紅波は、すぐにブチ切れてプンプンしてしまうピチピチギャルである。
あ、ピチピチギャルって、もう死語?
オレ、引きこもってたから分かんねーや。
「紅波ぁ~。お前、いきなり部屋に入ってくんなって言ってるだろ? オレも一応男なんだからさー」
現在、紅波は高校二年生。
難しいお年頃である。
ヤバイところを見せるわけにはいかない。
オレも男だからな。
ドア開けた途端、何やらゴソゴソいたしているかもしれないだろう?
そんな気分の夜もあるはずだ。
多分。
……アレ? 前回アレしたの、何時だっけか?
「おにーちゃんの癖に、男アピールしないでよ。キモッ!」
オレは兄として心配しているわけだが、紅波の受け取り方は違ったようだ。
「いや、お前にどうこういうのはないけど、オレだってエッチな本くらい……」
「なによ、おにーちゃんのヘンタイッ!」
罵倒するのはいい。
罵倒するのはいいが、家で異能を使うのはやめろぉぉぉぉぉぉ!
しかもその異能をオレにぶつけるのは止めろーーー!
この家は、35年ほどローンが残っているんだぞぉぉぉぉぉぉ!
紅波は右手のひらに炎の玉を作るとオレに投げつけてきた。
「えいっ!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ! 炎を投げるんじゃありませんっ!」
オレは自分に飛んできた炎を思わず受け止めた。
……ん? 受け止めた?
オレは自分の右手を見た。
手のひらの上で小さな炎のボールがゆらゆらと揺らめいている。
炎越しに紅波が、ただでさえデカい目を真ん丸に見開き、右腕ごと持ち上げて右手の人差し指で指さしながら、半開きの口を金魚みたいにパクパクさせている。
なんも聞くなよ?
オレにだって何が何だかわかんねーからな?
オレは右手のひらの上で生き物みたいにゆらゆら揺れている炎を、ポカンとして見つめていた。
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