25歳の中二病 ホルダーの異能持ちのオレは武器化した老若男女を振り回す

天田れおぽん

文字の大きさ
1 / 4

第1話 ダメ男の覚醒

しおりを挟む
 オレは森兼人けんと
 25歳の無職、子ども部屋オジサンに片足突っ込んだダメ男だ。
 今も自室のベッドに転がって天井を眺めている。
 ちなみにこの部屋のなかに自分の稼ぎで買った物は何1つない。
 今着ているグレーのスウェットの上下だって、母さんが買ってきてくれたものだ。
 
 優しい両親と、生意気な高校二年生の妹と一緒に、ローンが35年ほど残った家に住んでいる。

 既に子ども部屋オジサンだって?
 そう思われても仕方ないが、まぁオレの言い訳を聞いてくれ。

 この世界は、中二になると異能が花開くと言われる世界だ。
 なぜ人間が異能を花開かせちゃったかというと、宇宙人の襲撃があったり、パラレルワールドからの侵略者が出たりして戦わざるをえなくなったからである。

 異能はパンパン花開き、まー大体の人間は持っているんだよね。
 14歳くらいで異能は花開くので『中二病』と言われている。
 で、オレの異能は開花しなかったってワケ。
 はっはははー。

 別にね。異能はなくても生きていけるよ?
 なにせ『中二病』って言われているくらいだからね。
 必須ではないわけさ。
 でもさ。あった方が人生イージーモードなわけなのだよ。

 挫折の始まりは大学受験に失敗したことだ。
 高校は大丈夫だった。
 学力に見合った近所の高校にするぅ~っと入れたんだ。
 だがしかし。
 大学受験は失敗しちゃったんだよねぇ~。
 アレって1回失敗したら癖になるのかなぁ。
 2年目も、3年目も綺麗に滑って落ちて。
 さしものオレも凹んで引きこもったってワケ。
 
 で、引きこもってたら体によくないなぁ、筋トレとかもしないとなぁ、と思い始めたのは25歳の誕生日。
 家からは出るようになったものの、仕事が見つからない。
 高卒、職歴ナシ、引きこもり歴アリだけどバイトくらい見つかると思うだろう?
 何もないからな。
 なんで求人票に異能を書く欄があるんだよっ。
 あんなの差別だろ、差別。

 ちなみに大人世代は異能が開花しなかった。
 だからうちの両親に異能はない。
 でも人生は順調だ。

 ……解せぬ。

「ちょっとおにーちゃん、聞こえないの⁉ 晩御飯だって!」

 バンッと部屋のドアが開けられて妹が飛び込んできた。
 妹の紅波くれはだ。
 ちなみに妹は異能をしっかり開花させている。
 紅波くれはの異能は炎を出せることだ。
 異能の発現以降、オレと同じで真っ黒だった髪と瞳の色が赤味を帯びた以外は変わらない。
 紅波くれは紅波くれはだ。

 オレはベッドの上で上半身だけ起こしてドアの方を見た。
 無駄に発育のいい体には、モッコモコの素材で出来たパーカーとショートパンツを着ていた。
 同じ素材のニーハイソックスを履いているから寒そうには見えない。
 ピンクと白の横じまのモコモコホームウエアを着ても太って見えないのは若さゆえだろうか。
 
「もういちいち手間かけさせないでよねっ!」

 紅波くれはは、すぐにブチ切れてプンプンしてしまうピチピチギャルである。
 あ、ピチピチギャルって、もう死語?
 オレ、引きこもってたから分かんねーや。

紅波くれはぁ~。お前、いきなり部屋に入ってくんなって言ってるだろ? オレも一応男なんだからさー」

 現在、紅波くれはは高校二年生。
 難しいお年頃である。
 ヤバイところを見せるわけにはいかない。

 オレも男だからな。
 ドア開けた途端、何やらゴソゴソいたしているかもしれないだろう?
 そんな気分の夜もあるはずだ。
 多分。
 ……アレ? 前回アレしたの、何時だっけか?

「おにーちゃんの癖に、男アピールしないでよ。キモッ!」

 オレは兄として心配しているわけだが、紅波くれはの受け取り方は違ったようだ。

「いや、お前にどうこういうのはないけど、オレだってエッチな本くらい……」
「なによ、おにーちゃんのヘンタイッ!」

 罵倒するのはいい。
 罵倒するのはいいが、家で異能を使うのはやめろぉぉぉぉぉぉ!
 しかもその異能をオレにぶつけるのは止めろーーー!
 この家は、35年ほどローンが残っているんだぞぉぉぉぉぉぉ!

 紅波くれはは右手のひらに炎の玉を作るとオレに投げつけてきた。

「えいっ!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ! 炎を投げるんじゃありませんっ!」

 オレは自分に飛んできた炎を思わず受け止めた。

 ……ん? 受け止めた?

 オレは自分の右手を見た。
 手のひらの上で小さな炎のボールがゆらゆらと揺らめいている。
 炎越しに紅波くれはが、ただでさえデカい目を真ん丸に見開き、右腕ごと持ち上げて右手の人差し指で指さしながら、半開きの口を金魚みたいにパクパクさせている。

 なんも聞くなよ?
 オレにだって何が何だかわかんねーからな?

 オレは右手のひらの上で生き物みたいにゆらゆら揺れている炎を、ポカンとして見つめていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...