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14 美男美女
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結局、グラウクスさんから具体的な魔法の手ほどきを受けることはなく、勉強用として数冊の本を借りて私とロゼッタは魔術師の部屋を出た。そして大きな螺旋階段を降り、客室へ戻るべく石造りの長い渡り廊下を歩く。
通路からは見事な庭園に黄色や淡いピンク、紫色といった美しい花々が咲き誇っているのが見える。爽やかな青空の下で気持ちの良い陽光が降り注ぎ遠くからは小鳥のさえずりが聞こえてくるが、私は二重三重の意味で気が重かった。
一つは魔法習得のために、この世界で使用されている文字を覚えないといけない件。確かに、何かを勉強するに当たって文字を理解するというのは必須に違いない。今後、その語学力が生かされるというなら学習する意欲もわくが私の場合、一年後に元の世界に戻る予定だ。
つまりこの世界で使われている文字を覚えたとしても、元の世界に戻ったらその知識は役に立たないということになる。そしてグラウクスさんに「魔法を覚えたい」と言ってしまったけれど、よくよく考えれば私が魔法を使えるようになるということは第一王子にとって『聖女として役に立つ』と判断されるのではないかという懸念がある。
「仮に私が魔法を覚えて、役に立つと判断された場合。第一王子が元の世界に戻したくないから、もう暫くこの世界にいろって言われたら。私は逆らえないのよね」
「マリナさん……」
「第一王子は『禁書』を持っているんだもの。もしあれを燃やされでもしたら、私は元の世界に帰れない。第一王子の機嫌を損ねる訳にはいかない」
だからこそ魔法も覚えなければいけない訳だけど、魔法を覚えれば第一王子に気に入られて元の世界に戻ることを許可して貰えない可能性があり、魔法を覚えなければ第一王子の不興を買って禁書の貸し出しを許して貰えず元の世界に戻れない可能性がある。
「どっちにしろ、自分で自分の首を絞めてる気がする……。かと言って、ここでお世話になっている身としては魔法を覚えないって選択肢はないし」
仮に、何もしたくないと駄々をこねて「じゃあ城から出て一人で生活しろ」と言われた場合、この世界についての知識をロクに持たない私には、この世界で生きていく術は無い。結局、言われるまま魔法を覚えるしかないのだ。深いため息を吐くとロゼッタは気遣わしげに私を見つけた。
「マリナさん、あまり思い詰めないで下さい……。微力ながら、私に出来ることなら可能な限りマリナさんのお力になりますから」
「ありがとう。ロゼッタ」
突然、異世界に召還されて元の世界に戻るための方法も限られてるけど、ロゼッタが何かと心を砕いてくれるおかげで本当に何不自由ない生活を送れている。
お世話になっているロゼッタに甘えてばかりではいけないだろう。極力、彼女の負担にならないように私も気を配らねば。そう思っていた時、一緒に渡り廊下を歩いていたプラチナブロンドの侍女ロゼッタが急に立ち止まった。
まばたきもせずに放心したように庭園の一角に視線を向けている。何か気になる物でも見つけたのかと思い、ロゼッタの視線の先に目を向ければ、そこには深紅のドレスに身を包んだストロベリーブロンドの美女と金髪碧眼の美青年が並んで石畳で舗装された庭園の小道を歩いていた。
通路からは見事な庭園に黄色や淡いピンク、紫色といった美しい花々が咲き誇っているのが見える。爽やかな青空の下で気持ちの良い陽光が降り注ぎ遠くからは小鳥のさえずりが聞こえてくるが、私は二重三重の意味で気が重かった。
一つは魔法習得のために、この世界で使用されている文字を覚えないといけない件。確かに、何かを勉強するに当たって文字を理解するというのは必須に違いない。今後、その語学力が生かされるというなら学習する意欲もわくが私の場合、一年後に元の世界に戻る予定だ。
つまりこの世界で使われている文字を覚えたとしても、元の世界に戻ったらその知識は役に立たないということになる。そしてグラウクスさんに「魔法を覚えたい」と言ってしまったけれど、よくよく考えれば私が魔法を使えるようになるということは第一王子にとって『聖女として役に立つ』と判断されるのではないかという懸念がある。
「仮に私が魔法を覚えて、役に立つと判断された場合。第一王子が元の世界に戻したくないから、もう暫くこの世界にいろって言われたら。私は逆らえないのよね」
「マリナさん……」
「第一王子は『禁書』を持っているんだもの。もしあれを燃やされでもしたら、私は元の世界に帰れない。第一王子の機嫌を損ねる訳にはいかない」
だからこそ魔法も覚えなければいけない訳だけど、魔法を覚えれば第一王子に気に入られて元の世界に戻ることを許可して貰えない可能性があり、魔法を覚えなければ第一王子の不興を買って禁書の貸し出しを許して貰えず元の世界に戻れない可能性がある。
「どっちにしろ、自分で自分の首を絞めてる気がする……。かと言って、ここでお世話になっている身としては魔法を覚えないって選択肢はないし」
仮に、何もしたくないと駄々をこねて「じゃあ城から出て一人で生活しろ」と言われた場合、この世界についての知識をロクに持たない私には、この世界で生きていく術は無い。結局、言われるまま魔法を覚えるしかないのだ。深いため息を吐くとロゼッタは気遣わしげに私を見つけた。
「マリナさん、あまり思い詰めないで下さい……。微力ながら、私に出来ることなら可能な限りマリナさんのお力になりますから」
「ありがとう。ロゼッタ」
突然、異世界に召還されて元の世界に戻るための方法も限られてるけど、ロゼッタが何かと心を砕いてくれるおかげで本当に何不自由ない生活を送れている。
お世話になっているロゼッタに甘えてばかりではいけないだろう。極力、彼女の負担にならないように私も気を配らねば。そう思っていた時、一緒に渡り廊下を歩いていたプラチナブロンドの侍女ロゼッタが急に立ち止まった。
まばたきもせずに放心したように庭園の一角に視線を向けている。何か気になる物でも見つけたのかと思い、ロゼッタの視線の先に目を向ければ、そこには深紅のドレスに身を包んだストロベリーブロンドの美女と金髪碧眼の美青年が並んで石畳で舗装された庭園の小道を歩いていた。
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