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42 安置所
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こうして私は医女ルチアの助手見習いとして黒縁眼鏡の魔術師グラウクスさんや銀髪の騎士アルベルトさん、そして侍女ロゼッタと共に城の地下にある遺体安置所に向かうことになった。
石造りの階段を降りれば、ひんやりとした空気に少し肌寒さを感じた。そして長い通路を歩いていくと、やがて日の光がまったく差し込まない地下室の前にたどり着いた。
「この中が遺体安置所です」
「ここに、侍女フィオーレの遺体が安置されているんですね」
「はい」
問いかけに答えてくれた長髪の魔術師が頷いたのを見た後、私は後ろからついて来てくれたプラチナブロンドの侍女と銀髪の騎士に視線を向けた。
「ではロゼッタとアルベルトさんは中に入らないで、ここでお待ち下さい」
「えっ」
「何故だ?」
水宝玉色の瞳を見開いた侍女と騎士は驚いて疑問をていしたが常識的に考えて、これ以上の同行は遠慮してもらわなければいけない。
「侍女フィオーレは口の中にユリが詰まった状態で亡くなっていたそうですから、回復したとはいえユリ中毒になったばかりのロゼッタが遺体に附着している花粉を吸いこんで体調を崩せば事です。ロゼッタの兄であるアルベルトさんも念の為、ユリ中毒になるリスクは犯さない方がいいでしょう」
「そうですね……」
「分かった」
心ならずも納得してくれたプラチナブロンドの侍女と銀髪の騎士を地下通路に残し、私と医女ルチア、そして長髪の魔術師グラウクスさんが茶褐色の木扉を開けて遺体安置室に入る。室内には複数の石台が設置されていて、その中の一つに雨にぬれた女性の身体が寝かされていた。
一晩中、冷たい雨に打たれた肌から血の色は完全に消え去り、蒼ざめた白い肌は作り物の人形を思い起こさせた。そして薄目を開けている瞳は虚ろで焦点が合わず、濁った色の瞳を見れば瞳孔が開き切っている。さらに半開きの口からは赤いユリの花びらが見えた。
正直なところ、彼女に対して良い印象はないが、まがりなりにも知り合いである。生前は生気に満ちていた侍女フィオーレの変わり果てた姿に私は思わずくちびるをかんだ。
そんな私を横目に医女ルチアは茶髪の侍女フィオーレの手首を持って脈拍がないことを確認し、胸部に触れて心拍がないことなどを淡々と確認した。
「脈も心拍も呼吸もありません。間違いなく、死亡していますね」
「問題は死因です。分かりますか?」
「ひとまず、口の中を調べてみましょう」
黒縁眼鏡の魔術師に問われた医女ルチアは答えながら、持参した診療箱から金属製のピンセットを取り出した。そして石台の上に横たわる侍女フィオーレの口からピンセットで赤いユリの花を取り出していく。
一つ、二つ、三つと医女ルチアが赤いユリの花を取り出すのを見ながら、それを見守っていた私とグラウクスさんは唖然とした。次から次へと取り出される赤いユリはあっというまに十を超えた。口の中に入っているユリの数があまりにも多い。
「なんでこんなに」
「尋常じゃあないですねぇ……。一体どういうことでしょうか?」
石造りの階段を降りれば、ひんやりとした空気に少し肌寒さを感じた。そして長い通路を歩いていくと、やがて日の光がまったく差し込まない地下室の前にたどり着いた。
「この中が遺体安置所です」
「ここに、侍女フィオーレの遺体が安置されているんですね」
「はい」
問いかけに答えてくれた長髪の魔術師が頷いたのを見た後、私は後ろからついて来てくれたプラチナブロンドの侍女と銀髪の騎士に視線を向けた。
「ではロゼッタとアルベルトさんは中に入らないで、ここでお待ち下さい」
「えっ」
「何故だ?」
水宝玉色の瞳を見開いた侍女と騎士は驚いて疑問をていしたが常識的に考えて、これ以上の同行は遠慮してもらわなければいけない。
「侍女フィオーレは口の中にユリが詰まった状態で亡くなっていたそうですから、回復したとはいえユリ中毒になったばかりのロゼッタが遺体に附着している花粉を吸いこんで体調を崩せば事です。ロゼッタの兄であるアルベルトさんも念の為、ユリ中毒になるリスクは犯さない方がいいでしょう」
「そうですね……」
「分かった」
心ならずも納得してくれたプラチナブロンドの侍女と銀髪の騎士を地下通路に残し、私と医女ルチア、そして長髪の魔術師グラウクスさんが茶褐色の木扉を開けて遺体安置室に入る。室内には複数の石台が設置されていて、その中の一つに雨にぬれた女性の身体が寝かされていた。
一晩中、冷たい雨に打たれた肌から血の色は完全に消え去り、蒼ざめた白い肌は作り物の人形を思い起こさせた。そして薄目を開けている瞳は虚ろで焦点が合わず、濁った色の瞳を見れば瞳孔が開き切っている。さらに半開きの口からは赤いユリの花びらが見えた。
正直なところ、彼女に対して良い印象はないが、まがりなりにも知り合いである。生前は生気に満ちていた侍女フィオーレの変わり果てた姿に私は思わずくちびるをかんだ。
そんな私を横目に医女ルチアは茶髪の侍女フィオーレの手首を持って脈拍がないことを確認し、胸部に触れて心拍がないことなどを淡々と確認した。
「脈も心拍も呼吸もありません。間違いなく、死亡していますね」
「問題は死因です。分かりますか?」
「ひとまず、口の中を調べてみましょう」
黒縁眼鏡の魔術師に問われた医女ルチアは答えながら、持参した診療箱から金属製のピンセットを取り出した。そして石台の上に横たわる侍女フィオーレの口からピンセットで赤いユリの花を取り出していく。
一つ、二つ、三つと医女ルチアが赤いユリの花を取り出すのを見ながら、それを見守っていた私とグラウクスさんは唖然とした。次から次へと取り出される赤いユリはあっというまに十を超えた。口の中に入っているユリの数があまりにも多い。
「なんでこんなに」
「尋常じゃあないですねぇ……。一体どういうことでしょうか?」
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