秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

文字の大きさ
284 / 450
三人の王弟

284

しおりを挟む
「ほかの王族は、王位を狙ってる方もいると?」

 私が尋ねればブランシュ殿下は、愉快そうに薄笑いを浮かべた。

「新王の意向で王弟たちの処刑はありませんでしたが、今後も必ず身の安全が保障されるとは限らないと考える者がいたら、やられる前に殺るという考えにいたっても無理はないと思いませんか?」

「勘弁してくれ……。寵妃から王弟に二心ありとでも告げられたら、せっかく拾った命がいくつあっても足りぬ」

「そんな」

 顔をしかめるダーク王子に、レオン陛下に対して軽々しく王弟たちのことを悪く言う意志は無いと告げようとしたが、第三王子は私の言葉を遮るように手元のワイングラスに入っている赤い葡萄酒をたゆたわせる。

「ダーク王子はそう思っていなくても、前王ライオネル陛下や第一王子の前では昔から下手に出て信用を勝ち取っていた親しい者でも、腹の底では何を考えているか知れたものではありません」

「……」

「強い者には笑顔でヒザを屈するが、弱い者には態度を豹変させる。そういう者はいくらでも居るものですよ」

「ブランシュ殿下……」

 新王の前では笑顔でヒザを屈している者。第三王子の言葉は暗に、第二王子であるライガ殿下を指しているように思えるが、ライガ殿下はそんな雰囲気を一切、感じさせることなくレオン陛下と談笑を続けている。

 身体が脆弱なゆえにブランシュ殿下が妄想をたくましくした末の懸念なのか、はたまた趣味が悪い冗談なのか、王弟と先ほど知り合ったばかりの私には判断がつきかねた。


 ちょうど、広間の真ん中では第二王子、ライガ殿下がレオン陛下の耳に異国から持ち帰った玉紐の耳飾りを笑顔でつけていた。第三王子と第四王子はその様子を冷めた目で見つめている。

「ブランシュ殿下とダーク王子は、あちらに行かなくてよろしいのですか?」

「私はさきほど話した通り、身体が弱いものでね。あんな場所は気疲れしてしまうので遠慮しているのですよ。今回のパーティも顔を出して兄上達にあいさつを済ませたら、さっさと退散するつもりでしたが、兄上がご執心の寵妃と話が出来たのは僥倖でしたね」

「俺もあんな場所はごめんだ。腹に一物ある連中と話しても面白くないからな」

「ふふっ。第三王子とはいえ、私は脆弱な身体ゆえに権力から遠く、第四王子は母の身分が低いゆえに、貴族どもは新王と第二王子の顔色をうかがう者ばかりと言う訳です」

「そのような……」

「あなたも兄上によく似て善良なお人のようだ。あなたのような無垢な者は何も知らずに利用され最悪、殺されかねない。特に国王の側にはべるなら、用心なさった方がよろしいですよ」

「殺されるだなんて……。本気でおっしゃっているのですか?」
しおりを挟む
感想 445

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...