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忍び寄る影
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私が首を傾げ、茶髪の侍女ジョアンナが眉をひそめながら扉を開けると、慌てた様子で足早に廊下を移動する側女が数人いた。
「どうかしたの?」
「それが後宮の一角から、火の手が上がっているんです!」
「なんですって!?」
「窓から煙が上がっているのが見える筈です」
側女の言葉を聞き、ジョアンナと共に窓の外を見れば確かに後宮の一角から黒煙が上がっているのが見えた。
「ここから離れた場所なのね。あまり火の手も強くないようだけど……。どうして?」
「ローザ。私、ちょっと見て来るわ」
「ジョアンナ……」
「あの煙なら、きっとボヤで終わるでしょうし。こことは建物が違うから燃え移ることは無いでしょうけど、少しでも危ないと思ったらすぐ逃げてね?」
「私は大丈夫よ。ジョアンナこそ、危ないと思ったらすぐ引き返して」
「分かったわ。じゃあ、ちょっと行ってくるから」
茶髪の侍女ジョアンナは私を安心させるように、笑顔で部屋から出て行った。どうにも落ち着かず部屋の窓から空に上がっていく黒煙を見つめていたが、しばらくすると黒煙はじょじょに細くなっていった。
「良かった。ちゃんと消火されてる……。あの分なら燃え広がることは無いわね」
今の季節なら暖炉に火を入れている訳では無いだろうし、厨房と違って後宮で火を使うことはまず無い。仮に火事など起こそうものなら死罪にされてもおかしくはない。
「事故だったのかしら?」
燭台の火が何かに燃え移って失火でも起こしたのかも知れない。そんなことを考えていたら部屋の扉が開く音が聞こえた。ジョアンナが戻ってきたのだろう。ちょうど外では空に上がっていた黒煙が消えていく所だった。
「ジョアンナ、どうやらボヤで済んだみたいね。良かっ――」
窓の外を見ながら口にした言葉は最後まで発することが出来なかった。鈍い音と共に、後頭部に衝撃を受けた私は一度、壁に手をついたが痛みに耐えきれず、そのまま床に崩れ落ちた。
頭部に受けた衝撃と、酷い激痛にほぼ無意識のまま後頭部を手で押さえると、ぬるつく感触があった。まさかと思いながら頭部を触った自分の手を見れば、指先から手の平にべったりと真っ赤な血液が付着していた。
「なんで、こんな……? うっ!」
振り向こうとした瞬間、首に布が巻かれ絞めつけられる。何とか振りほどこうとするが、首を絞めつける力は一向に緩められない。
後頭部に受けた痛みと首を絞めつけられ呼吸が苦しくなっていく中、目の前が白く濁って朦朧としていくのが分かった。このままでは拙い。そう思いながらも助けを呼ぶ声すら出すことが出来ず、ギリギリと頸部を圧迫されながら、やがて私は意識を手放した。
「どうかしたの?」
「それが後宮の一角から、火の手が上がっているんです!」
「なんですって!?」
「窓から煙が上がっているのが見える筈です」
側女の言葉を聞き、ジョアンナと共に窓の外を見れば確かに後宮の一角から黒煙が上がっているのが見えた。
「ここから離れた場所なのね。あまり火の手も強くないようだけど……。どうして?」
「ローザ。私、ちょっと見て来るわ」
「ジョアンナ……」
「あの煙なら、きっとボヤで終わるでしょうし。こことは建物が違うから燃え移ることは無いでしょうけど、少しでも危ないと思ったらすぐ逃げてね?」
「私は大丈夫よ。ジョアンナこそ、危ないと思ったらすぐ引き返して」
「分かったわ。じゃあ、ちょっと行ってくるから」
茶髪の侍女ジョアンナは私を安心させるように、笑顔で部屋から出て行った。どうにも落ち着かず部屋の窓から空に上がっていく黒煙を見つめていたが、しばらくすると黒煙はじょじょに細くなっていった。
「良かった。ちゃんと消火されてる……。あの分なら燃え広がることは無いわね」
今の季節なら暖炉に火を入れている訳では無いだろうし、厨房と違って後宮で火を使うことはまず無い。仮に火事など起こそうものなら死罪にされてもおかしくはない。
「事故だったのかしら?」
燭台の火が何かに燃え移って失火でも起こしたのかも知れない。そんなことを考えていたら部屋の扉が開く音が聞こえた。ジョアンナが戻ってきたのだろう。ちょうど外では空に上がっていた黒煙が消えていく所だった。
「ジョアンナ、どうやらボヤで済んだみたいね。良かっ――」
窓の外を見ながら口にした言葉は最後まで発することが出来なかった。鈍い音と共に、後頭部に衝撃を受けた私は一度、壁に手をついたが痛みに耐えきれず、そのまま床に崩れ落ちた。
頭部に受けた衝撃と、酷い激痛にほぼ無意識のまま後頭部を手で押さえると、ぬるつく感触があった。まさかと思いながら頭部を触った自分の手を見れば、指先から手の平にべったりと真っ赤な血液が付着していた。
「なんで、こんな……? うっ!」
振り向こうとした瞬間、首に布が巻かれ絞めつけられる。何とか振りほどこうとするが、首を絞めつける力は一向に緩められない。
後頭部に受けた痛みと首を絞めつけられ呼吸が苦しくなっていく中、目の前が白く濁って朦朧としていくのが分かった。このままでは拙い。そう思いながらも助けを呼ぶ声すら出すことが出来ず、ギリギリと頸部を圧迫されながら、やがて私は意識を手放した。
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