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パティスリーにて
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「セリナと言ったわね? つい頭に血がのぼって、言い過ぎてしまいましたわ。許して下さる?」
「え? ええ、それはもちろん」
「良かったわ。では、仲直りの握手をしましょう?」
「あ、はい……」
先ほどの剣呑な雰囲気から打って変わって、柔和な微笑みをたたえるハリエッタ姫の変わりように驚くが、どうやらヴォルフさんの言葉で姫君は怒りの矛先をおさめてくれたようだ。
ハリエッタ姫が近づいて来たのでヴォルフさんは少し警戒した様子ながらも一歩、下がった。姫君はにっこりと微笑みながら友好的に右手を差し出してきた。私も同じように右手を出すために手に持っていた麻袋をひとまず、調理場の調理台に置いた。
そしてお互いに握手をした時だった。姫君に握りしめられた右手にネチョリという粘着質な音と共に、えもいえぬ不快感を感じた。
「な?」
「うふふ……。引っかかったわね」
そう言いながらハリエッタ姫が不敵な笑みを浮かべて握っていた手を放すと、私と姫君の手平から銀色の糸がひいてたれた。
「えっ?」
「一国の姫である、この私が平民なんかと仲直りなんてするわけないでしょ!? おまえさえいなければ!」
態度を豹変させた姫君にヴォルフさんも唖然としている。そのスキを突いてハリエッタ姫は私の顔を右手の平でつかもうと、驚くほどのスピードで手を伸ばしてきた。しかし、その瞬間大きな手が横から伸びハリエッタ姫の細い腕をつかむと、姫君の頭上でひねり上げた。
「くっ!」
「なにがあったのか知らんが、セリナ嬢に危害を加えようとするのは見過ごせん」
「ベルントさん!」
私の顔をつかもうとしていたハリエッタ姫の腕をひねり上げた黒髪の大男は、熊獣人のベルントさんだった。
「おまえがそばに居ながら、何をやっているんだ?」
「……面目ない」
横目でヴォルフさんを見ながら発されたベルントさんの言葉に狼獣人がうなだれる。しかし、あれほど友好的な様子だった者が突然、態度を豹変させた上、まして相手が祖国の姫君とあってはヴォルフさんが虚を突かれたのも無理はないだろう。そんなことを考えていると腕をひねり上げられている姫君の姿に、ハリエッタ姫の侍女達が血相を変えた。
「姫様に何をするのですか!?」
「無礼者っ! 姫様を離しなさい!」
「姫?」
騒ぎはじめた侍女たちを、いぶかしそうな目で見た黒熊獣人にヴォルフさんは苦々しい表情を浮かべた。
「おまえが腕をつかんでいるのは、蒼狼王国のハリエッタ姫だ」
「ベルントさん。そのくらいで……」
正当防衛だったとしても、一国の姫君に対して乱暴なマネはまずいと目配せしながら声をかければ黒熊獣人は琥珀色の瞳できつくハリエッタ姫をにらみつけた後、拘束していた腕を放した。
「妙なマネをすれば、敵と見なす」
「くっ! 今日のところはひきますわ……。でも、私はヴォルフェール様の婚約者なのです! このまま身をひくと思ったら大間違いですわよ!」
「え? ええ、それはもちろん」
「良かったわ。では、仲直りの握手をしましょう?」
「あ、はい……」
先ほどの剣呑な雰囲気から打って変わって、柔和な微笑みをたたえるハリエッタ姫の変わりように驚くが、どうやらヴォルフさんの言葉で姫君は怒りの矛先をおさめてくれたようだ。
ハリエッタ姫が近づいて来たのでヴォルフさんは少し警戒した様子ながらも一歩、下がった。姫君はにっこりと微笑みながら友好的に右手を差し出してきた。私も同じように右手を出すために手に持っていた麻袋をひとまず、調理場の調理台に置いた。
そしてお互いに握手をした時だった。姫君に握りしめられた右手にネチョリという粘着質な音と共に、えもいえぬ不快感を感じた。
「な?」
「うふふ……。引っかかったわね」
そう言いながらハリエッタ姫が不敵な笑みを浮かべて握っていた手を放すと、私と姫君の手平から銀色の糸がひいてたれた。
「えっ?」
「一国の姫である、この私が平民なんかと仲直りなんてするわけないでしょ!? おまえさえいなければ!」
態度を豹変させた姫君にヴォルフさんも唖然としている。そのスキを突いてハリエッタ姫は私の顔を右手の平でつかもうと、驚くほどのスピードで手を伸ばしてきた。しかし、その瞬間大きな手が横から伸びハリエッタ姫の細い腕をつかむと、姫君の頭上でひねり上げた。
「くっ!」
「なにがあったのか知らんが、セリナ嬢に危害を加えようとするのは見過ごせん」
「ベルントさん!」
私の顔をつかもうとしていたハリエッタ姫の腕をひねり上げた黒髪の大男は、熊獣人のベルントさんだった。
「おまえがそばに居ながら、何をやっているんだ?」
「……面目ない」
横目でヴォルフさんを見ながら発されたベルントさんの言葉に狼獣人がうなだれる。しかし、あれほど友好的な様子だった者が突然、態度を豹変させた上、まして相手が祖国の姫君とあってはヴォルフさんが虚を突かれたのも無理はないだろう。そんなことを考えていると腕をひねり上げられている姫君の姿に、ハリエッタ姫の侍女達が血相を変えた。
「姫様に何をするのですか!?」
「無礼者っ! 姫様を離しなさい!」
「姫?」
騒ぎはじめた侍女たちを、いぶかしそうな目で見た黒熊獣人にヴォルフさんは苦々しい表情を浮かべた。
「おまえが腕をつかんでいるのは、蒼狼王国のハリエッタ姫だ」
「ベルントさん。そのくらいで……」
正当防衛だったとしても、一国の姫君に対して乱暴なマネはまずいと目配せしながら声をかければ黒熊獣人は琥珀色の瞳できつくハリエッタ姫をにらみつけた後、拘束していた腕を放した。
「妙なマネをすれば、敵と見なす」
「くっ! 今日のところはひきますわ……。でも、私はヴォルフェール様の婚約者なのです! このまま身をひくと思ったら大間違いですわよ!」
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