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パティスリーにて
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ハイヒールの靴音を鳴らしながら銀髪の姫君は薄紅色のドレスをひるがえして複数の侍女と共に去って行った。その後ろ姿を見送った後、黒熊獣人ベルントさんは横にいる狼獣人に視線を向けた。
「おまえ、アレの婚約者なのか?」
「いや、初耳だ……。全く身に覚えが無い」
寝耳に水といった様子で呆然としているヴォルフさんの姿に、これは第二の庭でハリエッタ姫から聞いていた件を伝えた方が良いと判断する。
「それについては私が説明します」
「セリナ……」
「ところでベルントさんは、どうしてここに?」
そう。ヴォルフさんは狩りで取れた鳥肉などのおすそ分けで、たびたびパティスリーの勝手口から訪ねてくることがあるけどベルントさんが裏口である、ここを通りかかるのはめずらしい。そう思い疑問を口にすれば大きな身体の黒熊獣人は生気を失った様子で消沈し、琥珀色の瞳に暗い影を落としている。
「ケーキを買いに来たんだが、パティスリーが閉店していた」
「あ」
そうだ。明日、あさっては連休だし。生菓子のケーキが売り切れたから今日は双子に対して、早めに閉店を指示したという事実を思い出した。
きっとケーキを買いにやって来たベルントさんは、すでに閉店状態となっていたパティスリーを見てショックで立ち尽くしていたとき、私やハリエッタ姫の声を聞きつけて何ごとかと駆けつけてくれたのだろう。調理場の奥を見れば猫耳のメイドはドアの隙間から、こちらを見ながら固まっていた。
「ルル、ララ。生菓子は売り切れたけど、焼き菓子はまだ残ってるのよね?」
「はい!」
「焼き菓子なら、まだ少しあります! すぐ持っていけます!」
「そういう訳ですからベルントさん。焼き菓子でしたら、ご用意できそうです」
「そうか……!」
はた目には分かりにくく、ほとんど表情が変わっていないように見えるだろうけど双子が売れ残った焼き菓子を取りに行ったと知り、光が失われていたベルントさんの瞳に生きる希望と輝きが戻ったようだ。
「ここでは何ですから、ひとまずダイニングルームに行きましょうか。ヴォルフさんも、ベルントさんもどうぞお入り下さい」
そう言いながら何気なく調理台の上に置いていた銅製のボウルを右手で触った瞬間、ネチョリという嫌な音と共に冷たい銅製ボウルが私の右手にくっついた。
「え? あ、そうか……。さっきハリエッタ姫から、手に何かくっつけられたんだったわね」
ハリエッタ姫に握手を求められたとき、手のひらに謎の粘着性物質をつけられたことを思い出す。とりあえず、右手の平にくっついた銅製ボウルを左手で取ろうとしたが、ついさっきまで液体だった粘着性物質は私の手と銅製ボウルを完全に固定して全く離れない。
「ウソ……。取れない!」
「おまえ、アレの婚約者なのか?」
「いや、初耳だ……。全く身に覚えが無い」
寝耳に水といった様子で呆然としているヴォルフさんの姿に、これは第二の庭でハリエッタ姫から聞いていた件を伝えた方が良いと判断する。
「それについては私が説明します」
「セリナ……」
「ところでベルントさんは、どうしてここに?」
そう。ヴォルフさんは狩りで取れた鳥肉などのおすそ分けで、たびたびパティスリーの勝手口から訪ねてくることがあるけどベルントさんが裏口である、ここを通りかかるのはめずらしい。そう思い疑問を口にすれば大きな身体の黒熊獣人は生気を失った様子で消沈し、琥珀色の瞳に暗い影を落としている。
「ケーキを買いに来たんだが、パティスリーが閉店していた」
「あ」
そうだ。明日、あさっては連休だし。生菓子のケーキが売り切れたから今日は双子に対して、早めに閉店を指示したという事実を思い出した。
きっとケーキを買いにやって来たベルントさんは、すでに閉店状態となっていたパティスリーを見てショックで立ち尽くしていたとき、私やハリエッタ姫の声を聞きつけて何ごとかと駆けつけてくれたのだろう。調理場の奥を見れば猫耳のメイドはドアの隙間から、こちらを見ながら固まっていた。
「ルル、ララ。生菓子は売り切れたけど、焼き菓子はまだ残ってるのよね?」
「はい!」
「焼き菓子なら、まだ少しあります! すぐ持っていけます!」
「そういう訳ですからベルントさん。焼き菓子でしたら、ご用意できそうです」
「そうか……!」
はた目には分かりにくく、ほとんど表情が変わっていないように見えるだろうけど双子が売れ残った焼き菓子を取りに行ったと知り、光が失われていたベルントさんの瞳に生きる希望と輝きが戻ったようだ。
「ここでは何ですから、ひとまずダイニングルームに行きましょうか。ヴォルフさんも、ベルントさんもどうぞお入り下さい」
そう言いながら何気なく調理台の上に置いていた銅製のボウルを右手で触った瞬間、ネチョリという嫌な音と共に冷たい銅製ボウルが私の右手にくっついた。
「え? あ、そうか……。さっきハリエッタ姫から、手に何かくっつけられたんだったわね」
ハリエッタ姫に握手を求められたとき、手のひらに謎の粘着性物質をつけられたことを思い出す。とりあえず、右手の平にくっついた銅製ボウルを左手で取ろうとしたが、ついさっきまで液体だった粘着性物質は私の手と銅製ボウルを完全に固定して全く離れない。
「ウソ……。取れない!」
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